里山の雑木林。
えっいた?いた?子どもたちが何やら大はしゃぎしていますよ。
見つめていたのはこちらの幼虫。
2本の角とつぶらな瞳。
う〜ん確かにかわいいかも!
(子どもたち)きゃ〜かわいいよ。
一体何の幼虫かというと日本の国蝶オオムラサキ。
ルリ色の羽が宝石のように光り輝きます。
オオムラサキはただ美しいだけじゃありません。
勇猛果敢なファイターでもあるんです。
怖〜いスズメバチが襲ってきても…。
羽ではたき落としてしまいます。
王者カブトムシにも真っ向勝負。
力強い羽ばたきで「あっちに行け!」。
さらに驚きのスクープ。
なんと天敵の鳥を追いかけています!どうしてこんなことするんでしょう?里山の美しきファイターオオムラサキ。
戦い続ける生涯に迫ります。
(テーマ音楽)山梨県北杜市。
八ヶ岳のふもとにのどかな里山が広がります。
遠くには富士山。
なんともぜいたくな眺めです。
田んぼの周りの雑木林は日本最大級のオオムラサキの生息地として知られています。
芽吹きを迎えた林の地面を探してみると…。
いました!オオムラサキの幼虫です。
大きさは1センチほど。
かわいいですね。
落ち葉の下で冬を越しました。
春暖かくなってくると目を覚まし動きだします。
おや?幼虫が目の前の木に登り始めました。
よく見ると頭をしきりに動かしています。
実はこれ糸を吐いているんです。
ほら枝の上に白い糸が見えますよね。
糸には幼虫の体が風や振動で木から落ちないように支える大切な役割があります。
このように粘着性のある糸に足を引っ掛けながら進むんです。
万が一足を踏み外しても糸が命綱になるので安心。
幼虫が通ったあとにはあちこちに糸の道が出来ています。
こずえ近くまで登ってきました。
こんな高い所で探しているものは?芽吹いたばかりのエノキの若葉です。
柔らかくて食べやすいごちそう。
オオムラサキの幼虫はエノキの仲間の葉だけを食べて育ちます。
5月。
雑木林は劇的に姿を変えます。
木々が一斉に若葉を広げ鮮やかな緑色に染まりました。
エノキの葉もずいぶん大きくなりました。
ごちそういっぱいの林でオオムラサキの幼虫はというとこちらも鮮やかな緑色に変身していました。
脱皮したんです。
大きさも2倍近くになっています。
この時期幼虫が色を変えるのにはワケがあります。
雑木林では野鳥たちが昆虫などの獲物を探して目を光らせています。
オオムラサキの幼虫にとって最大の天敵です。
緑色に変身することで周りの風景に溶け込み身を守るんです。
しかし恐ろしい敵は他にもいます。
肉食性のカメムシです。
チョウなどの幼虫を捕らえ体液を吸い取ってしまいます。
オオムラサキの幼虫にもカメムシが忍び寄ってきました。
カメムシの武器は細長い口。
これを獲物の体に突き刺し体液を吸うんです。
カメムシがじりじりと幼虫のほうに近づいてきます。
幼虫が警戒して辺りを見渡し始めました。
カメムシはなおも接近。
幼虫は逃げようとしません。
大丈夫でしょうか。
ついにカメムシが幼虫のいる葉に足を掛けました。
あっ!幼虫が立ち向かいます。
体の柔らかい所を狙って口を突き刺そうとするカメムシに隙を与えません。
おっ!カメムシが逃げました。
何が起きたんでしょう?幼虫がカメムシの口にかみつき投げ飛ばしたんです。
かわいい顔してなかなかやります。
しかしカメムシも諦めていません。
正面から近づいてきました。
オオムラサキの幼虫は受けて立ちます。
両者見合っています。
幼虫は口を開いて威嚇。
カメムシは間合いを取っています。
あっ!幼虫が今度はカメムシの足をガブリ!見事な攻撃です。
カメムシは戦意喪失。
戦う幼虫オオムラサキ。
たくましいファイターです。
里山が田植えで忙しくなるころ。
オオムラサキの幼虫たちに大きな変化が訪れます。
葉っぱに体を固定し何やらもぞもぞしています。
さなぎへと変身しようとしているんです。
体をくねらせ幼虫時代の皮を脱ぎ捨てていきます。
自由に動き回れないためさなぎの時期は無防備になります。
3時間ほどたつと驚くような姿に変わりました。
色といい形といい隣にあるエノキの葉にそっくりです。
こうしてさらに巧妙にカムフラージュすることで天敵から身を守るんです。
しかしこちらのさなぎにはハエの仲間が近づいてきました。
チョウの幼虫などに卵を産み付けて寄生する恐ろしいハエもいます。
大丈夫でしょうか?あれ?何が起きたんでしょう。
体を震わせ追い払ったんです。
相手が触れた瞬間に素早く反応。
さなぎとは思えない激しい動きです。
さすがはファイターオオムラサキ。
さなぎ時代もひと味違います。
6月。
梅雨の合間のある晴れた日。
ついに「その時」が訪れます。
羽化です。
さなぎの殻が大きく割れ次第に全身が現れてきます。
美しい羽を持つチョウの姿へ最後の変身です。
隅々にまで体液を送り込み羽を伸ばしていきます。
鮮やかなルリ色の羽。
オスのオオムラサキです。
羽を広げると10センチほどもあります。
それにしても美しい色です。
羽の表面の鱗粉が光を反射することで鮮やかな色が現れます。
身近な里山に暮らすオオムラサキは日本を代表する美しいチョウとして1957年国蝶に選ばれました。
優雅に舞い飛ぶオオムラサキ。
このあとさらなる戦いの日々が待ち受けています。
第2章では手ごわいスズメバチやカブトムシと真っ向勝負。
オオムラサキの熱い夏に密着します。
そして衝撃のスクープ映像。
なんと天敵の鳥を追跡!そこには驚きの理由が隠されていました。
里山の減少とともに各地で数を減らしているオオムラサキ。
今回の舞台山梨県北杜市には日本最大級の生息地が残っています。
その理由は幼虫の食べ物となるエノキがたくさんあること。
エノキは燃料のまきなどに使うため大切にされてきました。
この辺りは八ヶ岳に降る雨や雪のおかげで水が豊か。
成長に多くの水分を必要とするエノキにぴったりだったんです。
さらに人々の努力もオオムラサキを守ってきました。
オオムラサキのすむ雑木林で毎年行われている下草刈り。
ほうっておくとやぶに覆われ荒れてしまうので地元の人たちの手入れが欠かせません。
オオムラサキを守っているのは大人だけではありません。
町の小学校では20年以上前からオオムラサキの飼育が行われています。
(歓声)幼虫のころから大切に育てチョウになったら雑木林へ返します。
あっ行った行った!日本の国蝶オオムラサキ。
ここでは今も人々のすぐ近くで光り輝いています。
7月中旬。
里山に夏が訪れました。
この時期オスのオオムラサキが羽化のピークを迎えます。
オスはメスよりも1週間ほど早く成虫になります。
雑木林を飛び交いながらメスを待ち続けるんです。
羽化したオスたちがまず最初に目指す場所があります。
それがこちら。
クヌギの木の幹にたくさんの虫が集まっています。
幹からしみ出す樹液を求めてやってきたんです。
オオムラサキはほとんど花の蜜を吸いません。
樹液が主食です。
でも樹液が出る場所は限られています。
雑木林のあちこちで樹液の争奪戦が繰り広げられます。
こちらではカナブンにスズメバチが襲いかかっています。
カブトとクワガタの里山頂上対決も始まりました!おっと!カブトムシ強い!強敵がひしめく里山の雑木林。
オオムラサキは大丈夫なんでしょうか。
スズメバチとにらみ合うオオムラサキ。
互いに一歩も引きません。
飛びかかるスズメバチを…なんと羽で投げ飛ばした!スズメバチはオオムラサキを獲物にすることもある危険な相手。
でもひるむことなく羽の一撃で見事撃退しました。
こちらでも向かってきたハチに…強烈な一撃!実はオオムラサキの美しい羽はライバルと戦うための武器にもなるんです。
羽が傷つくこともある捨て身の戦法ですがこれがなかなかの威力。
はたかれたハチが吹き飛んでいきます。
この威力の秘密はオオムラサキの体にあります。
同じくらいの大きさのアゲハチョウと比べるとずいぶん分厚いですよね。
ほかのチョウよりも羽ばたくための筋肉が発達しているんです。
でも羽の一撃では歯が立たない相手もいます。
里山の王者カブトムシです。
にらみ合う両者。
オオムラサキはどうやって戦うんでしょうか。
前足を振り回しけん制するするカブトムシ。
突然オオムラサキが高速で羽ばたき始めました。
するとどうでしょう!カブトムシが退散していきます。
風圧と振動に圧倒されたようです。
さすがは里山のファイターオオムラサキ。
こんな技も持っていたんですね。
ちょっと待った。
あれヒゲじいどうしました?うんいや確かにオオムラサキはすごいファイターですけどわざわざライバルがいっぱいの樹液を主食にしなくてもいいんじゃないですかね?他のチョウみたいに花の蜜を吸えばいいんじゃないですか?う〜んなるほど。
樹液にはオオムラサキにとって欠かせない成分が花の蜜より多く含まれているんです。
筋肉を維持するのに大切なたんぱく質です。
ほう。
それに一つ一つの花から出る蜜の量は少ないうえたくさんの虫が集まります。
せっかく花を見つけても蜜がないこともあるんです。
あらそうなんだ。
一方樹液は1か所からたくさん出てきます。
ライバルとの戦いにさえ勝てば確実に食べ物を得ることができるというわけなんですよ。
う〜ん樹液のために戦うオオムラサキ。
まるでチョウの中のジュエッキー・チェンですな。
アチョウ〜なんて。
アチョーはブルース・リーですよ。
あちゃ〜。
メスのオオムラサキが姿を現します。
メスはオスと異なりずいぶんとシックないでたち。
体の大きさがオスより一回り大きいのも特徴です。
樹液を求めて飛び立つメス。
オスたちにとって待ちに待った瞬間です。
メスのあとを追いかけるオス。
オスはこうしてメスに結婚を迫ります。
一見仲よくじゃれ合う恋人同士のようにも見えますがメスはオスを審査しているんです。
メスはオスに追われる時わざと複雑な飛び方をします。
そんなメスを追い続けるにはスピードや瞬発力そして持久力が必要です。
こうしてメスは自分の動きについてこられる頼もしいオスを見極めます。
たくましい羽ばたきは戦いだけでなく恋にも欠かせないんです。
こちらでは別のオスが乱入。
恋のバトルもまた熾烈なんですねぇ。
オスの寿命はわずか2週間。
必死にメスを追い続けます。
メスのお眼鏡にかなうと2人っきりでの告白タイム。
「僕と結婚して下さい」。
オスはメスの目の前で羽ばたき力強さを全力でアピールします。
そして恋はいよいよクライマックス。
オスがおなかを折り曲げメスに近づきます。
お尻をメスにくっつけるとカップル成立ですが…あ〜残念。
こちらでもオスがゆっくり近づきます。
今度はうまくいくでしょうか。
無事に結ばれたカップル。
こうして強いファイターの命が受け継がれていきます。
そんな熱いオオムラサキの恋の季節に取材班は驚きの情報を耳にしました。
オオムラサキが鳥を追う?鳥は昆虫にとって恐ろしい天敵のはず。
本当にそんなことがあるんでしょうか。
私たちは目撃情報のあった場所へ。
この目で真相を確かめることにしました。
しかし何も起きないまま時間ばかりが過ぎていきました。
一瞬の出来事でした。
よく見ると確かに飛ぶ鳥のあとをオオムラサキらしきチョウが追いかけています。
地元の人たちの証言はやはり本当でした。
さらにこちらではツバメのあとを2匹のオオムラサキが追いかけています。
まるでツバメを激しく威嚇しているかのようです。
ツバメはふだん時速50キロほどの速さで飛行します。
でもオオムラサキはそのあとを粘り強く追い続けています。
驚くべき飛行能力です。
取材班が執念で捉えたスクープ映像です。
あ〜ちょっと失礼。
えっヒゲじい!いいところなのに何ですか?あいやこりゃ失礼失礼。
チョウが鳥を追うなんてチョウビックリなんてね。
わっ。
でもなんで天敵である鳥をわざわざ追いかけるんですかね?実は鳥を追いかけているオオムラサキはすべてオス。
恋の季節オスは空を飛んでいるものなら何でもメスだと思って追いかけてしまうようなんです。
えっ勘違いってこと?そうなんです。
試しにこんな実験をしてみました。
オスのそばに赤いボールを投げてみます。
それっ!あ〜追いかけた。
こんなものでも追いかけるんですな。
実はオオムラサキは目が悪くてものがよく見えていないそうなんです。
えっそうなの?その証拠にこちら。
トンボも追いかけていますよね。
あ〜ホントだ。
オスの寿命はわずか2週間しかありません。
なんとかメスを捕まえようとオスは動くものをやみくもに追いかけて回るんです。
へ〜そうなんだ。
鳥を追うという奇妙な行動は懸命に命をつなごうとするオスの姿だったんです。
う〜んオスの必死さひっしひっしと伝わってまいりましたぞ。
夏の終わり。
懸命に戦い続けてきたファイターの羽はもうボロボロ。
使命を果たしたオスは短い一生を終え土に返っていきます。
一方残されたメスは産卵の時期を迎えます。
幼虫が食べていたエノキの葉に一つ一つ丹念に産み付けていきます。
里山に秋がやってきました。
木々が美しく色づきます。
エノキの木に小さな幼虫の姿がありました。
秋が深まるころ幼虫はエノキの幹を下っていきます。
目指すのは根元に積もった落ち葉。
冬の寒さを乗り切るため落ち葉の隙間に潜り込みます。
次の春までおやすみなさい。
美しきファイターオオムラサキ。
激しくもはかない命が里山でめぐっています。
2015/06/21(日) 19:30〜20:00
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「里山の美しきファイター!オオムラサキ」[字]
瑠璃色に輝く羽を持つ日本の国蝶(ちょう)オオムラサキ。里山屈指のファイターだ。スズメバチやカブトムシと戦い、天敵の鳥まで追跡!山梨県の生息地で激しい生涯に迫る。
詳細情報
番組内容
宝石のように美しい里山の昆虫を2週連続で紹介する。日本の国蝶(ちょう)オオムラサキ。瑠璃色に光り輝く羽を持つ美しいチョウだ。ただ美しいだけではない。勇猛なファイターでもある。スズメバチを羽ではたき落とし、カブトムシとも互角に戦う。さらに飛ぶ鳥を見つけると、激しく追い回して空中戦を仕掛ける。なぜオオムラサキは戦い続けるのか?山梨県にある日本最大級の生息地で、美しきファイターの生涯に迫る。歌:平原綾香
出演者
【語り】首藤奈知子,龍田直樹,豊嶋真千子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
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