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九 名指揮者の選択殺人事件
かの有名な指揮者大沢は、コンサート当日になったというのに、頭を悩ませていた。
愛弟子の阿部と牧川、どちらかをヴァイオリン奏者としてデビューさせるか決めかねていた。
青年たちはドキドキ胸を高鳴らせながら、それぞれ個室の楽屋で着替えていた。
開幕の三十分前になって、ようやく大沢は決心した。
阿部に決めたことを直接本人に伝え、それから非常に辛い知らせを牧川に伝えに行った。
それから十分後、大沢は一緒に舞台に立つ阿部を誘いに行った。
するとその青年は心臓を撃ち抜かれ、小さな楽屋の真ん中にぶっ倒れていた。
大沢はブルブル震えながらドアを閉め、舞台の特等席に招待していた織田原を呼んでこさせた。
織田原は「んー、まずコンサートを始めるのが先決です……」と大沢に言って説得し、一緒に牧川の楽屋へと向かった。
結局自分が演奏することになったと聞いて―あえてその理由は説明しなかった―牧川は驚きながら、うれし泣きをしていた。
即座にネクタイを直し、ヴァイオリンと弓を持つと、大沢と一緒に舞台へと向かった。拍手大喝采のなか、二人は観客にお辞儀をした。
牧川は非常に緊張している様子であったが、大沢がオーケストラに合図をするのを待ち構えた。
それから牧川はヴァイオリンを顎にあてた。
次の瞬間、牧川は開幕曲の『G線上のアリア』をスラスラ弾き始めた。
織田原名探偵は即警察に通報した。
「あの若いヴァイオリン奏者は……黒だ!」
問九 どうして織田原は牧川が犯人だとわかったのでしょうか?
(制限時間1分間の推理をして下さい。答えは下記の通り)
正解九
ヴァイオリンを演奏する前には、必ずと言っていいほど、弓にヤニを塗り、ヴァイオリンを調弦する準備が必要となります。
牧川が『G線上のアリア』をスラスラ弾き始めたということは、とりもなおさず阿部が死んでいたことを知っていたということになり、彼には殺人になんらかの関わりがあったと思われるからです。
織田原任三郎でした……。
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