大島薫さん@渋谷
現在26歳、日系ブラジル人で、一見男性とは思えないほどの美貌から圧倒的な支持を集めた、だけではない。
かねてからSNSやブログでのAV業界の話題や、性に関するさまざまな指南などを積極的に発信し、時には自ら上半身を露わにした写真をネットに投稿するなどし、臆することなく「ありのままの姿」を晒け出す姿勢が共感を生み、多くのファンを獲得してきた大島さん。
引退時に投稿されたブログで綴られた「僕を見て、様々なことを思う方がいます。良いことも、悪いことも。大切なのは、僕が正しく理解されることではなく、僕を見て、誰かが何かを考えるというプロセスです。」の真意とは? そして、AVデビューの目的だったという「大島薫」のアイコン化とは?
はたからみれば険しい道を歩んでいるようにも見える大島さんに、「女装」のこと、「AV業界」のこと、そして「ジェンダー(性の自己意識・自己認知)」のことについて、引退から日を置かずに赤裸々に語っていただいた。
取材・構成:コダック川口 動画撮影:布村喜和
そもそも意識は男性です!
大島 はじめて女装をしたのは15歳の時です。普段は男性の格好で学校に通って、週末だけ親の目を盗んで女装してました。
もともと「男の娘」とか「女装男子」というジャンルの2次元作品を見るのは好きでしたが、自分でする気はなかったんです。10年前は「男の娘」ブームもまだきてないし、若い子で女装してる人もまだいなくて、年配の方ばっかりだったから。2次元から興味を持った自分からすると2次元と現実とのクオリティの差にガックリしちゃって。
でもある時、じゃあ自分がやろうと思い立ってはじめました。
──女性用の洋服やメイクは、ご自分で買われていたんですか?
大島 いえ、中学生の僕には服を買うお金も置き場所もなかったので、女装趣味の人が集まるインターネット上の掲示板で場所を提供してくれるっていう心優しいおじさまと知り合って、会いに行きました。衣装も貸してくれました。女装をさせるのが好きな方だったんですね。それも1対1で。
高校に入ってバイトでお金に余裕が出てきたらウィッグやメイク道具を買い揃えて、女性用の下着もつけてました。当時は、見よう見まねのメイクだったので何かしっくりこなくて、オカマっぽくなるっていうか。毎日お化粧をするようになってからコツが分かってきました。
若い女装男子が当時は貴重だったこともあり、写真をネットにアップすると、みんなワーキャー言ってくれました(笑)。でも、実際に女装して外に出て誰かに会うみたいなことは、怖くてできなかったです。1人で家でこっそりやる趣味だったので。
──今現在、女装をしていない日もあるんですか?
大島 「女装をしていない」という表現も難しいですね。例えば今、髪の毛は地毛なんですけど、普通の男性だったら長いウィッグをかぶった時点で女装になるじゃないですか? でも僕の場合はノーメイクでも髪型はこうなので。
最近は、男性物の服もあえて着る時もあります。そもそも意識は男性なので、「女性になりたい」とか、「今、自分は女性だ」というような感覚はまったくないんです。
僕のは「女装」じゃない。もう装ってはいないから
──女装で特に苦労していることはありますか?大島 お手洗いですかね……。どっちに行ってもビックリされるっていう(笑)。
見た目がこうだから、男子トイレだと特に「え?」って反応をよくされるので、どっちに入ろうか迷いましたね……。両方に入ってた時期もあったんですけど、今は男性の方に入ってます。
女子トイレに入りはじめたきっかけが、男子トイレに入ったら怒られたから(笑)。
手を洗ってたおじさんが、僕が入った瞬間に「コラ、女の子が入って来ちゃダメだぞ!」って言ってきて。「へ?」と思って、「違うんですよ!」って弁解するその声も高いから、これはややこしいなと思って。
自分の性自認が男性ですから、女子トイレに入るのは、どうしても後ろめたい気持ちになってしまって。やっぱり自然な方に入るのがいいのかなって。
──女装していて良かったなというエピソードは?
大島 女装についてだけで言うのであれば……生きやすくなったことですかね。
女装をはじめてから肉体的に男性と関係を持つこともあったんですけど、自分はいわゆる男性として男性を好きなゲイなんだろうか、と悩んでいたこともありました。
ゲイビデオに出ても、「なんで髪の毛を長くするの?」とか、「どうして高い声でしゃべるの?」とか聞かれるんですが、「別にそうなりたいわけじゃないんだよなあ」と。
その後、女性になりたい男性、いわゆるニューハーフ業界に身を置くこともあったんですけど、その時は「なんで女性ホルモンを打たないの?」とか「タマ抜いちゃったほうがもっと女の子らしくなれるよ」と言われて、「いや、それがしたいわけでもないしなあ」という。
どっちでも生きづらい自分っていうのがいて、結局自分は何がしたいのかなって思った時に「ああ、女装がしたいんだ」って。でも、今は考えがもっと深くなっていって、自分の中では今はもう「女装」でもないかなって。
僕はよくネットに上半身を脱いだ写真をアップするんですけど、それって自分が男であることを押し出してるわけじゃないですか? 今はブラもつけてないし、ボクサーパンツを履いてるんですよ。
女装って「女を装う」って書くじゃないですか? そういう意味では、もう装ってはないです。自分が着たいものを手にとっていたらたまたま女物だったってだけの話で。
『めぞん一刻』の五代くんみたいな人が好き(笑)
大島 「男脳」だなって思うことはありますね。どうしても結論を求めちゃうというか。理論的に考えるし、感情をあんまり優先しないところがあって、男同士で飲みに行ったりとかすると「あ、やっぱり男なんだ」って言われることが結構あります(笑)。
──男性にも魅力を感じるようになったきっかけは?
大島 これまでも肉体的な関係はありましたけど、最近は恋愛感情も感じられるようになりました。でも、女性とはお付き合いしたことあるんですけど、実は男性と付き合ったことはないんです。
やはり男性とすぐに付き合うというのはなかなかできなくて、女性だと力ずくでなにかされるってことは多分ないですが、男性だとそれができてしまうので、変な人について行きたくないというのもあり、飛び越えるハードルの差は感じます。
僕、男性だとちょっと弱い人が好きなんです。「俺様!」みたいな人じゃなくて、情けない人が頑張ってる姿みたいなのに、すごくキュンとくるものがあって。『めぞん一刻』の主人公の五代くんみたいな人が好きですね(笑)。
──母性本能を感じる?
大島 母性というより、兄貴肌なんですかね。
──これまでお付き合いされた女性は大島さんのそのままを受け入れていたんでしょうか?
大島 女装しながら付き合っていたのは、いままで1人だけです。ちょっとレズっ気のある子でした。それまでは男性の格好でお付き合いしていましたが、趣味で女装しているというのはみんな知ってはいました。もちろん中には嫌がる子もいて、概ね認めてはいるけど「私の前ではやめてね」って。
──踏み込んだ質問ですが、女性・男性とのそれぞれとの初体験は?
大島 男性の方が早かったです。15歳の時にさっきもお話しした女物の服をくれたおじさまにそのまま……(笑)。女性の方は16歳の時で、彼女でした。
──女性だと、どのような方に魅力を感じますか?
大島 自分が着たい服がどうしても女物になっちゃうので、それが似合う体型をしていることだったり、メイクしてる姿とか、顔立ちも自分の理想像なので、女性はみんな可愛く見えますね。性格的なことで言えば、おおらかな人がいいです。
──やはり、女性側の気持ちもよくわかるんでしょうか?
大島 僕自身、女性の気持ちが完全にわかるかと言われれば、例えばメイクについての煩わしさとか理解できる部分はありますけど、やっぱり根は男性なので本質では違うなって思います。
──大島さんの体感として「女装」に対して今と昔では世間の反応って変わりましたか?
大島 そんなには変わらないかもしれません。「実は男の娘なんですよ」ってバラしたりすると、「へぇ、そうなんだ。じゃあどっちが好きなの?」とか、それは10年前でも一緒の反応されると思うんですよね。他人からしたら自分とは関係ないことだし、よくわからない生き物だから、存在はハッキリさせたいけれども、別にそこまで興味もないっていう。時代によってというのはあまり感じません。
それよりも、自分に嘘をつかないことの方が大事で、女性になりたいわけでもないのにウケを狙って「そうなの女になりたいの〜」みたいなことをオネエ口調でいうっていうのは違うんじゃないかなってのは思いますね。
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