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【戦後70年】
小笠原・父島駐留の日常描く 旧日本兵が絵日記…恐怖と孤独に耐え「ただ故郷に帰る夢を見るだけ」
「日本から遠く離れた島で守備に就いていることを誰が知ろうか。眠りにつけず、ただ故郷に帰る夢を見るだけだ」。太平洋戦争中に父島に駐留していた利雄さんは、空爆の恐怖と孤独に耐えながら望郷の念を抱き続けた心の内を漢詩に詠んだ。
読み解いた阪急文化財団の伊井春樹理事は「一緒に苦労した戦友たちの声を代弁しているようで、胸が詰まる思いだ」と話す。
昭和19年3月、利雄さんは父島に上陸。6月に初めての空襲があり、米軍の爆撃機が飛び交う中、銃を構えて戦う部隊の様子を描いている。7月27日の日記には「食糧窮乏、死者とともに患者続出」の記述も。部隊は島内で自給生活を送り、絵などから家畜を飼い、野菜を育てるなどして生き延びた様子が分かる。
利雄さんは幼少期から絵が得意だったという。「絵日記に残して伝えたかったのでは」と娘の久恵さんは、戦後70年の重みをかみしめた。