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五 夜明けの殺人事件
勝村警視は、煙草のヤニで飴色になった窓のブラインドを巻き上げて、タレコミ屋の小山内のむさっ苦しい部屋に朝の陽射しを入れた。
八階下の中庭では、若い女性の無残な死体の周りに警官達がゾロゾロと集まっている。
「さて、もう一度だけその話を聞かせてもらおうか」
警視は小山内に言った。
ここ何ヶ月もの間インチキ情報を警察に高額な値段で売りつけることに失敗している小山内は、貧乏ゆすりをしながら椅子に座っていた。
「ちょうど夜が明ける頃さ、俺はこの椅子に座ってスポニチを読んでいたんだ」
カチッ、ショボ。
全くあてにならない役立たずのタレコミ屋はラッキーストライクに火をつけた。
「ふうーっ。最近なんつーか俺って不眠症になっちゃってさー、真っ暗闇でもよくよく眠れもしねーや。そうしたらさー、なんか外でもめてる物音がしてさー、見てみたら倉木夫人だったんだよ。夫人は同じ八階の、あの中庭を挟んだ向かい側に住んでたのさー。夫人はスーツ姿の男ともみ合っていた。その男が窓際に追い詰めた夫人をドンと両手で突き飛ばした。すると夫人はガラスをガシャンと割りながら真っ逆さまに落っこちてしまった。俺の脳裏にすぐ勝村警視の顔が浮かんだのさー。殺人じゃなくて、自殺の線で捜査する手間を省こうと思ってね。あいにく俺の携帯電話はバッテリーが切れていてさー。だから俺は近所のコンビニまで猛ダッシュして、電話したって寸法さー。それから警視さん達が来るまで死体の側にいて、何も現場が荒らされないように、じーっと見張ってたのさー。ヘヘ俺って結構仕事熱心でしょ?」
小山内はカリカリと鼻っ柱を右手人差し指でかきはじめた。
「犯人の顔も知ってんだぜー。会えばすぐわかるし、俺ってスーツにも結構詳しいからさー。こんだけの情報があれば、かなりの値段になるんじゃね?」
「そうだな。これぐらいは!!」
そう怒鳴りながら、勝村警視は小山内が座っている椅子を思い切り蹴飛ばし、小山内は床にステーンと転がり落ちた。
「なかなかお見事でしたよ、勝村警視。フフフフ…」
高額な金をせしめようとした小山内の最新の企てを聞いた織田原は、笑いながらそうコメントした。
問五 どうしてタレコミ屋の小山内は一切報酬を貰えず、蹴られる羽目になってしまったのでしょうか?
(制限時間1分間の推理をして下さい。答えは下記の通り)
正解五
小山内は建物に入ろうとした時に死体を発見しましたが、高額な報酬目当てに、殺人事件の話しをでっち上げたのだろうと勝村警視はそう推理しました。
小山内の窓からは、彼が話した光景が見える訳がありません。
彼は言ってましたよね、最近不眠症になって、真っ暗闇でもよくよく眠れない。
という事は、ブラインドは下がったまんまだったんですよね?
織田原任三郎でした……。
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