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後世に残す国民の巨大な財産を、こんな「どんぶり勘定」で造ってはならない…
後世に残す国民の巨大な財産を、こんな「どんぶり勘定」で造ってはならない。ここは一度立ち止まって出直すべきだ。
2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の計画が迷走している。文科省などがゼネコン2社と結ぶ契約額が、また一気に跳ね上がることが明らかになった。
総工費2520億円。基本設計段階から約900億円も膨らみそうだ。12年ロンドン五輪の主会場の4倍近くにのぼる建設費は、野放図に過ぎる。
文科省の所管で建設を担う独立行政法人、日本スポーツ振興センター(JSC)の見立てがあまりに甘い。国際コンペで採用したザハ・ハディド氏の案では、当初予算1300億円だったものが3千億円になる試算が出たため昨年春、延べ床面積を2割減らして1625億円に抑えたはずだった。それからわずか1年。資材などの高騰で説明できる誤差ではない。
しかも、売り物だった開閉式屋根の設置を先送りし、1万5千席分の可動式席もやめて仮設にする節約をしたうえで、この金額だから驚く。
建築費を押し上げ、工期が延びる元凶と専門家から批判されるのが、屋根を支える2本の巨大なアーチ構造だ。
今月に入り、建築家の槇文彦氏らが、アーチを造らない一般的な工法での代替案を示した。工期を短縮でき、1625億円に収まるプランだという。
それでもJSCは、現行案に固執しているようだ。その理由の一つは、設計をやり直すと19年秋にあるラグビー・ワールドカップに間に合わないとされる点だ。しかし、槇氏らの案では工期は間に合うとしている。
JSCは、ハディド氏の案が五輪の招致に貢献した点にもこだわっているようだが、重要なのは今後の有効活用だ。国際オリンピック委員会(IOC)も、開催都市にとって有益な遺産となることが大切という理念を打ち出したばかりだ。
文科省とJSCが早急にやるべきなのは、議論を国民にオープンにする形で、冷静な選択肢を示すことだ。限られた予算と工期の中で何ができ、何ができないのか。五輪後の維持費をどう賄うのか。ハディド氏も含む幅広い専門家らの知恵を集めて代替案を練り直す時である。
時間切れを理由にした見切り発車は五輪のイメージを傷つけるだけでなく、将来世代に負の遺産を残す。透明な手続きと合理的な計画で国民が納得した事業を完遂することこそが、五輪の「レガシー」となろう。
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