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韓国には近づくべからず【西村幸祐】

WiLL 6月5日(金)13時47分配信

特に酷かったNHKの解説

 まさに歴史的な議会演説となった。日本時間四月三十日午前零時半、安倍首相が日本人として初めて米国上下両院合同会議で演説を行った。戦後七十年の節目であること。日米関係と国際社会に日本の役割と意思を表明すること。いずれの目的も十分に叶えた内容で、何よりも戦後七十年の日米和解を強く印象づけたことが最大の成果である。
 しかも予想どおり、「侵略」への「謝罪」に言及することなく、あれだけ米国議会の心を動かし、四月二十日に《安倍晋三と日本の歴史》という非常に浅薄で無礼な社説を掲げたNYタイムズまでをも沈黙せしめた。
 演説の白眉は、七十年前に二十三歳で予備役学生として硫黄島攻略戦に参戦したローレンス・スノーデン元海兵隊中将と新藤義孝議員の固い握手だった。新藤議員は言うまでもなく、硫黄島守備隊司令官、栗林忠道中将の孫である。議会傍聴席の二人を紹介して、安倍首相はこう言った。 「これを奇跡と言わずとして何と言うのでしょうか」
 しかし不思議なことに、報道で新藤議員や栗林中将、スノーデン元中将に触れたものが多くない。特にテレビは全滅ではなかったのか? 単に知らないのであるならレベルが低すぎる。
 特に酷かったのは、議会演説を生中継したNHKの解説である。解説委員はわが国の置かれた厳しい国際環境や安全保障上の説明は一切なく、国際社会の外交の流れも無視し、ひたすら自衛隊の集団的自衛権行使を批判するという、お粗末なものだった。

弱体化するアメリカを日本が励ました

 米時間四月二十九日の米議会安倍演説は、前日二十八日の日米首脳会談、二十七日のアセアン首脳会議の中国非難声明、さらに四月二十四日にジャカルタで行われた「バンドン会議六十周年記念アジア・アフリカ諸国首脳会議」の安倍演説の流れを受けたものだ。それは、アジアの平和と安定を守るために、力による現状変更を決して許さないという決意を日本が表明したということであり、米国が全面的にそれを支えるということでもある。
 昨年のオバマ来日、一昨年の安倍訪米と比べて、日米関係が決定的に転換した。それこそ、「奇跡と言わずして何という」逆転であろうか。
 米国紙は、WSジャーナルが四月三十日に「止まらない安倍の勝利。安倍の勝利は、北京の課題に苦痛を与えた。日米同盟を離反させる北京の無力さを強調した」と報じるなど、安倍首相の訪米に絶賛を送った。
 なぜなら、安倍演説はここ数年、オバマ政権で弱体化する米国を日本が励ましたことに他ならず、それはまた日米関係の新しい機軸を暗示したものになったからである。そのWSジャーナルで、いつも歴史問題に関連して日本を批判するダートマス大学の左派系のジェニファー・リンド教授が、「彼の演説は日米和解のマイルストーン(一里塚)になる」とコメントしていた。日本のメディアは何を見ていたのか?
 歴史のメルクマールを目の当たりにしながら評価できないメディアは、徒に低レベルな批判に終始する。国会議員も同様だ。米議会に阿る演説だから拍手やスタンディング・オベーションは当たり前だとか、自衛隊の活動範囲が米国に追従して拡がるとか、もっと気の利いた批判はできないのかというほど惨めなものだった。

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最終更新:6月5日(金)13時47分

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