原発事故訴訟:避難者自殺、東電に賠償命令 福島地裁
毎日新聞 2015年06月30日 12時11分
2011年3月の東京電力福島第1原発事故に伴う避難生活中に自殺した福島県浪江町の男性の遺族が東電に約8700万円の損害賠償を求めた訴訟で、福島地裁(潮見直之裁判長、西村康夫裁判長代読)は30日、事故と自殺の因果関係を認め、東電に約2700万円を支払うよう命じた。原発事故の避難住民の自殺を巡る訴訟で東電の賠償責任を認めたのは2例目。
原告は、自殺した五十崎喜一さん(当時67歳)の妻栄子さん(66)と次男、亡くなった長男の息子の3人。訴状によると、第1原発から約10キロの五十崎さん宅は事故で警戒区域内となり、福島県郡山市内の高校体育館に避難した。五十崎さんは不眠や食欲不振を訴えるようになり、11年4月に同県二本松市のアパートに移ってから症状が悪化。同年7月、同県飯舘村で飛び降り自殺した。
自殺1カ月前には趣味の釣りにも関心を示さなくなり、「いつになったら帰れるんだ」と愚痴ばかりこぼしていたことから、遺族側は「避難生活のストレスでうつ病を発症した」と原発事故との因果関係を主張。12年9月に提訴したが、東電側は「うつ病の発症には持病の糖尿病や考え込む性格が影響していた」と請求棄却を求めていた。
原発事故と自殺の因果関係を争う訴訟では、福島地裁で今回と同じ潮見裁判長が昨年8月、福島県川俣町の女性(当時58歳)の自殺を巡り東電の賠償責任を初めて認め、約4900万円の支払いを命じる判決が東電の控訴断念で確定した。ほかに同県相馬市の男性(当時54歳)の妻ら遺族3人が損害賠償を求めて東京地裁に提訴している。【土江洋範】