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日本の若者はなぜ立ち上がらないのか 内田樹×城繁幸×原田泰×山田昌弘

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2011/10/26 7:00
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■「日本の現状、清朝末期に似る」原田氏

香港取引所の前の広場で「反資本主義」などを訴える人々(15日)
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香港取引所の前の広場で「反資本主義」などを訴える人々(15日)

 大和総研の原田氏は「企業の採用システムが若者の行動を阻んでいる」と指摘する。

 「現在の日本社会では、勉強ができる人はもとより、営業センスがある人や外食店などで現場を引っ張っていける人など、多少なりともリーダーの素質がある人はほとんど、企業が吸い上げている。その結果、企業社会の外にいろんな意味での優秀な人材が現れにくくなっている」

 一見うまくいっているシステムが、実は社会の硬直化につながっている、と原田氏は危ぶむ。「企業社会に入った若者は、その社会の規範に染まっていく。リスクを冒すことは回避され、声をあげない若者が量産される。こうした日本の現状は、ちょうど中国の清朝末期と似ている。中国は『科挙』という官僚試験で優秀な人を選抜した。科挙はそもそも体制が正しいという前提で行われるものであって、科挙に合格した人材からは改革の声はあがらない。この構図は今の日本と全く同じ。過度の企業依存社会が、若者から改革への挑戦意欲を奪っている」

内田樹 神戸女学院大学名誉教授

内田樹 神戸女学院大学名誉教授

 一方、内田氏が注目するのは、格差に反対する論者のロジック。「強欲な老人たちが社会的資源を独占している。若者たちは能力があり、努力をしているにもかかわらず格付けが低い。これはフェアではない」という論法だ。「彼らは連帯を求めているわけではなく、社会のより適切な能力主義的再編を要求している。こうした若者たちのうちの一人がたまたま成功したとき、彼には『いまだ社会下層にとどまっている仲間』を救う義務は発生しない。彼が成功したという事実からして、社会の能力主義的格付けは部分的には正しく機能しているからだ」。

 その上で内田氏は「格差が進行している最大の理由は、社会上層にいる人間たちがその特権を自分の才能と自己努力に対する報酬であり、それゆえ誰ともわかちあうべきではないと信じ込んでいる点にある」としている。

■山田氏「女子はアジアへ、日本に残るのは草食男子」

 若者が声をあげず、問題が顕在化しにくい現在の日本に対して、将来を危惧する声が相次ぐ。

山田昌弘 中央大学教授

山田昌弘 中央大学教授

 中央大の山田氏は「最近、若い女性がアジアを目指す動きが目立ってきている」と指摘する。アジアでは年齢差別が少ない国が多いといい、「能力のある若者は活躍できる素地がある」からだ。「そうした国や地域での活躍を目指したり、能力のある男性との結婚を目指したりする女性が増えていて、このままでは日本に残るのは『草食男子』のみ、となりかねない。そして彼らは老いていく。日本から活力がどんどん奪われていく」と嘆く。

 山田氏は「若者の間では、頑張ったって報われない、どうせ出る杭(くい)は打たれる、といったあきらめムードが漂っている」と表情を曇らせる。若者の間で人気があったライブドアの堀江貴文元社長が逮捕・収監されたことも失望感を生んでいるという。「希望が持てる社会の構築が急務」と話す。

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