(吾郎)おばあちゃん茜がすごくおなかが痛いんだって。
(かなえ)えっ本当?
(吾郎)
今朝孫の具合が急に悪くなったんです
おなかが痛い…。
何かまずいものでも食べさせたかな…?
おなかをすごく痛がってひどい熱でした
あっ熱い!えっ39℃!?
孫の茜は東京にいる娘の子なんです。
両親が共働きでふだん寂しい思いをしているんじゃないかと思って5日前からうちで預かっていたんです
おじいちゃんが肩車をしてあげよう。
花火ドーン!花火ドーン!
来た時は元気いっぱいでした
よいしょ!
(笑い声)やった!やった〜!
先生茜が心配です。
来る途中吐いてしまったんです
茜ちゃんには命の危険もあった。
その病気の正体を鋭い診断力で突き止めたのが…13年間アメリカでの医療経験を持ち日米両国の子供たちを病から救ってきた。
あ〜んできるかな?問診と身体診察に重きを置く…握手!よし。
患者の声に耳を傾け体に問いかける。
総合診療医の武器は問診と診察だ。
私たちはその人を「ドクターG」と呼ぶ。
(玉ちゃん)今回のドクターGは小児科のエキスパート新潟大学医歯学総合病院齋藤昭彦先生です。
(拍手)さあ番組史上初めての小児科のドクターという事で…。
(玉ちゃん)子供は大体ああいう感じじゃないですか症状って。
そっから細かい病気に向かってくというのは大変じゃないですか?協力してくれないんですね。
(高田)嫌がりますもんね。
そうなんですね。
限られた情報の中から最終的に診断に結び付けていくかというところですね。
問診と診察の重要性は非常に高いと思います。
ドクターGの症例に挑むのは全国から集まった3人の研修医たち。
(玉ちゃん)産婦人科を…。
きっかけは姉が流産した事で…。
すごく悲しそうな顔を見て人生最高の瞬間になるはずのお産が人生最悪の瞬間になってしまうのはどうしても助けたいなという思いで…。
(玉ちゃん)VTR見てどうですか?茜ちゃん。
やっぱ目を伏せておなかを押さえて耐えてる姿はすごくつらい証拠だと思うんですよね。
なんとかしてあげたいなと思います。
患者さんの未来に携われる医者になりたいと思ってます。
(玉ちゃん)茜ちゃん助けてあげて下さいよ。
是非頑張ります。
(玉ちゃん)今の茜ちゃん見てどうですか?かわいそうです。
我々と同じ感想ですよ。
(玉ちゃん)助けてあげて下さい。
今回の症例は研修医にとって結構難しい感じですか?ケースとしては。
そうですね。
(玉ちゃん)あらあららららら…。
それでは病名を探るための再現ドラマを見て頂きましょう。
ドクターGの症例に研修医が挑みます。
テレビの前の皆さんも一緒に考えて下さい。
ドクタージェネラル!あ…先生お願いします。
孫なんです。
はい。
どうされましたか?今朝急に腹が痛いって言いだしまして…。
うう…。
まずは診察と検査で体の状態をみてみましょう。
茜ちゃん。
ここは痛いかな?ここはどうかな?ここは?ううう…。
今度は頸をみせてね。
右を向いて下さい。
はい反対。
うっ…うっ…。
痛かったね。
右のリンパ節が腫れているかもしれません。
ちょっと耳をみせてね。
おなかのレントゲンを撮りましょう。
はい。
茜ちゃんおなかの写真撮りに行こうか。
うん。
検査の間お孫さんを預かってから5日間の様子を聞かせて下さい。
(2人)はい。
この子は何てお名前ですか?
(かなえ)
茜が来た日はいつもと変わった様子はなかったと思います
(吾郎)
そうだよな…。
茜は3歳から毎年うちに来ているんですけど一人で泊まるのは今回が初めてでした
なんかこわ〜い。
茜ここでおしっこできるかな?おいしそうじゃない。
色がきれいだね。
おじいちゃんこれ生のお肉?
(吾郎)うん馬刺しだよ。
食べてみる?え〜っ嫌だ。
(かなえ)食べるわけないでしょ。
この子はお刺身だって食べないんだから。
(吾郎)
茜はなま物は食べていません
おいしい?うん!ミーちゃんお刺身食べる?
(吾郎)
ホームシックにならないように好物ばかり食べさせていました
茜これ何に使うか分かる?何?分かんない。
イテッ!イタッ…。
おじいちゃん大丈夫?うん。
おばあちゃんにばんそうこうもらってきてくれ。
(吾郎)いくぞ〜。
そらいった!
(かなえ)そらそらそらほらあ〜取れたかな?あいっ!半分だけ取ってばっかり。
茜のいとこも呼んで流しそうめんを楽しみました
茜ちゃんの様子で…
あの〜これは病気とは関係ないかもしれませんが…
うん?おじいちゃんどう?あ〜すごく似合ってるよ。
おばあちゃんが買ってくれたの。
あ〜花火大会の時これ着ていくといいわ。
花火ドーン!花火ドーン!ハハハ…。
うん?まだおむつしてるのか?夜だけだけどね。
ええ…
あレントゲン終わりましたね。
かなり気分が悪いみたいです。
ベッドに寝かせてあげて下さい。
(かなえ)昨日から少し頸が痛いって言ってたんです。
茜ちゃんミーちゃんに御飯あげましょうか。
ねえおばあちゃんちょっとここが変なの…。
痛いの?
(吾郎)
そうだったんだ…。
私は知らんもんで昨日は孫たちを連れてマスを釣りに行ったんです
わっ!
養殖場の一角に子供でも楽しめる釣堀があるもんで…
(吾郎)ほいっ。
来るぞ!そら来た!
(茜)釣れた!釣れた!網ちょうだい。
早く早く早く。
きゃっ!ヌルヌル…。
その晩は釣ったマスを私が料理して孫たちに食べさせました
おじいちゃんがぜ〜んぶ作ってくれました。
おじいちゃんありがとう。
はい!それは何時ころですか?
夜の8時くらいです
そうですか…。
採血をさせて下さい。
(吾郎)はい。
ちょっとチクッとするよ。
(泣き声)すぐに終わるからね。
(泣き声)食欲もなさそうですし血液検査の結果をみて入院するか考えましょう。
(吾郎)入院ですか。
(かなえ)茜大丈夫よ。
もうすぐママが来るからね。
さあ患者の鈴木茜ちゃんのバイタルデータはこちらでございますね。
先生これから分かる事は?血圧の値です。
低いかなと思われるかもしれませんが5歳の子供の血圧としては正常の値になります。
心臓の大きさも大人より小さいわけですね。
値が小さくても正常値でいい…。
それでは研修医の皆さん疑われる病名をフリップにお書き下さい。
(玉ちゃん)今回書記を務めて頂くのは…よろしくお願いします。
さあVTRの中結構あったように見えますけどね。
俺はね…ず〜っと…。
子供ですからね。
スイカ割りしてさマス釣り行ってさ。
それで帽子もかぶってないんでしょう。
私が自分の子供とか見てるとやっぱり頸の辺り触っただけで熱ある時って「あっちょっと熱いな」とか分かるんですよね。
親が感じてる事とおじいさんおばあさんが感じてる事はやっぱり違うんですよね。
親御さんの訴えてくる事はやっぱり何か違うんだという事を気付く一つの大きなサインになります。
さあ研修医の皆さん病名を書き終えたようです。
フリップオープン。
(玉ちゃん)まずは戸田先生から病名発表お願いします。
(玉ちゃん)さあ加藤先生。
(玉ちゃん)前田先生。
カンファレンススタート!すばらしい鑑別が挙がったと思います。
戸田先生「腸重積」はどういう病気か教えてもらえます?腸重積は名前のとおり腸の病気なんですが最悪の場合は本当に命に関わる事も多い病気でして…。
危ない病気から考える事が大事かなと考えてます。
その中で腸の病気の中で危ないものとして腸重積挙げてまして気になったのは頸の痛みと同時にリンパ節がおなかに出来てそういうふうに腸重積起きる可能性がそんなに高いのかなと…。
なるほど。
熱はどう説明しますか?進行していくと壊死というふうに腐ってしまった場合は熱として出てきたりという事もあるかなと思っています。
緊急性の高い病気を最初に考えるのは非常に重要だと思いますね。
続いて前田先生。
「虫垂炎」を挙げてくれましたけど…。
一般的に皆さんが言われているのは「盲腸」と呼ばれるような病気です。
おなかが痛くなってから吐いたおう吐をしたという順番。
虫垂という小部屋に炎症が起きて腸が張るんですね。
そうするとおなかが痛くなる。
でおなかが痛くなったあとに腸の動きが悪くなって吐いてしまうという経過が比較的特徴的なので虫垂炎という病気を挙げました。
逆に合わなかった所見ってどうですか?それほど起きやすい所見ではないのかなと。
じゃあ加藤先生。
「ムンプスウイルス感染」はよく知られている名前では「おたふく風邪」が…。
それなら知ってますよ。
(加藤)その原因のウイルスで耳下腺が腫れたりするんですが小児でよく見られて…。
あとは合併症としてすい炎を起こしたりひどい時には髄膜炎を起こしてしまう可能性のある怖い病気で…。
理由はまず右の耳下腺の辺りを痛がっていた。
また上腹部の辺りを押さえていてそれはすい炎の位置と合致している事と…。
うう…。
加藤先生は患者がおなかの右の上の方を痛がっていた事からその可能性を考えた。
逆にムンプスウイルス感染症で説明できない事はありましたか?最初に頸の痛みが結構前に出てからすい炎とか髄膜炎を起こす印象でしたが今回の症例では一日ぐらいの経過で全ての症状が出てきているのでその点はあまり考えにくいかなと。
すばらしいと思いますね。
頻度の高い病気そしてひょっとすると手術が必要になる事があるかもしれない病気。
いい感じで挙げてくれたと思います。
ただ茜ちゃんの症状をおさらいしてみますと…この4つが問題として挙がってきています。
小児においてはご高齢の方などに比べれば薬をのんでる事も少ないですし…だからできるだけ可能であれば……というのが重要なポイントになってきます。
しかしながら4つを1つの事で説明できるという事はなかなか難しいですよね。
茜ちゃんの4つの症状発熱腹痛おう吐頸の痛みを1つの病気で説明する事はできないのだろうか?腸重積と虫垂炎では…ムンプスウイルス感染症は4つの症状全てが起きる可能性はあるが…皆さんいろいろな事を考えて1つだけ挙げたと思うんですね。
他にどんな病気を考えられたかですね…。
一元的に全てを説明するのは難しいんですが初めの主訴が腹痛とおう吐であった事から「胃腸炎」などの可能性もあるかなと考えました。
ただ下痢の訴えがなかったので典型的ではないかもしれません。
胃腸炎と言ってもいろいろなものがありますよね。
それを示唆するような所見って何かありました?竹を切る時にご自身を傷つけてしまっているので…。
何?分かんない。
イテッ!イタッ…。
(玉ちゃん)あっ!ばんそうこうが不衛生なんだよ多分。
まさにそこで…。
そこからもし感染して菌が繁殖してればばんそうこうで蓋をしてますからそこに菌がたくさんいる可能性があって…。
ブドウ球菌。
そうですよね。
ブドウの房のような形をしてるからブドウ球菌と言うんですが…けがした手とかで料理しちゃいけないんですね。
まさにそのとおりですね。
リスクを負う事になります。
あとおじいさんが花火のところのシーンで気付いた事ありましたよね。
これって何か病気と重なりますか?おむつをしているとそこに尿がたまりますのでそこから菌がずっとあがってきてぼうこう更にその上の腎盂と言われる…そこの炎症が起きる可能性も…。
「腎盂腎炎」。
「尿路感染症」というひとくくりの中で腎臓に炎症が及んでいると腎盂腎炎でそしてぼうこうだけだとぼうこう炎ですね。
腎盂腎炎があるとどんな症状が出ますか?背中が痛くなったりという事がありますね。
熱が出たりとかですね。
尿道の短い女の子に起きやすく…頻度がすごく高い病気ですね。
大人の場合は頻尿とかおしっこが何回も出る。
それからおしっこする時痛い。
あと背中が痛いという事あるんですけど…という事が多いんですね。
これは訴えが同じ病気でも違う事の典型的な例ですね。
あと他はいかがですかね?血管に炎症が起こるような病気なんですけどブツブツが足にできてたりとかあと腸にそういうのが起こるとそれが原因で腸が重なってしまったりという事が起こります。
学童期の子供がかかりやすい病気です。
全身の血管が燃えたような状態で…。
これは一つの鑑別に挙がるのはいいと思いますね。
あとはどうでしょう?前田先生。
猫を飼われてますので…それも頸のここのリンパ節のところが腫れますので…。
猫の歯はすごく鋭いんですね。
だから中にギュッと菌を入れ込んでしまう。
それで感染する事が多いんですね犬に比べると。
かみさんにひっかかれても別に。
ハハハハ…!でも茜ちゃんはひっかかれてはいなかったですよね。
そうです。
大変すばらしい鑑別診断が挙がったと思います。
それでは最初のカンファレンスはこれで終わりにしたいと思います。
可能性のある病気はいくつも挙がった。
しかし茜ちゃんの4つの症状を全て満たす病気はまだ見つからない。
謎に包まれたままだ。
あれだけの病名が次から次へと出てくるという…。
(玉ちゃん)後半のVTRこれ楽しみですよ。
診断を絞り込むためにVTRの続きをご覧下さい。
ドクタージェネラル!茜ちゃんのお母さんですね?はいお世話になってます。
あの今日は入院と聞いてちょっとびっくりしたんですけど…。
小さなお子さんは飲んだり食べたりできないと脱水症状を起こしやすいので点滴をして様子を見ているんですよ。
そうですか…。
先ほどおなかのレントゲンを撮りましたがガスや便もたまっている様子はなく大きな異常はありませんでした。
ただ少し気になる事が…。
血液検査の結果です。
白血球の数が正常値を大きく上回っています。
それと肝臓と胆道の酵素の値が軒並み高いです。
肝臓か胆のうに何か炎症が起きている可能性があります。
ところでお母さん茜ちゃんは…
(鈴木よう子)はい。
慢性的な中耳炎で定期的に耳鼻科に通ってます。
そうですか慢性的な中耳炎ですとリンパ節が腫れる事もありますが通常痛みは出ないんです。
頸の右側の痛みは他に原因があるのかもしれません。
(よう子)そうですか…。
それと茜ちゃんは…はい。
(茜)ママ…ごめんね。
だから夜にあんまりジュース飲んじゃ駄目って言ったでしょう。
はいごめんなさい。
(よう子)
月に2〜3回おねしょをしてしまうんです
ほら早く食べて。
うちは共働きでしかも今年から主人が中国に単身赴任してるんです。
茜をあまり構ってやる時間がないのでおねしょの原因は精神的な事かなと気にはしてるんですが…
ふだんは保育園に通っているんですか?
はい
ママ!ごくろうさまです。
こんばんは。
お友達といっぱい遊んでましたよ。
そうですか。
ただ…今日もうんちは出ませんでした。
(よう子)そうなの…。
夜尿症と便秘ですか。
どちらも尿路感染症になりやすいんですよ。
はい。
おしっこ調べるんだって。
何で?イタッ!どうしたの?ミーと遊ぼうとした時にひっかかれたの。
あミーちゃんもおなかをみましょうね。
(猫の鳴き声)痛い!どうしておじいちゃんやおばあちゃんに言わなかったの?ミーの嫌がる事をやった私が悪いの…。
これも先生にみてもらおうね。
先生…熱がまだ下がらないんですけど…。
はい。
あと体に変なブツブツが…。
発疹が出てきましたね。
尿検査の結果白血球が尿に混じっている事が分かりました。
尿路感染症かもしれないので抗菌薬を点滴で投与しています。
他に血液と尿の中に菌がいるかどうかを調べる…あした結果が出ますのでもう少し様子を見ましょう。
ドクターGがVTRの中で「あしたまで様子を見ましょう」と言ってますからまだまだ続きがあるという事ですよね先生。
最後のVTRのところで血液と尿の培養の検査を送りました。
バイ菌がいないかどうかをみる検査です。
(玉ちゃん)あとあのブツブツですね気になったの。
明らかに何かありますよ。
(高田)あれは出ないですよそう簡単には。
前田先生気付いた事とかありますか?特徴的な症状だとは思いますがこれだけでこの病気だと言うのは少し難しいんではないか。
いろんなウイルスの感染でも発疹は出てきますし…。
どんなウイルスが発疹を来しますか?風疹とかそれから麻疹。
しっかりと2回ワクチンを接種しているとかかる事はないです。
まずその可能性は少ないと思いますね。
あの発疹を見てどう思われました?加藤先生。
先ほど挙がった中では…そうですね。
重力のかかる場所に起こりやすいんですね。
足とか下肢の下部ですね。
それからお尻であるとか…。
通常押すとどうなります?発疹には押しても消えないものと押すと消えるものがあります。
押しても消えない発疹は「紫斑」と言い皮膚の下で内出血を起こしています。
押すと消える発疹は「紅斑」と言い押される事で血管が圧迫されて一瞬発疹が消えます。
発疹の性状先ほどお話ししましたけれどこれから否定ほぼ否定できると思いますね。
アレルギー性紫斑病の可能性は下がった。
猫にひっかかれたのが出てきましたね。
猫ひっかき病どうですか?実際にひっかかれているというのもあるので「×」はやりすぎかなと…。
典型的な症状はひっかかれた場所の所属するリンパ節が腫れて痛くなって熱が出るというのがあるんですがそれが全身の体の中回って肝臓とかひ臓とかに「膿瘍」といって膿をつくる事があるんです。
猫にひっかかれたのと同じ側だ。
猫が持つバルトネラ菌に感染する猫ひっかき病は発熱に伴って腹痛やおう吐が起きる事があります。
茜ちゃんにひっかき傷があった事から猫ひっかき病である可能性が出てきた。
ひっかき傷からブドウ球菌など他の菌が入り込みリンパ節の炎症を起こしている事も考えられる。
戸田先生が挙げてくれた腸重積ですがこの時点でどうでしょう?肝臓とかの酵素が上がる事はまずないと思いますのでこの段階でかなり下げてもいいのかなと思います。
ここで「×」をしてもよさそうですよね。
(玉ちゃん)自分が出した病気に「×」。
腸重積で肝臓や胆のうに炎症が起きるとは考えにくい。
血液検査の結果から腸重積の可能性は下がった。
前田先生の挙げた虫垂炎と加藤先生の挙げたムンプスウイルス感染症は…?
(前田)「×」を…。
(玉ちゃん)「×」ね。
急性虫垂炎も「×」。
血液検査の結果から3人の研修医が挙げた病気の可能性はいずれも大きく下がった。
では腎盂腎炎などの…おしっこの中に白血球が入ってる。
これはどうですかね?やはり異常な所見だと考えられます。
茜ちゃんの尿の中には正常値を上回る白血球がみられた。
これは尿路感染症の可能性を示す数値だ。
異常ははっきりしてますけど病名までいけるかどうかですよね。
まさにここからがどう物事を考えていくか。
子供によくある尿路感染症。
ドクターGはその可能性を考えていた。
白血球が尿に混じっている事が分かりました。
抗菌薬を点滴で投与しています。
血液と尿の培養検査の結果が出る前に…尿の中に白血球が混じる他の病気とは…?全身に炎症がまわってその白血球が腎臓を通って流れ出てるのかという可能性が考えられるかなと思います。
全身の炎症というと他に何か?血管の炎症ですね。
もっと具体的な病名が挙がりますか?この年齢の子でとなるとちょっとなかなか思いつかないですね。
はいいいですよ。
加藤先生いかがですか?血管炎で小児で起こるものといったら…「川崎病」について教えて頂けます?川崎病は血管炎で全身に症状が出るんですが小児に多くて…。
症状としては目の充血だとか唇がカサカサになったりとかあとは「イチゴ舌」といって舌が真っ赤になってイチゴみたいにブツブツしてきたりとか。
あとは頸が腫れるとか手がテカテカパンパンと言うんですが浮腫を起こしてしまって…。
このうち5つ以上の症状があれば川崎病と診断されます。
最も注意が必要なのが心臓の冠動脈が腫れたあとにこぶができる事です。
破裂したりこぶの中で血液が固まって心筋梗塞を起こしたりする事があります。
適切な治療を早期に行わないと命に関わります。
加藤先生川崎病を示唆する所見は茜ちゃんでどういうところがあります?あとはう〜ん…。
皮疹があるのが川崎病に合致するかと…。
その他の所見はあまり典型的なものはないと思います。
検査所見どうですか?本来おしっこの中に白血球があるというのはバイ菌の感染があるという事がほとんどですが川崎病でも白血球おしっこの中に出てくる事はありえると。
(玉ちゃん)出てるもんねこれ。
戸田先生肝臓の酵素に関してどう思われます?全身の血管に炎症が起こってる病気ですので肝臓にそういう炎症が起こって炎症の結果として肝臓の数値が上がってくるという事は十分考えられるんじゃないかなと思ってます。
しかし川崎病の主な6つの症状のうち茜ちゃんに当てはまるのは発疹と頸のリンパの腫れだけだ。
このあと高熱が続いたり他の症状が表れたりすれば川崎病の可能性が高くなる。
来院24時間後の時点で茜ちゃんの病気は3つに絞られた。
感染症なのか?それとも川崎病なのか?それではこの時点で先ほど提出した培養の検査の結果をみてみたいと思います。
研修医の皆さんにはこのVTRのあと最終診断を下して頂きます。
ドクタージェネラル!鈴木さん。
あの…先生熱が全然下がらないんです。
はい。
おなかも痛がってるし…。
実は先ほど血液と尿の培養検査の結果が出たのですが血液からも尿からも細菌は検出されませんでした。
どういう事なんですか?茜ちゃんの病気は感染症ではないかもしれません。
この子一体何の病気なんですか?病気はかなり絞られてきました。
もう少しで明らかになるはずです。
そうですか…。
さあ研修医の皆さん考えられる病名をお書き下さい。
菌がいるから白血球の数が上がったと思ってたんですが菌はいない。
さあ研修医の皆さん病名を書き終えたようです。
フリップオープン。
(玉ちゃん)戸田先生からどうぞ。
加藤先生。
前田先生。
そろいましたよ。
最終カンファレンススタート。
皆さん川崎病という病気が挙がりました。
それではまずその根拠を教えて頂けますか?抗生剤投与してまだ一日ですがそれでも全然下がっていない事も合致しますしあとは培養で尿も血液も陰性だった事も合致すると思います。
細菌感染から敗血症というような病態よりも川崎病の方を現時点では疑いたいという事ですが繰り返し培養を出しながらみていく事になるかと思います。
一回の培養で陰性だからといって決して全ての感染症が否定できるというわけではないんですよね。
おなかが痛い…。
川崎病の6つの主な症状の中に腹痛はない。
では腹痛の原因は何か?CTは…?CTを撮りたい。
結果がありますのでみてみましょう。
さて前田先生。
一番目につくのは…今先生に指さして頂いてる部分胆のうの部分がものすごく張っていると。
大きいですよね。
ものすごく腫れていて…。
(高田)通常はどのくらいな感じですか?こんなもんですね。
小さいですね。
明らかですね。
おなかの痛みがきていたんだと思います。
茜ちゃんの右の腹部に胆のう水腫が見つかった。
これが腹痛の原因だと考えられる。
茜ちゃんが川崎病ならばこのあと他の症状が出てくるはずだ。
茜ちゃんのその後の経過を…。
(玉ちゃん)茜ちゃん…!あ先生茜今起きたところです。
茜ちゃん熱はまだ下がらないけど今日はどう?目が赤いですね。
(よう子)そうなんです。
唇もなんです。
ちょっとお口を開けて舌をみせて。
赤いですね。
(玉ちゃん)なるほど72時間たってベロも赤くなってた。
う〜ん…。
どうですか?皆さん。
予想どおりの経過という事もあって川崎病の診断を更に上にあげていってもいいと思います。
私もそう思います。
それでは最終鑑別を全員でどうぞ。
正解です。
はい今回は早く出ましたね。
先生この川崎病はどういう病気なんですか?主に5歳未満のお子さんに多い病気になります。
年間1万人以上のお子さんがこの病気に罹患していると言われています。
腹痛の原因だった胆のう水腫も改善。
早期治療がなされたため後遺症はみられなかった。
さあ先生改めてメッセージをお願いします。
これは日本人の川崎富作先生という先生が発見した病気です。
どれぐらい前なんですか?1960年代。
実は今日川崎病を発見された川崎富作先生から皆さんへメッセージが…。
どうぞご覧下さい。
川崎病を発見した川崎富作先生は去年臨床の現場を離れ今は都内の事務所で川崎病の患者の電話相談を行っている。
その子供は…4歳3か月の男の子で熱が高いというので入院してきました。
今まで僕が経験した事のない特徴のある臨床症状を呈していたわけ。
「何だったんだろうな」と思って四六時中頭の中から離れなかったの。
そしたら1年後の当直の夜急患でやって来た患者さんの顔見た途端に「あれあれ?」と思ったんですね。
1年前に診断つけられない患者さんとそっくりの顔が出てきたわけです。
ユニークな臨床症状のある患者さんがこの世に2人存在するという事を確信したわけね。
そういう考え方で患者さんに接していた事が結局今まで教科書にない病気を気が付くポイントだったと思いますね。
すごく感動的な川崎先生のお話だったなと思いました。
川崎先生ありがとうございます。
61年以前は分かってないんですもんね。
すばらしいメッセージだったと思います。
今日はなかなか一緒にする事ができない症状をどうやって一緒にするのか。
こういうところを目的にこの症例を選んでみました。
診断をつける事をパズルをはめて一つの絵を作る事と仮定してみますとピースを合わせて合わされない時にはやはりもう一度患者さんのベッドサイドに行ってパズルのピースの形とそれから模様をもう一度確認して組み合わせる作業をしてもらいたいと思います。
はい。
戸田先生どうですか?今のメッセージ受けまして。
経過をみていく事の大事さがすごい伝わってあわない時には必ずベッドサイドに行って患者さんを診察して自分の考えが正しいのかどうかというのをしっかり確認していこうと思いました。
「まず患者さんをみに行け」。
一番最初に研修医になる時に言われる言葉ですがやはり何年たっても一番基礎になる言葉なのではないかなと。
一番大事なのは患者さんから所見をとって症状をしっかりみるという事だと思いました。
僕も幼いかわいい孫がいるんでね2人も。
ちょっと発熱したら川崎病じゃないかという知識が増えた。
知ってる方がいいですよね知識増えた方がね。
齋藤先生ありがとうございました。
研修医の皆さんもおつかれさまでした。
(玉ちゃん)次回はどんなカンファレンスが繰り広げられるのでしょうか。
さようなら。
2015/06/23(火) 14:05〜14:55
NHK総合1・神戸
総合診療医 ドクターGセレクション「5歳児が突然、高熱と腹痛に…」[字]
5歳の女児が、ある朝、突然、高熱と腹痛に見舞われた。小児科のドクターGは、女児に脱水のおそれがあることから入院させる。病名を突き止めるまでには時間が必要だった…
詳細情報
番組内容
祖父母の家に預けられた5歳の女児が、ある朝、突然、高熱と腹痛に見舞われた。鼓膜の内側に水がたまっているなどの症状があるが、祖父母は普段の女児の生活を詳しく知らない。1時間後、母親が東京から駆けつけ、女児の日常について話し始めた。結局、女児は脱水のおそれがあり入院することに。血液、尿、そして、レントゲン検査を行うが、病名は特定できない。果たして、研修医たちは最終鑑別にたどりつけるのか!
出演者
【出演】新潟大学医歯学総合病院小児科医師…齋藤昭彦,【ゲスト】高田万由子,佐藤B作,【司会】浅草キッド,【語り】小野寺一歩,佐竹海莉
ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
バラエティ – クイズ
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
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