バラエティ番組で「日本をホメる外国人」を無邪気に受け入れる“バカ”を卒業しよう
『週刊プレイボーイ』本誌で「モーリー・ロバートソンの挑発的ニッポン革命計画」を連載中のマルチな異才・モーリー・ロバートソンが語る。
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近年、NHKでも民放でも、“日本礼賛(らいさん)型”のバラエティ番組が増えています。そこで重用されるのが、流暢(りゅうちょう)な日本語でひたすら「日本は素晴らしい」と言ってくれる外国人タレント。“日本をホメる外国人枠”が明らかに存在します(実は、僕もこの役割を求められたりします)。
当たり前の話ですが、実際にはそういう日本語ペラペラな外国人はごく一部。99.9%は「日本語を話せず、日本に興味もない」人々です。しかし、そんなことすら考えもせず、多くの人が無邪気に喜んでいる現状は結構ヤバい。
この“日本礼賛”に代表されるメディアの劣化は、ドキュメンタリーや報道のジャンルにも表れています。テンプレート化した「お涙頂戴(ちょうだい)」のストーリーに合致する答えだけを探し、切り貼りしていく。取材に十分なリソースを割かず、専門家でもないコメンテーターに「あらかじめ決まった結論」を語らせる…。TVも紙媒体もネットも、一様に“落としどころ主義”が横行してファストフード化しています。
もちろん海外にもファストフード化したメディアはありますが、英語圏では優秀なジャーナリズムがトップに君臨しているため、ある程度の淘汰(とうた)作用が働く。影響力のあるメディアはあまり乱暴なやり方はしない。こうした競争が起こらないのは、日本語という“ガラパゴス”の弊害もあるかもしれません。
そのためか、多くの日本人はメディアに対して客観的な視点を持っていない。例えば、『報道ステーション』に政権から圧力があった、なかったという騒ぎにしても、大前提として視聴者が「TV」や『報ステ』という看板を過大評価していたから起きたこと。「そもそもあの番組は、“小さなカンシャク玉”を投げては騒ぐファストフード・ニュースじゃないか」という冷静な視点があれば、賛否どちらもあそこまで熱くはならなかったでしょう。
それにメディアは一方的に劣化しているわけではなく、受け手側のニーズに応えて「作品」を作っています。そのニーズをひと言で表せば、こうなるでしょう。
「毎日、驚きや感動が欲しい」
インスタントにカタルシスを感じたいという需要に応じて、メディアは意図的に人間の心理をくすぐる“感動的なネタ”や“わかりやすい怒り”をプロレスのように提供し続ける。すると、受け手側はだんだんリテラシーが低くなるーーはっきり言えば「バカ」になる。
それに合わせて、本当は複雑な現実をよりインスタントに、4コママンガ的な単純な展開に落とし込んだ「作品」が作られる。この共依存の結果、全体の知的レベルが下がっていく…。完全に負のスパイラルです。
もはや、作り手の側からこの状況を変えることは非常に難しい。まずは受け手の側が「バカな消費者」を脱するしかないでしょう。依存症の更生プログラムに着手し、意志を持ってマーケットに「ファストフードは食べない」というシグナルを出すーーつまり、レベルの低いメディアは相手にしない。
現実の本当の面白さを提示してくれる、噛(か)み応えのあるメディアをきちんと評価できる体力をつける。そこから始めれば、少しずつメディアの側も変わっていく可能性はあると思います。
●モーリー・ロバートソン(Morley Robertson)
1963年生まれ、米ニューヨーク出身。国際ジャーナリスト、ミュージシャン、ラジオDJなど多方面で活躍。レギュラーは『NEWSザップ!』(BSスカパー!)、『モーリー・ロバートソン チャンネル』(ニコ生)、『Morley Robertson Show』(Block.FM)、『所さん!大変ですよ』(NHK)など。本当に日本がすごいと思うのは文房具のクオリティ!