「きょうの健康」です。
今日は月に1回最新の医療情報をお伝えする「メディカルジャーナル」です。
今日のテーマはこちら。
遺伝性のがんといいますとアメリカの女優アンジェリーナ・ジョリーさんが遺伝性の乳がん・卵巣がんの家系である事を公表しまして両方の乳房と卵巣をがんを予防するために切除しました。
実は遺伝性のがんはほかにもあるんですね。
もしかしたらあなたやご家族が遺伝性のがんになるかもしれません。
詳しくお伝えします。
お話し下さいますのは…特に遺伝性大腸がんの専門家でいらっしゃいます。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
アンジェリーナ・ジョリーさんの公表本当に大きな話題になりましたが遺伝性のがんの方っていうのはどれぐらいいらっしゃるものなんでしょうか?まずがん全体で言いますと日本全国で新たに1年間にがんと診断される患者さんの数は2015年の統計の推測によりますと大体98万人といわれていましてそのうち遺伝性のものの割合が5%と大体見積もられていますので単純計算致しますと遺伝性のがんは5万人弱ぐらいになろうかと思います。
5万人5%というのは相当多いなという印象…。
結構多いです。
どんな種類のがんがあるんでしょうか?このスライドで出ていますけれども先ほどのアンジェリーナ・ジョリーさんで話題に出ました遺伝性乳がん・卵巣がん症候群これは全ての乳がん・卵巣がんの中で5%から10%ですね。
非常に多い割合を占めています。
次に多いだろうといわれているのが遺伝性大腸がんでしてこれはこういった2つの疾患が代表的なものですがこれは全ての大腸がんの中の実に5%ぐらいを占めるといわれています。
これも非常に多いです。
そのほか下に示していますように基本的にはほぼ全ての臓器において何らかの遺伝性のがんがあるだろうといわれています。
今遺伝子の解析がどんどん進んでいましてこれからもいろんな原因遺伝子が見つかってきますと遺伝性のがんの割合が更に増えるそういった可能性があります。
でもどうなんでしょうそもそも遺伝性のがんがあるという事が分かったのはいつごろからなんですか?実はこの遺伝性のがんの存在というのは古くは100年ぐらい前に家系の中にたくさんがんの患者さんがいるような報告があって何らかの遺伝があるんじゃないかといわれていたんですがそれがはっきり遺伝性がんと分かったのがここ20〜30年です。
この20〜30年の遺伝子の解析の進歩によって遺伝性がんの原因ががん抑制遺伝子の異常によるという事がはっきり分かってきたんです。
通常お父さん方とお母さん方から1つずつこういった遺伝子を引き継ぐんですけれどもこのがん抑制遺伝子というのは細胞ががんになるのをブレーキをかけるような役割をしてるんですね。
遺伝性のがんの方の場合はこのがん抑制遺伝子の一つに既に変異が入っています。
それから新たにほかにいろんな環境要因紫外線であるとか食べ物であるとかあるいは喫煙であるとかそういった環境要因が加わるともう一つのがん抑制遺伝子にも変異が起きます。
するとこのがん抑制遺伝子の機能がなくなってがんになってしまうという事になるんです。
そうしますとこういう変異のある遺伝子を受け継いだ場合には必ずがんになるというふうに考えられるんですか?いや決してこういった遺伝子の変異を持っていても100%発症する訳じゃないんですね。
遺伝性乳がん・卵巣がんの場合でしたら大体60から85%。
遺伝性大腸がんの中で家族性大腸腺腫症の場合はほぼ100%がんになります。
100%ですからね。
あと非常に多いリンチ症候群の場合は男性でこういった割合女性でもこういった割合で決して100%ではないんですがかなりの高い確率でがんが発症します。
ではもし両親のどちらかがそういう遺伝子を持ってがんになった場合ですね子どもはどうなんでしょう?これもよくいわれるんですが決して100%子どもさんががんになる訳じゃないんです。
お父さんかお母さんがこのように遺伝性のがんであった場合に子どもさんに遺伝する割合は1/250%なんです。
こうやってお二人あった場合はこの方も50%の確率この方も50%の確率ですからたまたまお二人とも遺伝する場合もありますしお二人とも遺伝しない場合もあります。
確率の問題です。
なるほどね。
それではご専門の大腸がんの遺伝子のがんについて教えて頂けますか?詳しく。
はい。
遺伝性大腸がんの中で家族性大腸腺腫症というのがありましてこれは一つは遺伝性のがんのモデルケースともなった疾患ですが20代から50代でまず発症します。
放置しますとほぼ100%に大腸がんを発症するという病気です。
これは大腸内視鏡の写真なんですがこのようにたくさんのポリープがありまして基本的には大腸全体に100個以上のポリープがある。
多い場合は1,000個1万個といった数のポリープがあります。
また特徴としては大腸以外に胃とか十二指腸にもポリープができてそしてがんができるといったそういった特徴があります。
こういうふうにたくさんのポリープができますので比較的一般の大腸がんとこの家族性大腸腺腫症の大腸がんと見分ける事は比較的容易です。
なるほど。
こうした大腸がんの場合には治療はどうするんですか?治療ですけれども基本的には放置しますと100%に近く大腸がんになってしまいますので分かった時点で大腸をすべて切除。
これ大腸全摘といいますがそれが原則です。
がんを発症した方の家族ですがどういうふうに予防したらいいんでしょうか?この家族性大腸腺腫症のご家族の場合は基本的にはこのポリープというのは10代後半からぼちぼちでき始めますので10代後半からきっちりと大腸内視鏡検査で検査してやると。
これ非常に大事です。
ポリープができてきたのを確認するとこれは大腸腺腫症というのを確認できますのでその時点で大腸を予防的に全摘するというのが大原則です。
なるほど全摘。
でも気を付けなければいけない事って何かあるんでしょうか?大腸全摘というのは原則ですが大腸を全部取ってしまいますと頻便といって便の回数が非常に多くなったりあと女性の場合はあとの妊娠出産といった事にかなり大きな支障を来す場合もございますのでできたら大腸全摘は避けてポリープを徹底的に取ってやろうと。
それで大腸がんになるのを予防してやろうというふうなそういった試みが今行われていましてあくまでこれは臨床試験という形ですが行っている所もありますのでそれはまた担当医の方にご興味のある方はお聞きになったらいいと思います。
はい。
もう一つ遺伝性の大腸がんございましたよね?今度は次はリンチ症候群。
これがリンチ症候群ですね。
これは家族性大腸腺腫症に比べて頻度的にはもっと10倍ぐらいありますので非常に重要です。
特徴としては50歳未満という非常に若年で発症して同時期または異なる時期に2個以上のがんこれは大腸がんだけでなくていろんながんができるんですが発症します。
そして…ほとんどこれ全部の臓器ですよね。
いろんな所にこうやってがんができるんです。
これが同時期あるいは異なる時期に2個以上のがんをそれもこういう所で発症したらその疑いありという事になってくる訳ですか?はい。
特徴としてはですねこれは30代の女性のリンチ症候群の直腸がんなんです。
こうやってここに大きながんがありますがあとの大腸粘膜はきれいにツル〜ンとしてまして先ほどの家族性大腸腺腫症のようなポリープがたくさんできてるようなそういったのはありませんので一般大腸がんとの見分けが全くつかないといったところが非常に難しいんですね。
そうですね。
そうした場合治療としてはどうなんでしょうか?だからこういった事を見ていく場合にやはりしっかりとがんの家族歴を聞く。
ご本人のがんの既往歴を聞く。
それからこのリンチ症候群の大腸がんの場合病理学的にまたいろんな特徴がありますのでそういった検査をしてなんとか一般大腸がんからこのリンチ症候群を拾い上げてやろうという試みが非常に大事になります。
手術できる場合とできない場合があるんですね?このリンチ症候群は。
治療としては手術できる場合はほかの大腸がんと同じような手術をします。
手術できない場合は抗がん剤治療というのが原則になります。
こういう治療方法があるという事でしたけれどもやっぱり家族歴と既往歴をきちんと調べる事が大事だと?はい非常に重要です。
はい分かりました。
じゃあ家族ですね今度は。
もし家族の誰かがリンチ症候群のがんだと分かりました。
じゃあ家族はどうしたらいいんでしょうか?予防は。
ご家族で基本的にこのリンチ症候群の原因遺伝子の変異を引き継いでおられる保因者と呼びますがそういった事が分かればやはりこの20代30代と非常に若い年齢から大腸の検査あるいは大腸がん以外に子宮体がんとかも非常に高い確率でできますので女性の場合であれば産婦人科検診ですねそういったいろんな臓器の検診をしっかりと定期的に受けられるというのが非常に大事です。
予防的にどうなんでしょうか先ほどの場合には大腸全摘という事もありうるとおっしゃいましたけどこの場合はどうなんですか?リンチ症候群の場合は大腸全摘というのは予防的な臓器摘除というのはまだ一般的になっていませんのでこれからの検討課題かと思います。
さあ今日はその遺伝性のがんという事で随分思っていたより多いんだなという印象があるんですが特徴を改めてここでお願いできますでしょうか。
はい。
まとめますとこの3つになります。
家系内に…この家系内というのは具体的にはお父さんお母さんおじいさんおばあさんおじさんおばさんを中心とした近親者になりますがこういった家系内に…これも非常に重要な2つ目の特徴です。
「何回もがん」というのはいろんな所のがんという意味?大腸がん乳がん子宮がんいろんながんを含めてそうです。
それともう一つは3つ目として例えば遺伝性乳がん・卵巣がんの症候群の場合であれば乳がん・卵巣がんといったがんが出ますしリンチ症候群であれば大腸がんそれから子宮内膜がん胃がんといったものができますしそういったある特定のがんになった人がたくさんいるというのも3つ目の特徴になります。
それは年齢に関係なく家系にそういう人がいた場合にはやはり注意が必要という事になってまいりますか?特に若年でそういうふうにがんになった人が多い時は要注意です。
お話を伺えば伺うほどちょっと心配になってこられる方も多いと思うんですけど心当たりもしあった場合はどうしたらよろしいんでしょうか?家系とかご自分の既往歴から見てちょっとご心配になった方はやはり今全国各地に特にがんセンター大学病院大きな総合病院中心にこの遺伝カウンセリング外来あるいは家族性腫瘍外来あるいは遺伝外来といったそういった専門外来が数多く作られています。
その施設では臨床遺伝専門医あるいは認定遺伝カウンセラーといった専門の知識技術ノウハウを持ったそういった専門家の人たちがたくさんいますのでそういった方にまず相談を受けられてカウンセリングを受けて最終的には遺伝子検査を受けて診断が確定するというこういった事が非常に有用です。
カウンセリングして頂くという事は割と丁寧に時間をかけていろいろ聞いて頂けるという…。
はい。
十分な時間をかけてしっかりとカウンセリングを受けてというのが非常に重要です。
なるほど。
その遺伝子の検査の確定といいましょうかこれは血液検査が主なんですか?最終的には血液検査で原因遺伝子の変異を確定するというのが大原則になりますが必ずしも必須ではありません。
でもそれによって確定診断がなされるという事になってくる訳ですか。
更にこちらは?こういったところの外来を受診したい時にお近くにどこでそういった事を受けられるんだろうという事を非常に心配になると思うんですがいろんなホームページでいろんな宣伝が出ていますが例えば乳がん・卵巣がん症候群を扱うそういった医療者たちがこういった日本HBOCコンソーシアムというのを作っています。
このホームページなどで調べられますと全国各地でこういった外来を開いている所の一覧が出ていますので一つご参考になるかと思います。
ホームページがなかなか開けないふだんパソコンに触っていないとそういうご年配の方も多いと思うんですけどそういう人はどうしたら?これもどこの病院でもいろんな相談窓口ありますのでそういった所で聞いて頂いたら何らかのそういった専門の窓口をまた紹介して頂けると思います。
はい。
本当に今日お話を伺ってきて遺伝性のがんについて自分がどうかという事を知りたいでも不安もあるという方も多いと思うんですけれども最後にまとめにひと言お願い致します。
強調したいのは遺伝性の疾患ですので最終的には遺伝子の解析遺伝子診断という事が非常に重要なんですがそこで得られた遺伝情報というのはこれは個人情報ですけれども決して患者さんお一人の情報じゃないんですね。
今個人情報保護という観点から非常に個人情報というのは機密化されていますがしかし遺伝情報というのは究極の個人情報です。
しかしそれと同時に家族全員の共有財産ですので是非家系メンバーのがんの予防に役立てるためにこれを家族全員の共有情報だという事でご認識頂きたいというのが私の願いです。
そういう事をまた知れば本当になるべく早くそれについての対処ができるという事になりますよね。
そのとおりです。
がんになる前に診断して治療すれば大きな手術を避ける事ができるという事で非常に重要かと思います。
今日はありがとうございました。
どうもありがとうございました。
2015/06/29(月) 13:35〜13:50
NHKEテレ1大阪
きょうの健康 メディカルジャーナル「遺伝性のがん?」[解][字]
遺伝性のがんと診断される人はがん全体の5%に上る。今回は遺伝性の乳がんや卵巣がんと並んで多い遺伝性の大腸がんに焦点を当て、治療、予防、遺伝子検査などを伝える。
詳細情報
番組内容
アメリカの女優、アンジェリーナ・ジョリーさんが自分は遺伝性の乳がんと卵巣がんの家系なので、がんを予防するため、乳房と卵巣を切除したと公表した。実は遺伝性のがんと診断される人はがん全体の5%、1年で5万人弱に上る。今回はその中でも多い遺伝性の大腸がんに焦点を当て、診断と治療、家族はどう予防すればよいのか、不安な場合はどこを受診すればよいのか、遺伝子検査はどのように受ければよいのか、詳しく伝える。
出演者
【講師】兵庫医科大学教授…冨田尚裕,【キャスター】桜井洋子
ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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