図書館ボランティア:89歳男性、1時間で250冊を棚へ

毎日新聞 2015年06月28日 22時05分(最終更新 06月28日 22時22分)

本を小脇に抱え、書架に戻していく水野勝さん=小林多美子撮影
本を小脇に抱え、書架に戻していく水野勝さん=小林多美子撮影

 多くの公立図書館では、市民ボランティアが業務を支えている。千葉県市川市のボランティアグループ「市川図書館友の会」に、返却された本を書架に戻す配架を担う89歳の「スーパーボランティア」がいる。市川市鬼高の水野勝さん。一度に10冊ほどの本を小脇に抱えて館内を歩き回り、1時間で250冊もの本をさばく。体力の必要な作業だが「たくさん歩くので健康に良い」とこともなげだ。

 「友の会」は、中央図書館(同市鬼高)が開館した1994年に発足した。市民を中心に約100人が所属し、配架のほか、書庫での本探しや整理などのボランティアをしている。会員は20代からいるが60代が中心で、水野さんはもちろん最高齢だ。

 配架は「ブックトラック」と呼ばれる台車のついた移動式本棚に積まれた返却本を書架に戻していく仕事。中央図書館の蔵書は約76万6000冊で、返却される本は多い日には6000冊を超えるという。作業の速さは本の分類、その位置などを熟知しているかがものを言う。水野さんは自分で棚の配置表を作るなど、覚えるための工夫も凝らしてきた。「来館者に目当ての本の場所を聞かれても、たいていは答えられる」と胸を張る。

 配架をしていると新刊や人気のある本など、本の動きがよく分かるという。書架の配置は変化することもあり「常に新しいことを覚えなくてはいけない」と話す。

 水野さんが友の会に参加したのは75歳の時。定年退職後の第二の職場もリタイアしたのがきっかけだった。会社勤めをしていたころから本好きで、図書館には月1回ほど通っていた。よく読むのは松本清張など長編小説。「図書館では自由に、好きなだけ本が読める。恩返しの思いでやっている」と笑顔を見せる。

 ボランティアをするのは土曜日の昼に2〜3時間。土曜日は返却冊数が多いからだ。以前はほぼ毎日していたが、現在はスポーツクラブに通い、水泳などで汗を流すのに夢中という「元気ぶり」だ。

 水野さんの配架の速さは友の会でも有名という。椎名昭洋会長(65)は「さっと仕事をして、さりげなく帰っていく。自分も水野さんのように年を取りたいものです」と話している。【小林多美子】

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