■内田氏「若者、『連帯の作法』失う」
一方、神戸女学院大学名誉教授で哲学者の内田樹氏(61)は日本の若者たちが格差拡大に対して声をあげないのは、「社会がこの30年間にわたって彼らに刷り込んできたイデオロギーの帰結だ」と説明する。「今の日本の若者たちが格差の拡大や弱者の切り捨てに対して、効果的な抵抗を組織できないでいるのは、彼らが『連帯の作法』というものを失ってしまったから。同じ歴史的状況を生きている、利害をともにする同胞たちとどうやって連帯すればよいのか、その方法を知らない」
「若者が教え込まれたのは『能力のあるもの、努力をしたものはそれにふさわしい報酬を受け取る権利がある』『能力のないもの、努力を怠ったものはそれにふさわしい罰を受けるべきだ』という『ニンジンとムチ』の教育戦略」。「能力主義」「成果主義」「数値主義」の結果、「弱者の連帯」という発想や、連帯する能力が損なわれたという。
■原田氏「欧米ほど失業率高くない」 城氏「標的がいない」
エコノミストで大和総研顧問の原田泰氏(61)は「欧米に比べて失業率が高くないことも、デモが起こりにくい理由」とみる。欧米では若年層の失業率は20~40%。スペインでは25歳未満の失業率が8月には46%に達した。これに対して日本では高いとはいえ10%に満たない。「年収200万円でも暮らしていける現実があり、欧米ほど失業が深刻化していない。不満が顕在化しにくい」と原田氏は言う。
原田泰 大和総研顧問
欧米に比べ低い失業率の背景として城氏は「日本語の壁」を指摘する。「欧米では低賃金の労働が外国人に次々と取って代わられているが、日本ではまだまだ、日本人の若者が雇用されるケースが多い。日本語が話せることが保護壁となって低賃金の外国人労働者の流入を阻み、若者を失業から守っている」。これが逆に「若者から危機意識を奪っている側面もある」とする。
城氏はまた、「欧米と違い、日本には明確なデモの対象がいない」ことが若者が立ち上がらない一因だという。「欧米で広がった一連のデモは『ウォール街的なもの』を敵視しているが、日本には『強欲な資本家』が見当たらない。例えば東京電力の経営陣をつかまえても、欧米のように莫大な報酬をもらっているわけではない。ただのサラリーマンにすぎない。どこに向かって拳を上げたらいいのか、実にわかりにくい構造になっている」。
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