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蒼龍国奮戦記 作者:こうすけ
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第一話

改訂版です
???


「本当に御免なさい!」

 軍事オタクである以外は普通の高校生である霧風祐樹は真っ白な部屋に置かれているベッドの上で目を覚ました。

 自分の部屋で無い事を疑問に感じた祐樹がベッドから身体を起こすと、真っ白な床に一人の女性がそう言って土下座していた。

「えっと……取り敢えず、頭を上げて下さい。ここは何処ですか?俺の記憶が正しければ自分の部屋で寝ていたはずですけど……」

 真っ白な床の上で土下座している見知らぬ女性の姿に、祐樹は戸惑いながらもそう尋ねた。

「私は、女神のリューレと申します。ここは、下界と天界の挟間……私のちょっとした手違いであなたをこの世界に呼んでしまったのです……」
「ちょっとした手違い……?」
「はい……言い難いのですが、死ぬべきでは無かったあなたを殺してしまいました……」
「はいぃぃぃ!?」

 リューレから突然告げられた言葉に祐樹は驚きの声を上げた。

「本当に御免なさい!要らない書類を整理して焼却していたら、その中に偶々あなたの書類があって、一緒に燃やしてしまったんです」
「あの…因みに死因は?」
「本棚があなたの上に倒れた事による圧迫死です……」
「そ、そうですか……(碌な死に方して無いな、俺……)それで、俺はあの川を渡れば?」

 祐樹が奥の方に流れている一本の川を指差した。するとリューレは慌てて首を振り、一枚の紙を取り出した。

「いいえ!あなたは、本来ここに来る存在では無いので、天界の規定に則って別な世界に転生させることになります」
「マジですか……」
「はい。それで、今回の責任は私の責任なので、幾つかの特典を与える事になります。あなたの趣味に合わせましたが、変えて欲しければ言って下さいね。まず一つ目は、自衛隊と米軍の兵器を召喚する能力。二つ目は、その兵器を扱う人員と補給物資を召喚する能力。これの他に何かありますか?」
「それじゃあ、俺の体力を少し上げて、兵器を扱えるようにして下さい」
「分かりました。では、これからあなたを転生する世界に送ります。因みに、あなたが行かれる世界は人間族の他に獣人族など様々な種族がいる世界です。それでは、新たな世界を楽しんで下さい」

 リューレがそう言い終わると、祐樹の視界は再び暗くなっていった。


???


「うぅん?ここは……」

 祐樹は目を覚まして身体を起こすと、広い草原の真ん中にいた。立ち上がって周りを見回しても何も無かったが、少し歩けば海があるのか波の音と潮の香りがしている。

「そっか、俺、転生したんだよな……」

 下界と天界の狭間であった事を思い出し、そろそろ動きだそうとした時、自分のポケットに何かが入っている事に気が付き、何かと思って取り出すと、黒色のスマホだった。

「スマホ?何でこんな物がポケットに……?」

 自分が持っているスマホでは無かったので、そう言って入っていたスマホを不思議そうに見ていると、突然メールの着信音が鳴り響き、祐樹は直ぐにスマホを確認した。

『どうも、祐樹さん。リューレです。そろそろ、世界に付いた頃だと思ったのでメールしました。今あなたがいる所を説明しますね。今あなたがいる所は、バレンシア大陸に近い海から東に五百キロ離れている海域にある島です。あなたのいる中心の島は、四国ほどの大きさがあり、他に大小十個の島があります。現在は、結界で見えない様になっていますが、スマホにある解除ボタンで解除する事も出来ますよ。それと、海軍については、現代の艦艇だけでは無く、第二次大戦中の日本海軍の艦艇も呼び出して改造出来るようにしました。因みに、召喚した兵士は八割が女性ですけど、男の兵士と遜色ない働きをしてくれますよ。では、頑張って下さいね』

「結構大きな島を用意してくれたな……取り敢えず、一個師団を呼びだしてみるとしようか……」

 祐樹はそう呟くと、スマホのメニューから召喚の画面を選択し、召喚する数と装備を打ち込み始めた。

「(小銃は六四式小銃で良いかな…八九式だと威力に疑問があるし。後、弾の互換性を考えて凡庸機関銃はM240機関銃にしてと……)」

 入力事項を全て埋めた祐樹が召喚ボタンを押すと、目の前が光り出し、その光が収まると、目の前に迷彩服三型と防弾チョッキ三型、八八式鉄帽、六四式小銃やM240機関銃を持った兵士達が立っていた。

「マスター、第一師団、一万五千名参上しました!」

 祐樹の目の前で敬礼しそう告げたのは、顔立ちが綺麗に整い、カラスの濡れ羽のような綺麗な黒髪を腰まで伸ばしている女性だった。

「ご苦労。ところで、君は?」
「はっ、第一師団師団長兼マスター補佐の更衣刹那少将です!マスターは気軽に刹那とお呼び下さい」
「成程。なら、これから宜しく頼む。しかし…そのマスターって言うのは如何にかならないか?」
「いえ、マスターはマスターなので呼び方を変える事が出来ません」
「変えられないなら仕方が無いか……刹那、二個大隊を選んでこの島の捜索に当たらせてくれ。それと、入り江を発見したら直ぐに発見するようにと伝えておいてくれ」
「はっ、了解しました」

 祐樹の言葉を受けた刹那は素早く二個大隊を選ぶと、大隊長、中隊長、小隊長を呼び、祐樹の告げた事を伝える。

「――では、通達は以上だ。各員、装備の準備が完了し次第出発せよ」
「「「「「了解!」」」」」

 刹那の言葉を受け、装備品の点検を素早く整えた各部隊は其々の割り振られた方向へ向かって島の偵察に出発した。

「それじゃあ、海軍は偵察隊の報告待ちとして、先に空軍基地を設置するとしますか……」

 偵察隊を見送った祐樹はそう言うと再びポケットからスマホを取り出し、先程いた場所から少し移動して空軍基地を設置する場所を決めると、再びスマホを取り出して必要事項の入力を始めた。

「そうだな……滑走路を四本作って、管制塔と弾薬庫、格納庫も多数必要だよな……使用機体はF-22とF-15SEを中心とするか」

 先程と同じ様に必要な建物や装備、人数を入力し、完了ボタンを押すと目の前が光り出し、光が治まると、四つの滑走路と管制塔、多数の格納庫を備える巨大な基地が出現し、エプロンには多数の機体と人員が立っていた。

「航空隊全機、参上しました!私は、航空隊代表の宮本紅葉少将であります!」

 パイロットスーツを着て黒髪をショートカットにした女性が一歩踏み出し、そう言って祐樹に対して敬礼を行う。

「ご苦労。参上したばかりで悪いが、一部の機体を除いて全ての機体は格納庫に収納してくれ」
「了解しました。では、失礼します」

 沙樹はそう言って祐樹に対して一礼すると、整列していた隊員達の元へ戻り機体を部下と一緒に格納庫に入れる作業を開始した。それを眺めていた祐樹は陸軍の施設を設置しようと再びスマホを取り出した時、刹那の声が聞こえた。

「マスター!」

 通信機器などを置き仮設本部となっているテントの中から刹那が出て来て祐樹の方へ走ってやって来た。

「何だ、何かあったのか?」
「第二偵察隊からの連絡で、ここから5km程した所に巨大な入り江を発見したと連絡が入りました」
「本当か!?よし、直ぐに向かおう。刹那、ついて来い」
「はっ!」

 祐樹は刹那にそう告げると、機体の格納作業をしていた紅葉に頼みUH-60JAを六機出してもらい、護衛を連れて第二偵察隊から連絡のあった場所に向かった。


入江近く


「確かにでかいな……ここなら海軍基地を設置するのに十分だな。機長、あそこの開けている場所に着陸してくれ」
「了解しました」

 機長は祐樹の言葉に従い、入江近くの草原になっている場所に機体を着陸させると、待機していた第三偵察隊の兵士が機体に近づき、降りて来る祐樹達を出迎えた。

「総隊長、お待ちしておりました」

 ヘリを降りた祐樹に男性兵士がそう言って敬礼をし、祐樹も答礼する。

「君が、この隊の隊長か?」
「はっ!第三偵察隊隊長の石川智成二尉であります!」
「よくやった。他の部隊にも撤収命令を掛けたから君の部隊もヘリで拠点に戻るといい」
「はっ、有難うございます!」

 石川の偵察隊をヘリで拠点へと戻すと、祐樹はスマホを取りだし海軍の施設や艦艇の入力し、全ての入力を終え、決定ボタンを押すと入り江には大小様々な艦艇が停泊し、入江近くの陸地には乾ドック等の修理施設や海軍司令部、海上警備隊司令部が設置された。

「凄い眺めだな……歴史上の戦艦からイージス艦までの艦艇が一堂に会している」
「はい。これ程の素晴らしい眺めはありません」

 刹那も祐樹の言葉に頷き、入り江に停泊している艦艇を眺めていると、司令部から海上自衛隊の制服を着た女性が出て来た。

「失礼します!霧風祐樹総隊長でお間違いないでしょうか?」
「あぁ、そうだが君は?」
「はっ、海軍代表の加藤汐里であります!これからは総隊長の指示に従います!」
「有難う。じゃあ、これから宜しく頼む」
「はい、お任せ下さい」

 祐樹はそう言うと再びヘリに乗り込むと拠点へと戻ると未だ設置していなかった陸軍の施設や演習場、武器弾薬工廠を設置し、それが終わると次は海岸線の三十ヶ所にトーチカ等の防衛線を構築、また、拠点に兵士達の居住施設や商業施設、娯楽施設、高射砲塔などを設置し、各基地や都市を線路や高速道路で結び、一大拠点を作り上げた。


拠点 三軍統合司令部
総隊長執務室


「やっと、形になったな……」

 祐樹が各軍を召喚してから三日が経ち、統合司令部で召喚した部隊の編成や基地の細かい仕上げを漸く終えた祐樹は統合司令部の執務室で各方面から提出される書類全てに目を通し終わり、一息ついていた。

「失礼します。マスター、お茶をお持ちしました」
「あぁ、有難う。ところで、今日の分の書類はこれで全部か?」
「はい、今日はこれで終了です。お疲れ様でした」

 祐樹の問い掛けに刹那は笑顔でそう答えると、祐樹にお茶を差し出す。

「有難う、刹那。そうだ、優奈達に召集を掛けてくれ。これから我々にとって重要な案件を決めなければならない」

 祐樹の言葉の意味を察して刹那は静かに頷いた。

「集合場所は第一会議室で宜しいですか?」
「あぁ、それで良い」

 祐樹の言葉に刹那は頷くと、一礼し執務室を後にすると各軍の代表者を招集する為、通信室に向かった。


統合司令部
第一会議室


「皆、急に招集を掛けたにも関わらず集まってくれて有難う。今日、集まってもらった理由は、我々の国名を決定する為だ。我々はこれから他の国と接する機会が多くなるだろう……その為には、国として行動した方が交渉しやすいだろう」
「確かに、国とした方が相手の国にも舐められないでしょうからね」

 空軍司令官である宮本紅葉元帥がそう言うと、陸上自衛隊の制服に身を包んでいる女性がそれに続く様に口を開いた。

「陸軍も賛成です。軍隊にも名前が無いと格好がつきませんから」

 陸上自衛隊の制服に身を包んだ女性――陸軍代表の黒木優奈元帥も頷きながらそう告げた。

「海軍の意見は……?」
「海軍も異論はありません。宮本元帥の言う通り、相手の国に舐められない為に我々も国であった方が交渉もし易いでしょう」

 加藤汐里元帥の言葉に祐樹は頷いた。

「それでは、国家にする言う事に異論は無い様だな。では早速、国家の名前に何か案はあるか?」
「国名ですか……」
「難しいですね……」

 国家を作る事は決まったが、肝心の国名の案が出ず、三十分以上全員が頭を悩ませていたが、不意に紅葉が口を開いた。

「蒼龍……蒼龍国なんて如何でしょう?」
「「「蒼龍国……?」」」
「何でその国名にしたのか聞いても良いか?」

 祐樹がそう紅葉に尋ねた。

「はい。聞けば、我々のいるこの拠点は一番近い大陸から東に位置していると聞きました。なので、四神体の中で東を守護する蒼龍から取りました」
「成程……確かに良い案だな」
「えぇ、良いかもしれませんね……」
「確かに……」

 紅葉の説明に祐樹達も感心したように頷く。

「それでは、紅葉が出した蒼龍国という案で異論は無いか?」
「「「「異議なし」」」」
「宜しい。では、今日から我々は蒼龍国と呼称する。以上、解散」

 祐樹の言葉に全員が頷き、その日はこれで解散となった。後日、全員に国名が「蒼龍」と決まった事を伝え、召喚された軍も「蒼龍国軍」とされた他、祐樹直属の軍として「総帥親衛軍」が設立され、その長官でもある上級元帥には刹那が就任した。
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