カナダのオタワ大学で開催されたPGCon 2015で、"The Art of Performance Evaluation" という題目で、計算機システム、とくにデータベースシステムに関する性能評価の基礎となる考え方と、基本となる3つの技能(モデリング、測定、シミュレーション)に関して講演を行ってきました。
PGConはPostgreSQL関係者の集う最もハイレベルなカンファレンスの一つで、世界中からPostgreSQLの主要開発者が集い、PostgreSQLの開発方針を議論したり、最新のPostgreSQLに関する技術動向が話し合われる場となっています。 PostgreSQLの開発や使い方など比較的具体論が取り扱われることが多い中、自分の講演はやや異色な発表ではありましたが、システムソフトウェアの開発において正しい性能評価の考え方を知ることは欠くことのできない重要な技能であるので、その点が評価されて講演に採択されたものであろうと思います。というわけで、自分がデータベースシステム研究をする中で培ってきた性能測定・評価に関する原理原則論を今一度整理し直して、そのエッセンスを抽出したものをまとめて発表してきました。
話の内容としては、2年前にJPUG勉強会で話した性能測定道が下敷きになっています。
余談
性能評価の基本については Raj Jain の The Art of Computer Systems Performance Analysis がいわゆる古典的名著であり、研究をしながら独学した後にこの本に出会い、より深く体系的に性能評価について理解することができました。ちなみに、なんと今年9月に新装第二版が出版されます。
- 作者: Raj Jain
- 出版社/メーカー: Wiley
- 発売日: 2015/09/21
- メディア: ハードカバー
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また、この講演の内容をどうしようかと色々思い悩んでいる際に、Sun出身でSolarisやLinux周りのパフォーマンスエンジニアとして有名なBrendan Greggが Systems Performance: Enterprise and the Cloud という本を出していることを知り、ざっと全体に目を通してみたのですが、これが大変良い本でした。
Systems Performance: Enterprise and the Cloud
- 作者: Brendan Gregg
- 出版社/メーカー: Prentice Hall
- 発売日: 2013/10/26
- メディア: ペーパーバック
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Jainの本は非常に学術的基礎に重きが置かれているものである一方で、Greggの本は学術的基礎も押さえつつ、 著者の Linux と Solaris の豊富な経験に基づく実践的な性能問題の解決に役立つ知見が詰まっており、自分のようなシステム周りの研究者にとっても、また計算機のインフラ周りで仕事をしているエンジニアにとって非常に学ぶことが多い内容が詰まっています。いずれもKindle版が出版されているのがありがたいですね。