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八 カーピット倉庫殺人事件
「とにかく二回悲鳴が聞こえたんだってば」
失業中の長谷川が言った。
「当然俺はそこで立ち止まって、猫のマークのホームセンターのカーピットの倉庫の一階の窓をのぞいて見た。そしたら前川が白いヨコハマの発泡箱に、タイヤが積んである方に男を引きずって行くのが見えたんだよ。んー、タイヤは、そうだな、三メートルから四メートルくらいの高さはあった筈だな。それで俺はすぐに警察に通報したんだ」
「倉庫の中に入らなかったのか?」
勝村警視が訊いた。
「ああ、だって俺はよこの店の従業員じゃあるまいし、勝手に中に入れないだろう。これまでにだってこの倉庫に近づいたこともないからね」
長谷川が憤然と言い返した。
「俺はちょっと散歩してただけなんだ。警察はこれだから嫌になるぜ。善良な市民が刑務所にぶち込まれるんだから。警察が捕まえるのは俺じゃなくて、前川だよ!」
警視は苦みばしった顔で頷いた。
そしてドアの近くに立っていた巡査にこう言った。
「長谷川を向こうに、代わりに前川を連れてきてくれ」
本屋の店員の前川は、この倉庫にいたことを認めた。
「倉庫に来いという匿名の電話を受けたんです。ドアは開いていたので、なかに入りました。でも僕は殺人なんてしていません!」
「七回刺された川田の死体が、倉庫の約四メートルの高さに積まれたヨコハマのタイヤの中から発見されたんだ」
警視が言った。
「死体を発見できたのは、犯人がだらしない性格だったからだ。犯人は川田の死体にタイヤを積み上げたが、このタイヤは崩れ落ちそうになっていた。倉庫の責任者によると、いつも綺麗に一列ずつタイヤを積み上げていたと言っている」
「僕は川田を殺したりしていません」
前川が警視の話を遮った。
「きっと僕は誰かにはめられたんだ!」
その晩、警視は織田原に事件の話をした。
「んー、常日頃勤勉な倉庫の従業員たちが、誰が犯人なのか教えてくれてたんじゃないのかね、勝村警視!」
問八 どういう意味でしょう?
(制限時間1分間の推理をして下さい。答えは下記の通り)
正解八
失業中の長谷川はこれまで倉庫に近づいたことがないと言っています。
でも川田が引きずられていった先にあるタイヤはヨコハマのタイヤだと知っていました。
しかも白いヨコハマの発泡箱に積まれていたことも知っていました。
倉庫の従業員たちによって「綺麗に一列ずつ」積まれたタイヤが「三メートルから四メートル近くの高さ」はあったのですから、窓の外からのぞいた長谷川はタイアの接地面しか見えない筈です。
すなわち犯人は長谷川だったのです。
織田原任三郎でした……。
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