アメリカの夫婦と高校生の娘。この一家はそれぞれ“溜まって”いた。夫は妻と娘にないがしろにされ娘の友達に恋をする。隣にはドス黒い趣味のある軍人とヤク中の息子。夫が隣の息子にヤクをもらうようになり…。
彼らの平凡(?)で平和(?)な人生の行き着く先とは…!?
作品賞を含む5部門でアカデミー賞を受賞した秀作のドラマ。今作が劇場用長編映画初監督作品であるサム・メンデスが素晴らしい俳優たちを操って魅せる。貴男はミーナ・スヴァーリに惚れ、貴女はピーター・ギャラガーに惚れ、アナタは…。
- 主要登場人物配役(役名/俳優)
<ストーリー>(あらすじ,ネタバレ)
家族の一員、それぞれが“溜まって”いるアメリカの“普通の家庭”、バーナム家。広告業界に勤めるレスターに、不動産関係を営む妻のキャロリン、そして夫妻の一人娘の高校生ジェーンがバーナム家の一員である。夫妻の間には長い間肉体関係はない。そしてレスターは長い間ジェーンと口をきいていなかった。
そんな一家はいつもの夕飯時を迎えた。キャロリンが料理を作り、音楽の選曲もする、普通の夕飯。レスターが久しぶりにジェニーに関心を持った。だが彼女は反抗期か巧くコミュニケーションが取れなかった。
バーナム夫妻は、ジェーンが入っているバスケットボールの応援団を見に行く。そこでレスターは、ジェーンの友達アンジェラに心を奪われてしまう。アンジェラは美しく、そのことを自覚しており、男を虜にすることを何とも思わない女の子であった。夫妻でダブルベッドに寝ながら、レスターはアンジェラの事を考えていた…。
バーナム家の隣には最近引っ越してきたフィッツ家が住んでいた。海兵隊の大佐であるフランクと彼の妻の元に、一人息子の高校生リッキーがいた。フランクは昔の男らしくとてもゲイが嫌いであった。そしてリッキーは、過去に友達を殺しそうになり、またヤクをやって精神病院に入院した経験があった。リッキーはヤクを止められずに、父に隠れて吸い、またヤクを売って稼いでいた。父にはバイトでの稼ぎと思われていた。
リッキーは、ジェーンの高校に転校してきた。家の外にいるところをビデオに撮られたジェーンは、最初はリッキーを嫌っていた。
レスラーは、キャロリンの事業関係のパーティに嫌々出席する。キャロリンはそこで酔いから業界のやり手バディに口説かれる。レスラーは、パーティでバイトをしていたリッキーに会う。そしてリッキーからヤクをもらい、人生で久しぶりのヤクを吸うのであった。
家に帰ってきた夫妻を迎えたのはジェーンと泊まりに来ていたアンジェラであった。部屋の声を盗み聞いて、アンジェラが“筋肉がある男が好き”と言うのを聞いたレスラーは、すぐさま筋力トレーニングを開始する。その夜、夢でマスをかくところをキャロリンに見られるレスラーだが、そんなのは気にしない。次の日の朝からは、隣人のゲイの男達とマラソンをして鍛え始める。その後、リッキーの家に行き、ヤクを買うのであった。
レスラーはすっかり変わっていった。会社のリストラ役に大金をふっかけ、自らリストラされるのであった。キャロリンも変わっていった。バディと会って、その後、肉体関係を持つことになる。
ジェーンはというとリッキーと仲良くなり、彼の家に上がり込み、フランクが所有するナチスの皿まで見せてもらう。そして距離は更に縮まっていった。一方フランクは、リッキーが“男同士の肉体関係”をもって稼いでいるのではと思い始める。
その後、またアンジェラが泊まりに来た。ジェーンに、レスラーと寝ると言うアンジェラ。その夜、フランクはリッキーを問い詰める。リッキーはレスラーと関係を持ったと言うことを嘘で言い、フランクに勘当をくらって家を出る。そしてジェーンの家を訪ねた。
アンジェラとケンカしたジェーンは、リッキーと自分の部屋にいる。そしてアンジェラはレスラーに身体を委ねようとする。このときを待っていたレスラーだったが、彼女がヴァージンであることを聞かされ目が覚める。彼女からジェーンの話を聞き、再び家族というものを思いやる。
だがしかし、家族の写真を見ているときに銃声が響きレスラーは倒れた。嘆くキャロリンがいた。“息子であるリッキーが男のレスラーと関係を持ってゲイになってしまった…”と誤解したフランクにより射殺されたのだ…。
<感想>(レビュー,批評,評論,解説)
後の「ロード・トゥ・パーディション」、「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」や007シリーズの「007/スカイフォール」、2015年公開予定の「007/Spectre」そして次作のジェームズ・ボンド作品も計画されているサム・メンデスが劇場用長編映画初監督作品として監督しアカデミー作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞、撮影賞の5部門を受賞し第72アカデミー賞で一番多く賞を得たドラマ。
「ユージュアル・サスペクツ」に続く2つ目のオスカー演技賞を受賞したケヴィン・スペーシーがレスラーを演じる。そして今作のオスカーノミネートで「グリフターズ/詐欺師たち」に続く2作目のオスカーノミネートのアネット・ベニングがレスラーの妻キャロリンを演じる。他にスペーシーももちろんtoikunお気に入りだが、この人もお気に入りのクリス・クーパー。クーパーはとても面白い役で今作でアカデミー賞のノミネートはならなかったものの後の「アダプテーション」でオスカー助演賞を受賞している。「ボーン・アイデンティティー」と「ボーン・スプレマシー」(2作目は厳密には出演ではない)の「ジェイソン・ボーンシリーズ」や「カンパニー・メン」なども良かった。また、今作でヌードを披露して大きな話題となったミーナ・スヴァーリやソーラ・バーチも良い。
今まで何度となく見てきたがレビューを書くのは今回が初めてだ。スペーシーがラストで殺されるという作品ながら、toikunは非常に良いイメージをこの作品に持っている。アメリカのちょっとアブノーマルなところがあるけど普通の家族が描かれているなと思う。これはあくまで私見だから、監督は“そんなことを描いたのではない”と言われるかもしれないが。
この作品の音楽は、日本の番組で良く耳にする。そして今回見てみて、「ペイ・フォワード 可能の王国」の音楽と非常に似ているなと思ったら、どちらも同じトーマス・ニューマンだった。
フランクに勘違いをさせるという意味で、アカデミー撮影賞受賞もうなずける。巧みなカメラワークである。
ミーナ・スヴァーリのヌードシーンや“性的なシーン”があるので家族で見ることはオススメできないが、日本社会でも似たような家族があるのではとニヤリとして見て欲しい。
ストーリーを書くのは難しかった。見づらいな。これもこの映画がいろいろな人に焦点を当てているため仕方がなかった。
2007/04/19
by toikun.