スナックに行ったんですよね。
潔白も何もその関係がもう潔白じゃないですもんね。
(荒瀬)俺がここに来てから3kg体重が落ちた。
俺じゃないぞ。
お前のお師匠さんだ。
(荒瀬)CTを撮った方がいい。
(龍太郎)早急に話をする。
(荒瀬)ああ。
(龍太郎)さすが麻酔科医だ。
よく気付いてくれた。
(荒瀬)優秀な麻酔科医だからだ。
(龍太郎)ああ。
(荒瀬)麻酔科医を正当に評価してくれる外科医もそういないけどな。
(荒瀬)俺も若いころはひどい目に遭ったぜ。
(鬼頭)ようこそ。
L&P病院へ。
人工心臓の開発は進んでるようね。
(加藤)おかげさまで。
懸案だったバッテリーの縮小化は植え込み型除細動器の非接触型充電システムをモディファイして解決できそうです。
(鬼頭)順調なようで何より。
ここは大学病院じゃないからつまらない権力争いに足を引っ張られることはない。
(鬼頭)しかも親会社のバックアップで十分な研究費が使える。
私は今まで医療はビジネスではないと思っていました。
(岡村)《ビジネスの力で多くの患者を救うことができるんです》興味深い男よね。
(加藤)えっ?岡村征。
彼は単に利益を追い求めるだけの経営コンサルタントではない。
岡村には理想の医療がある。
(加藤)理想の医療?
(鬼頭)そして岡村はビジネスの力でその理想を現実に変えようとしている。
朝田とは真逆の男よね。
でもあの男にはまだ秘密がある。
(野口)うちの羽垣院長のことなんだけどもね。
(岡村)はい。
(野口)ここで働くドクターの大半は彼の名前で集めたんだよ。
(野口)この病院に対する羽垣院長の貢献度は計り知れないよね。
実はその院長がこのところ循環器の患者が減っていることを大変気にされていてね。
(岡村)ああ。
確かにチームドラゴンが来てからは桜井病院を選ぶ患者が増えています。
(野口)循環器は院長の専門だから自分が何とかしないとって責任を感じておられるんだよ。
うちに先天性二尖弁の大動脈弁狭窄症の患者がいるでしょう。
弁置換術の適用だよね?羽垣院長が専門としてきた。
(岡村)まさか院長自らがそれを執刀すると?
(野口)オペ時間の最短記録を更新してL&Pに患者を取り戻すと息巻いていたよ。
(岡村)チッ。
院長が自ら執刀するとなれば通常のオペと同じようにはいきません。
(野口)もちろんそうだよ。
だから最高のスタッフを揃えてほしいんだよ。
君にね。
(岡村)器械出しは米田。
外回りは金子小野。
以上が今のL&Pのベストメンバーです。
(羽垣)麻酔科医は女なのか?
(岡村)うちで一番腕のいい麻酔科医です。
(羽垣)女医は嫌いなんだ。
野口君が言ってたが桜井病院にいいのがいるんだって?
(岡村)ああ。
荒瀬先生ですか?
(羽垣)そんな名前だったかな。
しかし荒瀬先生には桜井病院での仕事がありますから。
(羽垣)ずいぶん援助をしてやってるんだろ?麻酔科医を一人連れてくることもできないのか?いや。
それはもちろん可能です。
いや。
可能ですが面倒な男ですよ?人の言うことを素直に聞くようなタイプではありませんし。
(羽垣)麻酔科医風情が言うことを聞くも聞かないもないだろう。
うん?失礼します。
(伊集院)症例は65歳男性。
遠位弓部に最大形62mmの紡錘状動脈瘤があります。
増大傾向もありオペ適用ですね。
(龍太郎)腸骨動脈の屈曲と動脈硬化が強い症例だ。
今回はオープンステントでいこう。
(荒瀬)そうだな。
それがベストだ。
(早川)あのう。
このカンファレンスって残業代出ます?
(猪原)えっ?
(伊集院)早川先生。
(早川)だってもう5時過ぎてますよ。
(伊集院)昼間はみんな患者さんの診察で集まれないでしょ。
それに早川先生だってオペの経験積みたくないの?
(岡村)《彼らの周りに起きていることを全て報告してください》《早川先生が優秀な人材と見込んでの研修プランです》ハァー。
分かりました。
(猪原)さあカンファレンス再開しましょ。
(龍太郎)伊集院。
お前が執刀しろ。
えっ?
(龍太郎)ステントグラフトなら俺よりお前の方が経験を積んでいる。
はい。
(猪原)お手並み拝見ね。
よろしくお願いします。
・
(桜井)荒瀬君。
ちょっといいか?
(桜井)朝田も来てくれ。
(桜井)L&Pで行われるオペに荒瀬君に参加してほしいという要請があった。
(荒瀬)はあ?
(桜井)岡村君がどうしても君の力を借りたいというんでね。
(荒瀬)勘弁してくれよ。
俺は腕の悪い外科医にうんざりしてここに来たんだからさ。
それは分かってる。
ただL&Pとの協力関係は今のうちにとっては不可欠なものだ。
患者のためにもこの関係は維持していきたい。
岡村君からはカテ室の共同使用についてもオファーをもらっている。
だから俺としてはうちの診療に支障のないかぎりL&Pの要望に応じたい。
(龍太郎)オペの内容は?
(桜井)患者は7歳の男の子だ。
サッカーの練習中に倒れたらしい。
二尖弁由来の大動脈弁狭窄症を起こしている。
(荒瀬)7歳。
執刀医は?
(桜井)羽垣院長自ら執刀するそうだ。
(荒瀬)羽垣…。
(桜井)羽垣院長は君の評判を聞いて指名してきた。
(荒瀬)羽垣が俺を?
(桜井)考えてみてくれないか。
L&Pの院長知ってるのか?
(荒瀬)あっちは俺のことなんて覚えてもいないと思ったけどな。
研修医時代あいつのオペに入ったことがあった。
より安全で確実な手術のために当時はまだ一般的じゃなかった経食道エコーを習得した。
(荒瀬)《羽垣教授。
上行大動脈内にプラークがあります》
(荒瀬)《送血管挿入は別の場所にしてください》
(助手)《お前何様のつもりだ。
研修医が教授に意見するなんて》
(荒瀬)《教授?》
(羽垣)《君の意見など聞いていない》
(荒瀬)その患者は術後意識が戻らないまま7日目に亡くなった。
やつらは自分たちのミスを麻酔科の術中管理が不十分だったと責任転嫁して俺の指導医は地方に飛ばされた。
目覚めさせるまでが麻酔科医の仕事だ。
なのにそれができるかどうかは外科医しだいだって思い知らされた。
バカバカしい。
あのときもっと食い下がってれば患者を死なせずに済んだのかな?今のお前なら患者を救えるんじゃないのか?オペに入る。
今度こそあいつの好きなようにはさせない。
・
(ノック)
(木原)ばあ。
木原先生だぞ。
こちら麻酔を担当します荒瀬先生です。
(蓮)ねえ。
手術って痛い?
(荒瀬)眠ってる間に終わるから何にも痛くないぞ。
(蓮)僕眠くないよ。
俺が眠らせてやるから大丈夫だ。
先生は眠らせ屋さんなんだね。
そうだな。
(陽子)あのう。
院長先生が手術をしてくださると伺ったんですが。
(木原)はい。
院長自ら執刀することになりました。
(蓮)院長先生って偉い人?
(木原)そうだぞ。
この病院で一番偉い先生だぞ。
(蓮)そっか。
じゃあ大丈夫だね。
(荒瀬)ああ。
ホントに大丈夫だよね?
(荒瀬)大丈夫だ。
よかった。
(陽子)よかったわね。
蓮。
(荒瀬)おい。
院長は?
(木原)院長だから院長室なんじゃないですかね?
(荒瀬)院長室はどっちだ?
(木原)ちょっ…。
待ってください。
(木原)院長室に何の用ですか?
(荒瀬)エコーで高度な左室流出路狭窄を起こしてることが分かった。
(木原)えっ?
(荒瀬)弁置換をやっても心臓はよくならない。
弁の手前の流出路の狭窄解除がいる。
(木原)院長は大動脈弁置換術の最短記録にしか興味がないんです。
余計なこと言わないでください。
(荒瀬)ふざけんな。
弁置換だけやったって流出狭窄が残っていれば患者にとっては手術の傷しか残らない。
勘弁してくださいよ。
相手は院長ですよ?誰がそんなこと言えるんですか。
僕たちは言われたとおりのオペだけしてればいいんです。
いいですね?
(陽子)セカンドオピニオンですか?
(荒瀬)病気の状態によって医師の診察や治療方針が異なることがあります。
(陽子)でも蓮の手術をしてくださるのは院長先生なんですよね?大動脈弁置換術が専門だって。
(荒瀬)ただ蓮君の心臓は弁置換だけでは回復しない可能性もあります。
手術をするのは他の医師の意見を聞いてからでも遅くありません。
セカンドオピニオンは常識です。
まともな医師ならそんなことで機嫌を損ねることはありません。
セカンドオピニオン。
(陽子)そうですか。
じゃあ。
それでどなたに伺えば?
(荒瀬)この近くの桜井病院に朝田という優秀な心臓外科医がいます。
朝田!
(木原)朝田!蓮君の心臓は大動脈弁の狭窄だけではなく肥大した心室中隔による左室流出路狭窄も伴いなおかつ心筋症による不整脈も出始めています。
左室流出路の狭窄を放っておけば人工心肺から離脱できなくなるかもしれません。
(陽子)えっ?じゃあどうすれば?自身の弁を用いた大動脈弁形成術をトライし加えて左室流出路拡張術と心室頻拍の発生を予防するアブレーション手術までやるべきです。
そうすれば蓮の心臓はよくなるんでしょうか?はい。
だったら…。
朝田先生にお願いしたいです。
分かりました。
・
(ドアの開く音)
(羽垣)何をしている?
(木原)麻酔科医の荒瀬先生です。
こちらは桜井病院の心臓外科医朝田先生です。
君が例の麻酔科医か。
それで桜井病院の心臓外科医とここで何を?
(荒瀬)患者さんにとって一番いい方法を…。
(羽垣)私が執刀するのが一番よい方法に決まってるだろ?この状態で人工弁の弁置換だけ行っても患者の心臓は回復しない。
君はこの症例と同じ大動脈弁狭窄症に大動脈弁形成術を成功させたことがあるのかね?いや。
(羽垣)やったこともない手術をよく患者さんに勧めることができるな。
よろしいですか?最近の医療の進歩は目覚ましいものがあります。
今ここでリスクの高い時間のかかる手術をすることがお子さんのためでしょうか?
(羽垣)数年後には今より安全で確実な治療法が可能になります。
しかしこの術式では必ず再手術が必要となる。
再手術となればリスクも上がる。
何よりいつかまた手術を受けなければいけないという精神的な負担が付きまとう。
(羽垣)君が私のオペに反対する本当の理由は別にあるんじゃないのか?
(陽子)えっ?桜井病院は経営が苦しいと聞いています。
だからうちから患者を奪って余計なオペまでしようとするんでしょう。
術式が多くなれば点数も加算されて病院の利益も増えますから。
本当にお子さんのためになる選択は何かよくお考えになることですな。
では。
(木原)患者は院長のオペを受けることに決めたそうです。
まあ当然のことですよね。
(岡村)賢明な選択ですね。
(木原)まったく。
荒瀬先生が暴走を始めたときにはどうなることかと思いましたよ。
あのう…。
(岡村)あっ。
ご苦労さまでした。
(荒瀬)悪かったな。
せっかく来てもらったのに。
いや。
俺も降りる。
弁置換だけなら俺じゃなくてもいいだろ。
それでいいのか?えっ?あの子の心臓は何が起こるか分からない。
オペ室の外にいたんじゃ何もできないぞ。
荒瀬。
患者を救えるのはお前だけだ。
(木原)院長のオペに入れるなんて光栄です。
(羽垣)42分を切るからね。
(羽垣)よく目に焼き付けておくんだな。
(荒瀬)お立ち台。
(看護師)はい。
(荒瀬)1つ。
2つ。
3つ…。
(荒瀬)6つ。
にゃにゃーつ。
はい。
落ちた。
・
(ドアの開く音)
(羽垣)ほう。
早いというのは本当のようだな。
(荒瀬)院長。
やはり左室流出路狭窄の処置もすべきです。
(羽垣)まだそんなことを言ってるのか?
(荒瀬)流出路の狭窄が解消されなければ左室内圧較差が残存しSAMを起こす可能性があります。
(羽垣)オペの方針は私が決定する。
麻酔科医は黙って指示に従っていればいいんだ。
(荒瀬)あんたまた同じミスを犯すつもりか?
(羽垣)何の話だ?
(荒瀬)15年前。
あんたは俺の意見を聞かずに患者を死なせた。
(羽垣)15年前?
(荒瀬)プラークのある部位に挿管したせいで血栓閉塞ができて脳梗塞で亡くなった患者がいただろ?
(羽垣)そんな患者のことは知らん。
(荒瀬)覚えてないのも無理はないか。
責任は麻酔科に押し付けてそれっきりだったもんな。
(羽垣)オペ室のコンダクターは外科医だ。
麻酔科医は足を引っ張らないことだけを考えていろ。
これより先天性二尖弁による大動脈弁狭窄症に対し機械弁を用いた大動脈弁置換術を行う。
(一同)お願いします。
(羽垣)メス。
(看護師)はい。
(羽垣)電メス。
(看護師)はい。
(看護師)スタートします。
(羽垣)はい。
(木原)は…はい。
(羽垣)はい。
(看護師)はい。
(看護師)15分経過しました。
(羽垣)16mm機械弁。
(看護師)21分53秒経過。
(羽垣)急げ。
(看護師)はい。
(看護師)失礼します。
(羽垣)時間は?
(看護師)遮断時間23分30秒。
(ME)早いですね。
(ME)ああ。
プレギーいきますか?
(羽垣)いらん。
このままいけ。
(桜井)今日だったな。
はい。
(羽垣)アオルタデクランプ。
(ME)バックアップ。
(羽垣)大動脈弁置換術終了。
(看護師)大動脈遮断時間41分20秒です。
(木原)弁置換術の最短記録更新です。
(羽垣)うるさい麻酔科医がいなければ40分は切れたな。
(笑い声)
(桜井)荒瀬君には嫌な思いをさせたようだ。
あいつはそんなこと気にしてません。
ただ患者のためにベストな方法が取れないことに苦しんでます。
うむ。
うっ!?先生?
(せき)先生!?大丈夫ですか?先生!
(羽垣)あと閉胸は頼んだよ。
(心電計の警告音)
(荒瀬)VTだ。
(羽垣)何だ?
(荒瀬)VF。
DC準備しろ。
早くしろ!
(看護師)はい。
(木原)パドル。
(看護師)はい。
(看護師)チャージできました。
(木原)離れて。
オン。
(除細動器の音)
(心電計の警告音)
(看護師)戻りません。
(荒瀬)心臓をもみ続けて圧を出せ。
(木原)ああ。
(木原)ああ…。
(荒瀬)ME。
もう一度人工心肺にのせるぞ。
(ME)はい。
(荒瀬)早く指示しろよ。
あんたがコンダクターなんだろ?
(羽垣)うるさい!私に命令するな!
(木原)先生。
流出路狭窄を解除しないと。
僧帽弁経由で狭窄を解除しましょう。
(羽垣)ああ。
それでいい。
(荒瀬)駄目だ。
(木原)えっ!?
(荒瀬)それじゃ正常な僧帽弁まで傷つける恐れがある。
左室心尖部に小切開を加えそこから流出路狭窄を解除。
アブレーションも追加するんだ。
(羽垣)オペをしたこともないくせに余計な口出しをするな。
(荒瀬)やったことのないオペだから怖いのか?
(羽垣)ここでの決定権は私にあると言ってるだろ。
(荒瀬)あんたの間違った決定のせいでまた患者を死なせるのか!
(羽垣)いいから私の指示に従え。
(岡村)荒瀬先生の指示に従ってください。
(羽垣)何だと!?
(岡村)あなたの誤った判断で患者を死なせるわけにはいきません。
あなたはもはやコンダクターではない。
(羽垣)貴様誰に向かって口を利いているのか分かってるのか!
(岡村)羽垣院長。
もはやここにあなたの居場所はありません。
(羽垣)私は弁置換の最短記録を更新した…。
(岡村)ご退室願います。
(羽垣)くっ!
(木原)おい。
どうするんだ?
(荒瀬)お前が執刀しろ。
(木原)えっ!?しかし…。
(荒瀬)俺が指示する。
お前は言われたとおりにやればいい。
(木原)でも…。
(荒瀬)人工心肺のせるぞ。
セカンドラン。
(ME)はい。
(荒瀬)よし。
左室心尖部に小切開を加える。
木原。
前下行枝の走行に平行して切開。
縫合する際の縫い代も考えろ。
(木原)メス。
(看護師)はい。
(荒瀬)慎重に。
(木原)メッツェン。
(看護師)はい。
(木原)ああー。
(荒瀬)落ち着け。
(医師)サッカーアップ。
(ME)はい。
(荒瀬)3cmでいい。
切開したらフェルトでつり上げろ。
(木原)よし。
フェルト。
(看護師)はい。
(木原)持って。
(医師)はい。
(木原)2−0プロリン。
(看護師)はい。
(木原)よし。
(荒瀬)肥厚した中隔が見えるか?
(木原)はい。
(荒瀬)先にアブレーションしろ。
(木原)はい。
(荒瀬)ペンタイプだ。
(看護師)はい。
(荒瀬)乳頭筋周囲を焼け。
(木原)はい。
アブレーション開始。
カウント。
(加藤)今院長先生が出ていかれましたけど。
木原?
(木原)アブレーション終了。
(荒瀬)よし。
いいぞ。
次は左室流出路の拡張術だ。
(木原)はい。
(荒瀬)指で触ってみろ。
肥厚した中隔から長軸方向に2cm短軸方向に1cm。
短冊状に切開だ。
(ME)何なんだ?この麻酔科医。
(看護師)外科医に指示をする麻酔科医なんて初めて見ました。
(荒瀬)プレギー入れて何分だ?
(ME)10分経過します。
(荒瀬)肥大型心筋症のオペだ。
プレギーはじゃんじゃんいくぞ。
切除が終わったらレトロ入れろ。
(ME)いつでもいけます。
(荒瀬)ああ。
セルセーバー血返せ。
(看護師)はい。
(木原)中隔心筋切除終了。
(荒瀬)よし。
よくやった。
後は左室から機械弁を確認して問題なければ心室を縫合して終了だ。
(木原)はい。
(荒瀬)体温戻せ。
(木原)駄目だ!
(荒瀬)どうした?
(木原)人工弁の逢着が外れてる。
デタッチしてる。
(荒瀬)小さな心臓に無理やり機械弁を押し込んで雑に縫合したせいだ。
(木原)もう一度縫合する。
(荒瀬)待て。
(荒瀬)ロスだ。
(木原)えっ!?
(荒瀬)ロス手術をやる。
(加藤)ロス。
患者自身の肺動脈弁をデタッチした人工弁と置換し摘出した肺動脈弁側に人工弁を植え込む。
成功すれば再手術の頻度は少ない。
その代わり難易度ははるかに高い。
それを木原にやらせるなんて。
(木原)ロス手術なんて無理に決まってんだろ!
(荒瀬)落ち着け。
84kg。
(木原)んっ。
(荒瀬)俺の言うとおりにやればできる。
私が。
(岡村)あなたはここにいてください。
(木原)絶対無理だって。
この状況でロスができるのは朝田ぐらいだ。
(荒瀬)俺がお前を朝田にしてやる。
今ここで患者を救えるのはお前しかいない。
やれ。
(荒瀬)この患者は絶対に死なせない。
(木原)分かった。
(荒瀬)これより自己肺動脈弁を大動脈弁弁位に自家移植し肺動脈弁はステントレス弁で再建するロス手術を行う。
(一同)はい。
(荒瀬)アオルタを切開して左右冠動脈に選択的にプレギーを注入。
(木原)はい。
メス。
(看護師)はい。
(荒瀬)右室心筋を損傷しないように肺動脈弁を切除。
(木原)肺動脈弁摘出。
(荒瀬)肺動脈弁をトリミングしたら大動脈の基部再建だ。
(木原)はい。
(荒瀬)再建の前にしっかりと心筋保護液入れとけよ。
プレギー。
(ME)はい。
(木原)ライトアングル。
メッツェン。
(看護師)はい。
はい。
(木原)大動脈弁基部再建完了。
(荒瀬)次はステントレス弁で肺動脈弁再建開始。
(木原)はい。
メッツェン。
(木原)冠動脈再建終了。
(荒瀬)よし。
リウオーミング。
(ME)はい。
(木原)スポイト。
(看護師)はい。
(荒瀬)フローダウン。
(ME)はい。
(荒瀬)いいぞ。
(木原)アオルタデクランプ。
(荒瀬)バックアップ。
(ME)バックアップ。
(荒瀬)左室流出路狭窄も解除されてる。
自家移植した肺動脈弁も心臓の動きも問題なし。
エアもなし。
人工心肺から離脱していいぞ。
(ME)はい。
(荒瀬)しばらくβブロッカー継続しとけよ。
(ME)はい。
あなたは…。
(岡村)荒瀬先生は素晴らしいコンダクターですね。
(陽子)大変な手術になったそうで。
先生。
ありがとうございました。
オペ中に急変しましてね一時は大変危険な状態でした。
並の医者ならどうなっていたことか。
ハハッ。
(蓮)眠らせ屋さん。
(蓮)全然痛くなかったよ。
(荒瀬)約束しただろ?
(蓮)うん。
(蓮)眠らせ屋さんってすごいんだね。
よく頑張ったな。
(蓮)ありがとう。
(木原)いや。
彼もすごいですがねやっぱりチームワークの勝利…。
(桜井)あっ。
んっ。
(猪原)先生。
今日はこのまま眠ってください。
(桜井)年寄り扱いするな。
もう何ともない。
おっ。
それよりオペはどうなった?荒瀬が無事成功させたようです。
(桜井)そうか。
(猪原)先生。
一刻も早く検査を受けてください。
患者が待ってる。
検査を受けてる暇なんかない。
俺たちがいます。
先生の留守は俺たちが守りますから。
(岡村)昨日のオペを見て分かりました。
外科医が頂点に君臨する時代はもう終わりです。
麻酔科医は手術の方法や結果をデータベースとして蓄積している。
だから豊富なデータに基づいた正確な判断ができる。
ずいぶん持ち上げてくれるな。
(岡村)これからは麻酔科医を中心とした診療体系をつくります。
そのためにあなたにL&Pに来てもらいたい。
ごめんだな。
俺はもう朝田以外と組む気はねえよ。
(岡村)確かにお二人が組めば美しく完璧なオペが可能でしょう。
ですが昨日先生が自ら証明してくださったようにあなたがいれば木原先生でも朝田先生になれる。
朝田先生を10人集めることは不可能でしょうが優れた麻酔科医であるあなたがコンダクターとなることで10人の朝田先生をつくることができるんです。
結果救われる患者さんが増えるんですよ。
それは結構な話だな。
でもあの院長がいるかぎり無理だと思うぞ。
羽垣院長には辞めていただきました。
辞めた?
(岡村)私は本気で麻酔科医中心の病院をつくるつもりです。
(荒瀬)そんなのは不可能だ。
院長が誰に代わってもあんたの理念に共感できるとは思えないね。
(岡村)次の院長は共感してくれます。
(荒瀬)そんなやついるのか?まさかあんた自分で院長やるつもりなのか?
(岡村)いいえ。
(荒瀬)じゃあ誰が?次のL&Pの院長は…。
荒瀬先生。
あなたですよ。
ハハッ。
何バカなこと言ってんだ。
(岡村)先生に院長として来ていただければL&Pは本当の意味で最先端の医療施設に生まれ変わることができます。
藤吉先生の再生医療。
加藤先生の小児用人工心臓の研究も先生がトップに立ってくださればより効率よく効果的に進めることができるでしょう。
荒瀬先生。
麻酔科医を中心とした理想の病院をつくりましょう。
(野口)困るなぁ。
勝手なことをされちゃ。
羽垣院長を東日本大学病院から引っ張ってきたのはこの私なんだよ。
(岡村)もうお役目はじゅうぶんに果たされたかと。
(野口)後任は誰にするの?
(岡村)荒瀬先生です。
(野口)荒瀬!?
(岡村)ええ。
荒瀬が院長なんてやるわけない。
そういうことには最も向いてない男だよ。
やりますよ。
これでわれわれの真の目的である海外進出にまた一つ近づきます。
今後は僕に断ってからにしてね。
(荒瀬)その後お師匠さんはどうだ?取りあえずは落ち着いた。
(荒瀬)すぐに精密検査を受けた方がいいな。
分かってる。
L&Pに運べ。
L&P?俺L&Pの院長になるわ。
もちろんこっちでオペがあれば今までどおり入る。
うちのがきも春には小学生だ。
最近柄にもなく後に続く人間のことを考えるようになってな。
そうか。
お前ならできる。
(伊集院)ハァ。
荒瀬先生がL&Pの院長だなんて全然想像できませんよ。
(猪原)今のうちの状況を考えるとL&Pとの関係が強化されるのは助かります。
先生と私たちがどんなに頑張ってもここで診きれない患者さんはいますから。
(伊集院)それは分かりますけどでも…。
みんなL&Pに行っちゃって何か寂しいです。
同じ気持ちでここに集まったはずなのに。
・
(ドアの開く音)・
(紗枝)あのう。
301号室の大村さんが眠れないとおっしゃってるんですけど。
(伊集院)分かりました。
・
(ドアの開く音)L&Pへようこそ。
早速だが一人検査をしてもらいたい患者がいる。
(荒瀬)やっと検査を受ける気になったか。
(桜井)院長自ら予約を取ってくれたのなら来ないわけにはいかないだろ。
(野口)岡村ちゃん。
あの男?
(岡村)野口先生は初めてでしたね。
検査が終わったらご紹介しますよ。
桜井総合病院の桜井院長です。
桜井修三?
(岡村)どうかなさいましたか?彼が朝田の師匠なの?
(岡村)ええ。
そう聞いてますが。
(野口)へえー。
そう。
これは面白いことになってきたね。
2015/06/26(金) 14:55〜15:50
関西テレビ1
医龍4〜Team Medical Dragon〜 #05[再][字]
外科医vs天才麻酔科医。患者無視の外科医のエゴで進められるオペに、朝田の信念を背負い荒瀬が挑む。その先には朝田ですら予想していなかった衝撃の結末が。
詳細情報
番組内容
朝田龍太郎(坂口憲二)は、荒瀬門次(阿部サダヲ)から桜井修三(平幹二朗)の体重が急速に落ちていることを指摘され、検査を勧めることにする。一方、岡村征(高橋克典)の誘いでL&P病院へ移った加藤晶(稲森いずみ)のところへやってきた鬼頭笙子(夏木マリ)は、岡村には秘密があると告げる。
同じころ、野口賢雄(岸部一徳)は岡村を呼び出していた。桜井総合病院に患者が移りつつあることを危惧した羽垣院長(藤木
番組内容2
孝)が、最短時間を目指して行うオペに最高のスタッフを用意するように指示を出す。やがて岡村がオペのメンバーを報告に行くと、羽垣は麻酔科医を、優秀だと評判の「桜井総合病院の麻酔科医」にするように命令する。
桜井総合病院では、朝田を中心に次のオペのカンファレンスが行われていた。そんな中、荒瀬と朝田を呼び出した桜井は、岡村の要請を告げる。断ろうとした荒瀬だが、執刀医が羽垣と聞き驚く。
15年前、羽垣は
番組内容3
荒瀬の忠告に耳を貸さずに患者を死亡させたあげく責任を麻酔科医に押し付けていたのだ。話を聞いた朝田は今の荒瀬なら患者を救えるはずだと助言。荒瀬はオペに参加することを決意する。
患者である7歳の山城蓮の経食道エコーを見ていた荒瀬は、重大な症状を発見。予定しているオペでは蓮を救えないと木原毅彦(池田鉄洋)に訴えるが、院長の診断に異論は唱えられないと一蹴されてしまう。荒瀬は蓮の母親のもとへ行き…。
出演者
坂口憲二
稲森いずみ
小池徹平
阿部サダヲ
キムラ緑子
柄本佑
池田鉄洋
・
高橋克典
平幹二朗
・
夏木マリ
岸部一徳
ほか
スタッフ
【原作】
乃木坂太郎
【原案】
永井明(「医龍」小学館 ビッグコミックス刊)
【脚本】
ひかわかよ
【プロデュース】
長部聡介
大木綾子
【演出】
森脇智延
【音楽】
吉川慶
澤野弘之
河野伸
【制作】
フジテレビドラマ制作部
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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