(シーラ)ここは誰の部屋?
(ジャミーラ)アンドレース様です。
バスケス署長にここの誰かが旅券を密売してるって言うだけで済むかもしれない。
ヒャー!アァ…。
(アンドレース)まさか本気で言うつもりか?
(カンデラリア)私にも腰のくびれがあったとは。
(サグラリオ)それシーラが仕立てたの?ああ。
こんなすごい手に洗い物をさせていたなんて…。
この子は天才だよ。
力を貸してくれない人のために脱ぐと思う?
(アンドレース)僕によくしてくれるなら旅券を手に入れてもいい。
あんたに必要なのは豪華な店。
そこでご婦人たちに最高の服を売るんだよ。
(アンドレース)アァ!
(パロマレス警部)イヤッ!アンドレース・コルデーロ。
偽造した通行許可証や旅券を密売してる。
(カンデラリア)こいつはぶったまげたね。
店を出さなきゃお母さんも助けてやれない。
それでいいのかい?シーラ。
先に進むにはやるしかないの。
(ロベルト)ああこれを!約束のお金。
アァ…。
君を信じていいね。
銃を頼む。
・
(礼拝の呼びかけ)
(車の走る音)・
(礼拝の呼びかけ)
(足音)
(カンデラリア)どうだい?シーラ。
ここならあんたの工房にちょうどいいだろ?気に入った?それともまたケチをつける気かい?ねえ大家さんもすごくいい人でね月375ペセタで貸してくれるって。
ちょっと。
聞いてるの?
(シーラ・キローガ)完璧だわ。
これ以上の場所はありえない。
そう?だったらその浮かない顔は何なんだい?母さんのこと考えてたの。
きっと信じないだろうなって。
ホント夢みたいだもの。
お母さんに会いたいんだね。
ええすごく。
いつか許してもらえるといいんだけど。
許すに決まってるだろ。
それが母親ってもんさ。
でも自分で自分を許せないの。
言っとくけど過ちくらい誰だって犯してるよ。
大きなのを。
後ろを振り返っちゃ駄目。
前を見ないと。
今あんたがやるべき事は頑張ってこの商売を軌道に乗せること。
そして自慢の娘と思ってもらえるように。
そうよね。
間違いない。
この私が言うんだから。
じゃ早速言ってごらん。
何をどうすりゃいいんだい?こんな立派なとこ見た事ないから何が必要なんだか見当もつかないよ。
さあどっから始める?まずは応接間。
応接間は家の顔だと思うから。
だから…そうね。
やっぱり優雅な雰囲気にしたいわね。
センスがよくて。
へぇ〜!そう。
で何を置いたらいいんだい?数は少なくていいから上品で最高に質のいいものを。
これならちょうどよさそう。
作りもしっかりしてる。
そうだろ?どれにするんだい?この2つ。
それとこれだね。
ちょっとこれ見て。
いいのかしら?いいよいいよ。
アハハハッ!フカフカね。
ホント何とも言えないよ。
最高だわ!どう?そこ。
あっもうちょっと上。
待って。
違う。
そこ駄目。
どこが駄目なの?上等な生地だね。
最高級だ。
どうだ?アハハハッ。
それはちょっとどうかね?やめときな。
5?高すぎる。
これとこれを。
3でいいね。
アァアハハッ。
ウフフッ。
(口笛)なんて品のいい部屋だろ。
これならお客さんは女王様気分だ。
でもまだ終わったわけじゃないわ。
そう?外国のファッション雑誌をそろえましょう。
うん。
「ヴォーグ」に「ヴァニティ・フェア」「マダム・フィガロ」。
それから上等な生地も探しましょう。
そんなにたくさんは要らないから最高のものを。
何でも好きなもの買いな。
でも何でそんな言い方するの?いちいち「買いましょう」だとか「探しましょう」だとか。
私たち2人の工房だもん。
一緒にやってくれるんでしょ?まさか。
私は下宿で手いっぱい。
でも…。
でもじゃない。
私は評判よくないしここの客になる人たちとは住む世界が違うんだ。
必要なものは私が買うからあんたが稼いでもうけを分け合う。
投資ってやつだよ。
私1人じゃとても無理よ。
ジャミーラをここに住み込みで働かせるから。
シーラ。
なに?気を悪くしないでほしいんだけどこの部屋の雰囲気に合わないものが1つある。
どれ?この髪。
それにくま。
悲しい目に遭ったって人に教えてるようなもんだ。
そんな顔してるとお金が逃げるよ。
だろ?そうね。
(2人の笑い声)
(キスの音)これ。
これにして。
(ジャミーラ)でもできるかどうか…。
下宿の人たちの髪をセットしてたんでしょ?はい。
じゃあ…。
でもこれを使ったことは…。
髪が焼けるかも…。
大丈夫だから。
やって。
(足音)まだかい?シーラ。
・もう終わる。
じれったいねまったく。
どうかしら?
(ジャミーラ)とてもきれいです!ああシーラ。
気品があってホントすてき!見違えたよ。
でももうちょっと肌を見せたほうがいいね。
ん?そう思う?もちろん。
それくらいしたって品は無くならないよ。
あげる。
これは何なの?まあオシャレの仕上げってとこかね。
うわ〜!気に入った?とってもすてきだわ。
じゃあ合うかどうか履いてみて。
アッ…。
どうかね?どうしてサイズが分かったの?何でも見てるんだよ。
フフッ。
これで胸を張って新しい人生に踏み出せるだろう?履けた。
ああ。
ほら。
ちょっとその辺歩いて見せて。
今?そうだよ。
アァ…。
シーラ。
町じゅうがあんたに夢中になるよ。
(呼び鈴の音)ジャミーラ。
さあ早く開けて。
急いで。
落ち着いて。
いいわね。
とにかく落ち着かなきゃ。
アァ…。
えっと…。
(足音)
(バスケス署長)ウーン。
どうやらうまくいっているようですね。
頑張ってます。
仕事を始めてあした工房を開くんです。
(足音)何の工房ですか?仕立てです。
婦人服の。
マドリードでずっとお針子をしてたので。
そうですか。
立派な職業です。
それで誰に雇われているんですか?誰にも。
自分でやるんです。
ではあなた1人でどうやって始めたんですか?この商売を。
お金を借りました。
ほう!それは運がいい。
そんなに気前のいい人が誰なのか教えてもらえるとうれしいんですが…。
カンデラリアです。
あの女か。
なるほど。
とても興味深い。
このご時世で闇商売がそんなにもうかるとはね。
いいですか。
バスケス署長。
私は言われたとおり働こうとしてるんです。
地道な仕事です。
気晴らしでもなければ悪事を隠すためでもありません。
恥知らずな男のせいでこの1年さんざんでした。
しかも彼は私に借金まで残していった。
それを返す唯一の方法が縫い物なんです。
他には何もできないから。
借金を返すだけのお金ができて内戦が終わったら母のもとに帰ります。
もう迷惑はかけません。
だからどうかお願いです。
仕事をさせてください。
始める前に潰さないで。
そんなことをされたら私は全てを失います。
以上ですか?
(足音)いいでしょう。
仕事の邪魔はしません…当面は。
誰かが証拠でも持ってこないかぎり資金の出どころは調べません。
とはいえ今後も目を離しませんからそのつもりで。
よろしいですね?分かりました。
結構。
お互い面倒は避けられるといいんですが。
(足音)
(ため息)・
(礼拝の呼びかけ)
(礼拝の呼びかけ)ハァ…。
セニョリータ。
お茶でもおいれしましょうか?ええ。
じゃあ着替えてくる。
アァ…台所の戸は開けておいて。
呼び鈴が聞こえるように。
いつお客さんが来るか分からないから。
(ため息)
(ため息)
(呼び鈴の音)
(フェリックス)母さんはいつもそうです。
医者に行きたいと言いながら本当は散歩したいだけなんだ。
もともと丈夫なんですから。
(エンカルナ夫人)ええ。
お前は私に死んでほしいんでしょ?その日を心待ちにしてるのよ。
恐ろしい息子ね。
お願いですからもうバカな事は言わないでください。
さあ。
(呼び鈴の音)
(フェリックス)こんにちは。
壊れたんですか?ああいいえ。
大丈夫です。
残念なことに。
休みたくてもお前が休ませてくれないんだから。
はいはいそうです。
おっしゃるとおり。
フッ。
入りましょう。
ほら。
出かけてくるわ。
買い物に行くんですか?私が行ってきます。
ああそうじゃないの。
カンデラリアに会ってくる。
何かツテはないかと思って。
だって少しでも人に知ってもらわないと開店する前に工房が潰れちゃう。
(呼び鈴の音)
(呼び鈴の音)ハァ…。
落ち着いて。
とにかく落ち着いて。
さあ開けてきて。
ハァ…ハァ…。
・
(ハインツ夫人)グーテンターク。
ハァ…いた…。
・
(ハインツ夫人)キローガさんは?
(足音)グーテンターク。
ハインツと言います。
服の仕立てをお願いできる?ようこそ。
シーラ・キローガです。
はじめまして。
こちらへどうぞ。
ありがとう。
どうぞ。
(せきばらい)お茶をお願い。
今日お願いしたいのはまずジャケットスーツ2着。
それからもう2着イブニングドレスも。
分かりました。
もしこの中にイメージどおりのデザインがあれば…。
まあ。
ファッション雑誌がこんなに!「ヴァニティ・フェア」「バザール」。
しばらくお目にかかってなかったわ。
まさかここで見られるなんて。
へぇ〜!ウン。
これがいいわ。
ああ!ニナ・リッチですね。
ウン。
ああそれからもうひとつ。
え〜と…テニスウエアも。
ええ。
それも注文に追加してくださる?もちろんです。
じゃお願いね。
ありがとう。
お気をつけて。
初めてのお客様よ。
4着注文を受けた。
いいえ5着よ。
テニスウエアも頼まれたから。
それはどうやって作るんですか?さあ…。
カンデラリアさんがテトゥアンのファッション雑誌はこれで全部だと。
他にないの?見せて。
どうして婦人用のテニスウエアはどこにもないの?あああった!何ですか?これもう何年も前の雑誌よ。
お客様には見せられない。
誰かに描き写してもらわなきゃ。
絵は描ける?いいえ。
まさか…。
(アンセルモのせきこみ)あらアンセルモさん。
(アンセルモ)これはこれは。
ここを出ていってからうまくいってるようだね。
ウフッ。
カンデラリアはどこです?さあね。
トカゲの尻尾みたいにじっとしている事のない人だから。
(せきこみ)何かあったのかね?絵はお上手じゃないですか?私?円さえうまく描けないフフッ。
実は絵の得意な人にデザインを描いてほしいんです。
ベルトゥーチの学校へ行くといい。
本当?ベルトゥーチさんなら描けるかしら?アハハハハッ。
何を言ってるんだい。
ベルトゥーチはモロッコの偉大な画家だ。
アァ…。
そう。
この保護領の切手や観光ポスターはほとんど彼の絵を印刷したものなんだ。
(せきこみ)水を飲みますか?ありがとう。
大丈夫。
ホント?ああ。
その学校の生徒に手を貸してもらうといいよ。
どこにあるんですか?あの…。
あれ?驚いた。
お隣の美人さんだ。
モデルをしに?アイデアを得るためかな?もしモデルをするのならもう少し薄着のほうが…。
この優雅な装いを取り去るのは非常に残念ですけどね。
下品だし。
はい?失礼。
また暴走してしまった。
何だか少しお困りのようですけどどうかしました?あの…誰かに絵を描いてほしいんです。
どんな絵ですか?ご存じのとおり私は仕立屋です。
うん。
何年か前の写真があるんですがそこに写ってる服のデザイン画が欲しいんです。
写真は今お持ちですか?うん。
見せてもらえます?力になれるかも。
アァ…ええ。
フッ。
ウーン!これです。
スキャパレリ。
シュールレアリストの女神だ。
いいですね。
シュールレアリスムはお好きですか?描けそうな人をご存じ?フーッ。
ハァ…。
僕でよければ。
(車の走る音)
(パロマレス警部)ハァ…。
(ノック)おはようございます。
ウン。
ハァ…。
今にタバコで死ぬぞ!階段4段で息切れじゃないか。
階段なんかどうだっていいです。
タレコミがありましてね。
押収してきました。
これは?ある金貸しの所で見つけました。
逃げ足の速いやつで取り逃がしましたがこう叫んでやりましたよ。
「次は逃がさん。
顔を忘れんぞ」って。
いいものでしょう?思わずくすねそうになったけど根が正直ですからね。
ハァ…。
宝石のことは分かりませんがかなり値の張るもののはずです。
署長。
どうしたんです?これの持ち主が見つかったようだ。
(呼び鈴の音)
(扉を開ける音)こんばんはお隣さん。
お休み中でした?いえ大丈夫。
起きてました。
お持ちしましたよ。
ああどうぞお入りください。
どうも。
(扉を閉める音)
(フェリックス)大丈夫そうですか?ええすばらしいです。
いくらお支払いすれば…。
フッ。
お気持ちだけで十分。
歓迎のしるしですから。
母がご近所さんには礼儀正しくするようにって。
あなたのことは特に好きでもないようだけど…確かこう言ってた。
腹が据わりすぎてて…ああ!ちょっと軽薄だって。
・
(エンカルナ夫人)フェリックス!参ったな。
目を覚ました。
魔女が。
ウフッ…。
じゃ牢獄へ戻るか。
おやすみお隣さん。
おやすみなさい。
ヴンダシェーン!いかがです?ウン…とても気に入ったわ。
ウン。
最新の流行でしょ?ええもちろんです。
ウフッ。
私の友達みんなにあなたのことを薦めるわ。
ありがとうございます。
ビッテシェーン!アァ…こちらこそ「ビッテシェーン」です。
(呼び鈴の音)ジャミーラ開けて。
またお客さん。
フーッ。
(ロザリンダ・フォックス)シーラ・キローガさん?はいそうです。
友人のハインツ夫人にここの事を伺って。
そうですか。
ロザリンダ・フォックスです。
突然お邪魔してごめんなさい。
いえとんでもない。
よくいらっしゃいました。
こちらこそお会いできてうれしいわ。
実は急いで服をあつらえなければいけなくて。
だから私たちは何て言うの?アァ…縁があったっていう事ね。
フフフフッ。
ああなんてすてきなの。
とてもきれい!すばらしいわ!気に入りました?ええもうとっても。
あなたってアーティストね。
まるでスペインのココ・シャネル。
まあそんな…。
ありがとうございます。
お茶でもいかかですか?ありがとう。
ハーブティーがお気に入りなんだけど今日は懐かしいダージリンを頂こうかしら。
イギリスの方ですか?そうだけど人生の大半はインドで暮らしてきた。
帰りたいですか?とっても。
ウン。
おかしなものよね。
離れて初めてその土地のよさに気付くんだから。
フフッ。
あちこちに住まわれたんですね。
そうね。
どこに住んだかしら?イギリスで生まれてすぐにインドに連れていかれたの。
10歳のとき教育を受けるためにイギリスに帰されてそのあとまたインドへ戻ってアァ…数年前にはしばらくスイスに住んでた。
でそのあとポルトガル。
ホント。
随分いろんな所で暮らしたわ。
お若いうちから羨ましいです。
さあ…それはどうかしら?私はインドに残りたかったのに思いがけないことがいろいろとあってしかたなくインドを離れたから。
ウン。
どんなに強く望んでいても運命に逆らえないこともある。
それが人生。
うん。
終わりました。
ウン。
どうぞ服を。
ああそうだ。
水着をどこで買えるかご存じ?奥様の?ウフッ。
いいえ違うの。
そうじゃなくて息子のよ。
ああ。
ジョニーっていうの。
5歳で。
私はテトゥアンに来てまだ日が浅いのでお役に立てずすみません。
・いいの。
・きっとどこかで見つかるわ。
セニョリータ。
なに?誕生日おめでとうございます。
アァ…ジャミーラったら。
(サグラリオ)来たわよ。
(エルミニア)ああ来た来た来た。
あっシーラ!ハハハッ。
(歓声)
(カンデラリア)よく来たね。
ワインを持ってきてくれたのかい。
おめでとう!シーラ。
(キスの音)ほらさあさああっちへ行こう。
元気ないね。
アァ…お母さんのこと?ならさみしがってるだろうけどあんたが戦争から遠くにいる事が慰めになってる。
そうかもしれない。
そうさ。
ほらワインをついで。
景気づけにみんなで1杯やろう。
はいどうぞ。
(ベニータ)お祭り気分じゃないの?あんまり。
シーラ!あなたが仕立ててくれた服よ。
ああとってもきれい。
ねえねえこれ見た?スパニッシュオムレツもあるのよ。
作ったの?まさかとんでもない!カンデラリアよ。
誕生日おめでとう。
どうもありがとう。
私たちと祝うんじゃ何だか気の毒だ。
どうしてですか?皆さんは家族同然です。
ありがとう。
(エルミニア)フアニートは1滴も駄目。
すぐ酔いが回るでしょ?酔っ払うとバカなことばっかり言うんだから。
今日くらい飲ませてよ。
黙りなさいもう。
ちょっとそんなうるさいこと言わずに飲ませてやればいいだろう。
まったく。
いい?フアニート。
じゃ今から乾杯するよ。
あんたを産んだお母さんに。
(セールスマン)いいぞ。
シーラを産んだお母さんにも。
みんなを産んだお母さんにも。
じゃあ産んでくれたお母さんに乾杯!
(一同)乾杯!
(セールスマン)そしてカンデラリアに乾杯!
(一同)乾杯!グラスがない。
ラッパ飲みだよ。
分かった。
シーラこれおいしいね。
(エルミニア)それじゃみんなごちそうを食べましょ。
ああみんな早く食べた食べた。
オムレツがまた最高なんだからね。
アハハハハッ。
ちょっと困ったことが…。
なに?ハインツ夫人が服を気に入って友達みんなに薦めてくれて…。
そりゃよかったじゃないか。
ドイツマルクで請求書を頼まれるの。
でどうしていいか…。
ハーン…。
やり方を知ってる?私?とんでもない。
さっぱり。
アーッ。
(雷鳴)
(ため息)
(呼び鈴の音)
(雷鳴)
(扉を開ける音)避難させてくれ。
雷が落ちるんだ。
かくまったら力を貸してくれる?もちろん。
1マルクがいくらか分かる?ハァ…僕のことバカにしてる?だけど計算を始める前にウイスキーをごちそうしてくれ。
ウイスキー?うちにはない。
ないの?うん。
残念。
じゃ僕の飲む。
(2人の笑い声)悲しい話だろ?父さんを亡くして母さんの面倒を見ることになったんだ。
母さんは怒りっぽくて陰気だしすごくいい人だけど。
僕は美術史の勉強をするのが夢だった。
タンジールか…マドリードへ行ってね。
ああ…。
昼間は模範的な息子夜はさまよう避難民なんて生活は大変だよ。
ウフフッ。
母さんがアニス酒を飲むのがせめてもの救い。
実はね…ここだけの話アニス酒に毒を入れてるんだ。
少しずつ。
でも駄目。
母さんはケロッとしてる。
フロイトが僕を精神分析したら喜ぶね。
誰?フロイト。
ほらあの…精神医学者だよ。
フロイトを知らないんだ。
シュールレアリストも。
ねえシーラ。
君はセンス抜群。
天使のような服も作れる。
しかし残念ながら一般教養がちょっとばかり足りない。
うん。
ちょっとどころじゃない。
だったら僕が君に授業をしてあげるよ。
君は僕にウイスキーをおごって。
そしたら必ず博学にするから。
アッ…「博学」って何?ウーン…勉強することが山積みだ。
まあ楽しもう。
我が針仕事の女王様。
一般教養のクラスへようこそ。
モロッコのことは知ってる?アフリカにある。
じゃあスペイン人が何でいるの?ではさあどうぞ。
始まりは1906年アルヘシラス会議が開かれスペインはフランスと合意。
でも結局手にしたのはモロッコのいちばん悪い場所アフリカのあばら肉だ。
アッハハッ。
スペインは帝国復活のためモロッコの一部を保護領とした。
キューバとフィリピンを失ってからとんでもなく貧しくなったからね。
ウッフッ。
スペインはモロッコの設備や医療を進歩させモロッコは大量の兵士を提供した。
分かった?はい。
すばらしい。
お嬢さん。
ウフッ。
まずは玄関にしゃれた字で堂々と看板を掲げることだ。
「偉大なデザイナーシーラ」ってね。
ああシーラはすごくすてきな名前だけど最後に「H」を付けるともっとすてきになる。
「シーラー」。
「シーラー」?
(男)あっ大丈夫ですか?とにかくゆっくり休んで下さい。
いいですね。
ここに来るまで本当に大変だったでしょうから。
今日からはここが家ですよ。
部屋は3階です。
でも上りやすい階段ですから。
ここなら不自由はしません。
2人の顔を見たらアマリアもさぞ喜びますよ。
あの人たちは?・
(アマリア)お母さん!お母さん!
(うれし泣き)
(フェリックス)アマリアさんのお母さんとめいごさんだ。
ついにマドリードから呼び寄せたみたいだね。
マドリードから?そんなことができるの?どんな時も必ず方法はあるらしい。
(キスの音)元気だった?ハハハッ。
ああエスペランサ大きくなって。
ハハハッ。
おなかすいてる?何か食べたい?何でもあるわよ。
行きましょう。
(バスケス)パロマレス。
あっ!署長。
金貸しのヌニェスです。
言ったとおり捕まえましたよ。
一度は取り逃がしても2度目はない。
顔は絶対忘れませんから。
(バスケス)単刀直入に言う。
先日押収した宝石は盗難品だと判明した。
(ヌニェス)そんな…。
誓って言います。
署長さん。
そんなはずありません。
どれも出どころはきちんと分かってます。
なのに大慌てで逃げ出したのか?それは警察だってちゃんと言わないから。
だからてっきり…。
うちは違法なことはしてません。
(パロマレス)おい待て待て。
客は立派な人ばかりです。
そりゃ一時的に経済的問題は抱えてる。
でも名高い金持ちだ。
それこそあのブレスレットはある侯爵夫人が置いていった。
ヘッ。
そりゃどこの侯爵のご夫人だ?いけしゃあしゃあとウソつきやがって。
こいつ!ヌニェス。
ヌニェス!答えろ。
どこでこれを盗んだ?盗んでなんかいません。
買ったんです。
本当に。
ルネータ地区で。
確か…2週間ぐらい前に。
誰から買った?しばらく留置場に入れば口も軽くなるかな。
試してみるか。
パロマレス。
さあ来い。
立て!分かった。
分かったよ。
分かったよ…フーン。
浅黒くて背の高い色男だ。
身なりもいいしとても泥棒には見えなかった。
フン。
(バスケス)こいつか?ええ。
合格?
(フェリックス)余裕だ。
まあ…ノーベル賞はまだだけど覚えがいいし頭の回転も速い。
じゃあ次は何?音楽?数学?次の科目は君。
ウフッ。
私?ウフフッ。
まあ聞いて。
今のところ外国人の客にとって君は一流の仕立屋だ。
しかしスペイン人が来て君のことを少しでも探れば君はトランプの塔みたいに崩れてしまう。
マドリードでは誰が客だった?ん?ウッ…。
そうね。
高級住宅街に住むご夫人たち。
でも私だけのお客さんは1人も。
駄目。
それじゃ駄目だ。
いいか。
君はプーガ侯爵夫人がポロ・クラブのパーティーで輝くためのすばらしいドレスやエンシナール伯爵の長女が社交界デビューの時に着るドレスを作ったんだ。
私が?もちろん。
忘れた?コツはね平然と名前を言うこと。
次の質問。
誰かに過去のことを聞かれたらどうする?多分黙って話題を変える。
最悪。
それじゃ感じ悪いし何か訳ありかと思われる。
じゃ何て言うの?ねえ。
働いてた工房は閉鎖よ。
閉鎖か。
そうよ。
婚約者を振ってタンジールに行ったのに恥知らずの男に身ぐるみはがされて捨てられたって?フッ。
フー。
シーラ。
事実は言わなくていい。
じゃどうすればいいの?まあそういう時はアレクサンドル・デュマだ。
それ誰?フランスの作家。
それじゃあ君の波乱の人生をロマンチックに創作しよう。
そうだ。
こういうのはどうかな?君は破産した大金持ちの娘でね。
今旅行中の貴族と婚約してる。
何だっけ?あのろくでなし。
ラミーロか。
それであいつはどこへ逃げたの?アルゼンチン。
アルゼンチン。
完璧だ。
そんなにウソついたら見抜かれる。
(ため息)シーラ。
ウソは大きいほど疑われない。
誰も気付かないよ。
ホント?ああ。
それで工房を開こうと。
気まぐれのようなものです。
まあ気晴らしというか…。
婚約者がアルゼンチンにいるので。
そりゃそうよ。
よく分かる。
もう20世紀だもの。
女だって家に閉じこもってばかりの人生はごめんだわ。
フフン。
そのラミーロって…ハンサム?ええとっても。
(ジャミーラ)セニョリータすみません。
どうかしたの?カンデラリアさんからの伝言です。
来てほしいそうです下宿に。
ウン。
大急ぎで。
(バスケス)ちょうど会いに行こうと。
すみませんが急用でまたにしてもらえませんか?駄目です。
でも行かなきゃいけないんです。
これに見覚えはありますか?はい。
父がくれた宝石の1つです。
どこでこれを?金貸しから押収した。
「金貸し」ですって?ラミーロが持っていったんじゃ…。
アルゼンチンに。
そう言いましたよね。
あなたは恋人にお金も宝石も全て盗まれたんですね。
はい。
お金があるなら切符を買うのに宝石を売る必要はない。
何が言いたいんです?どこかへ逃げるなら当然宝石も一緒に持っていくはずだ。
宝石があるなら恐らく彼は…。
ハァ…。
ラミーロが船に乗らなかったっていうんですか?アァ…まだ確定はできません。
だが可能性は大いにある。
まさかそんな…。
ハァ…ハッハァ…。
そんなはずない。
(泣き声)そんなはず…。
落ち着いてください。
まだ決まったわけじゃありません。
(泣き声)もしここを出るつもりがないならどうして切符なんか…。
我々の目をくらますためか何か問題が起きたかそれは分からない。
道ですれ違ってたかも。
ルネータ地区や町のどこかで。
安心して下さい。
テトゥアンにいるならすぐに見つけ出しますよ。
約束します。
(ため息)ああシーラ。
なんてことだろうね。
アァ…。
(泣き声)アンセルモさんが急に亡くなるなんて。
ひどいせきをしてたから「気をつけな」って言ってたのに。
亡くなったの?ああ。
知らなかった?じゃなんでそんな顔してるんだい?
(サグラリオ)天にましますわれらが父よ。
願わくはみ名が尊まれみ国の来たらんことを。
みむねの地に行われんことを。
(エルミニア)われらの日用の糧をこんにちわれらに与えたまえ。
われらの罪をゆるしたまえ。
ああご覧のとおりだよ。
彼も戦場に散ったようなもんだ。
(サグラリオ)主はあなたとともにあられます。
あなたは全ての女のうちで祝福されその胎内のみ子…。
どうしちまったんだろう?罪深い私たちのために…。
(カンデラリア)つまらない男の事なんかとっとと忘れな。
テトゥアンにいようが中国にいようがもう何の関わりもないんだから。
そのとおり。
いつまでも引きずってバカみたい。
例のこと何か分かった?どうやらあんたのお隣さんの言うとおりみたいだよ。
誰かが共和国地域から連れ出してタンジール行きの船に乗せたんだ。
どうやって?聞かないでおくれ。
私にもさっぱり分からないから。
分かるのは共和国地域からレバンテの港まで連れてくって事だけ。
方法は分からないけど。
母さんを呼び寄せるにはそれしかない。
テトゥアンのあちこちで聞く名前がある。
人の不幸を食い物にする良心のかけらもないやつさ。
「パトリシオ・ルビオ」。
そいつがこの商売を仕切ってる。
どこへ行けば会えるの?たやすいことじゃないよ。
どのツテを頼るか見極めないと。
それは得意でしょう?シーラ言っとくけど生地や食べ物を闇で買うのとは訳が違うんだからね。
やつは金の亡者だ。
住む世界もまるで違う。
私に近づけるはずないだろう。
でも何か手はある。
少なくとも名前は分かったわ。
ああ!そうだった。
工房の売り上げの取り分言われたとおりイギリスポンドで。
ありがとうシーラ。
誰がペセタなんかためておくもんか。
もし反乱軍が内戦に勝利したらペセタでお尻拭かなきゃならないよ。
じゃあ行こう。
かわいそうなアンセルモさんが天国で安らかに眠れるようにみんなで祈るよ。
さあ。
(ミシンの音)・
(フェリックス)もうこれ以上お酒はないの?
(ミシンの音)この1杯で終わりなんだけど。
(ミシンの音)目が赤いよ。
泣いてた?ごまかさないで。
(ため息)恋人のこと話したでしょ?うん。
あの恥知らずがまだここにいるかもしれないの。
ウーン。
なるほど。
それで泣きじゃくってたんだ。
ん?会いたくないから。
フーン。
それじゃもし彼に会ったらそのとき君は泣き疲れたかわいそうな女の子でいたい?それともきぜんとした強い女性でいたい?会えるわけない。
考えただけで怖いのに。
街ですれ違う男の人がみんな彼に見えるのよ。
僕は彼に…現れてほしいね!バカ言わないで!聞いて。
お嬢さん。
悪魔に勝つただ一つの方法は悪魔と向き合うことだ。
もう一度彼と向き合わなければこれからずっと悪夢を見ることになる。
いい?ねぇ?うん。
うん!
(バスケス署長)ラミーロ・アリーバスのことです。
逮捕しました。
タンジールで。
傷は完全に治すことです。
多少痛くても。
パトリシオ・ルビオの情報をつかんだ。
お母さんを助けられる男。
私どうしてもお願いしたいことが…。
どんなことでも言ってちょうだい。
彼はマドリードからこっちへ人を連れてくる闇商売をしているそうです。
友達のためなの。
何をすればいいのかそれを知りたいだけ。
(パトリシオ・ルビオ)まず手始めに決して安くはないとお伝え下さい。
母はただ一人の家族でマドリードにいます。
呼び寄せるのにお金が要るんです。
(支配人)残念ですが認めるわけにはいきません。
お母様のことは何も約束できないけど力になってくれそうな人を知ってる。
誰です?
(レオ・マルティン)イギリスの新聞記者です。
2015/06/28(日) 23:00〜23:50
NHK総合1・神戸
情熱のシーラ(4)「つきまとう影」[二][字][デ]
お針子から名スパイへ!時代に翻弄されながらもたくましく生きた女性を描く魅惑のスペインミステリー。婦人服の工房を開いたシーラに、捨てられた恋人の影がまとわりつく。
詳細情報
番組内容
シーラは立派な部屋を借り、念願の婦人服の工房を開くことに。バスケス署長は、開店資金をシーラたちがどうやって準備したのか不審に思う。外国の裕福な婦人たちを顧客にするため、カンデラリアの助言に従い、おしゃれに変身するシーラ。いよいよ工房がオープンするが、なかなか客がこない。初めての客としてやってきたドイツ人の女性の注文に悩んだシーラは、下宿の向いの部屋に住むフェリックスに助けを仰ぐ。
出演者
【出演】アドリアーナ・ウガルテ…渋谷はるか,フランセスク・ガリード…大塚芳忠,ハンナ・ニュー…小島幸子,マリ・カルメン・サンチェス…片岡富枝,ダビド・V・ムーロ…石住昭彦ほか
原作・脚本
【原作】マリーア・ドゥエニャス,【脚本】スサーナ・ロペス,カルロス・モンテーロ
監督・演出
【演出】イニャキ・メルセーロ
制作
〜スペイン A BOOMERANG TV PRODUCTION FOR ATRESMEDIA制作〜
ジャンル :
ドラマ – 海外ドラマ
趣味/教育 – 会話・語学
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
スペイン語
サンプリングレート : 48kHz
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