百田尚樹氏といえば日本で今最も話題になっている右翼作家だ。神風特攻隊の自殺攻撃を「戦争ヒューマニズム」という観点から描いた百田氏の代表作『永遠の0(ゼロ)』は100万部以上売れた。アニメの巨匠である宮崎駿氏から「事実を捏造(ねつぞう)し、戦争の惨状から顔を背けている」などと厳しい批判を受けたが、それでもこの小説は映画化、ドラマ化もされている。過去に郷愁を感じる最近の日本人の情緒にピッタリとマッチしたようだ。
百田氏は日本国憲法第9条が掲げる戦争放棄に堂々と反対し、同時に軍隊の創設を訴える極端主義者だ。また昨年の東京都知事選挙において、同じ極端主義者で元航空自衛隊幕僚長の田母神俊雄氏が出馬した際、百田氏は応援演説の中で「他の候補はみんなごみだ」などと非常に過激な言葉を使った。百田氏は2012年から「安倍首相待望論」を公の席で語り始めたが、同年末に安倍氏が実際に首相に就任すると、百田氏は安倍首相からNHKの経営委員に指名された。
当選3回の自民党衆議院議員である木原稔氏も、安倍首相に徹底して追従する人物の一人だ。2007年には安倍首相と連名で米国のワシントン・ポスト紙に広告を掲載し、従軍慰安婦の強制動員に対して謝罪を求める米下院決議第121号の撤回を求めた。今年9月には自民党総裁選挙が予定されているが、木原氏はこの自民党総裁選で安倍首相を再び擁立するため、自民党内で勉強会を立ち上げた。木原氏は先週、この勉強会の2回目の会合で百田氏を講演者として招待した。
講演で百田氏は、沖縄の地方新聞が安倍首相の政策を批判していることを取り上げ「沖縄紙をつぶせ」と発言したという。問題の勉強会に出席していた議員らも、自民党の政策に批判的なメディアに広告を掲載させないよう、日本経済団体連合会(経団連)に圧力を加えることなどを提案した。酒の席でさえ口にしにくい言葉を、公の席で堂々と語り合うのが日本の右翼だ。このような人間たちは実は安倍首相の周辺にいくらでもいる。70年以上前、日本が軍国主義だった時代、日本のメディアは戦争をあおり、これを賛美していた。今はもちろん当時と状況は変わっているが、それでも右翼が考える「国策」にメディアが反対しているとみられれば、そのメディアには時に拳銃の弾丸が送りつけられることもよくある。
今回の問題発言も、読売新聞や産経新聞など右よりの新聞各社は最初から報じないか、あるいは非常に短くしか報じていなかった。ところが問題が大きくなると、やむなくこれを報じるようになったようだ。両紙とも昨年、朝日新聞が慰安婦問題関連の記事を取り消した際には、これを待っていたかのように連日熱心に報じ朝日新聞を攻撃した。先日、日本の外務省ホームページにおける韓国についての記載から「日本と基本的な価値を共有する国」という内容が削除された。つまり韓国は民主主義の国ではないという見方が彼らの根底にあるのだ。このように日本の政権政党で自分たちに反対するメディアをつぶせといった言葉が公然と語られているのを見ると、「日本は韓国と基本的な価値を共有できない国」という言葉は、日本にそのまま返したい。メディアが政府や極端主義者を批判できない国がすなわち日本なのだ。