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【社説】

ギリシャ危機 悲劇はだれも望まない

 財政危機のギリシャと欧州連合(EU)など債権団との支援交渉が「決裂」したことはギリシャがデフォルト(債務不履行)に陥るおそれを強めた。最後の最後まで打開交渉の努力を続けるべきだ。

 土壇場での「奇策」に驚きと落胆を禁じ得ない。ギリシャ側が債権団の要求について国民投票で賛否を問うから現行支援策を一カ月延長してくれと求めたことだ。今月三十日の支援期限を目前にした突然の要請は、あっさりと債権団側に拒否されて、交渉は暗礁に乗り上げた。

 同日には国際通貨基金(IMF)への十五億ユーロ(約二千百億円)の返済が控えており、別の支援でも得られないかぎりデフォルトの可能性大である。そこから先は財政破綻、ユーロからの離脱が現実となり、金融不安やハイパーインフレといった危機が国民生活を襲いかねない。

 直近の世論調査では、ユーロ圏残留を望む国民の方が上回っている。ユーロ圏各国も、「支援疲れ」しているドイツも含めギリシャが離脱すればユーロの信認低下や、財政状況が良くない他国への信用不安の拡大を懸念している。

 にもかかわらずチプラス首相は、瀬戸際戦術で交渉を長引かせてきた揚げ句、支援期限を越えた来月五日に国民投票を行う不可解な行動に出た。議会も認めた。

 「反緊縮」政策を訴えて一月の総選挙で当選した首相だから、債権団の求める増税や年金改革は受け入れがたいのだろう。首相は債権団の要求に反対票を投ずるよう国民に求めたが、それでは展望はなく自らの保身でしかない。支援の継続やデフォルトを回避するには、国民に条件受け入れの理解を求めるべきだったはずだ。

 もはや債権団が投票自体に反対している以上、事態の打開策にはなり得ない。「捨て身のような策」ではなく、三十日の期限まであらゆる交渉を模索すべきだ。週明けには金融機関からの一段の預金流出が予想され、預金引き出しの制限や一時的な銀行閉鎖など万全な対策が必要だ。

 ギリシャはすでに二〇一二年にデフォルトを起こし、外国銀行などの債権者に借金棒引きを求め大きな混乱を招いた。現在は債権者がEUなど公的部門に置き換わっているため、デフォルトが起きても影響は限定的との見方もある。

 しかし、ユーロの暴落や世界でより一体化が進む金融市場への打撃は予想しにくい。金融当局や中央銀行の対応が試されそうだ。

 

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