ありがとうございました。
ありがとうございました。
(テーマ音楽)
(出囃子)
(拍手)
(拍手)
(桂福團治)あまり頭下げるとバーコードが目立ちますので。
これを隠すのにねいろいろ苦労しましてねこの頭。
やっとこの辺までなったんです。
これがほんまの髪形
(上方)落語でございます。
(拍手)ね〜もう長いことやってますからな。
半世紀以上やってまんねん。
疲れた。
(笑い)ね〜道具いうたら扇子一本ですからなこれだけで半世紀以上やってまんねん扇子一本だけでっせ。
今は体の支えに使てますけど。
(笑い)今日やりますのはね大坂は船場の商人の噺ですがな船場の商人呼び方がありますな丁稚手代番頭ね?大番頭旦那ってなもんでね。
丁稚のこと「吉」がつきますな定吉とか留吉とかね。
そのころのお噂ですけどもね。
「おう定吉」。
もう始まってまんねん。
(笑い)「定吉」。
「へえへえ」。
「今何しとんねん」。
「あの〜こよりを撚ってます」。
「おう。
最前から百本撚るように言うといたけどもうなんぼになった?」。
「へえもう96本で」。
「あ〜そうか。
あと4本で百本か?」。
「いえ。
もう96本で百本で」。
(笑い)「4本しか撚ってえへんねやないかい。
最前から見てたらこよりで何じゃ馬を作って畳の上でポンポン叩いて遊んどる」。
「へえ。
あれ馬と違いまんがな鹿でんがな」。
「鹿?」。
「ええ。
角がついてまんがな。
これ馬やない鹿でんがな。
鹿を馬てそんな馬鹿な事を」。
(笑い)「おう与市。
店で本読むのやめとけ。
店で本読んでた時にお客さんが来てみいええかげんな応対になってしまうやろ。
本読む間があるんやったら店の品物をちゃんと見て回れ。
常七」。
「へえ」。
「お前昨晩どこ行ってた?」。
「へえ私風呂へ」。
「風呂は分かってる。
帰ってきてからえらい着物着替えて出てったな」。
「はあ。
実はあの〜風呂屋で伊勢屋の番頭さんに会いましたんで。
ほんならな『今日はこの伊勢屋の旦那さんの謡の会があるねや』と。
『ちょっとこう賑わわせに来てくれんか』ちゅうて謡の会のおつきあいに」。
「伊勢屋の番頭さんの謡の会のおつきあい?結構なこっちゃ。
どんどんおつきあいさせてもらえ。
伊勢屋の旦那さんええ?かわいがってもらいなされ。
けどなにかい?その謡の会というのは夜中までかかんのかい?」。
「いえ。
ありゃもうすぐ終わったんで」。
「ほんならお前どないした?」。
「ほんなら番頭はんが『ちょっとつきあわせてすまなんだな。
ちょっと行こか?』って言うてちょっとあの〜南まで」。
「船場から南いうたら堺か和歌山」。
「いえ〜。
南地」。
「えっ?」。
「南地」。
「南地?南地へなんちに行ってんねん?」。
(笑い)「やちゃ」。
「やちゃて何や?」。
「お茶屋でんがな」。
「そんな所行かんかてここにお茶あんがな」。
「いえ。
そこでワア〜ッ言いまんねん」。
「ここかてワア〜ッ言うたらええやないか」。
「難儀やがな〜。
その〜お茶屋でこの芸者揚げて…」。
「やかましい。
黙っとったらようそこまでぬけぬけ言いよったもんじゃ。
そらぁ私はなここへ奉公に上がってからズ〜ッと仕事一本できたんで遊びというものを知らん。
お茶屋の梯子段西向いて上がるのか東向いて上がるのか何も分からん。
芸者という紗は夏着るのか冬着るのか幇間という餅は焼いて食うのか煮て食うのか何も知らん朴念仁や。
それをつかまえてようぬけぬけと自慢たらしく言うたって!お前らの顔見てたら何じゃもうさい先が何か不安になってくるわ。
これからこの店がどないなるか心配じゃ。
お得意さんどないなってるかちょっとこれからお得意さん回りしてきます。
よろしいな?夕暮れぐらいまでには帰りますから旦那さんにそない言うときますように。
よろしいな?」。
「へっ。
お早うお帰り」。
「お早うお帰り」。
「お早うお帰り」。
ポイッと表へ出ました。
まっすぐ歩いとったんは半丁ほどでそれからス〜ッと横道へ入っていきまして裏長屋へやって来ます。
そこのある家に箪笥を1本預けてましてなそこで着替えを致します。
今まで店で着てた仕事着を全部すっかり脱ぎまして箪笥から出してきた着物というのが贅沢な着物。
長襦袢一つとりましても鶯茶に大津絵の一筆書きを散らしてあるというそりゃ粋な長襦袢で。
着物から帯から羽織の紐からそりゃもう贅沢な物この上なしというやつ。
大変身でございます。
ポイッと表へ。
細身の雪駄でチャ〜ラチャ〜ラと歩く姿今の番頭から大変身。
どう見ても大家の大旦那という姿でございます。
これから桜の宮へ花見に行こうというやつで。
お得意先回りと言うてたがえらい違いで…。
ちょうど高麗橋の橋詰めの所に屋形船を1艘貸し切ってまして芸者から幇間を寄せ集めております。
番頭さんを芸者たちが「まだかいな?」と待ってるところへチャ〜ラチャ〜ラ。
「ヤア〜次さん」。
「ヤア〜次さん」。
「おっ次さん」。
「ヤッ次さん」。
「シ〜ッ。
静っかに静っかにシ〜ッ静っかに。
お前ら大きな声出すなおい。
お忍びの花見じゃおう。
ええ?私はな内緒で行くんやぞ。
ええ?まぁ誰が見とるか分からへんやないか。
大きな声出してお前見つかったらどうすんねん。
これ旦那さんの耳に入ったらもう暇出されてまうがな。
首やがなお前。
な?さぁ舟はよ舟乗れ。
分からんようはよ舟乗れ。
おうおうおう船頭はん。
さぁ早いこと舟出してくれ」。
「へい。
出しまっさ。
おらっヨッコラショ」。
(下座囃子)「ヨッ」。
「おっおいおいおい。
障子窓閉めぃ障子窓」。
「暑苦しゅうおまんがな」。
「何言うとんねんお前。
こんなもんな屋形船というやつや土手歩いてる奴がな『誰が乗ってるかいな?』て覗いたがるねん。
『あっあそこの番頭や』分かってみいなお前旦那さんの耳に入ったら俺首やがなお前。
せやろ?お前ら内緒や内緒や。
な?ええか?障子はピッチリ閉めて。
よろしいな?ええ?けどな酒は飲んでもええぞ酒は。
けどもの言うな」。
(笑い)「島送りの舟みたいですがな。
大川へ着いたらよろしゅうおすやろ?」。
「あか〜ん。
大川へ着いたら舟がいっぱいおるやないかい。
どこのお前お得意さんが乗っとるか分からんがな。
『あそこの番頭や』と見つかったら旦那さんの耳に入ったら首やねんがな。
まぁまぁまぁまぁ酒だけは飲んでもええけどもの言うなや静かにな」。
東横堀川を舟を揺られながら大川まで行く間酒をチビチビ飲んでいます。
ちょうど酔いが回ってきた頃大川へ出て…。
「おい。
何じゃ?これ誰が障子閉めきった?」。
「あんたが閉め言うたんやがな」。
「早う開けんかい」。
障子を一斉にス〜ッと開けますと涼しい風がサ〜ッと入ってくる。
外は薄紅の刷毛を横に流したように春爛漫でございますな。
陸の上では桜の木の下で輪になって唄を唄うてる奴がおる踊っとる奴がおる徳利を持ってウロウロしとる奴がおる木にもたれて「ウエ〜ッ」とやっとるのがおる。
(笑い)千差万別の春景色というやつで。
「おい船頭。
ちょっとその辺ちょっと舟着けたってくれ。
お前ら皆陸上がって花見て遊んでこい。
俺は上がらん俺は。
お前な陸上がったら誰に会うや分からんやないかいお前。
ええ?そうやろ?『あっあそこの番頭や』とまた分かったらおい旦那さんの耳に入ったらお前首やがな。
せやろ?せやからお前らだけ行ってこい。
俺は舟の中で一人で待ってる」。
「そんな事言わんとな〜?次さんが行かなんだらまるで『仏作って眼入れず』ですがな。
なんか一緒に行きまひょ」。
「あかんあかん」。
「そんならこの一八に任しなはれ。
エヘヘええ事考えた。
このな扇をちょっとなエッエッエッちょっとちょっとソソソそこちょっとちょっとおっコココ…」。
「えっ?何じゃ?これ」。
「分かりまへんやろ?それ。
おうこっちしごき取って。
ちょっとこうくくって。
ビュッキュッてやってパッとやって」。
「うん?おうおうこれならおおきいな〜ああ」。
「どうです?格好よろしいがなええ?ええ。
それから片肌に肩脱ぎなはれ肩脱ぎなはれ」。
「何すんねん?何…?ちょっとやめやめやめやめ」。
言いながら中の長襦袢見せたいから…。
「やめやめ」。
自分から脱ぎよったんで。
(笑い)「まあ〜粋なこと。
次さんよくお似合いですがな。
ヤア〜ッそうそうこの間道頓堀で会うた右團次の『石橋』そっくり。
ヤア〜ッ嶋屋」。
(下座囃子)「ウハハハハ。
お前らつかまえたら肌脱がして踊らすぞハハハハ。
ほらほらほらほらほら」。
「まあ〜こっちこっち次さんこっち」。
「こっちだっせ〜」。
「ほらほらほらほらほらほらさぁさぁさぁさあ〜」。
賑やかな事はこの上もなしでございましてな。
ちょうどその中で静かに花を見てるお方がおられました。
これが何と言うか間の悪いこの番頭さん所の旦那でございました。
(笑い)「ありゃまたありゃ賑やかにえらい何じゃ踊ってる男がおるが」。
「旦那さん。
あれ旦那さん所の番頭はんの次兵衛さんでっせ」。
「何?ハッあれ次兵衛じゃないか。
何じゃ?あの派手な長襦袢。
あれっ?ヘエ〜ッ今朝朝聞いてたら『芸者という紗は夏着るのか冬着るのか』とか『幇間は焼いて食うのか煮て食うのか』言うてたが芸者も幇間も皆食ってしもとるやないか。
ちょっと顔見せたってもかわいそうやし後ろへ引き下がる訳にもいかん。
分からんように通り過ぎようか?」。
思いやりのある旦那さんで顔見せたったらかわいそうやいうので踊ってる横の横をス〜ッと通り過ぎようと思たんですが酒飲みというやつはね他人が右寄ると右寄りたがるもんで左寄ったら左寄るってなもんで踊りながら…。
「そらっつかまえたぞ〜」。
「やめなはれやめなさい」。
「誰や?誰や?誰や?誰や?」。
「人間違いじゃ」。
「『人間違いじゃ』誰や?家の旦那さんのもの真似してんのは」。
(笑い)「ちょっと待てよ顔…。
これ取っ…。
ハッ旦那さん」。
「やっぱり次兵衛やないか」。
「長らくご無沙汰致しております」。
(笑い)「承りますれば商売繁盛。
いずれ近いうちに寄せてもらいます」。
「これこれ仁輪加はやめな…。
あ〜皆さん方これは家の大事な一番番頭じゃでお手やわらかに頼みましたぞ。
さぁ行こか」。
ワ〜ッと行ってしまう。
あとに残った番頭真っ青で…。
「しもた〜っ。
河口で舟わってしもた〜っ」。
それからまっすぐバ〜ッと一目散に帰って参りまして元どおり裏長屋に。
今まで着てました着物を脱いで店で着てる仕事着に着替えますとそのまま帰ってきて…。
「はいただいま」。
「あっ番頭はんお帰り」。
「番頭はんお帰り」。
「番頭はんお帰り」。
「旦那さんは?」。
「旦那さん何か知りませんけど玄伯老さんと一緒に桜の宮に花見に行かれました」。
「やっぱりそうか」。
「どないしました?顔色悪うおますな」。
「ちょっと頭痛い。
頭痛いのでな今日はちょっと二階で休むわ。
今日はもう誰にも会われんさかいな水だけ上へ上げといて」。
二階へ上がりまして…。
「しもた〜っ。
あんな所でまさか旦那さんに会うとは。
来年暖簾分けしてもらうまでになってたのにこれで何もかも水の泡じゃ〜」。
「玄伯老さん。
えらい今日はえらいくたびれさせて」。
「何を仰るええ目の保養できまして」。
「今度はまた佳木さんの謡の会。
これはお内儀に」。
「あっいつもお気遣い頂きましてありがとうございます」。
「ウ〜ンはいただいま」。
「あっ旦那さんお帰り」。
「旦那さんお帰り」。
「旦那さんお帰り」。
「おっ番頭どんは?」。
「番頭はん何か今日何かお帰りになられまして頭痛い言うて二階で休んでおられます」。
「何?番頭が具合が悪いってか?大丈夫かいな?もしもの事があったら大変じゃぞ家の番頭はこの店の心柱じゃぞ〜」って下からウワ〜ッ。
「こたえるな〜」。
(笑い)「まもなく呼び出しに来るやろ。
『番頭〜っ。
あのざまは何じゃ。
顔も見とうないわ〜っ出てけ〜』。
そんな言い方しはらへん。
ジワ〜ッとくるか」。
(笑い)「『長年務めてもらいましたな〜』。
ジワ〜ッとくるからこたえるわ〜」。
下でコトッと音がしたらドキ〜ン。
やがて店がシ〜ンとなる。
戸の閉める音。
「ハア〜店じまい。
今日は早じまいかいな?ハア〜明日の朝請け人を使うてズバッと首切ってまっちゅうやっちゃな。
ハア〜ッもう切るなら早いことウッウッやってくれ〜っ」。
ウトウトっと居眠りしますと谷底へド〜ンと突き落とされた夢見てポッと目覚ましよる。
またウトウトっとすると何や役人にへらをしぼられてる夢を見てドキッとして目を覚ます。
まるで地獄ですな。
東の空が明るうなってきたら丁稚より先に起きて表出て水まいて掃除しだしよったんで…。
「番頭はん。
私が水まきます」。
「構へん構へん。
まだ寝とれ」。
「番頭はん。
私が掃除します」。
「構へん構へん。
お前帳場へ座っとれ」ってなもんで。
やがて掃除を済ましまして帳場へ座りましたけど…。
「この座布団この机この硯箱よう使てきたが今日でこれが見納めか〜」と思たら涙がポロポロポロ〜ッと出てくる。
やがて旦那さんお目覚めになられますといつものように神前仏前の行を済まして習慣となってますな縁側へ出て煙草盆を持ってきて煙管に煙草をひとつ詰めここで一服吸うのが癖でございまして。
「ポッフウ〜ッ」。
それを灰皿に。
コ〜ンという音が帳場に座ってる番頭の頭の先から足の先までズ〜ン。
「ウッハッハッハッハッ。
定吉定吉」。
「へえ」。
「番頭どんは?」「へえあの〜番頭さん今日何か一番先に起きまして水まいて掃除して」。
「これ。
余計な事言うんやない。
誰がそんな事を聞いてますか。
今番頭どんはどないしていなさるかと尋ねてるのじゃ」。
「へえ帳場に座っておられます」。
「『私が言うてた』と『手間は取らさんちょっとこれへ』とな」。
「へえ。
承知致しました。
番頭はん。
旦那さんがお呼びで」。
「とうとうきたか」。
「『手間は取らさんちょっとこれへ』と」。
「ハア〜ッこれで何もかも水の泡じゃ。
『来年暖簾分けしよう』までいってたのに。
ハア〜ッ河口で舟わってもうた〜っ」。
「番頭はん。
旦那さんがお呼びで」。
「どうとなどなれもう」。
「番頭はん。
旦那さんがお呼びで」。
「『今行く』言うとき」。
「ハア〜。
行ってきました」。
「番頭どんは?」。
「『今行く言うとき』」。
(笑い)「そらぁ何を言うのじゃ?家の番頭がそのような事言うようなお人か。
よしんば言うたとしてもそのとおり言う人がありますかい。
『まもなく番頭さんこれへお越しになられます』となぜ丁寧に手をついて言われんのじゃ。
だんだんだんだん増長しくさって。
『米の飯が頭のてっぺん上った』とは貴様のこっちゃ」。
廊下で聞いてる番頭「ウワ〜ッ」。
(笑い)「誰じゃ?誰じゃ?そこの廊下でペコペコ頭下げてん…。
何じゃ番頭じゃないか。
次兵衛じゃないか。
さぁこっちへ入らんかいこっちへ。
今其方を呼びにやったとこやがな。
こっち入んなはれ。
こっち入り。
座布団敷いて座布団敷きなされ座布団。
遠慮は要らん。
遠慮はな他所でしなはれ」。
「ヘヘ〜ッ」。
「ホホホホそういちいちペコペコ頭下げたら困りますがな。
いや〜いつもご苦労さんなこっちゃな。
あ〜其方のおかげでいつも大福帳が墨で黒く塗り潰す事ができます。
なかなか人を使うのは大変じゃろう。
今も子供に怒ってたんじゃがなあまり怒るとすねよるしなしてまた甘やかすと増長するし手かげん匙かげんというのはなかなか難しいもんじゃな〜。
うん?さぁお茶飲みなされ。
今店は大丈夫か?うん。
ほんならこの年寄りのばか話つきおうて下さるかな?うん?うん。
さぁさお茶飲んで。
いや〜ところで私の事をなよう旦那旦那と皆が言うんじゃがなあれはどこからきた言葉か知ってなさるか?知らん?そりゃそうじゃろ。
私もこの年になって初めてお寺の報恩講で聞いてきたんじゃ。
まぁ耳学問じゃ間違うたら笑わんといておくんなされや。
あの『旦那』という言葉は寺方からきたそうじゃな。
あのな天竺という所も五天竺あるそうじゃな。
その中に南天竺という所に赤栴檀と言うて立派な木が生ってるそうじゃ。
誰が見ても『立派な木じゃな』と言うんじゃがその周りにな難莚草というむさい草が生えてな『せっかくの赤栴檀の周りにこんな見る苦い草抜き取ってしまえ〜』と抜き取ったら赤栴檀が枯れてきたっちゅう訳じゃ。
『はてな?』。
つまり難莚草がほこえて枯れる。
それを肥やしにして赤栴檀は栄えてたという訳じゃ。
するとまた育ち栄えた赤栴檀から露を下ろすんじゃがその露が難莚草にはこの上もないまた肥やしとなって育つ。
して枯れる。
それを肥やしにしてまた赤栴檀がなお一層栄えるという。
するとまたなお一層の露を難莚草に下ろしてやるという。
まぁ『有無相持』と言うのかな?そこで赤栴檀の『檀』と難莚草の『難』をつけて『だんな』『旦那』という言葉はここからきたというハハハハハハ。
嘘かもしらん。
いや〜耳学問じゃ。
な?間違うたら笑わんといておくんなされや。
けどなこらぁええ話じゃ思て。
つまり我が家で言うたら私が赤栴檀っちゅう訳や。
其方が難莚草じゃ。
其方の難莚草のおかげでこの赤栴檀毎日結構な暮らしをさせてもろてます。
それだけにな其方にもなるだけ露を下ろさないかんと心得てますのじゃがな。
ところが其方が店行ったら店では番頭どん其方が赤栴檀じゃぞ。
店の若い者たちが難莚草じゃ。
まぁ見間違いとは思いますけどな近頃の店の若い者グンニャリしてないか?まぁ見間違いと思うけどもし店の若い者が枯れでもしたら其方の赤栴檀まで枯れてしまうぞ。
其方の赤栴檀枯れたら私の赤栴檀ひととおりもなく枯れるでな〜。
まぁそれでじゃなるだけ店の若い者にも露を下ろしてやっとくんなされや。
ちゃんとしてると思うけどなまぁまぁ老婆心で言うてますのじゃ。
それが言いたいためにいや手間取らしました。
さぁもう店行ってもらって結構さぁ」。
「ハア〜ッなんとありがたいお言葉」。
「そんな大層な事を。
さぁ店行ってさぁさもうけっ…。
まだ大丈夫か?ならもうちょっと話していかないか?」。
(笑い)「今お茶いれ替えさす。
さぁさお茶飲んで。
ところで昨日は桜の宮で結構なところを見せてもらいました」。
(笑い)「ハア〜ッあの時はお得意様のおつきあいでしかたなく」。
「ああ〜おつきあいか。
あ〜そうでしたか。
いやいやおつきあいはじゃんじゃんしなされや。
な?けど使い負けしたらあかんぞな。
よろしいか?使い負けすると商いの切っ先が鈍りますで。
先方さんがこれだけ使たらその倍使うようにな。
先方さんがこれだけ使たらその倍のこれだけじゃ。
な〜?ホホホ。
まぁ昨日のお前さんは使い負けはしてないと思たんじゃが」。
「ヘ〜ヘッヘッヘッ」。
「いやいやそう頭下げなさるな。
いや〜昨日は感心も得心もしましたいつの間にあない器用になりなすったんかな〜。
其方は覚えてるか知らんが家へ奉公に来た時は確か12か13の時じゃったかな。
猪飼野の甚兵衛どんが連れてきたんじゃ。
ピ〜ピ〜よう泣く子じゃった。
まぁ置いといたらそのうち使いものになるじゃろと置いといたらまあ〜小便垂ればっかりしてな。
灸すえたら治るやろと灸すえよう思たら色が黒うて分からんのじゃ」。
(笑い)「白粉で印したもんじゃハハハハハ。
世にも不器用な子がいつの間にあない器用になりなさったんじゃい?二つにもの言いつけたら一つは必ず忘れよる。
使いに行ったら物落として泣いて帰ってくるわ二桁の足し算1年半かかって教えたもんじゃ。
な〜いつの間にあない器用になったんかな〜。
芸者も幇間もまる飲みにしてたがな。
あらぁ『越後獅子』やったかな?確か」。
・「ツツンツンツンツツツンツツ〜ツ〜トツツンノツン」か。
「ちょっと見せとくれ」。
「いえ駄目駄目…」。
(笑い)「駄目駄目駄目ハア〜」。
「ハハハハ嘘じゃ嘘じゃハハハ。
あの慌てようはどうじゃいなハハハハハ。
正直者じゃな番頭どんは。
まぁ今度の戎講まで預けときましょうかなハハハハハハあ〜。
ところで番頭どん実は昨日桜の宮で其方を見た時は店の帳面に穴あけてるんやないかいなと正直なところ心配したんじゃ。
其方には悪いと思うたが店の帳面皆が寝静まってから隅から隅まで調べさしてもらいました。
偉いもんじゃな店の帳面どっこも無理をしてないやないか。
其方己のかい性で遊んでたんじゃ。
偉い。
『沈香も焚かな屁もこかん』っちゅうのはろくな奴やない。
どんどんやりなされ。
他人さんがびっくりするような事しでかしてこそまたびっくりするような商いができるんじゃどんどんやりなされや。
私ゃ其方のような番頭持って喜んでますのじゃぞ」。
「へえ。
エ〜エエエ」。
「泣きなさるな泣きなさるな。
其方が泣いたら私まで涙が出るやないか。
さぁさ。
ところで昨日はだいぶ酔ってたんか?」。
(笑い)「いえ。
酔いはそっくり醒めてました」。
「何じゃけったいな事言うてたぞ。
『長々ご無沙汰致してます』とか。
えろう長いこと会うてないような事言うてたがありゃどういう訳じゃ?」。
「もうあの時はあない言うよりしかたがございませんでした」。
「それはまたどういう訳じゃ?」。
「あの時旦那さんにお会いした時は『あ〜ここで会うたが百年目や』と思いました」。
(拍手)
(打ち出し太鼓)2015/06/27(土) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
日本の話芸 落語「百年目」[解][字][再]
第352回NHK上方落語の会から桂福團治さんの「百年目」をお送りします(5月7日(木)NHK大阪ホールで収録)。
詳細情報
番組内容
第352回NHK上方落語の会から桂福團治さんの「百年目」をお送りします(5月7日(木)NHK大阪ホールで収録)。【あらすじ】大店につとめる大番頭の次兵衛は、店ではまじめを装っているがなかなかの遊び人。ある日屋形船を仕立てて桜ノ宮へ、芸者や幇間と一緒に花見をしていると大旦那に見つけられる。来年ののれん分けの話もこれでなしになると一晩悩むが、翌朝旦那は次兵衛を呼び、情のあふれる説教を始め…。
出演者
【出演】桂福團治,中田まなみ,桂米輔,桂米平,桂吉の丞,増岡恵美
ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz
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