トンガ:そろばんが結ぶ絆 39年前、日本人に指導依頼 交流今も 皇太子ご夫妻、来月訪問

2015年06月28日

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トンガの小学校でそろばんに取り組む子供たち=2015年3月11日(藤井将男さん提供)

 皇太子ご夫妻が7月に訪問される南太平洋の島国トンガで、39年前の日本人の来訪をきっかけにしたそろばん教育が普及している。小学校の必修科目とされ、日本との交流もさかんだ。

 NPO法人「国際珠算普及基金」の藤井将男理事長(72)は今年3月、トンガの小学校を訪れ、そろばんの授業を見学した。

 「テウテウ カマタ」。「用意、始め」という教師の合図に、児童たちがそろばんをはじき始めた。計算が終わった子が勢いよく手を挙げる。藤井さんは、毎年のようにトンガを訪問し、小学校の教員らにそろばんの指導方法を教えている。

 きっかけは1976年、簿記会計が専門でそろばんの指導者でもある中野敏雄・大東文化大名誉教授(94)が、部長を務めていたラグビー部を連れてニュージーランドを訪れたときのこと。トンガに足を延ばすため飛行機に乗った中野さんは、たまたまトンガ政府の高官の隣に座った。そろばんを指導していることを高官に話すと、高官は「国王を紹介したい」。当時の国王ツポウ4世と面会することになった。ツポウ4世は「算数の学力向上のため、そろばん教育に力を貸してほしい」と中野さんに依頼した。

 中野さんから声をかけられ、藤井さんらがトンガに渡って教員への研修を行った。それをきっかけに、トンガの公立小学校では3~5年生が毎日、そろばんの練習に取り組むようになった。教室で使われているそろばんは、トンガでの教育を知る日本人から寄贈されたものも多いという。藤井さんらもトンガを訪問する際に持参し、贈呈している。

 2010年からは、トンガ教育訓練省と在トンガ日本大使館がそろばんの全国大会を共催。優勝した小学生は日本での合宿に招待される。日本の国際協力機構は89年からそろばんの指導員として青年海外協力隊員など33人を派遣した。

 藤井さんは「そろばんを通じた交流をさらに発展させていきたい」と話している。【高島博之】

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 ■ことば

 ◇トンガ

 南太平洋の約170の小さな島からなる国で、首都のヌクアロファから東京は約7900キロの距離。総面積は約720平方キロメートルで長崎県の対馬とほぼ同じ大きさ。人口は約10万5000人。トンガ王室と日本の皇室の交流は盛んで、1989年の昭和天皇の大喪の礼に当時の国王が参列したほか、王族がたびたび来日している。日本からは、これまで皇太子さまが2回、秋篠宮ご夫妻や常陸宮ご夫妻が各1回訪問。7月4日にある国王ツポウ6世の戴冠式に、皇太子ご夫妻が出席される。

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