イッピン「握って 切って 気持ちイイ!〜兵庫 播州のはさみ〜」 2015.06.21


(玄瑞)せわぁない。
俺は死なん。
御用改めである!
(稔麿)僕はもう逃げん。
久坂玄瑞様!兵庫県芦屋の閑静な住宅街にあるおしゃれな手芸店。
その地下には…。
ご婦人たちが集う裁縫のワークショップです。
お気に入りの布でスカートや子供用のブラウスなど熱心に作っていますが手元にご注目。
皆さん何やらよく切れるはさみを使っていますね。
これらはみな兵庫県小野市で作られた播州のはさみ。
播州は兵庫県南部にあたる地域の古い名称です。
播州のはさみは裁縫好きの憧れの存在。
特に握りばさみの評価は高く日本一の生産量を誇ります。
女優の水沢エレナさんが老舗の刃物店を訪ねます。
究極の握りばさみがあると聞いたからです。
(店)いらっしゃいませ。
(水沢エレナ)こんにちは。
あっ。
わ〜かっこいい。
こちらすべて手作り。
8,000円するにもかかわらず入荷するとすぐに売り切れる人気ぶりだそう。
絶妙な感触。
(石田)試してみませんか?はい試してみたいです。
(音)パチッパチッ。
細い糸でもこの切れ味!わ〜。
(音)パチッパチッパチッ…。
でもここの…。
はい。
おっしゃるとおりですね。
はい。
シンプルながらもいかにも精密な作り。
きょうは握り心地も切れ味も抜群の「播州のはさみ」。
その秘密に迫ります。
兵庫県小野市。
かつて「播州」と呼ばれた地域にある工芸の町です。
江戸時代からはさみ作りが盛んで今でも50のメーカーが生産に携わっています。
水沢さん究極の握りばさみを作る工房を訪ねました。
すごい重い。
(扉が開く音)こんにちはおじゃまします!
(機械で打つ音)わ〜すごい音。
こんにちは!
(水池)はい。
4代目の刃物職人でキャリアは55年。
今小野で手打ちのはさみを作り続ける唯一の存在です。
一番最初はこの材料から初めて作るんですけどね。
これがあの握りばさみになるんですか?一見何の変哲もない鉄の棒が水池さんの手にかかると…みるみる形を変えて握りばさみになるんです。
まずは棒を伸ばしていく「オトシ」の作業です。
窯で鉄を熱して軟らかくします。
結構ここも今熱している所あついですか?あついですね。
わぁ真っ赤だ。
鉄が真っ赤になったら十分に軟らかくなった証拠。
機械で打って引き伸ばしていきます。
(機械で打つ音)あっという間に刃と柄の部分に分かれました。
次は両端の塊を刃の形にしていきます。
用いるのは金づちひとつ。
40年間使い続ける手製の道具です。
きびきびとした動き。
小気味よいですね。
(金づちでたたく音)ここで水池さん何かを取り出しました。
それは「鋼」。
鉄よりも炭素を多く含む硬い金属です。
接着剤となる鉄の粉をふりかけ鉄に鋼を付けます。
「付け鋼」という技法で抜群の切れ味の秘密はここにあるんです。
(音)ジューッ。
すご〜い。
ジューッと言ってますね。
はい。
へぇ〜知らなかったです。
じゃあこの鉄と鋼が組み合わさる事によって切れ味がよくなるっていう事ですか。
そうです。
鋼は刃の裏側だけに付けます。
鋼は硬いため薄く削っても欠ける事のない鋭い刃になります。
しかし一方硬いため加工には適していません。
たたいて接合します。
(金づちでたたく音)たたく角度を巧みに変えながら整えて刃の形になりました。
次の工程は「先切り」。
刃先を整えよく切れるようにする作業です。
水池さんノミに先端を当て…そぎ落としました。
実は…なるほど。
鉄に取り付けた鋼。
熱してたたくためどう接合しているか見ても分かりません。
薄くするうちに鉄が伸びて先端を覆ってしまう事もあるんです。
そこで…先端に鋼を確実に行き渡らせているんです。
こうして鋭い切れ味を持つ刃の部分が出来ました。
ではあの握り心地のよさはどのように生み出されるんでしょう。
決め手は「腰」と呼ばれるこの部分にあります。
次なる工程は「ナラシ」。
腰をたたいて薄く広げていく作業ですがその前に…。
たたかない場合はこうなる。
わ〜!戻らない。
腰がないですね全然。
そうです。
たたく前は腰がなく折り曲げると戻ってきません。
たたくのは腰に弾力を持たせるため。
薄く広げて竹のようなしなやかさを目指します。
(金づちでたたく音)
(金づちでたたく音)途中で宙に浮かすようにひっくり返されていましたね。
はいこれですか?そうです!それすごくかっこよかったです。
すご〜い。
それはテンポよくたたき続けるために生み出したワザでした。
わっちょっと持ってみてもいいですか?はい。
手ぇ汚れるけど。
大丈夫です。
あ硬い。
まだ硬いですね。
戻ってくる。
戻りますね。
わぁすご〜い。
はさみの腰をたたいて作るのは水池さんのこだわり。
実はこの作業プレス機を使うと楽に早く出来るんですがあえて手間暇をかけます。
では手打ちとプレス機では何が違うんでしょうか。
それぞれで作った握りばさみの比較実験をしました。
刃が開ききった状態から刃先が重なるまでにどれほどの力が必要になるんでしょうか。
結果は手打ちの方はプレス機で伸ばしたもののおよそ6割の力で済む事が分かりました。
何度もたたく事で弾力があるだけでなくより軽い力で握る事のできるはさみが作られていたのです。
これで形はほぼ出来上がりました。
(刃を研ぐ音)次は「研磨」の作業です。
全体を丁寧に研いでいきます。
やがて光沢に包まれます。
鉄の塊が美しい刃物になりました。
これでいよいよ完成!…かと思ったらまだ大事な作業が残っているんです。
最後の工程「曲げ」。
真ん中で曲げて先端を合わせないといけません。
水池さんお見事!全体が寸分の狂いなく出来ていて初めてぴたりと合うのです。
わぁ出来たてほやほやですね。
そうです。
じゃあ切ってみます。
わ〜やっぱり全然違う。
あの1本の棒からここまでなったんですもんね。
そうですそうです。
すごいなぁ。
柔らかな腰と鋭い刃先。
1本の鉄の棒に職人が命を吹き込みました。

(小林)こんにちは。
(水池)は〜い。
水池さんを訪ねる人が居ました。
小野市出身のデザイナーです。
播州のはさみを知ってもらいたいとヨーロッパの見本市に出品したりニューヨークやパリのセレクトショップで売り出したりしています。
中でも握りばさみは他に例のない使いやすさで好評を博しているんだそう。
ニューヨークのブルックリンっていう所に行ってきた時に革細工されてる方がどうしてもこの握りばさみが欲しいという事ですごい向こうで評価が高くて。
(水池)ほぉ。
(小林)ぜひぜひ。
播州のにぎりばさみが世界にその名をとどろかす日がいつか来るかもしれません。

(音)シャキンシャキンシャキン…。
小気味いい音をたてながら刈り込みばさみを操る現代的でスマートな庭造りで数々の賞を受賞した若きカリスマです。
小林さんの仕事に欠かせないのがこの刈り込みばさみ。
小野市で作られました。
15年間使い続けているんだそうです。
(音)シャキンシャキンシャキン…。
それが安いはさみと言ったらおかしいんですけども
(音)シャキンシャキンシャキン…。
そして…。
鋭い切れ味と気持ちのよい音。
プロをうならせる刈り込みばさみはどのように作られるんでしょうか。
(吉岡)どうぞ。
水沢さんその会社を訪ねました。
ここでは8人の職人が年間およそ1万丁のはさみを作っています。
3代目社長の…初めに鋼の板を機械にかけておおまかに刃の形を作っていきます。
(プレスする音)鋭い切れ味を生むための重要な作業はこの次。
特別に見せてもらいました。
うわっ火がすごい!
(燃え上がる炎の音)うわぁこわい!「焼き入れ」という作業です。
まずどろどろに金属が溶けた壺に刃を入れ800度になるまで熱します。
そして水につけ急激に冷やすのです。
なぜ熱して冷やすのか。
内部では大きな変化が生じているんです。
焼き入れ前の鋼の原子の配列です。
鉄と微量の炭素で出来ています。
熱すると周囲の炭素が加わります。
炭素が多いと鋼は固くなるのです。
次に急激に冷やし原子同士の間隔を狭める事で炭素を封じ込めていたんです。
焼き入れは冬に集中的に行います。
扱う刃は1日あたり1,500本。
手を止めるとノルマがこなせなくなります。
おとうさんあつくないですか?これあついですか?あついですよ。
あついんですか?タイミングが悪かったらすごくあつくなるんです。
大変ですよね。
トラブったら大変なんです。
切れ味を生むのは硬さの他にもうひとつ。
刃の形です。
これが大体出来上がりです。
なぜ隙間があるんでしょう?実は刈り込みばさみの刃は平行ではありません。
平行では物が切れないからです。
そこで刃にひねりを加えるんです。
このひねりが隙間の原因でした。
はさみの裏なんですけどこの面っていうのはこうひねりがついてるんですね。
へぇ〜。
でこっちもこうひねりがついてるんです。
順番にこの1点がずっと当たっていくように作ってます。
刃にひねりを加えたのは刃と刃が面でなく常に一点において交わるようにするためでした。
挟みながらこの一点がスムーズに移動していくと切れ味がいいんです。
シャキンという鋭い音はこのスムーズな移動から生まれていました。
移動をより滑らかにするのが「研磨」の作業です。
(刃を研ぐ音)ひねりが加えられた刃には起伏があり微妙な力加減が必要とされます。
やっぱりすごい集中力いりますよね。
そうですね。
研いでる瞬間は息止めてますよ。
えっ!お父さん息止めてました?もちろんです。
アハハハ…!真剣ですから。
やっぱりそうなんですね。
(刃を研ぐ音)全神経を集中させているのは左手の中指です。
ごく僅かな起伏を感知しながら均等に研いでいきます。
また火花の量や位置でも正確に研ぎが出来ているかを見極めているんだそうです。
最後にはさみを入念な検査にかけます。
刃と刃が正確にかみ合っているのかを確認するのはやはり音。
(はさみの鋭い音)こうして完成した刈り込みばさみ。
ひねりが生む鋭い音と切れ味。
いくつもの熟練ワザが積み重なって出来たイッピンです。
野菜はもちろん。
軟らかいお刺身や硬い冷凍の肉でも。
う〜ん。
実はこれ今年間3,000丁売れ記録的なヒットとなっているキッチンばさみ。
こんにちは!作ったのは包丁を得意とする…6年前父親の哲さんと開発に取り組んだのには訳がありました。
利き腕が不自由になった友人に片手でも包丁のように切れる道具を作れないか?まず思いついたのはキッチンばさみ。
しかし問題がありました。
キッチンばさみでも片手では硬いものは滑って切りにくいのです。
林さんは考えました。
「いっそ包丁とまな板の機能を持つはさみを作れないか」。
そして2か月におよぶ試行錯誤の末ある大胆なアイデアにたどり着きました。
はさみの2枚の刃のそれぞれに包丁とまな板の役割を担わせる事にしたのです。
出来上がった新しいキッチンばさみの刃をご覧ください。
片方は経験を生かし包丁さながらの薄く鋭い切り刃にしました。
そしてもう一方の刃はなんと切る機能が全くありません。
刃を平たく潰してまな板のように物を載せるだけにしたのです。
さらにしっかり捕らえられるようカーブをつけました。
包丁型の切り刃とまな板型の受け刃。
型破りなキッチンばさみがこうして誕生しました。
新しく挑戦してみたい事などありますか?思いはいろいろあるんですけど。
はい。
今確かに手大きさを比べてもらったら分かると思うんですけど。
大きいですね。
僕は大きいです。
はい。
小さいですよね。
はい。
あ…。
作れたらいいなと思うんですけど。
それによって切れ味も変わってくると思うんで。
そういうのが出来たらいいなと思うんですけどね。
友人を手助けしたい一心で開発した新しいキッチンばさみ。
これからも目標は使う人一人一人に喜ばれるはさみ作りです。

(金づちでたたく音)日々握りばさみ作りに打ち込む水池さん。
思いもかけない来客がありました。
(小林)こんにちは。
(水池)はい。
(マウリ)こんにちは。
(扉が閉まる音)小林さんが連れてきたのは水池さんに弟子入りを希望するイタリア人…イタリアから来ました。
日本語多分いけそう。
マウリさんは小林さんがインターネットに掲載した水池さんと手作り握りばさみの記事に感動。
もともと職人の家系に育ったマウリさんはコンピューター関係の仕事を投げ打って単身小野市にやってきました。
フフフフ…。

(笑い声)これは表。
裏裏。
裏裏裏!すいません。
絶やしたくない伝統のワザ。
水池さんは惜しむ事なく伝えていくつもりです。
2015/06/21(日) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
イッピン「握って 切って 気持ちイイ!〜兵庫 播州のはさみ〜」[字]

兵庫県小野市で作られる、握りばさみは、使い心地がよく、切れ味も抜群。鉄の棒を精密なハサミにする驚異のワザとは?画期的なキッチンバサミとは?水沢エレナが徹底取材。

詳細情報
番組内容
兵庫県小野市は知られざる、はさみの一大産地。中でも手作業で作る“握りばさみ”は、抜群の切れ味と極上の握り心地で、裁縫好きの憧れのイッピン。その熟練のワザとは?また造園のプロが愛用するはさみは、切れ味よく、音も絶品。音と切れ味の不思議な関係とは?そして、今大人気の、よく切れるキッチンバサミを生み出した画期的なアイデアとは?機能的で美しい“播州のはさみ”の魅力を水沢エレナが徹底リサーチ。
出演者
【リポーター】水沢エレナ,【語り】平野義和

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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