木曜時代劇 かぶき者慶次(11)(最終回)「大ふへん者」 2015.06.25


(銃声)
(美津)旦那様!
(銃声)
(慶次)美津〜!
(竹)
江戸からの刺客が放った銃弾に奥方の美津様が倒れ慶次様は大御所徳川家康様に会うべく一人駿府へと向かわれたのでございます

苦しみの無い庵無苦庵にございます
(よね)こだな葉っぱが傷さ効くんだべか?傷を治すのにはこれが一番。
毎日煎じてのませるようにと旦那様からの言いつけです。
苦っ!
(竹)奥方様お薬にございます。
(佐乃)母上。
どうぞ。
苦い。
全ておのみ下さい。
さようにございます。
嫡男殿。
これだけあれば当分は大丈夫でございましょう。
(小声で)余計な事を。
は?何でもございません。
父上からは母上を頼むと重ねて言いつかっております。
何なりとお申しつけ下さい。
ありがとうございます嫡男殿。
父上は今頃どの辺りにございましょう。
(竹)小山宿を越えられた辺りでは?だがあのいでたちさぞ皆に驚かれているのでは…。
しかしあの「大ふへんもの」とは一体どういう意味なのでございます?「大武辺者」の事では?父上は武勇の人でございますれば。
ですが私が以前お聞きした時「大ぶへんもの」と読むのではなく「大不便者」。
大いに不便なる者の事だと話しておられましたが。
大いに不便な者?恐らくは融通の利かない不器用な者といういいでしょう。
だとしても何故あの旗を背負って?それがかぶき者のかぶき者たるゆえんです。
おい何だ?
(どよめき)かぶき者だ…。

(和泉局)なんと大胆な。
朱槍に「大ぶへんもの」の旗差し物。
そのような格好で江戸に向かってくるとは…。
(忠常)あれではうかつには手を出せませぬ!
(天徳)それを見越しての事でございましょう。
だがこのままにしてはおけません。
前田慶次の向かう先は江戸ではなく駿府に相違ございません。
何!?大御所様にお目通り願おうというのか?はい。
大御所様に命乞いをするつもりやもしれませぬ。
日の本中に己の逃げ場がない事にようやく気付いたのやもしれませぬ。
まこと恐れを知らぬ男よ。
しかし駿府に向かうとなれば我らが手を下すまでもないかと。
なぜじゃ?「飛んで火に入る夏の虫」。
駿府に現れれば大御所様が即刻その首をはねられましょう。
なるほどのう。
我らもあの男の最期を見届けるために駿府に参りましょうぞ。
ハッハッハッハ。
やはり私が江戸に行くべきであった。
兄上が江戸へ行けば徳川のやからに殺されてしまいます。
ですから旦那様は新九郎様はここへ残れと命じられたのです。
私が家康様にお目通りを願いに行く。
石田家再興のためには駿府におわす大御所様のお許しを頂くしかない。
分かっている。
以前から父上はその事をお考えだったのだ。
はい。
だがどのように話をつけるおつもりなのか…。
それに家康様は既に天下人。
お目通り願う事さえかなわぬやもしれぬ。

そのころ徳川家康様は巻き狩りの途中駿府のある寺で休息を取っておられました
前田慶次はまだ姿を現さぬのか?はい。
大御所様に命乞いをしようなどとたわけ者めが。
ひょっとすると諦めたのやもしれぬな。
あの者はそのような男ではありませぬ。
必ずや駿府に姿を現しましょう。
・死のうは一定
(家康)これは…織田信長様が好まれた歌。
一定かたりをこすよのしばらくだな前田慶次。
はい。
ご無沙汰しております。
わしに何用じゃ?お願いしたき儀がございます。
申してみい。
石田三成様のお子の命生かして頂きたい。
何?三成の子が生きていると言うか。
これが証しの守り刀にございます。
何とぞ石田家の再興をお許し下さい。
石田三成…。
先の関ヶ原の戦を起こした大悪人。
されどそのお子には罪はございませぬ。
戦に勝った者の力こそが正義よ!家康様の正義は人の子の命を奪われると言われますか。
そのような正義は太平の世を築くのに何の役にも立ちませぬ!待て。
お命頂戴つかまつる。
わしを殺すと申すか。
はい。
私は己を偽っては生きてはいけませぬ。
不器用な男よのう。
はい。
「大ふべんもの」にございます。
フッフッフッフッフフッフッフッフッフ!豊臣家はいずれ滅ぶ。
さすれば三成の子などに用はない。
ただし米沢の地よりいずる事まかりならぬ。
そのお言葉たがいはありませぬか?まことの漢を相手につまらぬ偽りなど言わぬ。
漢…。
そうじゃ。
ははあ〜!さすが天下のかぶき者よ。
何十年ぶりかのう?覚えておいでか?はいお菊殿。
美しきおなごの事は忘れません。
そのようなたわ言を…。
恐れながら大御所様この者を米沢に帰してはなりませぬ。
なぜじゃ?わしの下知に従えぬと申すか?いえ…。
年を重ねられますます美しくなられておられまする。
ヘッ!ありがたく存じまする。
死のうは一定前田慶次…まこと食えぬ男。
「大ふべんもの」よ。
大御所様もお年を召された。
お命もそう長くないかもしれませぬ。
生きておられるうちに何としても豊臣家を滅ぼし天下一統を成し遂げねばなりませぬ。
戦ともなれば何千…いや何万もの死人が出るやもしれませぬ。
太平の世はよこしまな命を奪い去ってこそ得られるもの。
おや御仏はそうお教えですか?御仏は人の命は皆等しく望めば誰でも浄土へ行けるとお教えのはず。
拙僧も己を無にしこの世を飢えや苦しみのない浄土に変えるため努めてまいりました。
ワッハッハッハ!この世を浄土にするなど「絵にかいた餅」でございます。
では前田殿は何のために生きておられる。
されば大きな望みも持たず日々生きる事を楽しむためにございます。
和尚いかがでしょう?人の幸せというものはその土地その土地の身内や仲間と共に生きる暮らしの中にあるのではないでしょうか。
生きるだけ生きたらあとは死ぬだけでございます。
(雷鳴)その手は…。
拙僧の負け。
ですがここは意地を通させて頂きます。
(雷鳴)・
(一左衛門)失礼致します。
江戸表より火急の書状が届きましてございます。
(荒木)おう。
与板組の者どもを集めよ!荒木様何事でございましょう?
(荒木)お家にとっての一大事じゃ。
一大事?江戸表よりこの米沢に石田三成の子がおるとの知らせじゃ。
その名は前田新九郎。
えっ!新九郎…?江戸留守居役山路左近殿よりの書状にそうしたためてある。
えっ!?まさか…。
即刻前田新九郎をひっ捕らえに参る。
いやいやいや…!ですがまずはその真偽を確かめねば!そのような悠長な事はしておられぬ。
直ちに捕縛する!
(一同)はっ!えっ!今頃米沢はどうなっている事か…。
間に合えばよいがのう。
父上はどうなされているのか…。
文一つ届かんではないか。
何かあったかもしれません。

(勝之進)新九郎!新九郎!新九郎すぐ逃げろ。
与板組の連中がお前を捕まえに来る。

(荒木)前田新九郎はおるか!?新九郎はおるか!?あっ!おったおったおった!何事でございます。
(一左衛門)それがですな…。
与板組荒木康綱である。
前田新九郎はお主か?はい。
お主の出自が明らかとなった。
石田三成の子に相違ないか?返答をせい!新九郎様!違うなら違うと!新九郎殿は前田慶次様のお子!そうでございますな?
(一左衛門)新九郎殿!私は石田三成の子石田新九郎に相違ございません。
え…。
者ども召し捕れ!
(一同)はっ!申し上げます!この者は常軌を逸したわ言を申しているだけにすぎませぬ。
またこのような荒木様の勝手な振る舞い江戸にいるお屋形様にお伝えさせて頂きます。
若造が…わしに意見を申すか!新九郎は断じて渡しませぬ!構わん。
こやつも引っ立てい!
(一同)はっ!お待ち下さい!我らは新九郎の道場仲間にございます。
新九郎をお見逃し下さい!その方どもたわけた事申すでない。
たとえ荒木様の命であっても仲間を裏切る事はできません!我らは新九郎を守ります!正気か!?お前たちは。
もはや問答無用!斬れ!
(一同)オ〜!新九郎!勝之進!我らも新九郎に加勢する!新九郎は渡さぬぞ!貴様ら!
(次右衛門)新九郎殿!北川様!北川様!この北川次右衛門がお相手致す。
前田慶次様に拾われた命新九郎殿のためならいつ捨てても惜しゅうはござらぬ!北川様なりませぬ!刀をお納め下さい!争ってはなりませぬ!
(美津)お待ち下さい。
母上。
(竹)奥方様。
主の留守にこのような振る舞い私が許しませぬ。
何?是が非でも我が子を引っ立てると言われるか。
(荒木)いかにも。
それでは主に対し留守を預かる私の申し訳が立ちませぬ。
まずは私と…娘をお斬り下さい。
母上。
(竹)奥方様。
旦那様。
父上…。
前田慶次利益ただいま戻りました!父上!同じ上杉家の者同士互いの血を流すつもりですか?
(荒木)前田慶次。
そなたにも事の次第問わねばならぬ。
だが今は新九郎を我らに渡す事が第一。
これは駿府の大御所様からの御内書。
まずはお読み下さい。
なんと!「石田三成の子に石田家の再興を許す」。
新九郎!よかった。
勝ちどきじゃ!エイ!
(一同)エイオ〜!エイ!
(一同)エイオ〜!エイ!
(一同)エイオ〜!それとこちらは…お屋形様からのもの。
同様に石田家再興のお許しを頂きました。
相分かった。
失礼をつかまつった。
いや。
されど奥方は貴殿以上にかぶき者でござる。
ごめん。
皆の者引き揚げるぞ。
(一同)はっ!ようございました。
されど新九郎殿があの石田三成様のお子とは…。
安部殿すまなかった。
ハッハッハッハ。
我らも引き揚げるぞ。
(一同)はっ!すっかり元気になられたようで。
はい。
兄上。
佐乃。
父上。
お前は今日から石田新九郎だ。
はい!ただし米沢の地より外へは出てはいかんというお達し。
それでもよいか?はい。
はい。
うん。

そして旦那様が隠居なさり新九郎様が初めて出仕なされる事となりました
(竹)よくお似合いにございます。
そうか。
本日より上杉家の侍にございますね兄上。
佐乃様もう兄上ではございません。
旦那様になられるのですよ。
あ…そうでした。
新九郎様。
行ってまいる。
石田新九郎にございます。
お家のためご奉公に励む所存にございます。
石田新九郎。
前田慶次の禄のうち60石を与え三手組普請方へのお役目を申しつける。
はっ。

(雪夜)お待ちのお客様がお見えになりました。
フフッ。
さあさあ…。
娘の知佳にございます。
安田勝之進と申します。
(知佳)存じ上げております。
は?幾たびか文を差し上げました。
(勝之進)え…。
お返事は頂けませんでしたけど。
それでは知佳様は勝之進様の事を以前より?はい。
ハッハッハッハ!ハハハ!一左衛門様。
うん?あとはお二人の方が。
おおそうじゃ。
さあさあ…。
勝之進様は馬廻組。
一左衛門様は与板組。
そのお嬢様と縁組みとなればいがみ合っていた2つの組をまとめるのにいい礎となるはず。
うん。
知佳様は勝之進様に憧れて恋文を送られていたとか。
えっ!そうなんですか。
うまくまとまるような気がします。
うん。
でも…これからさみしくなります。
うん?慶さんがここに来られていたのは城中の動きを知りたいから。
城へ行かずとも慶さんのお耳に全て…。
フフッフフッ。
でもそのご用がなくなれば慶さんはもうここには来なくなってしまう。
そんな事ありませんよ。
私はね一日に一度あなたに会わないと落ち着きません。
まことにございますか?はい。
では一つだけお聞きしてもよろしゅうございますか?はい。
私と奥方様どちらがお好きなんですか?それは…。
お答え下さいませ。
ヘッ!慶さん!ちょっと用を思い出しました。
慶さん!・「桃栗三年柿八年」
新九郎様と佐乃様の祝言がいよいよ明日となりました
三成様。
明日新九郎が私の娘婿になるんですよ。
(美津)旦那様。
これは私が旦那様との祝言の時に着た花嫁衣装でございます。
おお。
こたび華が金沢から持ってまいりました。
よ〜く覚えてます。
あなたの花嫁姿きれいでした。
ハハッ。
明日私たちの娘がこれを着るのですね。
・よろしゅうございましょうか?父上母上佐乃は明日石田新九郎様に嫁ぎます。
私は幸せにございます。
父上と母上を手本としいつまでも仲むつまじい夫婦になります。
父上母上これまでお育て頂きまことにありがとうございました。
竹。
何か?話がある。
え?竹は私を実の子のように育ててくれた。
だから祝言を挙げる前に言っておきたい事が。
そのお気持ちだけで十分でございます。
これ以上竹を泣かせないで下さいませ。
私を前田慶次様にお預け下さりありがとうございました。
竹に言いそびれてしまいました。
これまでの礼を言いたかったのですが。
な〜に新たに居を構えるといったって城下に越すだけだ。
いつでも会える。
ハハハハ。
はい。
うん。
父上。
私はこのような日が来ようとは思いも寄りませんでした。
この9年の間長いようであっという間でした。
私がお前の父だ。
お待ち申しておりました父上。
父上これまでお育て頂きまことにありがとうございました。
この御恩は生涯忘れませぬ。
前田慶次父上こそ私の父にございます。
いや…。
わしの方こそお前を育てて楽しかった。
ありがとう。
父上…。
己を裏切らず正しいと思った事をやればいい。
己に素直に正直に生きたらいい。
まあわしに言えるのはそれぐらいかな。
うん。
はい。
ありがとうございます。
父上も母上もこうなる事を望んでおられたのでしょう?次はお前たちじゃのう。
きえ〜っ!ああ…いつになったら旦那様のようにおいしい朝餉を作れるようになられる事か…。
すまぬ。
なかなか難しい。
旦那様出来ましたか?ああ…もう少しで出来る。
父上のようなおいしい朝餉お願い致します。
ああ…。
どうだ?竹。
こっちで一緒に暮らさぬか?なあ?さあどうでしょう。
私がいれば新九郎様の料理の腕が上がりませぬ。
そのような事を言わずに。
向こうは母上もずっといらっしゃるそうではないか。
竹はこっちで暮らせばよい。
さ〜て…。
頼む竹!毎朝これではかなわぬ…。
あっ!
(又吉)駄目ですよそんな力入れちゃ。
難しいのう。
さよう。
まこと難しいのはお鷹ポッポと恋の道。
え?恋の道とは…。
イテテテテ!よねさん痛いですよ。
(雪夜)あら北川様。
あっ。
お鷹ポッポを作ろうと。
出来たら私にも下さいね。
はい。
酒手を頂きに。
あの一人は旦那様。
もう一人は…。
女房殿です。
寂しい思いばかりさせてきました。
ようやくこうして共に暮らせる日が来ました。
はい。
もう私は旦那様のおそばを離れませぬよ。
はい。
されど旦那様これからはこれまでのような贅沢な暮らしはできませぬぞ。
ヘッ!
無苦庵にようやく静かな暮らしが訪れようとしております
2015/06/25(木) 14:05〜14:50
NHK総合1・神戸
木曜時代劇 かぶき者慶次(11)[終]「大ふへん者」[解][字][再]

徳川の刺客に狙われた慶次(藤竜也)は、新九郎(中村蒼)、そして、上杉家を守るため家康(綿引勝彦)に会うべく「大ふへんもの」ののぼり旗を立て駿府に向かう。

詳細情報
番組内容
徳川の刺客に狙われた慶次(藤竜也)は、新九郎(中村蒼)、そして上杉家を守るため家康(綿引勝彦)に会うべく「大ふへんもの」ののぼり旗を立て駿府に向かう。そして、慶次は家康の前で「一世一代のかぶき」を披露し、石田三成の子である新九郎の命を狙わせないことを誓わせる。一方、上杉家中では、新九郎の正体を知った荒木康綱(大出俊)が、新九郎を捕縛するため無苦庵に来る。
出演者
【出演】藤竜也,中村蒼,西内まりや,工藤阿須加,田畑智子,笛木優子,角田信朗,前田美波里,江波杏子,青山倫子,斉藤暁,大出俊,綿引勝彦,山崎一,火野正平,伊武雅刀
原作・脚本
【作】小松江里子,【原案】火坂雅志

ジャンル :
ドラマ – 時代劇
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

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