顔認証技術:「顔パス」香港出入境ゲートで威力 NEC

毎日新聞 2015年06月28日 13時31分(最終更新 06月29日 00時08分)

専用カメラに顔をかざすと、顔の部位を認証して本人確認する=ユニバーサル・スタジオ・ジャパンで、NEC提供
専用カメラに顔をかざすと、顔の部位を認証して本人確認する=ユニバーサル・スタジオ・ジャパンで、NEC提供

 香港−深セン間に2007年に開通した高速道路。商業地を結ぶこの道路はひっきりなしにトラックが行き交う。出入境ゲートで手作業で本人確認をしていては大渋滞の元凶となる。そこで、ゲートに設置された専用カメラに顔をかざし、トラックのナンバーと照合して本人確認するシステムを導入した。香港は顔写真や名前を入力した住民IDカードと車のナンバーが連動しており、ナンバーで個人が特定できる。ID登録した顔写真と照合して、本人だと確認するとゲートが開く。確認は1件数秒で済む。

 使われているのはNECの顔認証技術だ。画像から目、鼻、口の相互の位置関係を測定するとともに「目のつりあがり具合」「鼻の曲がり具合」「唇のカーブ」など個別部位の特徴を認識して個人の顔を識別する。これらの情報は「やせた・太った」「めがねの有無」では変わらないため、照合の精度が高い。

 目などの部位を正確に検出する技術や、光の当たり具合も考慮して部位の特徴を導き出すのには、高度な画像解析技術を必要とする。同社は米国政府主催の顔認証技術コンテストで、09年の初参加以降3回連続1位を獲得した。コンテストは、米国の入国ビザや犯罪者の実際の画像を使いシステムの精度を競う。そこで99.7%の照合正答率をたたき出した。

 好成績の効果で世界各国・地域から引き合いが増え、今や20以上の国・地域で利用されている。米国ペンシルベニア州では容疑者の捜索に使われている。

 同社応用プロダクトビジネス統括部の穂積幸雄マネジャーは「顔認証はさまざまな用途に使え、市場拡大の可能性が大きい」と期待を込める。一方でマスクを着用したり、横を向いたりすると精度は下がる。また強い光が当たると目や鼻の形状を識別しにくくなる。これらの課題をクリアしていくことが市場開拓のポイントだ。【種市房子】

 ◇1件数秒 照合の精度高く

 NECは1989年に顔認証研究を開始し、99年にシステムを発売した。犯罪捜査や出入国管理だけではなく、企業・官庁の入退場管理や金庫・ロッカーの開閉への活用も可能だ。大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンも導入している。顔写真を事前登録した年間パスをリーダーにかざし、カメラに顔を向けると1秒で認証が完了し「WELCOME(ようこそ)」の文字が画面に現れる=写真。利用者が「顔パス」気分を味わえるのと同時に、パスの使い回しや盗難品使用の防止にも役立っている。

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