<広瀬すず発言は職業差別ではない>17歳の少女に謝らせる「大人たち」の悪意と酷さ
高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
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次に書く1〜10の「会話」は、民放テレビ局では絶対に交わされない会話である。
【会話・その1】
編成マン「今度の番組、絶対やるべき企画だから、数字(視聴率)とらなくてもいいから、いい内容の番組にしてくれ」
制作局員「わかった。硬めでやるけど、そういう番組も局のステイタスを上げるには必要だからな」
【会話・その2】
編成マン「今度のドラマ、ジャニーズのSがつかまってるんだけど(キャスティングOK)、いまから企画の内容変えてよ」
演出家「バカなこと言うな、1年掛けて練り上げたオリジナルだぞ」
【会話・その3】
ディレクター「よかった、ぎりぎり15%とったぞ」
局長「企画に反対して悪かった。間違っていたのは俺だった。ごめんなさい」
【会話・その4】
キャスター「いま、浅間山がもうもうと噴煙を上げていますが、今日はまず、沖縄からです」
報道担当重役「信念あっていいねえ」
【会話・その5】
政治部番記者「A首相が番組に出たいと言ってきてるんだよ」
番組プロデューサー「編成権はウチにある。出たいから出すと言うようなことはしない」
【会話・その6】
事業局員「女優のYがさあ、舞台の宣伝やってくれるなら出てもいいって言ってるんだよ。ただし、宣伝は2分以上やるって言う条件付き」
情報番組デスク「ウチは情報番組だよ。宣伝のどこが情報なんだ」
【会話・その7】
芸能人司会者「コメンテーターのSさんは、今日で降板です」
副調整室のディレクター「バカ。降板じゃなくて卒業だよ。卒業」
女子アナ「先ほど、Sさんは降板と申し上げましたが、降板ではなく卒業の誤りでした。お詫びして訂正致します」
【会話・その8】
タレント「いつもチンして食べてるよ」
自分はデキると思いこんでいる代理店社員「チンはまずいっす、これガス会社の提供ですから」
ディレクター「わかったよ、はい(収録を)止めて。(インカムでスタジオのフロアDに)チンはまずいからさあ、言い直させて。どういう風にかって?自分で考えろバカ」
フロアD「はい、再開します、3、2・・・。」
タレント「いつもはボワッして食べてるよ」
【会話・その9】
社員「社長の経営方針はまちがってます」
【会話・その10】
社長「Nは気に入らない奴だが、会社のことを考えると次は、なるべく早く、そうだな65になったらNに譲ろう」
【会話・その11】「とんねるずのみなさんのおかげでした」にて
広瀬すず「どうして生まれてから大人になったときに、照明さんになろうと思ったんだろう?」
「(音声スタッフは)何で自分の人生を、女優さんの声を録ることに懸けてるんだろう」
これが職業差別発言だと思う人というのはどんな悪意のある人たちなんだろう。
17歳の少女の想像力で想像できたことを発言したことの何が悪いんだろう。想像力の翼がもう少し先に広がる時期はちょっとだけ年齢を積めば身につく。それを見守ってあげるのが大人の態度だというものだ。
広瀬すずに謝らせる大人たちの何と酷いことか。
広瀬すずの謝罪「先日放送された、『とんねるずのみなさんのおかげでした』の中で、私の軽率な発言がありました。いつもお世話になっているスタッフの方々に誤解を与えるような発言をしてしまい申し訳ありませんでした。本当にごめんなさい」
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