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ドラム式洗濯乾燥機でなぜ死亡?

6月29日 17時05分

佐藤真莉子記者

東京都内の住宅で、7歳の男の子がドラム式の洗濯乾燥機の中に閉じ込められて死亡する事故が起きていたことが明らかになりました。
私たちの家庭で日常的に使っている洗濯乾燥機で何が起きたのか。男の子はなぜ亡くなったのか。社会部・警視庁クラブの佐藤真莉子記者が解説します。

失われた7歳の命

亡くなった宝井蓮音くん、7歳。

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クワガタなど昆虫が大好きな男の子でした。ことしの夏は「ホタルが見たい」と話していたといいます。
事故が起きたのは、6月8日でした。夜、眠りについたはずの蓮音くんがベッドにいないのを心配した母親は、息子の姿を探しました。蓮音くんはドラム式の洗濯乾燥機の中でぐったりとしていました。母親からの通報で救急隊員が駆けつけると、蓮音くんは心肺停止の状態で、病院に運ばれましたが、まもなく亡くなりました。
母親は「『おやすみ』と言ったのが最後の会話になってしまいました。まさかそれが最後のことばになるとは思わなかったです」と話しています。

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警視庁は、蓮音くんが誤って洗濯乾燥機の中に入ってしまい呼吸ができなくなって死亡したとみて当時の状況を調べています。

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洗濯乾燥機は、その日、家に届いたばかりでした。蓮音くんは業者が設置する様子を興味深そうに見ていたということです。母親は「まさかというのがいまだにあります。そんな危険なものというのは想像していないし、そこまで注意喚起している家庭も少ないと思います」と話していました。

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メーカーは注意を呼びかけ

ドラム式の洗濯乾燥機は、ドアが閉まると内側からは開けられない構造になっています。

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洗濯乾燥機を製造した大手電機メーカーは、安全対策として、子どもが中に入らないようドアにロック機能をつけているほか、本体や説明書には「子どもが入ると窒息するおそれがある」と表示して注意を呼びかけていました。ただ、カビを防ぐためドアを開けておく人も多いということです。

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今回の事故についてメーカーは「事案は把握しているが、警察が捜査中のため、詳細はコメントできない」としています。

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同様の事故は海外でも

同じような事故は海外でも起きていました。このうち韓国では、KBSテレビが2008年と2010年に事故が相次いだと伝えています。

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KBSテレビが伝えたところによりますと、7年前の2008年に、高陽市のアパートで8歳の男の子がドラム式の洗濯機の中に入って出られなくなり死亡したほか、全州市のアパートでも7歳の男の子がドラム式の洗濯機の中から出られなくなり死亡したということです。

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さらに5年前の2010年にも、大田市の住宅で、8歳の男の子がドラム式の洗濯機の中に閉じ込められて死亡する事故が起きたということです。
洗濯機を製造した韓国の大手電機メーカーは、内側からでもドアを開けられるよう部品を無償で取り替えたほか、ドアが完全に閉まらないようにする器具を配布するなど対策を取りました。

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「命を落とさずに済む対策を」

子どもの事故に詳しい中村雅人弁護士は、韓国や中国でも事故が多発しているとして、次のように指摘しています。
「ドラム式の洗濯乾燥機は横向きにドアが付いている構造で、子どもが入りやすいため、かくれんぼなどで遊んでいる時に入ってしまうことは当然考えられる。メーカーは、『間違った使い方をしないでください』と呼びかけるだけではなくて間違った使い方をしたときでも命を落とさずに済むような設計をしておくことが大切だ」と話しています。

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消費者担当大臣「改めて注意喚起行う」

今回の報道を受けて、山口消費者担当大臣は「子どものいる家庭では事故を防ぐためにチャイルドロックの機能を活用してほしい」と述べ、改めて注意喚起を行う考えを示しました。

「息子の死をむだにしないで」

亡くなった蓮音くんの母親は、息子の死をむだにしてほしくないと願っています。
「将来が一瞬でなくなってしまう悲しさがあるので、もうこういう事故が起こらないでほしいです。そういう思いをほかにする人がいなくなるようにという思いでいます」

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私が最初に取材に訪れたとき、蓮音くんの母親は、「まだ気持ちの整理がついていない」と、涙でことばを詰まらせていました。しかし、同じように命を落とす子どもが2度と出てはいけないという一心でお話をしてくださいました。
特に印象に残っているのは、スマートフォンに保存している蓮音くんの動画を見ているときの優しい表情です。蓮音くんへの愛情が痛いほど伝わってきました。

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7歳で断ち切られてしまった蓮音くんの命をこれからの安全対策につなげていかなければいけないと強く思いました。
宝井蓮音くんのご冥福をお祈り申し上げます。


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