「長男だけど世襲じゃない」ジャパネットたかた創業者が明かした社長交代の裏側
TV通販番組でおなじみ「ジャパネットたかた」創業者である髙田明氏が2015年6月3日、ProFuture主催 経営プロサミット2015で講演会を行いました。名物社長として高い知名度を持つ髙田氏は2015年1月に突然の退任を表明。長男である髙田旭人(たかたあきと)氏に経営をバトンタッチしました。番組の「顔」である髙田氏はどのような方針で後継者選び、バトンを託したのか。自身の経営に込めた思いを語りました。
- ログ名
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経営プロサミット2015 / うまくいくバトンタッチ 2015年6月3日12時20分のログ
- スピーカー
- 株式会社A and Live 代表取締役(株式会社ジャパネットたかた 前代表取締役社長) 髙田明 氏
目の前にあることをただやり続けた
髙田明氏:皆さんこんにちは。最初にお断りしたいことがあるんですけども、私はこういうお話のときには、テレビのテンションとまったく違う話をします。
(会場笑)
「違うじゃないか」というように思わないでくださいね。今日はちゃんとしゃべれるのかなと思ってますが、昨日はちょっと寝不足で。錦織圭さんのアレ(試合)を見てましてね、3時過ぎに寝たんです。それで佐世保のほうから長崎空港まで行くので、朝の7時過ぎには佐世保を発ちました。
3時間ちょっとしか寝てませんので、ちょっと話がおかしいなと思ったときには「錦織さんのせいだ」と思って聴いていただければなと思います。
今日の演目「うまくいくバトンタッチ 戦略転換と世代交代の両立方法」と、すばらしいタイトルが上がってるんですけども、私は自然体、目の前にあることをただただやり続けただけでございまして。
何をやったかといいますと、御存知のとおりラジオ・テレビの前に立って商品を紹介することをやってきただけの人間でございますから、皆さんの参考になるお話ができるかはわかりません。
今日は100名ちょっといらっしゃいますので、私はこういう雰囲気のときには「同じ空気を共有しましょう」ということをよく申し上げます。皆さんと私は親類、兄弟のようなものでございまして、この1時間は仲良く、詰まったら笑いながら話をさせていただければと思います。
事業継承(バトンタッチ)というタイトルから入りますと、実は私は今年の1月15日に社長を退任いたしました。今はまったく役職が付いていませんので、ジャパネットたかたからのお給料は1円もないです。
私は今「株式会社A and Live」の代表取締役となりまして、実はそこもパートの人を含めて3人しかいないんです。何をやるかっていうのもまだ決めてないです。
株式会社A and Liveの「A」は、私は「明(あきら)」といいますがそのAなんですね。そして「Live」。「聞いたんだけども、明はまだ生きている(Alive)」と。
(会場笑)
そういう意味でA and Live、Aliveと勝手に解釈しながら、今から何をやろうかと考えようと思っているところでございます。私も66歳になりまして、昨年の65歳から高齢者に入りましたので、一番といえば一番ちょうどいいときじゃないかなというのが、事業経営者の自慢でございます。
60歳を過ぎた頃から、やっぱり企業は継続することに価値があると思いました。いくら栄えても、50年~60年、100年経って企業がダメになれば、その価値がそこで消えちゃうわけですから。
やはり企業は規模の問題ではなくて、世の中にどういう発信をしながら企業の価値を伝えるか、そして企業を継承するか。これは経営者だったら誰でも考えることであります。
ですから私は、そういう部分を60歳になって考えはじめました。それで66歳になって、元気なうちに事業を継承させたほうがいいと。
これは物の考え方で、ご年配の方ですごくパワフルに80歳90歳まで社長を務めて社員を引っ張っていく方もたくさんいらっしゃいますから、それを否定するものではありません。
でも私としたら、元気なうちにバトンタッチをすれば、アドバイスは求められればできる。まったくそこと縁がなくなるわけではございませんから。
ジャパネットたかた新社長は本音でぶつかってきた仲間
私は1月15日に退任しましたが、今テレビに出てますよね。よく(あるのが)「社長を辞めたのになんでテレビに出てるんだろう」と。
これはお断りしておきますけども、テレビのほうにちょっとやり残したことがありまして、まったく会社を離れた状態で1年くらいはアドバイスができたらと思ってます。
ですから期限が大体半年くらいになってるんですけど、そこまできたらほとんどテレビの画面からも消えようと自分で思ってまして。まあ1年間はそういう指導、また相談に乗りながら、ジャパネットの核であるテレビとかラジオを少し応援したいという思いで助けさせていただいているということです。
私はなぜ会社に残らなかったか。今の新社長は長男なんですけども、私からしたら世襲じゃないんですよ。今1800人くらい(社員が)いる中で、もっとも戦って、もっともぶつかって、もっとも議論をして本音でぶつかってきた仲間なんです。
そういう中で私は「この人に託せば、企業を100年200年(続くように)やってくれるかな」と。1800人の中から選んだトップがたまたま長男だったと、それだけのことなんです。
一番ぶつかりました。本音でぶつかりました。そういう中で、どれだけぶつかっても負けずに自分の信念を貫いたことに敬意を表して、託したんです。
託すってことは、期待がありますよね。当然、私も29年間社長をやってきましたから、不安がないかときかれれば不安がないことはないです。しかしどうでしょうか。まったくの不安をなくして継承するということはあるのでしょうか。
事業の継承……まあトップの交代だけじゃなくても、部長さんでも課長さんでも部下に全部任せていくということは、不安のメジャーと期待のメジャーの差だと僕は思ってるんです。
私の場合は明らかに期待のほうが大きく上回った。社長もまだ36歳という若さですから、まだまだ66歳の私みたいな経験はありません。でも、その中で非常に熱心に勉強する人ですから、そこに期待をかけたいということでジャパネットを退いたと。
じゃあ、私はなぜ退任したときに顧問相談役とか会長にならなかったかという話をします。これも私の考えなんですが、もしも私が会長という役職に入ったとすればどうでしょうか。