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成年後見の悪用被害56億円も、打つ手なし!? 行政書士組織加入3% 司法書士や弁護士も摘発相次ぐ
成年後見制度を悪用する事件が後を絶たない中、行政書士の不正防止などの役割を担う全国組織「コスモス成年後見サポートセンター」への加入率が3%にとどまっていることが27日、同センターへの取材で分かった。今年大阪府警に逮捕された行政書士も未加入で、不正防止の“網”から漏れていた。行政書士だけでなく、司法書士や弁護士の摘発も相次ぎ、昨年の制度悪用による被害額は約56億円。関係団体は成年後見業務の実態把握や不正防止に頭を悩ませている。
「会員なら防げた」
「会員であれば不正行為は防げたはず。監督できなかったことが悔やまれる」
コスモス成年後見サポートセンターの担当者はこう話す。今年1月、後見人の契約を結んだ高齢女性の預金約174万円を着服したとして、大阪府警が業務上横領容疑で行政書士の男(44)=同罪で公判中=を逮捕したが、男はコスモスの非会員だった。
コスモスは平成22年8月、成年後見業務を担う行政書士の育成を目的に日本行政書士会連合会が設立。育成と同時に力を入れているのが不正防止で、成年後見業務を担う会員に対し、3カ月ごとに業務日誌や被後見人の預貯金通帳のコピー、現金出納帳などの提出を義務化している。
だが、今年6月1日現在、同連合会所属の行政書士約4万5千人のうち加入者は1780人で、加入率はわずか約3%。非加入者でも成年後見人になることはできるため、成年後見業務に絡む不正があったとしても、十分に捕捉しきれないのが実態だ。コスモスの担当者は「加入率が低いのは、もともと行政書士の成年後見制度に対する認知度が低いことがある。不正防止のためにも加入者を増やしていきたい」と話す。