(ピアノ)
(バイオリン)
(拍手)
(ピアノ)
(足音)
(ピアノ)
(足音)
(ピアノ)
(アイスピックで刺す音)
(財津陽一)ああっ…!
(財津)ああっ…。
(鍵盤にたたきつけられる音)ううっ…。
(パトカーのサイレン)
(鍵盤をたたく音)
(宮下晴彦)そんなに有名なのか?
(織田みゆき)はい。
映画やドラマの音楽を作ったりコンサートしたりして結構人気あります。
ほお〜。
ホトケさんだ。
(富樫謙三)宮下のだんな!
(富樫)お待たせ。
ご苦労。
行くぞ!
(一同)はい!
(曽根)ああ宮下。
(宮下)あっ早いっすね。
すいませんあの方は?
(宮下)ああ?あっ遺留品係の糸村だ。
遺留品係?正式には科学捜査係っつうんだよ。
かかわり合うとろくな事がねえぞお嬢ちゃん。
かわいそうに…。
家政婦の溝口さんです。
織田ちゃんと聞いとけ。
はい。
織田と申します。
(富樫)ガイシャの倒れていた床から微量の土砂長い髪の毛を採取。
凶器のアイスピックから指紋は出てません。
お待たせしました!
(曽根)遅いよ!あっ課長お疲れさまです!
(一同)お疲れさまです!被害者は財津陽一だそうだな。
ご存じですか?ガイシャはピアノを弾いていた時に後ろからいきなり刺されたようです。
おいそうだな?
(堂本治)死因は頸部静脈からの失血死です。
おい…これなんだ?あっこれも遺留品の一つに加えようと思いまして。
(富樫)そんなもので事件の何がわかる!被害者が幼い頃から大事にしてたもののようなんですよ。
(曽根)だからなんだ。
被害者の事を一番よく知っている遺留品のように思うんです。
(曽根)糸村お前の仕事はなんだ?遺留品の選別と鑑定の優先順位をつける事だろ?そんなものにかかわってる場合か!はい。
では…すいません宮下さん。
ちょっと持っててください。
大事なんで。
まず髪の毛のDNA鑑定と土砂も鑑定に回します。
それから財布の中のクレジットカードと携帯の解析。
それとICレコーダーの…。
レコーダーの解析は中身を聞いて必要と判断された時のみ行う。
経費はなるべく抑えるんだ。
では。
俺は助手かっ。
(宮下)触らぬ神にたたりなし。
行くぞお嬢。
(ICレコーダー)「
(ピアノ)」よし。
「
(ピアノ)」社長!財津先生が昨夜お亡くなりになりました。
(入江大志)自殺か?いえそれが今警察の方が…。
(入江)あいつの才能は私にとって生きがいでした。
だから社長としてあいつをプロデュースしながら守ってもきたんです。
「守って」…ですか?ええ…。
財津は芸術家肌でして結構もめ事が多かったんです。
(入江)しかし殺されるなんて…一体誰が…!?
(牛島)玄関の鍵がかけられていなかったんです。
(ため息)あそこには我々をはじめいろんな人が出入りするのであいつ面倒くさがって鍵をかけない時が多かったんです。
そうだ…。
レコーダーはありませんでしたか?レコーダー?
(入江)ええ。
(村木繁)この髪の毛のDNA鑑定と土砂の分析ですね。
糸村さん。
糸村さん!…ああごめん。
今ちょっとスコアのチェックしてたから。
読めるんですか?楽譜。
昔音楽やってたもんで。
(携帯電話の着信音)本当ですか?ああちょっとごめん。
ごめんごめん…。
(携帯電話の着信音)はい糸村です。
あっわかりました。
ごめんちょっと用事出来たんであとよろしく。
頼むね。
えっちょっと…糸村さん!?糸村さん!相変わらず勝手な人だね。
(横山)やってらんないっすよ。
「
(ピアノ)」いい曲だな。
(加賀見)財津の新境地ってとこだ。
残された楽譜とは途中から違ってるようなんですが…。
財津にはよくある事だ。
曲は生き物だっていうのが彼の口癖だそうだからな。
よくご存じですね。
コンサート楽しみにしていたんだ。
ああなるほど…。
まあ素人の意見は意見として一応プロの意見も聞いてみるつもりです。
お前は人を不愉快にさせる名人だな。
…え?もういい帰る。
(曽根)11時から翌1時の間。
地取り!
(宮下)はい!その時刻頃怪しい人物等の目撃情報は今のところありません。
(曽根)鑑取りの方は?はい。
ガイシャは業界ではトラブルメーカーとして有名であちこちでいざこざを起こしてるようです。
そのリストです。
事務所社長によると最近も結婚間近だった女性と別れたらしいという話です。
(曽根)婚約者がいたのか?バイオリニストの相川雪江という女性です。
(曽根)その婚約者も含めて財津と面識のある人間を絞り出し恨みを持つ人間を洗い出せ。
(一同)はい。
(曽根)遺体の状況から見て相当遺恨を持つ者の犯行だ。
次ICレコーダー。
糸村。
はい。
ICレコーダーにはピアノの曲が録音されているだけでした。
状況から判断してガイシャはピアノを弾いていた時に殺された可能性が高い。
だが残念ながらそのレコーダーにはその時の状況は録音されていなかった。
えー次に…。
でも…それってなんか気になりませんか?質問は許さん!お前は報告だけしてろ。
はい。
では報告いたします。
レコーダーの曲と現場に残されていた楽譜は一応プロの方に比較検討して頂いています。
以上。
(曽根)次!
(大石鉄夫)このタクシーの領収書落ちないからな。
え!?嘘でしょ係長。
これだって係長が「急いで来い!」ってでかい声で言うからこれ電車じゃ間に合わないと思って…。
(大石)これは調査と関係ないだろ。
(横山)嘘だ…。
(横山)あれ?何してるんですか?ん?壊れてるんだよこのピアノ。
(鍵盤をたたく音)ほら。
かわいそうだからさ鳴らないピアノなんて。
直せるんですか?昔から買ってもらったおもちゃが壊れたりすると直したりしてたから。
よくやったでしょ?…普通しないし。
(バイオリン)
(吉川)ああちょっと待って。
もう〜ほんとに…。
違う違う3小節目。
あっ入江ちゃん入江ちゃんちょっと…。
(入江)どうしました?吉川さん。
もう〜雪江ちゃんいないと仕事になんないんだけど…。
(入江)すいません。
申し訳ありませんお仕事中。
(相川雪江)いえ…。
仕事も手につかなくて…。
ごめんなさい。
いえお気持ちわかります。
今日伺ったのは相川さんは財津さんと婚約なさっていたと入江社長からお聞きしたものですから。
今年の秋には結婚する予定でした。
でも突然彼の態度がよそよそしくなって…。
(足音)あっいたっ…。
すいません。
いった〜…。
あの…何か?どうしてここに?織田君だっけ?ごめんね急に声かけて。
まずかったですか?警察の方だって言うからてっきり…。
いえいえ大丈夫ですよ。
悪いね牛島君すぐ済むからさ。
…わかりました。
お知り合いですか?大学の先輩なんだ。
今も入江さんに伺ってたんですが亡くなった財津さんのアトリエにこのおもちゃのピアノが置いてあったんですけどいきさつをご存じありませんか?財津のアトリエにあったのは私も知ってるんだが相川君ならわかるかと思って。
いいえ知りません私。
本当ですか?もうやめてください。
失礼します。
話を戻しますが財津さんがよそよそしくなった事に何か心当たりは?ありません。
(雪江)突然メールがきて…。
何がなんだかわからなくて…。
理由を聞いても言ってはくれなくて。
大体おもちゃのピアノが事件にどう関係があるって言うんですか。
織田君ってさ横山の同期だったよね?いいですか?私たちに聞き込みが大切なように糸村さんには遺留品係としてやるべき事がもっと他にもあるはずです。
とりあえずこの事は係長に報告しておきます。
チクるんだ!報告です。
でもさ彼女の態度おかしかったと思わない?え…?
(携帯電話の振動音)失礼。
もしもし織田です。
被害者財津陽一が児童養護施設出身だという事がわかった。
連絡してみると最近ガイシャは20年ぶりに訪ねていたそうだ。
至急あたってみてくれ。
(田辺光男)昔は家庭が貧しかったり両親のいない子供が多かったんですが今は家庭内暴力の犠牲になった子の方が多いんですよ。
陽一もそうでした。
陽一!バーカ!
(子供たち)や〜い!
(子供たち)バーカバーカ!
(田辺)母親に買ってもらったというおもちゃのピアノを黙って弾いている。
いつも何かを耐えているような少年でした。
(田辺)ところがある時それまで彼をからかっていた相手に対していきなり刃向かったんです。
陽一が怒ったぞ!やめろ…!
(田辺)家庭内暴力や仲間のからかいを耐えて生きてきた彼の気持ちが一気に爆発した瞬間だったのかもしれません。
それほど大切なピアノだったんですね。
口を挟まないって言ったじゃないですか。
(牛島)財津さんが20年ぶりに訪ねてきた理由は?わかりません。
ただ…。
(財津)あの頃があったから今の俺がある。
最近よくそう思うんです。
あのピアノがなかったら俺は…。
だから…いやだからというかこれからの俺自身のために曲を作ったんです。
タイトルは『明日へ』。
まあどうなるかわかりませんけどね…明日は。
(田辺)本当に言葉どおりになってしまって…。
こんな事でお役に立てたんでしょうか。
はい。
つまり『明日へ』っていうのがレコーダーに残っていた曲のタイトルって事になるのかな?知りません。
でもなんで『明日へ』なんだろう。
じゃあ失礼します。
「
(ピアノ)」
(横山)この曲は?ICレコーダーに残されてた曲。
『明日へ』ってタイトルなんだけどどう思う?どうって…何がですか?なんだろうね。
こっちが聞いてんだろ。
あっそうだ。
音大の教授からファクスが届いてましたよ。
ああサンキュー。
やっぱり違うんだ…。
(横山)違うって?ICレコーダーの曲と楽譜の曲出だしはどっちもよく似てるんだけど仕上がりとしてはかなり違うものになってるらしい。
事務所の入江社長から連絡があった。
「新曲発表のコンサートを追悼コンサートにする事にした」。
「ついてはレコーダーに残されていた曲を使用したいので返却してほしい」とな。
ICレコーダー直ちに返却する。
それは無理です。
なぜだ?事件にかかわりがあるわけじゃないだろう?財津さんが書いた楽譜とはかなり曲調の違うピアノ曲がICレコーダーに録音されていた事がわかったんです。
これって気になりませんか?どちらにしたってガイシャの曲だろう!それはどうでしょう…。
すぐ返すんだ!これは命令だ!
(野口洋)係長解剖所見ファクスされてきました。
いいな?レコーダー直ちに返却しろ。
あっやっぱ無理ですね。
糸村!ここ見てください。
(曽根)「右手小指に捻挫六割方治癒」これがどうしたんだよ。
つまりICレコーダーに録音されていた曲は被害者の弾いたものではないという事です。
何!?右手小指の捻挫は完治していません。
となるとその指で鍵盤をたたけばそのタッチは弱くなるはずです。
ところが残された曲にはそんなところは全くありませんでした。
なぜお前にそれがわかる?音大の教授からもそんな報告は受けていません。
無理だそうです。
うん大丈夫です。
ここで待ってますから。
あのですね…。
はい。
事件は糸村さんが担当している事案だけじゃないんです。
なのに今すぐレコーダーのデータ復元やれなんて非常識にも程があります。
そこをなんとか…。
無理だと言ったはずです。
無理だと思ったらその山には登れないと誰かが言っていたような気がします。
はいわけのわからない事言わないで。
失礼。
僕と村木さんの仲じゃないですか。
どんな仲ですか!?ディナーもした事がない。
誘ってるんですか?あれ?よいしょ…。
よいしょ…。
おかしいな確か…。
あっ…。
あのちょっとすいません。
(江藤奈津子)どうかなさいました?この辺に日本音響研究所ってのがあるのをご存じありませんか?何かご用ですか?…え?所長の江藤奈津子です。
は?ああ…ちょうどよかった。
えっと糸村聡と言います。
警察?
(奈津子)ありますね消去された音源が。
まずこれが録音されていた曲。
「
(ピアノ)」そしてこれが消去されていた音です。
「
(ピアノ)」似てるけど違う曲…。
わかります?前のは別の人が弾いてたんですたぶん。
だとしたらこういう事をする人って…。
なんですか?別に…。
「
(ピアノ)」音の弱い部分があるわね。
指を少し痛めていたようです。
(財津)「ああっ…」「
(鍵盤にたたきつけられる音)」
(財津)「ううっ…」犯行現場の様子みたいね。
だから犯人が消去した。
もう一度お願いします。
ちょっとすいません。
「
(ピアノ)」「
(足音)」
(財津)「ああっ…」「
(鍵盤にたたきつけられる音)」
(財津)「ううっ…」この靴音はハイヒールの音だそうです。
ハイヒール?現場にもハイヒールのような足跡が残っていたと鑑識から報告があがってきています。
大きさは24センチ。
確か長い髪の毛が現場に落ちてたな。
(ピアノ)
(財津)ああっ…!
(宮下)つまり女がピアノを弾いてるガイシャの後ろから近づいてアイスピックで何度も突き刺したって事か?1つ気になりませんか?
(宮下)何がだよ?犯人は被害者の演奏を消去して自らピアノを演奏して録音しています。
なぜでしょう?犯行現場を録音されてる事に気づいたからだろうが。
だったらICレコーダーを持っていけば済むはずです。
なのにわざわざ楽譜とは違う曲を録音してます。
糸村そんなものは被疑者を逮捕すればわかる事だろ!ああはあ…。
あの…。
どうしたお嬢?さっき鈴の音も入ってましたよね?被害者と結婚するはずだった相川雪江さんの携帯には鈴がついています。
彼女ならピアノも弾けるはずです。
(携帯電話の振動音)はい。
…糸村?ああ昼間の。
あの…ハイヒールの音について何か気づいた事はなかったかと思いまして…。
お聞きにならなかったのでお答えしませんでしたが足音に乱れがありました。
「例えば足の不自由な老人が歩いている時のような…」江藤さん1つ実験にご協力頂けませんか?え?
(宮下)入ります。
(曽根)おお。
わざわざお越し頂いて申し訳ありません。
(曽根)2〜3お聞きしたい事があったものですから。
どうぞ。
…はい。
(曽根)最近の財津さんは荒れていたともっぱらの評判だったそうですね。
ご存じでした?
(曽根)あなたも怒鳴られた経験がおありだ。
ひと月ぐらい前あなた財津さんのお宅を何度か訪ねている。
帰れ!ここには二度と来るな!
(溝口泰子)すいません。
どうして?
(雪江)私にわかるように説明して!いいから今はもうほっといてくれ!財津さんが亡くなられた当日の午後11時頃どこにいらっしゃいました?自宅に…。
一人で?…はい。
実はですねその時刻より30分前にあなたがご自分のマンションから出て行くのを管理人さんが目撃していたんです。
あなたのマンションから財津さんのお宅までは30分もあれば十分だ。
そうですよね?管理人さんの見間違いです。
私は家にいました。
私はあの人を殺したりなんかしていません!そんな事ひと言も言ってませんよ私は。
足の大きさは何センチですか?24センチです。
現場に残されていたハイヒールの大きさと同じだ。
固えよこれ。
(横山)何をする気なんですか?一体。
ん?ちょっとした実験だよ。
あ江藤さん…。
はい。
昨日例のレコーダー曲を消去して録音し直した人物について何か言いかけてやめてましたけどあれ何を言おうとしてたんですか?ああいう事をする人って自己顕示欲の塊じゃないかって思っただけです。
そうか…。
よし!実験始めようか。
(奈津子)これがレコーダーに残されていたハイヒールの音の波形です。
ハイヒールとそれから鈴も用意しときました。
現場に残された足跡は約24センチ。
これさ2000円したんだよ。
経費で落ちればいいんだけどな…。
(横山)っていうか何するんですか?だからこの波形にぴったり合う人物を探すんだよ。
は?あお願いします。
はい。
違いますね。
では次江藤さんお願いします。
え?…ええ。
どう?全然違いますね。
じゃあ次は僕が。
ハイヒールください。
は?なんで糸村さんが?倒れそうなんですけど…。
(横山)当たり前でしょうが!どうですか?
(曽根)相川雪江は一旦帰すしかないな。
(宮下)…ですね。
クソッ!横山…。
なんだ?えーっと糸村さんの実験結果をお知らせにきました。
実験!?聞いてないぞそんな話は!いやあそう言われても…。
えーっと…これです。
(曽根)「鑑定結果ICレコーダーに残されていた靴音は体重65キロ前後でハイヒール着用による歩行に不慣れな人物」…。
(横山)…らしいです。
それともう1つ被害者のピアノ曲を消去した人物がそんな事をした理由ですが恐らく自分の方が財津さんより勝っている事を誇示するためだったんじゃないかって…。
糸村のヤツひょっとして大物を釣り上げたかもしれませんね。
(おもちゃのピアノ)ああ!やめて!ああ!やめて!
(雪江)すいません。
また明日お迎えにあがります。
(入江)まだ彼女を疑ってるんですか?糸村さん。
相川さん入江さん財津さんの事でお話があります。
3分だけ僕に時間を頂けませんか?彼女は疲れてますから…。
聞きます私。
このおもちゃのピアノこれは幼い頃からずっと財津さんの心の支えだったようです。
え?財津さんは父親からの暴力を受けて育ちました。
(入江)本当ですか?父親の暴力のせいで母親は自殺。
父親は病気で亡くなり養護施設で育ったんだそうです。
いつも何かに耐えているような少年だったそうです。
そんな少年がたった一度だけ暴力を振るった。
まるで今まで耐えてきた事を一気にぶつけるように。
その時彼は一体どんな気持ちだったんでしょう。
とてつもなく怖かったんじゃないかなと思うんです。
自分も父親と同じDNAを持ってる…。
いつ暴力を振るうようになってしまうかわからない恐怖…。
その恐怖を抑え込むために彼はこの母親からもらったおもちゃのピアノを弾き続けていたんじゃないかなって思うんです。
(おもちゃのピアノ)だから…。
何か?私そのピアノを壊したんです。
(財津)バカ!おい!何してんだよ!お前は!ごめんなさい。
(雪江)今から思えばあの時から彼の態度が変わったんです。
そうですか…彼が結婚をやめると言ったのはお母さんの形見の品を私が壊したからだったんですね。
(入江)これぐらいで…。
相川君行こう。
(鍵盤をたたく音)形見の品を壊されたぐらいで結婚をあきらめる人はいません。
確かに彼はこのピアノから音楽の道へと育っていきました。
でも心の奥底ではいつも暴力を振るう自分におびえていたはずです。
その兆しはあったんです。
大好きな音楽に没頭すればするほど周りとぶつかってしまう…。
このままいけば父親と同じような真似をしてしまうんじゃないか…。
いつか大切な人にまで暴力を振るってしまうんじゃないか…。
そう相川さんあなたの事です。
ピアノを壊したあなたに暴力を振るいかけて本当にそうなってしまうかもしれないという現実を突きつけられたんです恐らく。
だから結婚に対して自ら背を向けたんじゃないんでしょうか。
そんな…。
彼の立場に立った時にそう思ったんだとしたらあなたに急によそよそしくなったその理由がわかるんです。
財津さんは一旦は絶望したのかもしれません。
しかしあなたと別れる事への葛藤もあったはずです。
その葛藤の末に彼は新しい曲を作ったんだと思います。
(ピアノ)それはあなたの想像でしょう?第一そんなに大した曲じゃない。
財津の曲は!犯人もあなたと同じ感想を持ったんです。
だから財津さんの曲を消去して録音し直した。
どうだ!お前なんかより俺の方がずっとうまいんだ!負けるはずがないと。
そう荒々しい感情をむき出しにして。
入江さんあなたいつ財津さんの曲を聴いたんですか?ちょっと…。
いや…いやー!
(ピアノ)
(入江の声)あいつの才能を最初に認めたのは私だった。
いつも圧倒された。
私は音楽をあきらめようと思いました。
だが彼が自分と一緒に新しい音楽を目指そうって言ったんです。
(曽根)だからプロデュースする側に回った。
どうです?彼は売れましたよ。
(入江)今じゃマスコミの寵児だ。
ぶつかりもしたし殴られもした。
え!?俺にこんな仕事をさせるのか!?
(制止する声)
(財津)謝れこらぁ!離せ!このぉ!おい!入江!だが彼は私の力で売れた。
(財津)このまま日本で音楽続けてたら俺はダメになる。
一からやり直したいんだ。
あんたならわかってくれるだろ?おいおいおいおい…コンサートどうすんだよ?スケジュールだって2年先まで埋まってんだぞ。
次のコンサートで引退を発表する。
その後は新天地でやり直す。
(入江)財津!何考えてんだ!何考えてんだ財津!考え直せ!だからもう決めたんだよ!
(入江の声)雪江の事だってすぐわかった。
よお。
冗談じゃない。
なんで悪態つかれながら今までやってきたと思ってる。
あいつは俺の人形なんだよ!なのに…許せなかった。
彼女があの夜出掛けたのは財津の事で知らせたい事があるって匿名メールがあったからだ。
そんなに嫌いだったのか?財津の事が。
何?嫌いだったんだろ?
(曽根)なんだかんだ言ったところであんたは財津に音楽ではかなわなかった。
だからいつも心の中で疎んじていた。
そんな事はない。
いやいやそうに決まっている。
あんたのその目がそう言っている。
(曽根)「あいつが嫌いだった」ってね。
違うって言ってんだろ!おい…。
あいつは俺の人形だったんだ!あいつは俺のおかげでここまでなれたんだ!おおう!いいかよく聞け。
もう少しで俺の曲があいつの追悼コンサートで発表されるはずだったんだよ。
俺の曲がだ。
わかるか?財津なんかよりも素晴らしい俺の曲がだ!わかるか?わかるか?
(ピアノ)
(鍵盤をたたく音)財津さんはあなたとやり直そうとしてたんですね。
え?これは財津さんの財布の中から出てきたクレジットカードの記録です。
ここにイタリア行きの片道チケットの購入記録があります。
名前は財津陽一と相川雪江。
(雪江)フィレンチェ…。
何か?私の父と母が初めて出会ったのがフィレンチェだったそうです。
いつか行ってみたいって話した事が…。
覚えてたんです財津さんは。
男の嫉妬ってのは怖いなあ。
宮さん私に嫉妬を感じた事はあるかね?いいえ。
(ピアノ)財津さんの遺作のタイトルは『明日へ』といいます。
(ピアノ)この曲には未来への希望があります。
新しい自分とあなたのための曲なんです。
(ピアノ)本当にありがとうございました。
江藤さんのおかげです。
1つ質問してもいいですか?はい。
科学捜査係は遺留品係と呼ばれていると伺いましたがどうしてあんな事までなさるんですか?
(ため息)被害者はもう何も言えません。
だから遺留品に聞くんです。
へぇ…面白い事言うのね。
とても警察の方とは思えない。
2015/06/23(火) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
[新]遺留捜査[再][字]
「玩具のピアノと乱れた足音」
詳細情報
◇番組内容
警視庁捜査一課・科学捜査係を舞台に、遺留品から真実に迫る新たな刑事ドラマ誕生!主演・上川隆也演じる刑事・糸村が明らかにする被害者たちの伝えられなかった想いとは?
◇出演者
上川隆也、貫地谷しほり、佐野史郎 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
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日本語
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