かもしれない女優たち【バカリズム脚本!竹内・真木・水川がどん底人生を生きる】 2015.06.23


(女性)おはようございます。
(女性)おはようございます。
(真木)おはようございます。
(真木)
私の名前は真木よう子。
職業女優
1982年。
千葉県生まれ
幼いころから女優に憧れ中学卒業後の1998年。
俳優養成所に入る
2005年。
映画『パッチギ!』に出演
私にとってここが人生のターニングポイントだったといえる
私はこの作品をきっかけに数々の作品に出演するようになり2006年公開の映画『ベロニカは死ぬことにした』で映画初主演
翌2007年にはドラマ『SP』
2010年には大河ドラマ『龍馬伝』
2013年。
映画『さよなら渓谷』『そして父になる』に出演
…のはずだった
あのときオーディションに受かってさえいれば
あのオーディションでチャンスをつかみ損ねた私は再び長い下積み生活に入った
同世代の女優が次々とブレークしていく中私は役名すらないエキストラ同然の役ばかりを演じる日々だった
(男性)すいません。
水下さい。
(真木)あっ。
はい。
(三浦)こちらどうぞ。
(従業員)カレーの後中華そばです。
(真木)失礼します。
(男性)ごちそうさまでした。
(真木)ありがとうございました。
(三浦)よう子さん。
この間の舞台面白かったです。
(真木)ありがとうね。
来てくれて。
(三浦)私初めてお芝居見に行ったんですけどよう子さん超カッコ良かった。
(真木)ありがとう。
(三浦)テレビとか出たりしないんですか?
(真木)テレビはまあちょい役とかならたまに。
(三浦)へえー。
じゃあ撮影で芸能人とか会ったりするんですか?
(真木)あっ。
うん。
たまにね。
(三浦)すごい。
竹内結子は?
(真木)まだないかな。
うん。
(三浦)そうなんですね。
私結構好きなんですよね。
(真木)あっ。
そうなんだ?
(三浦)うん。
昨日DVDで『黄泉がえり』見て泣いちゃいました。
(真木)へえー。
(三浦)よう子さん。
もし竹内結子に会うことあったらサインもらっといてください。
(真木)えーっ。
無理だよ。
(三浦)そっか。
あっ。
じゃあよう子さんのサイン下さい。
(真木)私のサイン?
(三浦)はい。
(三浦)今のうちにもらっといてよう子さんが売れたら自慢します。
えーっ?
(三浦)お願いします。
はい。
ああ。
ありがとうございます。
私これ家に飾りますね。
えっ。
いいよ。
恥ずかしい。
こんな私でもこうして応援してくれてる子がいる
それだけで私はこん…
(三浦)楽しみだな。
あのう。
(三浦)はい?あっ。
いや。
別に全然いいんだけど。
(三浦)えっ?何ですか?それそこにしまう感じ?
(三浦)えっ?あ…あのサイン。
(三浦)ああ。
後で休憩のときにかばんにしまおうと思って今取りあえず。
あっそっか。
あっ。
あのう。
こことかじゃないんだね?
(三浦)えっ?とかこことか。
(三浦)そうなんですか?いや。
別に全然いいんだけど何かここってさポケットの一番下っぽい感じしない?何か座るとき踏むし。
ああそっか。
ごめんなさい。
いや。
全然。
別にいいんだけど。
(三浦)でも応援してるのは本当ですからね。
私よう子さんのファンですから。
うん。
ありがとう。
頑張るね。
(三浦)うん。
色々雑な部分はある子だけれど応援してくれることには変わりはないしそれだけでもありがたい
あっそうだ。
紗英ちゃんさ今度の木曜日のシフト代わってくれない?ちょっと撮影が入っちゃって。
(三浦)ああ。
ごめんなさい。
私その日予定入ってるんですよ。
何だ?お前。
安田さん。
安田千秋さん。
(水川)はい。
私は自分の出演した作品は毎回必ずチェックするようにしている
(水川)ああ…。
どうしました?頭痛いんですか?
(水川)はい。
先生呼んでください。
(女性)はい。
うん?どうしました?頭痛いんですか?
(水川)はい。
先生呼んでください。
(女性)はい。
大丈夫ですか?
(水川)はい。
たとえ顔が映らない役でも与えられた役を全力で演じきる
それが女優というものなんだと一応自分に言い聞かせてみる
《よう子。
我慢するのよ。
いい?》《どんな小さな役でも常に全力で演じきる》《それが私たち女優という…》《うるせえ!奇麗事言ってんじゃねえよ!》《だよね。
納得いかないよね。
マジ何?あのくそスタッフ》《こっちが色々やったのに編集で全部切りやがって!》《やってらんねえっつうんだよ》《もうどいつもこいつも私の才能見抜けないバカばっかだな。
この業界は!うわー。
マジでくそっ腹立つ!》
悔しいものは悔しい
何だこれ!先生。
先生!患者さまが!先生!水川あさみか。
最近よくテレビ出てるよな。
確か私とそんな年変わんないんだよな。
いいな。
私何やってんだろう?
私はあのオーディションに落ちた日からずっと日記のようなものをつけている
その日に感じた悔しさを忘れないため
いつか成功してこのノートを笑って読めるようになる日を夢見て
私はラーメン屋のアルバイトからもう少し時給の高い知り合いのバーでアルバイトを始めた
(清水)ねえねえ。
よう子ちゃん。
撮影で芸能人とかに会ったりするの?ああ。
はい。
たまにですけど。
(清水)竹内結子に会った?まだ会ったことないですね。
(清水)そっか。
俺ファンなんだよね。
奇麗ですもんね?会ったらよろしく言っといて。
えっ?よろしく?
(清水)うん。
よくこういうことを言われるのだけど本当にそう思っているのだろうか?
仮に私が竹内さんと現場が一緒になって実際にそのとおりに伝えた場合竹内さんがどんな反応でどんな空気になるのか想像しないのだろうか?
《初めまして。
通行人役の真木よう子という者ですけど》
(竹内)《ああ。
どうも》《あのう。
私のバイト先の常連客の清水さんって方が竹内さんによろしくと言ってました》《えっ?どなたが?》《私のバイト先の常連客の清水さんって方です》《あっ。
清水さん?》「私の知り合いがいつも応援してますよ」つって。
《私の知り合い?》《あっいえ。
竹内さんと面識ない方です》《あっそうなんだ?》《でその方が?》《竹内さんによろしくと》《はあ》
考えただけでぞっとする
(マスター)そういえばよう子ちゃんこの間『世にも奇妙な物語』に出たんだよね?
(清水)そうなの?まあ出たっていうか…。
(マスター)水川あさみと共演したんだよね?
(清水)えっ?すごいじゃん。
いや。
すごくないですよ。
もうちょい役ですから。
(清水)ちょい役でもすごいよ。
ちょい役がいるから主役が引き立つんだよ。
よう子ちゃん。
どんな世界でもそう。
脇でしっかり固めてくれる人がいて初めて…。
顔も映らないような役ですよ。
そうなの?はい。
(清水)それでも同じだよ。
顔が映らない人がいるから顔が映る人が引き立つんだよ。
何かちょっと無理ありません?まあそういう役も必要だってことだよ。
ねえ?マスター。
(マスター)あっ?ああ。
そうっすね。
あーあ。
何か私向いてないのかな。
(マスター)そんなことないよ。
デビューしたてのころはさ映画で主演とかやってでそれで日本アカデミー賞とか取ってで海外でもカンヌ国際映画祭とか行ってレッドカーペット行って審査員賞取ってとかそんなふうに思ってたのにさ。
(マスター)みんなそれを夢見て入るからね。
もう私の人生全然予定と違う!
(清水)予定どおりの人生なんて面白くも何ともないでしょ。
えっ?
(清水)ドラマだってさ最初から展開分かってたらつまんないでしょ?どうなるか分かんないからドキドキするんじゃん。
うーん。
まあ確かにそうですけど。
(清水)女優としてなかなかうまくいかなくてさ悔しい思いしてバイトして。
確かにつらいと思うよ。
でもさ。
でもさそんな今があるからこそ逆転したときにドラマチックに盛り上がるんじゃん。
清水さん。
お代わり。
よう子ちゃんの物語はまだまだ中盤でしょ?俺はラストのどんでん返し期待してるからさ。
えっ?口説こうとしてます?してないよ。
どうでした?まあまあ確かに後半あたりから。
何かいいこと言えてる自分に酔ってるふうにも見えたかな。
物語に例えたあたりですよね?
(清水)いやいやいやいや。
俺はホントにそう思ったから言っただけで。
2人ともちょっとひねくれ過ぎなんだよな。
(マスター)冗談ですよ。
あーあ。
もう何かすぱっと辞めちゃおうかな。
(マスター)辞めてどうすんの?うーん。
漫画家?
(マスター)それはそれで厳しい世界だよ。
確かにそうですよね?
(清水)漫画好きなの?小さいころの夢は漫画家か女優になることだったんです。
(清水)そうなんだ?よう子ちゃん。
絵上手ですよ。
(清水)へえー。
見てみたい。
(マスター)今日ノートは持ってきてないの?いや。
持ってますけどでもあれ内容がヤバいから。
(マスター)ちょっとだけちょっとだけ。
いいいい…。
(マスター)ちょっとだけって。
おい。
ちょっとだけ。
ちょっとだけ。
お願いお願い。
(マスター)ちょっとだけ。
えーっ。
恥ずかしいな。
(マスター)すごい上手なんですよ。
(清水)ホントですか?へえー。
はい。
(清水)ほい。
おお。
えっ?えっ?すごいじゃん。
もうちゃんとした漫画じゃん。
(マスター)すごいですよね?
(清水)うん。
(マスター)毎日のように描いてんだよね?まあ最初は日記だったんですけど絵の方が得意だからだんだんこうなっていっちゃって。
(清水)そうなんだ?ハハハ。
これ面白いな。
ねえ。
これで本出したら?いや。
出せませんよ。
(マスター)清水さんとこの出版社で出してあげればいいじゃないですか。
(清水)面白いかもね。
今度企画出してみようか?えっ?ホントですか?
(清水)おう。
掛け合ってみるよ。
あっそうだ。
よう子ちゃん。
連絡先教えて。
えっ?だから連絡…。
これあのう。
変な意味とかではなくて。
本の件で連絡するからだよ。
どうですか?
(マスター)変な意味だね。
(清水)もう!・
(ドアの開く音)・
(店員)いらっしゃいませ。
私は目を疑った
そこに写っていたのは元バイト仲間の三浦紗英だった
あのときはまだ芸能界とはまったく縁のない普通の女子大生だった
それがちょっと会わない間に雑誌の表紙
確かにカワイイ子だったけど私がいる芸能界とはこんなにも簡単に売れる世界なのか?
私はいったい何をやっているのだろう?
「興味あります」だ?
こっちは死に物狂いでやってんのに興味あるぐらいで出ようとしてんじゃねえよ
負けない。
こいつにだけは絶対に負けない
あっ。
負けた
(店員)いらっしゃいませ。
新人のころは同世代の女優仲間が結構いたのだけど20代後半になるとだいたいみんな売れるか辞めるかしていき次第に疎遠になっていく
(店員)ありがとうございました。
何だか自分だけがどんどん取り残されていく気がした

そして私は今夜も「日刊真木よう子」を更新する

(女性たち)おはようございます。
(水川)おはようございます。
(水川)
私の名前は水川あさみ。
職業女優
(水川)おはようございます。
1983年京都府生まれ
幼いころから女優に憧れ13歳のとき母親の知人の紹介で芸能事務所に入る
その後も大阪から通いながら数々のオーディションを受け14歳のとき劇場版『金田一少年の事件簿上海魚人伝説』のオーディションに合格
デビューする
これが私にとって人生のターニングポイントだった
ここから私の人生は大きく変わった
2006年。
ドラマ『西遊記』『のだめカンタービレ』『医龍』に出演
2008年には『夢をかなえるゾウ』で連続ドラマ初主演
その後も大河ドラマ『江』『ゴーストライター』など数々のドラマ映画に出演する
…はずだった
あのときオーディションに受かっていれば
あのオーディションでチャンスをつかみ損ねた私はその後も大阪から通いながら幾つものオーディションを受けた
だけどまともなせりふがある役はほとんどなくあっても一言二言のちょい役
高校卒業と同時に大阪から上京し事務所に所属したはいいものの特に大きなチャンスをつかめるわけでもなく同世代の女優のブレークを横目に特に辞めるきっかけもなくだらだらと女優を続けていた
自撮りですか?
(白石)うん。
ブログ用の写真。
へえー。
始めたの?
この子の名前は白石奈緒。
同い年の女優
上京してからオーディションで何回か会ううちに話すようになった子だけど私と違いこの子の女優人生は順風満帆だった
ちなみに私があのとき落ちた『金田一少年の事件簿』で選ばれたのはこの子
ねえ。
そういえばさ竹内結子さんのサインあるね。
(白石)えっ?ホントだ。
結子さん来たんだね。
ああ。
知り合いなんだ?
(白石)うん。
前にドラマで共演してそのときによくしてもらったの。
へえー。
そうなんだ。
へえー。
(白石)ってかさ2人でお茶するの久しぶりじゃない?そうだね。
奈緒。
忙しそうだもんね。
(白石)ねっ。
ちょうど映画の舞台挨拶とかがあったからね。
そうなんだ?
(白石)うん。
『のだめ』の舞台挨拶がさ。
そこまで聞いてないけどね
ちなみに『のだめ』とは劇場版『のだめカンタービレ』のこと
(白石)東宝の舞台挨拶の歴代最高回数らしい。
へえー。
すごいじゃん。
だから聞いてないってば
まあでもドラマも評判良かったもんね。
(白石)みたいだね。
私は見てなかったけど。
胸くそ悪いから
(従業員)失礼します。
この子がキャスティングされたとき正直うらやましかった
代わってほしいくらいだった
三木清良役。
絶対この子よりうまくやれた
(白石)あさみの方はどう?うん?まあ地道にやってるよ。
(白石)そっか。
いつか共演できるといいよね。
そうだね。
絶対やだよ。
あんたの脇とか
(白石)彼氏の方はどうなの?ああ。
まあ普通だよ。
(白石)業界の人だっけ?いや。
ううん。
一般の人。
(白石)そうなんだ。
いいね。
いいと思ってないっしょ
でもまああのう。
ねっ?その分こっちの仕事に対する理解がちょっとね。
(白石)そうなんだ。
ふーん。
奈緒は?彼氏できた?
(白石)うーん…。
おっ?できた?
(白石)うん。
よかったじゃん。
同業者?
(白石)まあ同業者っていうか。
ああ。
有名人?
(白石)うん。
バレたらヤバいから言えないんだけど。
じゃあ聞かないけどね
(白石)知りたい?
はっ?
ああ…。
うん。
(白石)えーっ?どうしよっかな。
言いたいんでしょ?めんどくさいな
(白石)あさみだけに教えるね。
あっ。
うん。
この子このパターンで結構しゃべってるな
(白石)某有名俳優のTさん。
うわ!?ここにきてアルファベットかよ?うざっ
(白石)分かる?
分かんねえよ。
バカ
分かんない。
もういいよ
だるいなこの女
(白石)酔っぱらうと…。
(女性)あのう。
すみません。
白石奈緒さんですよね?写真撮ってもらえたりしますか?
(白石)ああ…。
ホントは写真駄目なんだけど今日だけ特別ってことで。
(女性)ホントですか?
(女性たち)ありがとうございます。
(女性)マネジャーさんですか?えっ?
(女性)撮ってもらってもいいですか?はい。
いいですよ。
こういうことはよくある
仕方ないことだし何とも思わない
(白石)この子マネジャーじゃないんですよ。
待って待って。
やめてやめてやめて
(女性)すいません。
(白石)この子も女優なんで。
きついきついきつい
全然全然気にしないでください。
(女性)失礼なこと言っちゃった。
いや…。
気にしないでください。
(女性)じゃあ一緒に写真を。
(白石)みんなで撮りましょ。
ほら。
もう気ぃ使われてんじゃん
無理やりじゃん
(女性)撮ってもらっていいですか?
(従業員)いいですよ。
うわ。
何これ?
最悪のパターンじゃん
(従業員)じゃあ撮りますね。
消えたい。
この場から消え去りたい。
消滅したい
(従業員)はい。
チーズ。
(シャッター音)
(女性)ありがとうございました。
(女性)ありがとうございました。
何言ってやった顔してんの?お前
(白石)ごめんね。
はっ?何の「ごめんね」?
えっ?何の「ごめんね」?えっ?えっ?
自分だけ知名度あってごめんね?
それともマネジャーって思わせておけばよかったのにわざわざ顔を知られてない私のことも女優ってバラすことで自動的に売れてない女優だということを知らしめてしまってごめんね?えっ?
写真を求められてない無名の私を無理やりフレームに入れることであの子たちの中にある私への「誰?誰?」感を増長させてしまってごめんね?
えっ?どれ?どれにごめんね?

(従業員)あのう。
(白石)はい?
(従業員)プライベートな時間に大変申し訳ありません。
お店にサインとか頂いてもよろしいですか?
(白石)はい。
いいですよ。
(従業員)ホントですか?ありがとうございます。
(白石)はい。
(従業員)「喫茶カドクラさんへ」でお願いします。
まさかお前…
(白石)はい。
ああ。
うん。
こいつ完全に分かってやってんな
この世界に入ってからいつの間にか私は邦画をまったく見ないようになっていた
昔は好きだったんだけど今は見ても落ち込むだけだし
それよりも暇さえあれば洋画を見て現実逃避をしていた
あっ。
何だっけ?あの人
絶対そうだよね。
あの人だよね?
名前何だっけ?片桐何とか…
あのう。
(片桐)はい。
プライベートにごめんなさい。
ラーメンズの片桐さんですよね?違います。
えっ?違います。
うわ。
嘘ついてる
この人嘘ついてる。
どう考えたってそうじゃん
何で嘘つくの?
そうでしたか。
すいません。
(片桐)いえ。
愛想悪っ
ってかさっきから何してんの?この人
ああ。
ここにいると入りづらいんだ
なるほど。
そういうことね
(片桐)あれ?
顔が知られるのもそれはそれで大変なんだな
で片桐何だっけ?
押している。
正直せりふもないちょい役で押して待たされるのが一番きつい

(ノック)
(スタッフ)失礼します。
皆さん。
すいません。
今前のシーンが若干押してまして皆さんの出番までもうちょっとかかりそうです。
またお声掛けに参りますのでもう少々お待ちください。
はーい。
あさみ?あさみいたの?あっ。
ああ。
奈緒。
何かさっき似てる人見掛けたからそうかなと思ってたけどやっぱりそうだった。
言ってよ。
いるなら。
いや。
私もさっき知ってさ。
本当は最初から知っていた
そうなんだ?うんうんうん。
やっと共演できたね。
ああ。
そうだね。
(白石)あさみ何役?私はホントにちょっとした役。
病院の受付嬢Bだよ
(白石)そっか。
うん。
分かってわざと言わせただろ?お前
楽屋どこ?あっ。
あっちの大部屋。
ああ。
そうなんだ。
当たり前だろ
(スタッフ)あっ。
白石さん。
間もなくです。
はい。
じゃあね。
あっ。
うん。
顔色大丈夫かな?
(スタッフ)大丈夫だと思います。
・真木よう子といいます。
あっ。
水川あさみです。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
これ絶対私たち顔映んないですよね?ですよね。
何とか映りたいですよね。
(スタッフ)はい。
それじゃシーン20。
カット1。
(スタッフ)回りました。
(監督)用意。
スタート!「安田さま。
安田千秋さま」
(白石)「はい」
(監督)カット!すいません。
もう1回いきましょう。
あのう。
受付嬢の子たちあんまり動かないで。
はい。
はい。
チッ。
バレたか。
別に自然な流れでしたよね?
(監督)じゃあテーク2。
本番。
(スタッフ)本番。
(監督)用意スタート!「安田さま。
安田千秋さま」
(監督)カット!だから受付嬢。
こっち見ないで。
(真木・水川)はい。
(監督)ねえ?お前どういう指示出してんだよ?
(スタッフ)すいません。
今すぐ。
すいません。
頼むよ!ちゃんと言ったとおりやってくんないと。
(真木・水川)すいません。
(スタッフ)お願いします。
はい。
(監督)はい。
じゃあテーク3。
頼むよ。
用意スタート。
カット!
私たちはこの後もっと映らない場所に変えられた
結局5時間待っておそらく出演時間は数十秒
顔はたぶん映っていない
まあこんなことはよくあること
というよりこんなことばっかり
・水川さん。
ああ。
真木さん。
もしよかったらこの後ご飯でも一緒に食べに行きません?えっ?あっ。
はい。
行きましょう。
片付けちゃいますね。
はい。
真木よう子。
今日初めて会ったんだけど彼女とはとても波長が合う
年齢も近くお互い似たような境遇ということもあって私たちはすぐに仲良くなった
いいじゃんね?もっと映してくれたって。
そうだよ。
白石奈緒なんかよりもっといい女優がここに2人もいんだぞ!そうだぞ!フフッ。
ありがと。
うん。
っていうかさ。
私あの白石大嫌い。
何で?何かあったの?私が挨拶してもがん無視なの。
そうなの?絶対消えるよあいつ。
同期の子が悪く言われている
きっと昔の私ならフォローしていたかもしれない
だけど…
私も大嫌い。
マジで?まったくあの…。
どいつもこいつもね。
仕方ない。
あの子変わっちゃったんだもん
あさみちゃんさ。
うん。
三浦紗英って知ってる?三浦紗英?ああ。
あのモデルの?そうそうそうそう。
何かね私ねちょっと前までアルバイトが一緒だったの。
えっ?そうなの?そうそうそう。
で何かそのアルバイト辞めた後にスカウトされたらしいんだけど。
へえー。
じゃあホントにぽんって売れたんだね。
そうそうそう。
全然カワイイからいいんだけど。
この前さインタビュー記事さ見てたらさ。
「お芝居にも興味あります」とかって書いてあんの。
出た。
お芝居にも興味ありますアピール。
そう。
もうふざけんなよな。
こっちは死に物狂いでやってんのにさ。
そんな簡単にできる世界じゃないっつうの。
そう思ってたらさ何ともう幾つか出演決まってんの。
えーっ。
何それ?枕だ枕。
絶対枕。
どうせ枕。
もううちら以外全員枕。
オールマクーラ。
ラクーアみたい。
あーあ。
ラクーア行きたい。
ラクーア行きたいな。
ラクーア行きたい。
ラクーア行きたいよね?行く?行こうよ。
行こうよ。
24時間やってっからあそこ。
そうなの?ラクーア?マクーラも24時間ですけど。
何だか久しぶりに心の底から笑った気がする
真木よう子
彼女とはもっと大きな舞台で一緒に芝居したかった
22時台とかに。
私たちがメーンで
あっ。
もしもし?仕事終わった?そっか。
お疲れさま。
今週は忙しいの?ホント?じゃあ会えるかな?ああ。
そっか。
フフフ。
うん。
うん?今日はね撮影してた。
うん。
それでその後ちょっとお酒飲みに行ってた。
うん?ううん。
女の子と2人で。
ううん。
いないよ。
女優の子と。
いないよ。
俳優の人なんて。
打ち上げはないよ。
ないよ。
いや…。
ううん。
いや。
呼ばれないから。
電話番号も聞かれてないって。
聞かれても言わないから。
一般人の彼は芸能界に対して偏見があるようで私が女優やっていることをあまりよく思っていない
ケンカになるときは必ず私の仕事が絡んでいる
何でそんなこと言うの?じゃあいい。
いいよ。
辞めるから。
辞めればいいんでしょ?ユウ君が辞めろって言うんだったら辞めるよ。
いや。
ホントに。
「そこまで言ってない」ってさ。
だっていっつもそうやってケンカになるじゃん。
うん。
ホントに?うん。
いや。
いや。
ホント大丈夫だから。
うん。
私もごめんね。
じゃあね。
ハァー。
ハァー。
もう辞めよっかな。

(女性)おはようございます。
(女性)おはようございます。
おはようございます。
おはようございます。
私の名前は竹内結子
職業女優
(警備員)おはようございます。
おはようございます。
1980年。
埼玉県生まれ
1995年。
中学を卒業後の春休み原宿でスカウトされて芸能界入り
私にとってここが私のターニングポイントであったといえる
これがきっかけで1996年に女優としてデビュー
1999年。
連続テレビ小説『あすか』のヒロインに抜てき
2003年。
映画『黄泉がえり』
2004年。
ドラマ『プライド』
2007年。
映画『サイドカーに犬』
2012年には『ストロベリーナイト』に主演
その後も数々のドラマ映画に出演する
…はずだった
原宿でスカウト時に断っていなければ
(スタッフ)はい。
少々お待ちください。
竹内さん。
2番に電話です。
あっ。
はい。
お電話代わりました。
竹内です。
スカウトを断った私はそのまま地元の高校大学に通い卒業後東京の出版社に就職
忙しい毎日を送っていた
取材行ってきます。
(一同)いってらっしゃい。
ライターの竹内です。
カメラマンの…。
(三浦)お願いします。
今日はよろしくお願いします。
(三浦)お願いします。
一応念のため録音させていただきますね。
(三浦)はい。
デビューのきっかけはスカウトでしたよね?
(三浦)はい。
原宿を歩いてたらスカウトされました。
そこで名刺もらって何日か後に連絡して。
なるほど。
ちなみに私も原宿でスカウトされたことがある
ただ芸能界に興味はあったのだけど何だか怖くて結局連絡できなかった
それがいつですか?去年です。
去年?最近なんですね。
すごいなこの子
確かにカワイイけど。
そんな簡単に売れちゃうんだな
今お仕事お忙しそうですね。
はい。
でもお仕事はすごく楽しいですね。
私があなたくらいのころは生協でバイトしてたな
休みの日とかは何をして過ごしてますか?
(三浦)ああ…。
家に引きこもってDVD見たりしてます。
えーっ。
例えば?
(三浦)最近見たのは『黄泉がえり』とか。
ああ。
草剛さんの。
(三浦)はい。
超泣きました。
ヒロインの篠村陽子さんもあの映画で知って。
その後勢いで『サイドカーに犬』も借りて見ました。
へえー。
他に憧れてる女優さんとかはいますか?憧れてるのは…。
真木よう子さん。
真木よう子さん?あっ。
ごめんなさい。
ちょっと勉強不足で。
この世界に入るちょっと前に見に行った舞台に出ていた女優さんで。
何ていう舞台ですか?
(三浦)えーっと…。
何だったっけ?えっと。
(三浦)とにかくよう子さんがすっごいよかったんですよ。
そうなんですね。
勉強しておきます。
うーん。
まあ名前出したところで誰も知らないからな。
カットかな
15年以上たった今でもたまにふと考えることがある
あのとき芸能界に入っていたらどうなっていただろう?
もしかしたら今ごろは…
(司会)《第27回日本アカデミー賞優秀主演女優賞は…》
(司会)《『黄泉がえり』竹内結子さん》《おめでとうございます》《えーっ!嘘?》《あっ。
ありがとうございます》《このような素晴らしい賞を頂き光栄です》《ありがとうございました》
(運転手)お客さん。
お客さん!はい?
(運転手)着きましたよ。
あっ。
すいません。
1,700円になります。
領収書お願いします。
はい。
えーっと。
これで。
じゃあ2,000円お預かりします。
優秀主演女優はよだれ垂らさないか
別に今の仕事が嫌だというわけではない
ただ小さいころはドラマとか見て女優さんに憧れたし今でもいいなと思う
実際にスカウトされたときもぎりぎりまで悩んだし
だからあのときもう少しだけ自分に勇気があればもしかすると今ごろは…
(監督)《カット!》
(スタッフ)《カット》
(監督)《OK!》
(スタッフ)《はい。
OKです》《それではただ今のカットをもちまして竹内結子さんオールアップです!》《やったー!ありがとうございました》《ありがとうございました》《もう女優としてこの作品に関わることができて光栄です》《ありがとうございました。
皆さん。
お疲れさまでした》・
(清水)《竹内君!竹内君!》《はい?》
(清水)《竹内君》
(清水)竹内君。
はい。
今いい?はい。
(清水)よだれ出てるけど大丈夫?あっ。
すいません。
(清水)ちょっと面白そうな企画があって見てほしいんだけどさ。
何ですか?
(清水)知り合いで漫画描いてる子がいてね。
女優なんだけど。
これ結構面白いんだよ。
へえー。
(清水)これ書籍化できないかなと思ってさ。
書籍化?有名な女優さんですか?まあそんな有名ってわけじゃないんだけども。
もしかしてこれ清水さんが口説こうとしてる子ですか?違うよ。
ホントですか?何か「俺が本にしてやるよ」とか得意げに話してる絵が簡単に浮かぶんですけど。
違う違う違う。
もう純粋に?内容が面白いからだよ?そうなんですか?そうそう。
だからさちょっとこれ竹内君。
進めてくれないかな?私がですか?頼むよ。
はい。
これ連絡先。
いや。
でも売れない女優さんが描いた漫画なんて出版したところで売れないと思うんですけど。
(清水)いや。
それやってみないと分からないじゃん。
ねっ?内容は面白いんだから手に取ってさえもらえば売れると思うんだよ。
まず手に取らないですよ。
知らないんだから。
(清水)そこを何とか手に取ってもらうようにするのが君の仕事じゃないの。
もうすぐそうやってめんどくさいこと押し付けて。
(清水)はい。
よろしくお願いします。
頼んだよ。
私はこうやっていつも当たらなそうな企画ばかり任される
同期の子は売れてる人の本を手掛けて結果を出し次々と出世していくというのに

(清水)あっ。
もしもし?よう子ちゃん?俺俺。
うん。
あの例の漫画なんだけどさ。
何か出版化できそうだよ。
ホントホント。
任せてよ。
担当からすぐ連絡入れさせるからさ。
うん。
何か年も近いみたいだし仲良くしてやって…。
まあそういうわけなんで。
はい。
ひとつよろしくお願いいたします。
はい。
はい。
ごめんくださいませ。
はい。
失礼します。
はい。
はい。
私はスケベ親父のプライベートのお手伝いをするためにこの業界に入ったわけじゃない
あーあ
やっぱあのとき芸能界に入っておけばよかった
あっ。
もしもし?真木よう子さんでいらっしゃいますか?私『PAS!』編集部の竹内と申します。
でもきょうだいの話ってあんま聞いたことないから新鮮。
(男性)あっ。
そう?
彼とは付き合って4年がたつ
年齢的にもそろそろ結婚したい
だけど彼の様子を見るかぎりもう少し先になりそう
彼も今は仕事が忙しいみたいだしあまり重いとか思われたくないので直接的な話はしない
へえー。
ねえ?そういえばさ。
(男性)うん。
のんちゃん覚えてる?
(男性)ああ。
うん。
覚えてるよ。
結婚するんだって。
(男性)そうなんだ。
ウフフ。
おととい会ったんだけど幸せそうだった。
(男性)へえー。
たまにこうしてジャブは打って反応を見てみたりする
(男性)あっ。
すいません。
(従業員)はい。
(男性)これお代わり下さい。
(従業員)かしこまりました。
お分かりだろうか?このよそはよそ感
(男性)で仕事は?どう?えっ?
話を変えられた。
飲み物のお代わりをクッションに完全に話を変えられた
(男性)うまくいってないの?何か最近さ前ほど仕事に情熱がないっていうか。
この仕事に就いてなかったらどうなってたんだろうっていうことばっかり考えるようになって。
(男性)ふーん。
そっか。
まあそういう時期もあるよ。
そうなのかな?ねえ?
(男性)何?
もう思い切ってぶっこんじゃえ
結婚ってどう考えてる?どうしたの?急に。
あっ。
別にね今どうこうってわけじゃないんだよ。
(男性)うん。
まあ私もそれなりの年齢だしさ。
いつになるかはまだはっきりしなくても2人の間にそういうものは見えてるのかなって。
(男性)ああ。
そりゃこうやって付き合ってるわけだしさ。
このままいけばそういうふうになるんだろうなと思ってるよ。
そっか。
(男性)うん。
よかった。
(男性)食べな食べな。
うん。
だって急にこういうとこ来ると緊張するから。
(男性)えっ?たまにはいいでしょ?うん。
ありがと。
勇気出して聞いてみてよかった
だって何か変な感じしない?それ。
(男性)まあね。
(従業員)いらっしゃいませ。
(男性)じゃあちょっと水買ってくるわ。
あっ。
うん。
(男性)うん。
うわー。
この子も大事な時期なのに
売れたら売れたで大変だな
恋愛も堂々とできないんだもんな
行く?うん。
そう考えるとやっぱり私は幸せなのだと思う

面白いけど。
売れないよこれじゃ
真木よう子って誰だよ?
「マキヨウコ」?あっ。
はい。
ではゲラをお送りしますので来週木曜日までにコメントを頂ければ。
はい。
はい。
よろしくお願いします。
よし。
(清水)どう?進んでる?清水さん。
(清水)うん?『日刊真木よう子』売れるかもしれませんよ。
(清水)えっ?ホント?ええ。
ちょっと光が見えてきました。
(清水)よかったよかった。
じゃあ引き続き頼むよ。
はーい。
(清水)よし。
あっ。
もしもし?真木さん?『日刊真木よう子』の帯コメント書いてくれる人決まりましたよ。
三浦紗英さん。
真木さんお友達ですよね?そうそうそうそう。
実は前取材したときに真木さんのこと憧れの女優さんだって話してたんです。
だからぜひってことでお願いしたら快く受けてくれて。
うん。
そう。
彼女人気あるから影響力あると思うの。
えっ?泣いてますか?ウフフ。
大丈夫ですか?ホントに?うん。
取りあえずそういうことですので。
はい。
引き続きよろしくお願いします。
うん。
仕事もプライベートも追い風が吹いてきた
私は今とても充実している
やっぱり芸能界に入らなくてよかった
ここにきてはっきりとそう思えるようになった
はい。
すいません。
あのう…。
描きたいことはあるんですけど。
ちょっと絵がうまくいかなくて。
あのう。
もう。
もう…。
は…はい。
頑張ります。
はい。
ご迷惑をお掛けしてすいません。
ホント。
うん。
はい。
うん。
ありがとう。
ああ。
死ぬ。
死ぬわ。
ああ。
もう丸2日睡眠を取っていない
締め切りに追われるつらさってよく耳にしたけどここまでとは思わなかった
えー。
アトランティス所属水川あさみです。
26歳です。
よろしくお願いします。
(男性)はい。
よろしくお願いします。
お願いします。
(男性)えーと。
では今までに主にはどのような役柄に挑戦したことがありますか?えっと。
あれから私は幾つものオーディションに参加している
大きい役はことごとくチャンスをつかむことができず顔が映るかどうかのちょい役ばかり
普通の女性が多かったですね。
はい。
(男性)なるほど。
はい。
ありがとうございます。
すぐ伺います。
よし。
(清水)これあしたまでやっといて。
はい。
(清水)うん。
あっ。
もしもし?水川です。
お疲れさまです。
こないだのオーディションどうでしたか?はい。
ああ。
そうですか。
はい。
分かりました。
ありがとうございます。
ハァー。
あれから3カ月
『日刊真木よう子』は無事出版することができた
私たちは作者の真木よう子ちゃんが以前バイトしていたバーでささやかな祝賀パーティーを開くことにした
ちょっと遅くなったけど出版化おめでとうございます。
ありがとうございます。
うーん。
ああー。
ねえ?各書店の評判もすごくよくて売れ行きも順調みたい。
ああ。
そうなんだ。
よかった。
ありがとうございます。
もちろんこれは純粋に本が面白いっていうのもあるけど。
後は三浦紗英ちゃんの帯コメ。
あれ効いたね。
もう彼女の影響力すごいよ。
もう紗英ちゃんには一生頭上がらないですよ。
ねえ?今度お礼しなくちゃ。
うん。
あっ。
後で清水さんも来るってよ。
あっ。
そうなんだ。
うん。
あっ。
あさみ!ああ。
真木久しぶり!あさみ。
久しぶり!出版おめでとう。
ありがとう。
はい。
ああ。
ありがとう。
はい。
うわっ。
あっ。
何これ?万年筆。
嘘!?うれしい。
ありがとう。
あっ。
あのね。
こちらがその『日刊真木よう子』の編集してもらってる竹内さん。
初めまして。
竹内結子です。
初めまして。
水川あさみです。
あのう。
一応女優やってます。
お話はいつも伺ってます。
アハハ。
あのう。
『日刊真木よう子』もうホントに面白かったです。
それはよかったです。
あれは女優だけじゃなくって。
あのう。
同世代の働く女性誰もが共感できる内容だと思います。
ありがとう。
あっ。
そうだ。
あさみ。
あのね。
うん。
今日はちょっと報告があるんだけど。
えっ?何?何?うん。
あのう。
私女優辞めようと思って。
えっ?そうなの?うん。
もうこれからは漫画家で本格的にやっていこうかなと思って。
そうなんだ。
うん。
もともと漫画描くの好きだし。
何かこうやるんだったら腰据えてやろうかなと思って。
うん。
そっか。
だからあさみにはさ私の分まで頑張ってほしいんだよね。
だってあさみ絶対才能あるしさ。
うーん。
実はねあのう。
私も報告することがあって。
何?実は私も女優辞めようと思って。
えっ?もう年も年だしさ。
そろそろ親に迷惑掛けらんないなと思ってさ。
でもなかなかこう諦めきれなかったの。
だからいろんな作品のオーディション受けまくって。
それでどれか引っ掛かればいいなと思ったんだけど。
まあ。
うん。
ことごとく駄目でさ。
それでもうきっぱり諦めがついたの。
えっ?辞めてどうするの?うーん。
取りあえずはバイトして就職先探そうかなと思ってて。
まあ後は今付き合ってる人がいるからさ。
その人といずれ結婚することになるのかなと思ってるから。
まあ専業主婦になって彼を支えていこうかなって思ってる。
そっか。
うん。
っていうかあさみ彼氏いたんだね?あっ。
うん。
えっ?えっ?どんな人?写メある?えっ?うん。
あるよ。
えっ?見せて見せて見せて見せて見せて見せて。
いいよ。
(水川・真木)アハハ。
ちょっと待って。
うーんとね。
この人。
えっ?これ…。
えっ。
超カッコイイじゃん。
やだ。
そんなことないんだけど…。
何でよ?幸せじゃんよ。
ありがとう。
ちょっと。
竹内さん見てください。
あさみの彼氏。
えっ。
見たい見たい見たい。
超カッコ良くないっすか?そんなことない。
もう何だよ。
うらやましいな。
真木は?真木は?彼氏いないの?いないよ。
紹介してよ。
いや。
絶対モテるじゃん。
モテないモテない。
女子力ないの。
よく言うよ。
竹内さんは?竹内さん絶対いるよ。
モテるもん。
そうだよね。
いるよね。
あっ?えっ?どうしたんですか?いや。
あのう。
ちょっと今混乱してて何て言っていいか分かんないんだけど。
何ですか?その人…。
私も付き合ってる。
(水川・真木)えっ?えっ?えっ?どういうことですか?私その人と付き合ってる。
えっ…?どういうこと?どういうこと?どういうこと?これ。
私の彼氏。
えっ!?えっ?えっ!?二股ってこと?えっ!?えーっ!?えーっ!?何で?何で私の彼と付き合ってんの?それはこっちのせりふだっつうの。
何してくれんのよ?あんた。
ストップストップ。
落ち着いて。
いいや。
落ち着けない。
だって自分の彼氏寝取られてんだから。
寝取られたのこっちだっつうの。
何なのよ!1回整理しよう。
1回整理しよう。
ねっ。
1回整理しよう。
えーと。
竹内さん。
竹内さん。
えーと。
この彼とはいつからお付き合いしてるんですか?4年。
あさみは?3年。
ほら見ろ。
あんたがやっぱ寝取ってんじゃんよ。
寝取ってねえよ。
寝取ってないよね?寝取ってねえよ。
分からなかったんだもんね?そうだよ。
あさみは何も悪くないよ。
当たり前だろ。
竹内さん。
めったなこと言うもんじゃないですよ。
ねっ。
ここははっきりさせなきゃいけないんだけどもお互いに別の相手がいるということを知らされずに付き合ってたわけだよね。
だからね悪いのはお互いじゃないんですよ。
悪いのはこの。
この。
この男。
ねっ?でここからどうするかなんだけど。
今ここに呼ぶ。
絶対に許さない。
うんうんうん。
その気持ちは分かるんだけど。
この2人がこれからどうしたいのかっていうのをしっかりさせないともう彼がここに来てもぐちゃぐちゃになっちゃうだけだから。
ねっ。
2人の友人としてこんな男とはもう縁を切るべき。
絶対に別れるべき。
どうでしょう?もう訳が分かんない。
何なのよ?・
(清水)こんばんは。
あれ?どうしたの?何かちょっとただごとじゃない空気だけど。
ちょっと今立て込んじゃってて。
あのう何?
(清水)あっ。
そうそう。
えー。
まずよう子ちゃん。
おめでとう。
ありがとうございます。
(清水)しかもまた増刷決まったよ。
ものすごい勢いで売れてるよ。
そうなんですか。
ありがとうございます。
(清水)はい。
ででででで。
それだけではございません。
えっ?何と『日刊真木よう子』映画化が決まりました。
嘘!?
(清水)ホントだよ。
おめでとう。
えっ?嘘?嘘?えっ?えっ?嘘?ホント?夢みたい。
夢みたい。
夢みたい。
(清水)いやぁ。
俺も鼻が高いよ。
清水さんのおかげですよ。
(清水)いやいやいやいや。
よう子ちゃんの今までの女優としての積み重ねが実ったってことなんだよ。
ねっ。
俺言ったでしょ。
諦めなければいつか逆転することだってあるってさ。
ホントですね。
わあー。
やった。
(清水)イェイイェイ!フゥー!あっ…。
(清水)えっ?
(せきばらい)あっ。
あっそうだ。
どこまで話したっけ?えーと。
えーと。
あっそうだ。
私はね2人の友人としてあのう。
2人には前に進んでほしいなって思ってる。
いやいやいやいや。
えっ?何にやついてんの?えっ?えっ?こっちは不幸のどん底なのに何にやついてんの?えっ?にやついてないよ。
にやついてんじゃん。
映画化決まってにやついてんじゃん。
うちら前にしてよくにやつけるよね。
(清水)竹内君。
清水さんはちょっと黙ってて。
(清水)いや。
ちょっと。
あのう。
ちょっと待って。
聞いて。
にやついてるように見えたかもしれないけどそれはそれでこっちはこっちの問題だから。
いいよもう。
それよりさ喜べばいいじゃん。
うれしいんだったら。
映画化決まって幸せなんだから。
はい。
おめでとう。
何なのそれ?ひどくない?えっ?私だって友人が二股掛けられて許せないに決まってるじゃん。
最初はね。
でも映画化の話聞いてから完全に意識そっちいってんじゃん。
いってないよ。
いってるって。
あーあ。
おまけのおまけ。
あんたにとっちゃこっちの問題なんかただのおまけだよ。
さっきから黙って聞いてりゃ…。
黙って聞いちゃいないけどね。
揚げ足取らないでよ。
そんなねそっちが不幸だからってねこっちに八つ当たりしないでよ。
だいたい二股掛けられたんだって自分たちが悪いんじゃん。
はっ。
はい。
本性出た。
まあしょうがないよ。
しょせん他人事だからね。
ああ。
あっ。
何それ?マジ傷つく。
でも映画化は決まってるんだから結局幸せだよね。
あしたには忘れてるよ。
はっ?ねえ?あさみちゃん。
こんな幸せな女はほっとこう。
うちらはうちらだけでおんなじ被害者同士力合わせてこの男を懲らしめよう。
そうですね。
こんな最低男すぱっと別れましょう。
そうだよね。
2人ならさみしくないよ。
励まし合いながら一緒に乗り越えよう。
竹内さん。
私たち一生仲間だから。
(清水)あっ。
ちょっとごめん。
さっきからこれ何なの?ちょっと黙っててもらえます?私たちは今ね力を合わせて不幸のどん底からはい上がろうとしてるんです。
ねえ?あさみちゃん。
そう。
(清水)不幸?誰が?見りゃ分かるだろ。
うちらだよ。
ねえ?あさみちゃん。
そう。
どこが不幸なのよ?竹内君だって今回の映画化の件で社長賞もらえるんだよ。
えっ?うん。
会社内でもすごい評価が上がってて。
あっ。
まだ正式な発表はまだなんだけど副編集長になるのほぼ決定だよ。
嘘!?
(清水)ホントだよ。
すごいことだよ。
竹内君。
これで同期のやつらに一気に差をつけたな。
うわー。
清水さん。
(清水)これから忙しくなるぞ。
あっ。
竹内副編集長。
いやー!ありがとうございます。
私…。
(清水)うんうん。
よしよし。
フン。
おめでとうございます。
あっいや。
あのう。
よかったですね。
いいですよ。
無理して合わせてもらわなくて。
こっちはこっちであのう。
地味にやってきますんでどん底の方を。
いや。
それとこれは別だからさ。
もういいからほっといてよ!えっ?幸せグループはよそで祝賀会でも何でも開いてくればいいじゃん。
どうせ私なんか彼氏には二股される。
女優としてはうまくいかない。
何にもうまくいかない。
ほーら。
ここにいたら私の不幸がうつりますよ。
ほら。
さっさと出てってよ。
ほら。
ほら。
(清水)あさみちゃんだっけ?君幾つ?まだ30手前でしょ?まだまだ若いのにそんな悲しいこと言うもんじゃないよ。
あんた誰?
(清水)自分一人が不幸だなんて思っちゃ駄目だよ。
みんなそれぞれ悩みは抱えてるんだ。
そんなのあさみちゃんだけじゃない。
生きてりゃそりゃ時には孤独を感じることだってあるし。
おじさんだってそうだよ。
あれ?清水さん。
新婚ですよね?
(清水)今それ関係ないじゃん。
いつから新婚旅行行くんでしたっけ?
(清水)今その話いいでしょ。
いつから?
(清水)いや。
いいじゃん。
いつから?来週から。
(3人)浮き浮きじゃねえかよ。
白眼鏡。
じじい。
てめえ。
(清水)はい。
キャリーケース転がせねえ体にしてやろうか?
(清水)やだ。
(清水)ごめんなさい。
んんー。
もしもし。
はい。
はい。
えっ?それホントですか?はい。
分かりました。
はい。
どう思う?私もそれ思ったの。
ちょっと話してみようか?うん。
あさみちゃん。
うん?大丈夫?あのう。
ちょっとお話があるんだけど。
何?あっ。
あのね。
私が『日刊真木よう子』を書籍化してるときからずっと自分で妄想してたんだけど。
あのう。
何?あのね。
まだどうにかなるか分かんないんだけどあのう。
劇場版『日刊真木よう子』の主役をあさみちゃんにやってもらえないかなと思って。
あのう。
真木よう子役。
えっ?あっ。
これ友達だからとかじゃないよ。
純粋に原作者として水川あさみにやってもらいたいの。
ほら。
この役ってさ私と一緒で長い下積み時代とかを経験してるね苦労を知ってる役者さんがやるべきだと思うし。
だから水川あさみは適役かなって思ってるんだけど。
私もね実は同じこと思ったの。
やっぱりこの作品ってさぽっと出の女優さんなんかよりもいろんな苦労したあさみちゃんがいいと思うの。
私にとっても大切な作品だからそこは不幸仲間なあさみちゃんに演じてほしいなって。
不幸は元だけど。
どうかな?あさみちゃん的にもチャンスだと思うけど。
あのね真木。
せっかくの誘いなんだけどごめん。
私無理。
えっ?何で?えっ?お情けとかあれだよ。
友達だからとか。
私そういうことで言うタイプじゃないの知ってるでしょ。
うんうん。
それは分かってる。
そんなの分かってるよ。
じゃあどうして?主演だよ。
これがきっかけで仕事増えるかもしれないじゃん。
オーディション受かったら女優続けるつもりだったんでしょ?あさみちゃんはまだ辞めるべきじゃないんだよ。
違うの。
スケジュール的に無理なの。
スケジュール?実はねあのう。
結果を聞いてないオーディションが一つだけあるの忘れてて。
どうせ受からないって思ってたからなんだけど。
それがそのう。
受かっちゃって。
その電話が今きて。
何?どんな仕事?今からすごいこと言うよ。
私今からホントにすごいこと言うよ。
うん。
何?『スター・ウォーズ』『スター・ウォーズ』ってあの『スター・ウォーズ』?そう。
あの『スター・ウォーズ』だからしばらく私あっちで生活することになると思う。
(真木・竹内)えっ。
えっ。
祝福したいけどすご過ぎてぴんとこない。
私も実はまだぴんときてない。
ぴんときてないけど。
とにかくぴんときてないけどさ。
やだ。
あさみちゃん。
(真木・竹内)おめでとう!ありがとう!
(歓声)あっ。
(水川・竹内)何?何何?彼氏は?もういい。
そんなんどうでも。
私も。
そっか。
(歓声)
私は『スター・ウォーズ』での演技が評価されその他のハリウッド映画にも立て続けに出演し話題となった
さらにそこから逆輸入のような形で日本でも注目を浴び数々の作品で主演を務めることになった
ねえ?私宛てに何か来てる?
(スタッフ)あっ。
タナカさんからご連絡ありました。
あっ。
ありがとう。
(スタッフ)お願いします。
(スタッフ)すいません。
取材いってきます。
いってらっしゃい。
映画は大ヒット。
私はこのことが会社内で評価され社長賞をもらい清水さんの言うとおり同期の子たちを一気に追い抜いた
(メールの着信音)
あと新しい彼氏もできた
その後私は劇場版『日刊真木よう子』の主演に三浦紗英を推薦した
彼女の芝居への情熱は興味があるどころではなくまるで私が乗り移ったかのように真木よう子を見事に演じきってくれた
(3人)かもしれない。
あのとき。
ターニングポイントで。
違う道を選んでいれば。

(バカリズム)バカリズム。
バカリズム。
(女性)ない。
ないですけど。
(バカリズム)升野であるかもしんない。
升野。
升野。
一升瓶の升に野原の野。
2015/06/23(火) 22:00〜23:24
関西テレビ1
かもしれない女優たち[字]【バカリズム脚本!竹内・真木・水川がどん底人生を生きる】

バカリズム脚本!人気女優の違う人生をインタビューに基づき妄想!雑誌記者の竹内結子・オーディションに落ちまくる水川あさみ・漫画家の真木よう子!どん底3人の人生とは

詳細情報
番組内容
 とあるスタジオ玄関に颯爽(さっそう)と入ってくる女優・真木よう子、水川あさみ、竹内結子。女優としての輝かしい経歴を振り返りながら、楽屋へ入ると・・・そこは、

 真木が女優としてターニングポイントであった作品のオーディションでチャンスをつかみ損ねてしまった世界。
 水川が女優としてターニングポイントであった作品のオーディションでチャンスをつかみ損ねてしまった世界。
番組内容2
 竹内が女優としてターニングポイントであった原宿でのスカウトを断ってしまった世界。

 その世界では、
 真木はバーでアルバイトをしながら、エキストラ同然の端役を演じる日々。周りから取り残されてしまったという悔しさを忘れないため、ある日記をつけている。

 水川は、同い年で共に女優を目指していた友人・奈緒が順風満帆に重要な役をつかんでいることに不安と嫉妬を感じている。
番組内容3
 竹内は、出版社で雑誌編集の仕事につき忙しい日々を送る一方、会社帰りに彼氏とデートするなど充実した生活ぶり。ある日上司から、知り合いが描いたという漫画の書籍化の仕事を指示される。

 3人の人生がひょんなことから不思議な接点を持ち始め、やがて交錯していく・・・。
出演者
竹内結子 
真木よう子 
水川あさみ 

片桐仁 
バカリズム

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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