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ニュースアプリ競争、その終わりと始まり/見えてきた新たな基準

2011年にデビュー、斬新なコンセプトで注目を浴びてきたニュースアプリ Circa が事業停止を発表しました。その斬新なコンセプトとは何だったのでしょうか? そして、それがついに成功を果たせなかったのはなぜだったのでしょうか?The Verge 米国西海岸駐在編集の Casey Newton 氏は、「Why Circa failed(なぜ、Circaは失敗したのか)」 で次のように書いています。

The Verge, Why Circa failed

The Verge, Why Circa failed

Circa は、モバイル Web が遅く、ニュース閲覧に不満足な環境だという認識の下に、編集スタッフを用いて、ニュースを発見、ニュースを読みやすくするためにいくつかの要旨へと分解、新たにストーリーをつくり出したり、補足したりを試みた。
Circa の、オリジナルな特徴的機能は、個々のニュース記事に“フォロー”ボタンを備えたことだ。これにより(関連情報の)プッシュ通知を受けることができる。また、大事件など速報についてもプッシュ通知が送信された。

まず、見えてくる Circa の斬新なコンセプトとは、

  • 編集スタッフが読むべきニュースの選定を行う(キュレーション)
  • モバイルで閲読しやすいカードフォーマットでニュースを作成(モバイルフォーマット)
  • ユーザーが興味を持ったニュースの続報や重大ニュースを通知(プッシュ)

と整理できます。
後ほど改めて整理することになりますが、モダンなニュースアプリたるための要件がここにはありました。Circa は早い段階で、それらへの実装上の回答をしていたのです。

では、どうして Circa は“失敗”したのでしょうか?
冒頭から深入りは避けたいのですが、Newton 氏は次のように指摘しています。

ジャーナリズムの大勢がエンタメ化、感情を刺激する動きに走っている際に、Circa は冷たく論理的であった。……BuzzFeedVice が読者(の感情)に働きかけることに優れているのに対し、Circa は抑揚に欠ける平板な選択をとったというわけだ。

ニュースの要約、箇条書き化は、ニュースをシンプルにし、摂取しやすくするはずの試みでした。しかし、Newton 氏の見立てでは、その論理的なアプローチこそ、Circa のコンテンツが、ユーザーに訴える要素を欠いた理由だというのです。
そして、ニュースをエンタメ化する、感情面に訴求する手法に、いま成功しつつある新興メディア群の中核的価値があることに気づかされるのです。

さて、Circa 以外にも目を向けていきましょう。Circa の対極をいくと指摘されたメディア BuzzFeed は、Circa に遅れること4年、モバイル版アプリ BuzzFeed  をリリースしました。そのコンセプトを取り扱った記事が Digiday に掲載されています。BuzzFeed モバイル版編集者 Stacy-Marie Ishmael 氏へのインタビューを含んだ記事 Lucia Moses「Inside BuzzFeed’s new app: ‘We are obsessed with performance’BuzzFeed 新アプリの内側:私たちは表示速度に執着している)」です。

記事はまず、新アプリのコンセプトが、単に BuzzFeed サイトのオリジナル記事の配信に止まらず、他の大手メディア、たとえば、New York TimesWashington PostThe Guradian、そして、The Atlantic などの記事も織りまぜ、ニュースをアップデートする「Quickly Catch Up」機能について紹介します。
箇条書きのニュース要旨と、ニュース本体へのリンクが Catch Up です。ユーザーは、アプリを利用していない間に、世のなかでどのようなニュースが起きているのかを、クイックに知ることができると同時に、それが、BuzzFeed 以外の情報源からも選択されており、広い視野もまた得ることができます。
次に、記事は、大量の閲読すべきニュースにさらされているユーザーの“疲労感”に着目します。

メディアの間に、無限スクロールによる果てしないニュースフィードにユーザーが疲れているとの認識が広まっている。これによって無限スクロールを廃止する動きも出ている。
BuzzFeed アプリは、ユーザーに対し“(フィードの)終了感覚”を持たせる。「あなたは(ニュースを)キャッチアップし終わりました」とのメッセージを表示するのだ。

BuzzFeed アプリは、Catch Up でニュースを網羅的に追う機能を提供しますが、この表示数に上限を設け、ユーザーがニュースを追い続けることへの疲労を感じないようにもします。
Ishmael 氏はインタビューで次のように述べます。

ニュース自体は尽きることがないにせよ、ユーザーが読了したとのシグナルを発してあげるのは有益です。編集的視点からしても、ユーザーが編集の選択した記事を読み通してくれたかは大切なことです。モバイルにおける無限スクロールは、ユーザー体験的にとって課題です。

記事はさらにいくつかの BuzzFeed アプリの特徴について会話をしていますが、表示速度の改善をめぐるやり取りに絞って紹介しましょう。
記事は、モバイル Web 系ニュースサイト(アプリ)の著しい表示速度の遅さに比し、BuzzFeed アプリの速さに言及します。これについて Ishmael 氏は次のように述べます。

ユーザーが、速く“感じる”ようにすること、そして、アプリのバックエンドでは、実際にユーザーが読もうとする記事を表示するまでの時間を短縮するよう最適化を行っています。表示速度はこの組み合わせでデザインされているのです。
私たちは、表示速度の向上に執着しています。この実現のために膨大な時間と精力を注ぎ込んでいます。

これらから、BuzzFeed アプリのめざす特徴は以下のようなポイントと理解できます。

  • 特定のメディアブランドが提供するアプリであっても、多メディアを情報源とする
  • 多数の記事をではなく記事を絞り込み、読了感を提供する
  • 表示速度を、ニュース閲覧体験の最重要価値と見る

紹介は省きましたが、BuzzFeed アプリは、これらに加えて、ユーザーが指定した関心テーマの続報を告知する“アラート”機能(プッシュ)も、ポイントとしています。

さらに周囲を見回すと、New York Times が主力アプリに加えて提供をしている、NYT Now 2.0 が目につきます(参照 → News Digest App “NYT Now” Drops Subscription Pricing, Offers Brand Sponsorships Instead)。同アプリは New York Times 本体の記事を絞り込んで提供するのに加えて、やはり編集スタッフによる選択によって、他メディアの記事を表示する機能も有します。
また、英国 BBC が最近リリースしたニュースアプリ Newsbeat があります(参照 → The BBC’s launched an app for its youth-friendly Newsbeat service)。こちらは主力の BBC News アプリと異なり、若者に焦点を当てたもので、同社ニュースはもちろん、加えて数々のソーシャルメディア(Twitter、Instagram、YouTube、SoundCloud)からトレンド情報を集めてカードフォーマットで表示します。また、当日のニュースはスマートフォンにキャッシュし、オフラインであっても高速に表示するのが特徴です。

さて、Circa 終えんの考察から始めて、最新ニュースアプリをめぐる動向までを概観してきました。もちろん、これらに、Facebook が、Instant Articles を、また、Apple が News アプリを投入するという動向を加味して考えるべきしょう。
Instant Articles プロジェクトは、元々、Facebook が2014年初頭にリリースしたものの早々にサービス終了を決めた、スタンドアロン型ニュースアプリ Paper の開発チームによる派生的サービスであることが知られています(参照 → 「“今度は”成功するか、Facebook の新サーヴィス『Instant Articles』」)。Facebook および Apple のいずれもが、多数のコンテンツソースを専用フォーマットにて内部キャッシュし、それを、アルゴリズムもしくは編成の人手により選択し、モバイル機器上で高速表示するという点で共通したアプローチをとっていることは、周知の通りです。
つまり、これらの動きは、モバイルにおける快適かつ最適なニュース閲覧体験をどう構築するかというテーマをめぐる大きな変曲点としてとらえることができます。

つまり、これまでの論点を改めて整理すれば、これからのニュースアプリの要件は、以下のようなポイントであることが見えてきます。

  1. メディアブランド垂直型から、各種情報源(多数のメディアブランド、ソーシャルメディア等)の総合へ
  2. 大量の記事との接点から、アルゴリズムや人手による選択、選別を経て適量に絞り込まれた記事へ
  3. 表示が遅いというモバイル Web の通り相場をくつがえす、記事のキャッシュや先読みによる高速な表示へ
  4. ユーザーの興味に適合した、インテリジェントなプッシュ通知機能へ
  5. モバイル機器におけるユーザー体験に適合した、新たなニュースのフォーマットへ

もちろん、これらは“求められるニュースアプリ”の必須要件であり、かつスペック的表現にすぎません。
ユーザー体験としての評価は、これらを下地にしつつも、むしろ、品質や味わいという視点で厳しく測られることになるでしょう。
ニュースアプリの第1フェーズは終わり、新しい基準によるデッドヒートがこれから始まろうとしているのです。

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