【慰安婦問題は今】事実認定、謝罪、賠償が柱 関係者処分は非現実的とも 尹美香代表との一問一答
インタビューに答える挺対協の尹美香代表(共同) |
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―慰安婦問題の解決には何が必要か。
「求めているのは歴史の真実。国家責任と強制性の否定は正しい歴史認識からの逆行だ。日本の公文書を含む多くの資料や証言が日本軍の関与、強制性を明確に示している。国家の組織的犯罪であることをまず認めてほしい。そのうえで、覆すことのできない形での謝罪と賠償。大きくはこの3点を要求している」
―昨年の「日本軍『慰安婦』問題アジア連帯会議」の提言には、挺対協が7要求として掲げてきた項目のうち「法的賠償」「責任者の処罰」などの言葉がなかった。運動方針に変化はあったのか。
「被害者の生存中に日本政府が解決すべき優先課題を整理したのが提言。元慰安婦たちの最も切実で現実的な要求だ。提言を実行すれば、法的責任を果たすことになる。責任者の処罰も、挺対協として要求を取り下げたわけではない。日本が国家として女性を性奴隷にしたことが当時の国内法や国際法に照らしても間違っていたことを認めるのであれば、処罰を伴うべきだ。ただ、資料が失われていたり、責任者が高齢化あるいは既に死去していたりすることを考えると現実的ではなくなっている」
―日本で設立された「アジア女性基金」の「償い金」による解決など韓国側に譲歩の余地はなかったか。
「日本の政府が法的責任を果たさず、民間基金で償いをしようとしたのが『アジア女性基金』であり、解決にはなり得なかった。社会に間違いがあれば、変えるための努力が必要だ。韓国側に譲歩を求める人たちが、日本の社会を変えるためにどれくらい努力をしているのかを逆に問いたい」
―償い金を受け取った女性を挺対協が攻撃したとの指摘がある。事実か。
「受け取った女性は、いろいろな事情があってのこと。私たちがなぜ攻撃などする必要があるのか。受け取った人にも受け取らなかった人たちと同じように接し、支援を続けている」
―挺対協を単に「反日団体」とみなす声さえ日本にはあるが。
「私たちは日本軍が行った過ちを解決するための活動をしている。被害者の人権を回復し、再び同じような性暴力被害者が出ないようにすることが目的。反日団体でもナショナリズムを鼓舞する団体でもない。東日本大震災の時には日本に支援金を送ったし、韓国政府に対しても、ベトナム戦争中に韓国兵が行った女性への人権侵害問題などで、さまざまな要求を突きつけてきている」
―「 挺身 (ていしん) 隊」と「慰安婦」は異なる。会の名称が誤解を生んでいないか。
「毎年の総会で検討課題には上っているが、現状で変更は考えていない。お金を稼がせるとの誘い文句の中で『挺身隊』という言葉が使われた歴史的事実を残すという意味で変更してこなかった経緯もある。長年の運動で(名称が)浸透しているという面もある」
―過去に問題解決のチャンスがあったとすればいつか。
「日本の民主党政権の時代だ。解決の雰囲気が出てきて、入国審査官にいぶかしがられるほど頻繁に日本に行った。(野田政権の) 斎藤勁 (さいとう・つよし) 官房副長官とは秘密裏に会って話もした。当時は、被害者が最も望んでいるのはお金ではなく、日本の市民や国会議員たちが示す心を感じることだとも伝えた。私たちも努力した。解決できなかった理由は分からないが、とても残念に思っている」(ソウル共同=石山永一郎、佐藤大介)
韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協) 旧日本軍の従軍慰安婦問題を解決することを目的として1990年に結成された市民団体。ソウルの日本大使館前で毎週水曜日に日本政府への抗議集会を開催している。慰安婦問題解決のため日本政府に対し(1)慰安婦制度を戦争犯罪と認定(2)真相究明(3)公式謝罪(4)法的賠償(5)責任者の処罰(6)歴史教科書への記録(7)追悼碑と史料館の建設―の7項目を掲げており、韓国政府にも影響力を持っている
アジア女性基金 慰安婦問題で日本政府は1993年に河野談話で旧日本軍の関与を認めて謝罪し、95年に民間の協力を得て「女性のためのアジア平和国民基金」(アジア女性基金)を設立、フィリピン、韓国などの元慰安婦に1人200万円の「償い金」を渡した。医療・福祉支援も行った。65年の日韓請求権協定で解決済みとの立場から国家賠償とはしなかった。これに反発、韓国を中心に受け取りを拒否した被害者も多かった。2007年に基金は解散した。
(共同通信)