(医療機器の音)
(ナレーション)
生後10か月の女の子はまだ病室の外を見たことがありません
生まれて間もなく重い心臓病と診断され命の危険と隣り合わせの日々を送ってきました
(奈央さん)なんか小さい体なのに毎日…毎日じゃないんですけどいつも採血したり検査したりでもうかわいそうやなとは思うんですけど…。
この春から小学校に通うはずだった6歳の女の子は機械の助けを借りながらなんとか心臓を動かしています
助かるには心臓移植しかないと告げられました
最初は信じたくなかったというかなんとか最後まで…奇跡的に自力で回復してほしいなっていうのは思ってましたけどねやっぱりあるところからもうそれを望んでも無理なんだろうなって思った瞬間はあったんで。
あっ。
あっ。
(淳さん)涼介。
奈緒のとこ行ってやれよ。
家族も離れ離れの生活が続いています
ある日突然わが子に心臓移植が必要だと告げられたら…
厳しい現実に直面する子どもたちと家族の日々です
・はいチーズ。
吉岡奈緒ちゃんは2008年9月に静岡県富士市で生まれました
待望の女の子でした
2つ上の兄涼介くん
どこへ出かけるにも家族一緒でした
(陽子さん)・ハッピーバースデーディア奈緒
(奈緒ちゃん)・おお〜
(陽子さん)・ハッピーバースデートゥーユー
(陽子さん)おめでとうって言って。
(奈緒ちゃん)おめでとう〜。
(淳さん)おめでとう。
(陽子さん)3歳おめでとう〜。
(奈緒ちゃん)3歳おめでとう〜。
(陽子さん)じゃあ奈緒ふぅ〜って吹くんだよ。
消すんだよ。
(淳さん)おお〜すごい。
(陽子さん)いっぺんに消えた。
取り立てて大きな病気にもならず奈緒ちゃんはすくすくと育ちました
(奈緒ちゃん)頑張るよ〜!!
そんな幸せな日々が一変したのは去年6月のことです
初めは風邪に似た症状でした
ところが診察した病院は直ちに奈緒ちゃんを大きな病院へと救急搬送したのです
職場から病院に駆けつけた父親の淳さんは救急車から集中治療室へと運ばれるエレベーターまで奈緒ちゃんに付き添いました
奈緒ちゃんは会話もできない状態でした
(淳さん)奈緒が集中治療室の方に入って振り向いてねず〜っと僕の顔を見てたっていうのがその時…もう頭ん中に焼き付いてるんですよね。
うん。
劇症型心筋炎というのが診断結果でした
ウイルス感染などが原因で心臓の筋肉に炎症が起こり急激に心臓の働きが悪くなる病気です
病院に着いた時すでに奈緒ちゃんは危険な状態でした
これはやっぱり心臓の方が非常に急激にダメージを受けかけていると。
治療をしてるにもかかわらず奈緒ちゃん自身の状態がですねほんとにもう分単位で悪くなっていく。
そういった状態でしたのでこちらに
すぐに緊急手術が行われ心臓の働きを助ける補助人工心臓が取り付けられました
しかしその後も心臓の機能は回復せず両親は主治医から助かる唯一の方法を告げられました
心臓移植です
で入院してからひと月かそのぐらいからもう心臓移植っていう話は出てたのかなぁ。
できれば移植はしたくなかったんですけどもう奈緒が助かるには現実的にそれしかないんならそれに進むしかないかなっていう感じでした。
ちょっと最初はやっぱり受け入れ難いものがありました。
国内で厳しいっていうのは世間一般の報道で聞いてましたんでちょっとやっぱり最初はショックでした。
はい。
臓器移植法が成立し日本で心臓移植が再開されたのは1999年
しかし当初は提供者本人の意思確認ができないなどの理由で15歳未満の脳死での臓器提供は認められず小さい子どもの患者への心臓移植は事実上不可能でした
心臓移植の場合移植する心臓の大きさが問題となります
心臓の大きさは体重と密接な関係があり心臓を提供するドナーの体重は移植を受ける患者の体重のおおむね3倍まででなくてはなりません
体重の軽い小さな子どもの場合大人ではなく子どもからの提供が前提となるのです
こうしたことから5年前の法改正で15歳未満つまり子どもからの脳死での臓器提供が認められましたがこれまでに提供に至ったケースは僅か7例にとどまっています
それに対して心臓移植を待っている子どもは現在22人もいます
心臓移植が必要だと告げられた奈緒ちゃんですが国内で待ち続ける余裕は両親にはありませんでした
(淳さん)日本であの〜移植するっていうのは待機時間が…待機の期間が2年3年っていうのはもう伺っていましたからもうそっちの選択っていうよりは海外のそっちの方にすぐ…海外での移植をっていうことで。
うん。
そこは決断っていうかまあ自然にですよね海外での心臓移植をっていうことをもうお願いしました。
アメリカに渡って心臓移植を受けることを決断したのです
臓器の提供がごく一般的なアメリカでは心臓移植を受けられる可能性が大きく広がりますが問題はコストです
(淳さん)娘の命を救うためには海外での心臓移植しか方法がありません。
どうか娘に心臓移植をさしてあげてください。
よろしくお願いします。
(一同)お願いします。
アメリカでの心臓移植では保険は当然利きません
アメリカの病院から示された費用はおよそ1億8000万円
更に補助人工心臓をつけている奈緒ちゃんの場合ジェット機をチャーターしなくてはならないので5000万円の費用がかかります
そのほかさまざまなコストを加えると総額2億7000万円もの巨額の費用が必要になるのです
お願いします!
父親の淳さんの友人や地元の人たちが立ち上がり募金活動を手伝ってくれるようになりました
涼介くんの同級生も街頭に立ってくれます
募金お願いしま〜す!
今年3月奈緒ちゃんは静岡の病院から東大病院へと移りました
補助人工心臓を取り替えるためです
奈緒ちゃんが静岡の病院でつけていた補助人工心臓は大人用で子どもが使うと血の塊ができやすくそれが原因で奈緒ちゃんも去年脳梗塞を起こしました
そこで子ども用の補助人工心臓を治験で使っている東大病院に移ったのです
静岡の家からは遠く家族も離れ離れになりますがこれも奈緒ちゃんのためです
(陽子さん)奈緒こう…採血されてる時見てない?手。
(陽子さん)もちろんね!
(スタッフ)すごい。
(陽子さん)平気で見てるもんね。
(陽子さん)にっこり。
びっくりしてたもんね先生がね。
(奈緒ちゃん)うん。
(陽子さん)奈緒さんこの話覚えてますか?
(奈緒ちゃん)どの話?
(陽子さん)「ひとのからだひとのからだなかにはいくつかのないぞうがはいっていますしっていましたか?」。
移植について病院のスタッフが子ども向けに作ってくれた読み物を母陽子さんは繰り返し奈緒ちゃんと一緒に読んでいます
(陽子さん)それは知ってたもんね。
「なおちゃんはすこしまえにしんぞうがびょうきになってしまいましたしんぞうがげんきにはたらいてくれないとほかのないぞうがこまりますですからしんぞうのかわりにはたらいてくれるきかいをつかうことにしました」。
あれ?戻っちゃった?ははっ。
うん。
(陽子さん)うん。
「しんぞう」。
(陽子さん)うん。
これも「しんぞう」だったね。
同じだったね。
こっちも「しんぞう」。
(陽子さん)そうだね。
「しんぞう」何回も出てくるね。
また「しんぞう」だね。
「いしょくせかいじゅうにしんぞうがびょうきになっているひとがいますしばらくまっていてもなおらないひとはあたらしいしんぞうをもらいますしんぞうをくれるひとはざんねんながらなくなってしまったひとですこまってるあなたのためにすこしでもやくにたてたらとしんぞうをくれるのですげんきなしんぞうをもらうしゅじゅつのことをいしょくといいます」。
ねっ!「ほかのひとからいただいた」って。
なんでハートなってる?
(陽子さん)あっハートって絵で描くと心臓のことを表したりする時にねハートを描いたりするんだ。
心臓のことを表してるんだよねこれね。
ハートって心臓のことでもあるんだ奈緒。
うん。
だからハート持ってる。
ねっ。
う〜ん…あの〜よく分からないなりに自分が大変な病気っていうことはおそらくねここにこう何かが入ってるってことである程度感じてはいると思うんでストレスはすごい抱えているだろうなっていうふうに見てますね。
結構やっぱり怒るともうすごい勢いで泣いてうわ〜ってなっちゃうんで。
もうやっぱりそれは入院生活が長いせいでそうなっちゃってんのかなっていうふうに思いますね。
はい。
陽子さんは東大病院へ移った今年3月からずっと病院の敷地内にある患者家族のための施設に滞在しています
静岡の自宅へは一度も帰っていません
家族別々の生活も随分長くなりました
(涼介くん)・
(淳さん)はあ!?・
(淳さん)うそ!?・
(涼介くん)もういいや今日は!・
(涼介くん)今日はいい。
いや〜。
(スタッフ)どうされたんですか?お風呂沸かしたつもりが沸いてなかった。
ははっ。
静岡では父と息子二人の生活です
活発な涼介くんですが母親が恋しくて時々こっそり泣いているそうです
淳さんはなかなか家事に慣れません
ご飯はあとから入れなきゃいけなかったんだね。
先に入れちゃったよ。
ははっ。
(スタッフ)はははっ。
(スタッフ)どう?味は。
はははっ。
1年前まではにぎやかだった食卓
母と妹の椅子は空いたままです
(淳さん)本当にあの…家族がもうバラバラになっちゃうって感じ…二重生活を強いられた状態です。
特に涼介は母親と離れ離れになってしまってうん…まあまだ8歳で母親のね愛情もたくさんこう受けなきゃいけない年頃なのにうん…それはほんとにそれができないってことは…さしてあげられないってことはほんとに涼介に申し訳ないですよね。
(淳さん)それ食べて。
大阪にもわが子の心臓移植をアメリカで受けさせたいと希望する家族がいます
(スタッフ)失礼します。
(奈央さん)こんにちは。
どないしたん?
(夏奈ちゃん)ああ〜ああ〜。
まだ1歳にもならない大林夏奈ちゃんです
母親のふるさとで生まれた夏奈ちゃんは生後2か月だった去年9月両親と一緒に自宅に帰る途中車の中で様子がおかしくなりました
ミルクを飲まずおう吐を繰り返す夏奈ちゃんは病院から病院へと救急搬送され拡張型心筋症という重い心臓病と診断されました
どう?病院で話を聞いた時っていうのはまあなんですかね…ほとんど覚えてないというか頭に入ってこなかったというか何を言ってるのかよく分からなかったので病名とか言われたことを改めて調べてみるとまあはっきり言うとほぼ悪い情報しかなかなか出てきませんでしたのでその時に初めて事の大きさってのが分かったのかなっていうような感じですね。
(スタッフ)その時の奥さんの様子っていうのはどのようなご様子だったんですか?いやもう二人で泣いてましたね。
拡張型心筋症は心臓の筋肉が薄く伸びて働かなくなる難病です
容体は少しずつ悪くなり今年1月心臓の働きを助けるため子ども用の補助人工心臓をつけました
あとは心臓移植を受けるしかないと告げられました
補助人工心臓をつけてから夏奈ちゃんの容体は安定しています
しかしだからといってずっと補助人工心臓に頼るわけにはいきません
(平医師)
(平医師)直接皮膚から出てます。
子ども用の補助人工心臓であっても脳梗塞を起こすリスクがあるほか感染症の危険もあります
補助人工心臓はあくまで一時的な助けにすぎないのです
海外ではもう日本と違って移植待機期間…特にアメリカでは数か月…2〜3か月といわれてますのでそこまで安全にもてばいいということを前提に作られている機械ですので基本的にはあんまり長期間っていうのは想定されてないというふうに思ってます。
出産発病入院そして補助人工心臓と目まぐるしく変わる状況に両親はついていくのがやっとでした
(奈央さん)すごいきつい色してるんでみんなびっくりされるんですけど。
(奈央さん)いちばんはやっぱり自分の心臓でなんとかやっていけるんだったらっていうのがいちばんだったんですけどそれだったらこう…。
道徳的にいろいろ問題があるっていうふうに言われてるんですけど…。
それでも生まれてきた命を助けたいっていう気持ちはありますね。
こんなにもねいろんな壁があるもんだとは思わなかったですね。
移植医療を受けさせてやるっていうことに関してはね。
(スタッフ)額ってどこに書いてあるんですか?額はここですね。
170万ドル。
(スタッフ)ああ〜。
その額を最初に見た時はどんなふうに思いましたか?
(謙一さん)ひと言で言ったらびっくりしましたね。
受け入れ先のアメリカの病院から請求された前払い分の費用は170万ドル2億円余りでした
そのほかにもチャーター機の手配や入院費用などを加えると総額2億8000万円が必要です
今でもまだこの2億8000万…目標額。
その中のデポジットが170万ドル。
まあ正直ピンとくる額では全くないので…。
ほんとに集めさしてもらうことできるんだろうかとかほんとにアメリカ渡れるんだろうかとかそれまで病状大丈夫だろうかとかまあいろんな心配事は尽きないですね。
国内であれば医療費の助成などで夏奈ちゃんの入院費用などは賄えますがアメリカでの心臓移植にかかる巨額の費用を若い夫婦だけで手当てすることは到底できません
なんとか善意に頼って費用を集めアメリカでの移植に希望をつなぐしかないのです
こうした募金活動にネットなどで心ない誹謗中傷の言葉を浴びせられることもありますがなりふり構っていられません
夏奈ちゃんには時間がないのです
・ありがとうございます。
・ありがとうございます。
(謙一さん)ありがとう。
ありがとうございます。
ご支援ありがとうございました。
あっこれ持っていく?ありがとう。
(謙一さん)ありがとう。
街頭に立って基本的には週末活動させてもらってますけど多くの方に知っていただくのがいかに大変かっていうのはものすごく感じます。
募金活動には父謙一さんの会社の同僚や母奈央さんの友人らがボランティアで参加してくれています
これまで募金で海外に渡って移植を受けた患者の家族や支援に当たった患者団体などからノウハウをいろいろ教わりながら手探りで活動を続けています
(スタッフ)課題に今挙がってることっていうのはどういうことなんでしょうか?そうですねボランティアの不足というのと…。
いろいろ協賛いただけるような団体さんとか企業さんとかをもっとどう増やしていったらいいのかっていうところと…。
そのために僕らがどうやって活動すればいいのかっていうところですね。
何をしたいか…募金箱を置きたいかチラシをまきたいかで全然場所違うよなやっぱり。
(立石さん)いやそれもさ事前に言っとくかどうかなんだよ。
ああ〜。
(立石さん)俺が…頼んでくれた修理工場さんはさひと箱半パンパンで6万5000円ぐらい集まったからさ。
しかも置いて3日でやで。
「なんでそんな集まったんですか?」「前から声掛けとったから」…。
ただ店舗にポンと置いてあるだけとその置いてる主が積極的に声掛けてるのでは全然違うわけで。
・手伝ってくれる人ほかにいいひんのかな?もうずっとここばっかりやん。
ずっとさ全部ここで負担がかかってさまた仕事もしてるわけやん平日ってさ。
で土・日も街頭募金もしてるしさ。
それでまたさどんどん負荷かかってくるわけやんか。
それやったらさ別に手紙とか書くんやったら我々だけじゃなくったって誰でも書けるやんか。
だからさ手伝ってもらってる人にお願いするとかさもうちょっと人数をさ…。
・増やすってことやな。
一人が一人どんどんどんどんノルマノルマってやっていくと結構しんどいと思う。
・確かに。
いやほんとに感謝ですね。
こうやって休みの日も…今日ももう9時ですか近くまでずっとこうやって作業をやっていただいてるのでほんとにありがとうございますっていう気持ちです。
(謙一さん)アメリカへ渡っての心臓移植の実現に向けましてぜひご協力をよろしくお願いいたします。
国内で心臓移植を受けるチャンスがもっとあれば…
時折そんな思いが謙一さんの頭をよぎります
(医師)神経学的には問題はなくいけてますかね。
大阪大学附属病院では心臓移植を待っている子どもや移植を受けた子どもの治療などについて月に1度医師らが意見を交わします
この病院からはこれまで29人の子どもが海外で心臓移植を受けました
ところが海外で移植を受けることも年々難しくなっています
移植を待つ患者に対して臓器提供者の数が圧倒的に少ないからです
2008年には国際移植学会が…
自分の国の中で臓器提供を増やし国内で移植医療を完結すべきだというのです
これがきっかけで日本人を受け入れる国が減り受け入れているアメリカとカナダも費用が桁違いに大きくなっています
日本では脳死となった15歳未満の子どもからの臓器提供は年に1回程度です
理由の一つが脳死の分かりにくさにあります
脳死とは脳が回復できないダメージを受け自発呼吸もなくなった状態で決して蘇生することはありません
しかし人工呼吸器で心臓を動かしているので体は温かく見ただけでは分からないため家族はなかなか受け入れられません
小児専門の集中治療室があるこの病院ではこれまで脳死となった9人の子どもについて家族に臓器提供の話をしましたが提供を承諾した家族はありませんでした
子どもの…特に赤ちゃんではなくてええ〜おうちに帰ってから…幼稚園小学生中学生ぐらいまでの子どもの死因の第1位ってなんだかご存じですか?
(スタッフ)事故死?事故ですね。
不慮の事故なんです。
朝元気に学校に行ったはずなのにその晩にはもう非常に重症な状態で集中治療室に収容されて場合によっては私みたいな医師が出てきて「脳死です」って言われてしまうと。
「あなたのお子さんは脳死です。
もう生きれません。
ところで臓器提供の希望はありますか?」というふうに聞きなさいっていうことはなかなか難しいと思うんですね。
脳死となった子どもの臓器提供の可能性は極めて低いのが現状です
そこで移植に代わる治療法の研究も進められています
その一つが…
これは患者の筋肉から取り出した細胞を培養しシート状にした…
弱った心臓に貼り付けると心臓の動きが改善します
もうすぐ子どもの患者への治験がスタートします
移植医療が完全になくなると私は思ってはないんですが移植医療をですねかなり補完するもしくは…やはりこれは本人の心臓を残したまま治療できますのでその点から見てもですねこういう医療がどんどん進むことが重症心不全の患者さん全体にとってすごい大きな効果をもたらすんじゃないかなと影響をもたらすんじゃないかなというふうに思ってますけどね。
iPS細胞をもとにした心筋シートも研究されていますが今たちまち心臓移植に代わる治療法は残念ながらありません
そうしたなか心臓移植を待ちきれなかった子どももいます
(読経)
今年1月大阪大学附属病院で心臓移植を待ち続けた一人の女の子が亡くなりました
この日は月命日の法事でした
うん。
だっこ?うん分かった。
だっこがいいの?うん。
アメリカでの心臓移植に向けて準備を進めていたさなか補助人工心臓の中にできた血の塊が原因で重い脳梗塞を起こしてしまったのです
最も恐れていた事態でした
「ああ…」っていう…。
もうほんとになんか…。
バイバ〜イ。
限りなく脳死に近いと医師に告げられた両親はある決断をしました
脳死が確定したら娘の臓器を提供しようという決断です
ためらいはありませんでした
その…やっぱりねただそのねそのもの…っていうのがあったんでしょうねたぶん。
だからまあほんとポッて普通に出てきました。
肺や肝臓腎臓が提供され4人の患者に移植されました
両親は移植を待ち続けたからこそ同じ苦しみを抱く人たちの役に立つことを願ったといいます
まあそれに変な話その…。
お別れの間際父親は自分の手と娘の手を写真に収めました
この日東大病院に入院している奈緒ちゃんのもとへ父の淳さんと兄の涼介くんが向かっていました
顔を合わせるのは半月ぶりです
(スタッフ)今日は奈緒さんとどんなふうに過ごされる予定なんですか?う〜んそうですねまあいろいろおしゃべりして…。
そうねお勉強のこととかう〜んそうですね…リハビリを頑張ってるみたいだからちょっと褒めてあげようかなと思います。
あっ涼介。
付きっきりの陽子さんに代わってこの日は淳さんが奈緒ちゃんに付き添います
(淳さん)お土産はお菓子。
いい?これで。
はい。
ふだんの奈緒ちゃんの様子は陽子さんからのメールで知ってはいるものの付き添いは久しぶりなのでどことなくぎこちなくなってしまいます
ねえ。
(淳さん)ん?
(淳さん)あっそうだ忘れてた。
え〜っとウエットティッシュはどこだっけ?奈緒。
あそこ。
(淳さん)字を書く練習してる?ふ〜ん。
ほかにはどんな勉強してるの?算数。
(淳さん)算数してる。
ふ〜ん。
久しぶりに会えたうれしさから矢継ぎ早にあれこれ話しかけてしまいます
(淳さん)これさ一度も付けて食べたことない?付けて食べてみればいいじゃん。
おいしいよこれ。
なんで?だって食べたことないんでしょ一度も。
おいしいかもしんないよ奈緒。
食べてみる?付けてみる?やだ?1個…少しだけちぎって付けて食べてみるか?
(淳さん)何?お母さん…。
今日お母さんいないの。
今日はお父さん1日。
残念でした。
(淳さん)細かい?ごめんごめん。
じゃあいいよ。
奈緒が好きなように食べればいい。
(奈緒ちゃん)お母さんがいい…うぅ〜…。
うわぁ〜ん…ああ〜…。
(淳さん)ごめんごめん。
奈緒ごめん。
いいよ奈緒の好きなように食べて。
(淳さん)はい。
ほら。
うぅ…お兄ちゃん…。
(淳さん)奈緒。
ああ〜…。
(淳さん)お口あ〜んして。
奈緒ほら。
うわぁ〜ん…。
(淳さん)食べよう奈緒。
(奈緒ちゃん)あぁ〜…ううっ…。
(淳さん)はいあ〜ん。
感染症を予防するため涼介くんは奈緒ちゃんの病室へは入れません
(陽子さん)お待たせしました。
お待たせしました。
ふふふっ。
そのかわり淳さんが奈緒ちゃんに付き添っている間陽子さんが涼介くんと遊園地へ行く約束をしていました
奈緒ちゃんが入院してからこの1年随分寂しい思いをさせてきました
家族がバラバラになってしまった今会える時には思いっ切り甘えさせたいと思っています
ちょっと見せて歯。
ちょっと歯見せて。
歯。
ふだんは陽子さんの姿が少しでも見えないと奈緒ちゃんが不安がるのでなかなかこんなふうに外へ出られません
あの…やっぱり出てる間だけでも少し現実を忘れられるじゃないですけどやっぱり病室にずっといるよりは気分的にはちょっと開放される感じはありますはい。
1年前まで休日はいつも家族4人で一緒に出かけていました
もう一度そんな日々を取り戻したい
家族の願いです
アメリカで心臓移植を受けた女の子が福島県にいます
(明子さん)はい頑張れ頑張れ。
(明子さん)疲れてきたんやろ?頑張れ頑張れ。
感染症を防ぐため生の野菜や刺身は食べられないといった制限はありますが手術後の経過は順調で随分大きくなりました
おととし1月補助人工心臓をつけた葵彩ちゃんはチャーター機でアメリカへ向かいました
生後10か月で拡張型心筋症と診断されアメリカでの移植手術に必要な2億3500万円は募金で集めました
よかったね。
ねえ。
大きくなったね。
ねえ。
パパとママとね…お父さんとお母さんといられてよかったね。
そうなんです。
ええええ。
私らも。
やらせていただきました。
一生懸命やらせていただきました。
(明子さん)ありがとうございました。
(スタッフ)こういう姿ご覧になられていかがですか?やっぱうれしいですよね。
じかに会ったのが初めてなんです。
こんな大きくなられてからはね。
直接こうやってお話したの初めてだったから。
「葵彩ちゃんどうかな?」なんてやっぱりみんな気にはして。
「あれからどうなっとんのかな?」なんて言ってんですよやっぱり。
うん。
アメリカに渡ってからも4か月間はじっと臓器提供を待つ日が続いたといいます
そして移植手術の日は突然やってきました
突然呼ばれて…「ダディカモン」って呼ばれて電話出たら日本語通訳の方が「ドナーが見つかりましたんで」っていう話で。
で病室の周り見回すと看護師さんとかがオッケーサインやってたりとか「よかったね」みたいな。
ほんとに「こんなもんなの?」っていう感じはありました。
ほんとに普通の…。
あちらではほんとに普通の治療なのかなっていうのはすごい感じましたね。
7時間に及ぶ手術は無事成功しました
心臓を提供してくれたのは小さな男の子とだけ聞かされました
この2年間移植された心臓に特に問題はありません
朝の分でも…もうちょっと種類がいっぱいあるのでいつもこう分けとくんですけど。
移植された心臓を異物と見なして攻撃する拒絶反応を抑えるため免疫抑制剤などを1日2回飲まなくてはなりません
(明子さん)これみんな大人用のお薬…子ども用の薬ではないので。
全部大人用の薬なので。
もう1個にまとめて水で溶かしてスポイトで飲まして。
(スタッフ)偉いね偉い。
(明子さん)もう慣れて普通に飲んでくれてます。
(スタッフ)へえ〜。
ちゃんと言うこと聞いて病院も行くし。
(明子さん)飲まなきゃいけないっていうの分かってるんで飲みますね。
(昌博さん)あちらの家族の大事なものを頂いたんだよっていうふうには…あちらの家族の方の。
(昌博さん)うんですね。
もうちょっとうまく言えるように考えたいとは思いますけど大事なものをもらったっていうのだけは伝えたいなっていうのは思ってますね。
今も月に1度は入院していた東大病院で検査を受けています
移植を受けたからといってすべてが元どおりになるわけではありません
でも手術を受ける前にはかなえられなかった家族一緒に過ごせる時間を1日1日大切にかみしめています
(謙一さん)アメリカへ渡っての移植実現に向けまして募金活動を行っております。
大阪で移植を待つ大林夏奈ちゃんの父謙一さんはこの週末も街頭に立っていました
(謙一さん)今でホームページ上は7500万円ぐらいなんですけど実際は8000万円ちょっとぐらいですかね。
1週間に1回ぐらいの更新にしてるんで。
あとだから約2億ですね。
何分過去最高額になってるんですけどね。
もう早くアメリカへ渡って手術を受けてで家族一つ屋根の下で暮らしたいですね。
静岡で続けられてきた吉岡奈緒ちゃんの支援活動ではアメリカの病院への前払い金1億8750万円が募金で集まり病院へ送ることになりました
ちょうど1年前のこの日は奈緒ちゃんが入院した日でした
(奈緒ちゃん)もしもし。
もしもし。
奈緒?
(奈緒ちゃん)奈緒だよ。
はははっ。
あっほんとに。
ああ〜奈緒元気?
(奈緒ちゃん)元気だよ。
うん。
元気そうだね声がおっきくて。
今日ね奈緒報告があるんだけどアメリカに行ってさ手術するじゃん。
(奈緒ちゃん)うん。
うん。
そのための手続きを今日してきたの。
だからまた奈緒がさ元気になる日がだんだん近づいてきてるから。
ねっ。
もしもし?
(奈緒ちゃん)もしもし!うんうん。
・こんなこといいな・こんなこといいな・できたらいいなあんなゆめこんなゆめ・いっぱいあるけどどうやって書くの?ん?こうやってお母さん書いてるよほら。
この春から小学生になるはずだった奈緒ちゃんは最近1年生の勉強を始めました
アメリカに渡るまでに体力が落ちないようリハビリも頑張っています
(淳さん)はいこんにちは。
奈緒これあげる。
(涼介くん)昨日運動会だったんだ。
移植医療は「待つ医療」だとよく言われます
提供者が現れないかぎり手術は受けられないからです
わが子に心臓移植が必要だと言われた時親は戸惑い苦しみ先の見えない時間のなかで家族は皆必死でもがき続けています
・いくよもう一回。
はいチーズ。
・カシャ
(シャッター音)
その先に光が見いだせると信じて
(池山樹里・ナレーション)
昼の忙しさが夜のにぎわいに変わる頃
都会の喧騒の奥の奥
2015/06/29(月) 00:50〜01:50
MBS毎日放送
映像’15「待ちわびて〜わが子に移植が必要となった時」[字]
15歳未満の臓器移植希望者に対して、提供者はわずかな現状…突然、わが子に移植が必要だと告げられた家族は、どう向き合うのか。子どもの臓器移植をめぐる現状を報告する
詳細情報
番組内容
この4月から小学1年生になるはずだった静岡県富士市の吉岡奈緒ちゃん(6)は、今、病院で補助人工心臓の助けを借りながら心臓を動かしている状態だ。1年前まで元気に幼稚園に通っていたが、去年の6月に重い心臓病「拡張型心筋症」と診断され、助かるには「心臓移植しかない」と告げられた。奈緒ちゃんを救うためには、海外で心臓移植手術を受けるしかないと決断した家族は、莫大な渡航費用を補うため、募金を呼びかけている。
番組内容2
また今年1月、阪大病院で心臓移植を待っていた6歳未満の女児が臓器移植法に基づき、脳死と判定された。家族の承諾により、臓器提供を行なうドナーとなり、肺と肝臓、腎臓がそれぞれ希望者に提供された。女児はアメリカで移植手術を受ける準備をしていたため、逆の立場になった時、家族は臓器提供を決意したのだという。6歳未満では国内3例目となる脳死判定による臓器提供だった。
番組内容3
改正臓器移植法が施行されてから5年になるが、日本では子ども脳死移植は停滞したままだ。わが子が脳死になっても、大半のケースでは家族が臓器提供を望まず、見送られているのが現状だ。そこには日本では脳死が人の死であるという意識が受け入れられていないという背景がある。
わが子に移植が必要だと宣告された時の、家族の戸惑いや思いを通じて、遅々として進まない日本における子どもの脳死移植の現状を伝える。
出演者
【ナレーター】
宮城さつき
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
福祉 – 文字(字幕)
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