※『長文スルー必至(笑)』
~何故、またお弁当を作るのか?~
僕はアパートの二階に住んでるのですが
下の角部屋に父子家庭のお宅があります。
どうやら、奥さんと離婚が成立したらしく・・・お子さんを引き取り
お父さんとお子さんの二人だけで静かに暮らしていました。
引っ越してきたのが5月の末なので、あまり近所とも面識がなく
周りに子供もいないので、お子さんはいつもぼっちでしたね。
丁度、Y氏との事も解決してアパートにも平穏が戻り
梅雨時期の雨がしとしと降る夕方でした。
同じく下に住んでいる土木業の男性(53歳)がこう話し掛けてきました。
「あそこのお宅、車が無いからスーパーにも行けない。
もし、気付いた事があったら乗せて行ってやってくれないか?」と。
僕は自分が行く時間なら問題が無いので了承。
いつもは土木業のAさんが連れて行ってる話だった。
やがて、父子家庭の男の子がアパートの周りでよく遊ぶ光景を目にするようになり
一声掛けては挨拶やら、ちょっとした会話をするようになる。
勿論、父子家庭のお父さんとも夜に顔を合わす事も多くなったんです。
お父さんの方は勤務時間が変則的で、なかなか食事が普通に作る事が出来ず
お子さんに満足に食べさせてあげられない事を言い出せなかった。
そこは少し察していたので、僕から切り出してみた。
「もし良かったら、料理の勉強をしているので
自由に作ってあげることは出来ませんが、そんなもので宜しかったら・・」と。
ですが、お父さんは遠慮して最初は断るんですよ。
これは当たり前かな?と思いました。
次の日、土木業のAさんの部屋にアパートの住人が呼ばれました。
「出来るだけで良いから、皆さん何か協力できないか?」と。
何人かは「そんなこと言っても・・・」と断ります。
この返答は当たり前なので、どうも思わなかったのですが
中には「一軒がそんな事をすると、全体が迷惑するからやめて欲しい」と
ハッキリ意見を言う人が現れたのです。
これも至極正解な話なんですけどね。
Aさんは他の住人に丁重に挨拶をして引き取ってもらいました。
残ったのはAさんと僕と同じ二階に住んでいる25歳の左官業をしているBさん。
僕とBさんは「出来る範囲なら、僕らもお手伝いするので
三人で始めませんか?」と伝えた。
まずはAさんが父子家庭のお子さんの体操服や給食の白衣の洗濯担当。
Bさんは週二回のお子さんの夕飯を担当したので
僕は週二回の夕食の担当、そして宿題を面倒看ることになった。
全員が自主的に申し出た事。
その中に、たまに父子家庭のお父さんのお弁当があるのだが
お父さんはあまり料理が上手ではない・・・
ならば、そこは余り物で良いという条件でお弁当を担当したわけです。
~知りたくはなかった家庭の事情~
父子家庭がどうして在るのか?
それは色んな憶測がアパートで飛び交いました。
けれど、実際にご本人に直接聞くと、噂よりも過酷な状況であり
ここで多くを語ることは出来ません。
ただ、判っていることは・・・母親は永遠に帰らないだろうという事。
死んでしまったのなら覚悟もできるが、生きているからこそツラい事も。
まだ、父子家庭のお子さん・・・仮にC君は事情が全部呑み込めない。
小学校三年生で勘は良いのですが、大人の微妙なラインを読むことはできない。
そういうのを周りでケアして行くのも大事かな?と思っていたのですが
噂が好きな人や、他人の不幸が蜜の味に感じる人達は当たり前にいる。
「君のお母さんは帰ってこないのは、男と逃げたから」や
「お父さんがだらしないから、ダメなんだよ」と吹き込む人がいる。
その度にC君は泣いて僕の部屋に来るのだけど
「他の人は本当のことを知らないから、C君が羨ましいんだよ」と
慰める言葉しか浮かばなくなってましたね。
このC君と僕の幼少期がリンクするので
僕が多少、感情移入するんだと思います。
僕の母親も小さい時に一度出て行ったので・・・
~接してみる面白さ~
こういう質素なものでも、子供は受け付けてくれます。
塩鯖と茸の蒸し物や獅子唐の焼いたもの等。
また、二人でご飯を食べるのも美味しく感じます。
他人の子供なんですが、台所まで食べたものを片付け
洗おうとするので、流石にそこまでは「やらんで宜しい」と言ってます。
けど、お父さんの躾がちゃんとしてるんでしょうね。
これには感心しました。
遊びで、ラテアートで仮面ライダーを描いたり
土台だけ作ってあげて、自分で絵を描かせてみたり
そんなことしか出来ませんが、一緒に過ごす事で面白さが伝わってきます。
また、宿題が難解な時は僕がPCを観て答えを探すのですが
「あっ!お兄ちゃんカンニングしてるでしょ?」とか平気で言います。
「大人がやっちゃいけないんじゃないの?」とか(笑)
そこからスマホでメールしてるフリして、カンニングしてるんですがw
~地域で子供を育てるって感覚ではない~
よくあるのが「子供は地域の宝、周りで育てよう」って感覚とは違います。
そんな大袈裟な話ではなく、父子家庭のお父さんを少し手伝う意味合い。
僕の中ではそう受け取っている事例です。
くだらない噂を流すクセに「お互い様だから」と
云う方々は、この事には触れるのも嫌みたいで
僕から見ても子供を地域で育てるなんて机上の空論だと思います。
そういう事を熱心に言う人ほど、胡散臭いと思ってしまいましたね。
ですが、僕のしてることは自己満足の範囲内なので
やったから、やらなかったから
どちらが良いと云う判断の仕方が危ういのかな?と。
正直、どっちでも良いような気がします。
あまり、こういう事をする時は他人の意見や忠告は意味がない・・・
自己満足の世界ですからね、何処まで行っても。
Aさんと話すと面白い事に・・・
「たまたま、俺達は独身だから出来たんだと思うよ」と。
うん、そういうのが一番正しいように思いました。
~次第に周りが動き出す~
今まで参加してなかった人達も、僕らに声を掛けてくれるようになった。
しかし、僕らに声を掛けるのではなく・・・
「お父さんとあの子に挨拶するだけで良いじゃないですか?」と僕は言う。
いつも誰かが観てくれると云う安心感でも充分だと思った。
なりたくてなった父子家庭ってワケではないし
父子家庭を斜めの眼で観るのもおかしな話で。
僕の父親も、僕の母親が半年近くいなくなった時は
世間の好奇の眼に晒された時期もあったと思う。
けど、案外と父親は父親で静かに人の意見にも耳を貸さず暮らしていた。
過剰に反応することなく、淡々としてれば良いのか?と。
本当は僕らよりも父親の方が寂しかったはずだし。
今では父子家庭のC君はウチでお風呂に入ってご飯を食べて帰る。
途中、宿題を済ませ明日の時間割用にランドセルの中身まで整えさせて。
大事な学校からの手紙は、お父さんに見せるためにテーブルの上に置かせ
連絡帳と揃えて置いてある。
僕が出来るのは、そこまでだと思う。
あとは、C君との話し相手か・・・
Bさんの部屋に行けば、ゲームが出来るし(笑)
Aさんの家に行くと本を読んでもらえる。
優しき独身が二人もいるのは心強い。
今、C君はアパートの子となった。
放置で生まれた関係ではなく、なんとなく頑張っているお父さんに
アパートの住人が手を差し伸べた結果なのかも知れないが。
どこの部屋の住人にも挨拶をして可愛がられている。
一番反対した独身女性も、今はC君が可愛いらしくて
一緒にTVを観る仲になったそうです。
学童のない時は、女性宅に行ってる事が多いC君。
母親代わりとまでは行かなくても、少しは気持ちが甘えられるんだと・・・
「僕のお母さんは鶏の胸肉は貧乏人が食べるんだと言ってたよ」とも聞いた。
「そうだよ、お兄ちゃんの周りは少しだけ胸肉が流行ったから
全員、貧乏人かもね(笑)」と返しておきました(笑)
(僕以外、鶏ハム関係者は貧乏人では御座いませんw)
これは胸肉の中に溶けるチーズを挿んであるステーキ。
子供が楽しんでくれれば、こういうものを作るのも面白いです。
トマトが嫌いと云うので、焼いてみたら甘くなりました。
今まで食べなかったC君が「お兄ちゃんのトマトも欲しい」と。
~父子家庭のお父さんからの感謝~
いつも完全に残り物だけで作るお弁当。
この日は生姜焼きをC君が食べたいと言ってたから
ジンジャーシロップを使いながら、お父さんにも三枚だけ。
あとは野菜の炒め物ですね・・・前日の。
先日、C君のお父さんが僕とAさんが立ち話している時に話し掛けてきました。
「いつも、Cと私がお世話になって大変感謝しています」と。
Aさんは声を大きくして「そんなこたぁ~良いんだよw」なんて言ってました。
立ち話もあれなので、Aさんの部屋に行き少しだけお話を・・・。
「いずれ、ここを出て実家の方に行こうとは思ってるんですが
まだお金が貯まってないので、年内はいると思います。
それで、今もお世話になっているので皆さんにお支払いを・・・」と。
これでAさんが少し沈黙・・・職人気質だから分かる。
「今、Bさんがいないから・・・お金の話はまた・・・」と遮った。
ちょっと不機嫌なAさんに僕から言ってしまった。
「Aさん? やはり、ずっとやってもらっていると楽ではあるけど
心苦しさは付いて回ると思うので、お父さんが金銭を払う事で
心が解放されることもあるんじゃないでしょうか?」と。
Aさんは黙ってグラスを3つ置いて、焼酎を注いだ。
呑めないお父さんだったが、お茶で割って呑んだ。
僕は割らないのでそのまま呑んで、Aさんはチビチビやってた。
・・・ずっと無言で・・・
Aさんが「酒は呑んだ、もう友達だ。
友達から金は取れないが、アンタがそれで心苦しくないなら
実費以外は一切貰わない」と。
僕も「それで良いと思います」と続いた。
C君のお父さんは、畳におでこを着けるような勢いで頭を下げた。
翌日、この事をBさんに話したら・・・
「え~!呼んでくれよ!!」だと(笑)
地団駄を踏んで悔しがってた。
おねぃちゃんのいるお店に行ってたので、C君のお父さんとは会えず・・・
そして、僕の作るお弁当に180円と云う値段が付いた。
それでも残り物なら十分だと思う。