情熱のシーラ(1)<全17回>「お針子の初恋」 2015.06.20


(シーラ・キローガ)
私はシーラ・キローガ。
お針子をしている。
自分がいつかピストルに身を包み異国の町を歩く運命にあるなんて思いもしなかった。
でも運命は日々の決断の積み重ね。
何でもないようなことが将来を決めていく。
私の場合全ては針に糸を通すような小さなことから始まった
(ドローレス・キローガ)いい?気をつけて。
手先が震えないように。
うまくいくまで繰り返すの。
何度も何度も。

(少女)シーラ!お裁縫に必要なのは根気よ。
とにかく根気。

(少女)シーラ!シーラ。
集中しないとできないわよ。
すごいわ!ハハハッ!母さんより上手。
ん?一度でできた。
偉いわシーラ。
母は仕立屋で毎日10時間丹精込めて服を縫っていた
針は必ずここに。
(シーラ)はい。
行きましょう。
遅れるわ。
(ドアを開ける音)
(少女)シーラ一緒に遊ぼう。
工房に行かなくちゃいけないの。
早く帰れたらそのあと一緒に遊んでいいわよ。
はい。

(馬車の走る音)
(クラクション)
(ミルク売り)ミルクはいかが?混じりけのないミルクだよ。

(ミルク売り)ミルクはいかが?
学校を辞めてから毎日同じ道を通った。
マドリードの下町にある家からマヌエラ夫人の工房までそこは町一番の高級住宅街だった

(ドローレス)おはよう。
(ミシンの音)
(ドローレス)おはよう。
(仕立屋たち)おはよう。

(つえで床をたたく音)
(マヌエラ)何時だと思ってるの。
あと10分でソトマヨール姉妹が来て2着分の採寸をするのよ。
針に糸を通せたの。
よかったわね。
さあパキータとアイロンがけをしてちょうだい。
言ったでしょう。
縫い目はもっと小さくなきゃ。
やり直し。
他の見習いと同じように針を持たせてもらえるまでは雑用係だった。
火鉢の炭を入れてアイロンを暖めたりお客さんの家に仕立てた服を届けたり…。
そうして別世界を知った。
お金持ちの世界を

応接間を目にしてうっとりした。
じゅうたんにシャンデリアビロードのカーテン…。
こんな世界で暮らすのは不思議な気分だろうと思った

ついに縫うことを許された。
最初は簡単なもの。
ボタンループに裁ち目かがり仮縫い。
そのあとボタンホール返し縫い裾縫い。
少しずつ裁断や繊細な部分の縫い方も覚えた。
襟をつけドレープを出し仕上げもできるようになった
あの子素質があるわドローレス。
この分ならきっと最高の仕立屋になる。
本当によく育てたと思うわ。
女手一つであそこまで…。
今日もまたその話ですか。
だって言わないからよ。
誰が父親かいつかは話してくれるわね。
誰だっていいじゃありませんか。
ほっといてください。
まったく頑固ね。
そっちこそおせっかいです。

いつもの口ゲンカだった。
よく話題になるのに私は父の事をほとんど知らなかった。
詮索もしなかったし母も決して話そうとはしなかった

(パキータ)プロポーズされたわシーラ。
私結婚するの。
アッホント?ねえ母さんのウエディングドレスを仕立て直して。
いいでしょう?もちろんよ。
でも地味にしてね。
式は役所で挙げるから大げさにしたくないの。
じゃ私の家に持ってきて。
マヌエラさんに知られないように。
分かったわ。
あ〜!あ〜!すごいわパキータ。
おめでとう!うれしいわ!よかったわね。
(キスの音)シーラお祭りに行くわよ。
ドレスを仕上げなきゃ。
ドローレスさんシーラに今すぐ針を置いて出かけるよう言ってください。
分かった。
でも結婚式に間に合わなくても文句言わないでよ。
じゃ着替えてくる。
早くね。
(会場に流れる音楽)
(友達)じき結婚式なのにこんなふうに出かけて何も言われないの?彼は共産党員よ。
私が頼めば何でも好きにやらせてくれる。
ウフッ。
神は人を平等につくられたんだから。
共産党員の妻が神ですって?式も教会で挙げないのに。
はいはい。
オルチャタ飲まない?
(パキータ)この店はおしゃべりなオバチャンだらけよ。
いいじゃない。
駄目よ。
今日はシーラに彼を見つけるんだから。
ちょっと。
そんなおせっかいは必要ないわ。
自分でちゃんと見つけられるから。
じゃお手並み拝見するわ。
オルチャタ3つお願い。
(会場に流れる音楽)ねえちょっと待って。
やっぱり2つにして。
この子は誰かにおごってもらえるから。
ねえ待ってよ。
もうほっといてったら。
どこ行くの?ウフフッ。
大胆ね。
(若者1)今夜はツイてない。
お目当ての子と違う。
(若者2)お前を見たぞ。
フフッ。
ほらお前のもんだ。
こんばんは。
(一同)こんばんは。
夜になって涼しくなったわね。
ああ。
あの私たちちょっと困ってるの。
飲み物2杯分のお金しかなくてシーラが何も頼めないの。
(若者1)でシーラっていうのは君?だったらいいんだけど私はパキータよ。
シーラはあの子。
(会場に流れる音楽)
(パキータ)ねぇ?美人でしょ。
でもお願いしたいのはこっちの人ですって。
彼女にごちそうしてくれるかしら?
(イグナシオ)もちろん。
じゃ行きましょ。
夜は短いわ。
ほら行ってこい。
(会場に流れる音楽)お名前は?イグナシオ。
シーラ。
ん?この人がぜひ飲み物をごちそうしたいって。
イグナシオよ。
彼女はシーラ。
さあ私たちはその辺ブラブラしてきましょう。
よろしくね。
大事な友達なんだから。
じゃ行きましょう。
気にしないで。
いつもああなの。
オルチャタを2つくれるかな。
ベルモットにする?ええそうね。
じゃあ2つ。
いい名前だね「シーラ」って。
珍しいんじゃない?珍しいけどこの名前でよかったと思うわ。
本当は聖人の名から選ぶはずだったの。
どんな名前か知りたい?うん。
いい?まずビクトリーナエラクリアサビニアーナにフォルトゥナータ。
でも結局母さんが決めたの。
「シーラにしましょう。
短いから」って。
よかったんじゃない。
そうでしょう?乾杯!乾杯!
(グラスを合わせる音)
(会場に流れる音楽)ひょっとしてお酒は飲めないのかな…。
散歩でもする?あ〜ごめんごめんごめんごめん。
どうしよう…。
今水をもらうよ。
ベルモットの染みは水じゃ落ちないわ。
重曹かソーダ水か塩じゃないと。
悪いけどもう帰るわね。
母さんに殺されちゃう。
染みくらいで帰っちゃうの?さよなら!
(会場に流れる音楽)
(足音)シーラ!シーラ。
ソーダと重曹と塩。
塩は来る途中で半分こぼれちゃった。
足りるといいけど。
でも…これどこから持ってきたの?聞かないほうがいい。
もう少し一緒にいられるなら持ってきた甲斐があるよ。
でもこれじゃ無理よ。
悪く思わないで。
感謝してるわ。
家まで送ってもいい?だけど…お祭りが終わっちゃうわよ。
祭りの一番いいところはこのオッチョコチョイのせいで台なしになった。
(車の走る音)年収4,000ペセタももらえるんだよ。
それも一生。
だったら頑張って役人になるさ。
ほら近頃は世の中も不安定だし。
ええいいお給料ね。
でも役人ってどこの?どこかの省庁。
もう内務省と財務省の採用試験は受けたんだけどツキがなかったみたいだ。
だけど僕は絶対に諦めないよ。
じきにどこかの試験に受かって惨めな下宿暮らしとおさらばする。
フッ。
僕のことばっかり話してるね。
次は君。
いつからお針子を?ハッ!子供の頃から。
一生続けようと思ってるの?分からない。
どうかしらね。
ここがうちよ。
着いたわ。
(扉を開ける音)じゃあ…送ってくれてどうもありがとう。
それから塩と重曹も。
あとお話もね。
それからキスも。
キスなんてしてないでしょう?だったらこれでどう?
(キスの音)君は誰より笑顔のかわいいお針子さんだ。
あなたはちょっとずうずうしい未来のお役人さん。
ん?おやすみなさいイグナシオ。
おやすみシーラ。
(扉を閉める音)ねえ!今度仕事場に迎えに来てくれない?仕事場はどこ?待って!言わないで。
自分で突き止める。
今夜の難問より簡単だ。
さあもう行って。

彼は明くる日現れた

(女1)お幸せに!
(拍手)
(女2)おめでとう!
いつの間にか交際が始まりどこへでも2人一緒に出かけた
(女3)すてきよ!とってもきれい!ありがとう!きれいだわ。
パキータの結婚式に出たり…
お幸せに。
レティーロ公園を散歩したり…
ウフッ。

お祭りがあれば必ず出かけた
(会場に流れる音楽)
はやりのダンスも欠かさず踊った
(会場に流れる音楽)
彼の私への思いは日に日に深まり私はそれを拒まなかった
(ラジオから流れる歌)
(シーラとドローレスの歌声)いい歌ね!シーラ。
イグナシオが来たわ。
いつも時間ピッタリ。
ありがとう。
ちょっとまさかこのまま出かけるつもり?彼にはどんな私もきれいなの。
いい人よ。
大事におし。
みんなの方が彼に恋をしてるみたい。
ああ!晩御飯は外で何か食べてくるから。
(足音)とってもきれいだよ。
このスーツは?アルパカ?お下がり?ちょっとお嬢さんそれは失礼じゃありませんか。
お役人に向かって。
本当なの?アッハハハッ。
きっと君のお母さんが聖人に願かけしてくれたからだよ。
さあみんなに報告しましょ。
合格よ。
合格したわ。
イグナシオが役人になるの。
おめでとう。
イグナシオ。
ありがとうございます。
お母さんのお祈りのおかげです。
式は教会で挙げてちょうだい。
ねぇ?共和制だか何だかそんなものは今だけよ。
ねえ母さん自分は未婚の母になったのにそんなことにこだわるの?もう…母さんのことはいいの。
いつもはぐらかすのよ。
はい。
くだらない話はおしまい。
イグナシオ。
式は教会よ。
娘さんに任せます。
僕は彼女と結婚できれば教会でも役所でもかまいません。
このパンください。
ってことなら教会を探しましょう。
ねぇ?うん。
シーラ白いドレスよ。
黒なんて駄目。
いい?ドレスは私とマヌエラさんで立派なものを用意するわ。
ああ招待客も決めないとね。
招待客って?親族だけでいいじゃない。
(ドローレス)2人で決めて。
(パキータ)これなんてシーラにとってもよく似合いそう。
フン…。
やだ。
このデザインも気に入らないわけ?本当に結婚したいの?もちろん。
バカ言わないで。
悪いけどあんまりうれしそうに見えないから。
だってたかが結婚式じゃない。
ちょっと。
私たちのことはもうみんな知ってるわ。
結婚で何か変わる?あなた血も涙もないんじゃない?ああ…。
結婚式の日の私を見た?天にも昇る心地よ。
私とエミリオがお互いの家族になるんだもの。
2人なら何にも怖くないと思った。
(マヌエラ)ねえドローレス。
レースのベールに何メートルも引きずる裾にしたらどうかしら?すてきだわ。
あのそんなに大げさにしなくても…。
いいのよ。
これくらいしかしてあげられないんだから。
何よりもう工房を…。
どうしたんです?マヌエラさん?シーラ。
イグナシオに仕事があってよかったわ。
でなきゃこんなこと…。
もう工房を閉めるの。
みんな言わなくても分かってるでしょう?ここ何か月かほとんどお客さんが来てないことは。
でも閉めるなんて…。
きっと今だけです。
またいい時が来ます。
ラジオを聴いてないの?街を歩いてて分からない?マヌエラさんの言うとおりよ。
どうしようもないわ。
で私たちはどうなるんです?それが分かればいいんだけど。
シーラ。
イグナシオの言ってた例の採用試験受けてみたらどう?採用試験って?何でもない。
イグナシオが役所の試験を受けたらって言うの。
裁縫しか出来ないのに。
でも4科目を勉強してタイプライターを練習するだけなんでしょう?
(ベルの音)すごいな!見てこれ。
えっ?
(店員)いらっしゃいませ。
何かお探しで?ああどうも。
あの…何かいいタイプライターがないかと思って。
どの機種がいくらするか見ていたんです。
一つ一つよくご覧になってご検討されては?そうですね。
では…。
こちらを。
大変精巧にできていますよ。
ええ知ってますがキーが硬いですよね。
タイプは婚約者が使うのでそれだと…。
ああ!でしたらぜひお見せしたい機種が。
奥へどうぞ。

(店員)ご覧のとおりこちらは大変頑丈な作りで・キーも軽く快適ですよ。
ペーパーベイルは激しい使用にも・耐えられますしキャリッジリターンはシルクのような滑らかな動きです。
・紙をお持ちしますのでお試しください。

(ラミーロ・アリーバス)いらっしゃいませ。
婚約者と来たんです。
タイプライターを買おうと思って。
そりゃよかった。
はい?ご主人じゃなくてよかった。
フッ。
もうすぐなります。
それは!幸せな男だ。
いつもこうやって売るんですか?黙ってても売れるんですよ。
僕はラミーロ。
シーラです。
何かあればいつでも。
ではこちらへ。
支配人のラミーロ・アリーバスです。
これはどうも。
婚約者の方がお使いになる軽くて正確で丈夫なものをお探しです。
僕が引き継ぐからもういいよ。
ご所望のものはこちらかと。
イタリア製です。
お薦めですよ。
実に軽快で滑らかでしょう?この文字もまるで大理石に刻まれたようです。
キーは4列に並んでいます。
(イグナシオ)いいですか?どうぞ。
黙ってても売れるんでしょ?お嬢さんがお使いになるものですよね。
ええ。
採用試験を受けるためにタイプライターを教えたいんです。
すばらしい!でしたらこちらはまさにうってつけです。
特にあなたの婚約者のような指には。
拝見してよろしいですか?これはいい。
それじゃあこれにします。
で支払いは?今日半分頂いて残りは商品をお渡しする日に。
今持って帰れないんですか?明日にならないと入荷しないんです。
じゃこれは?これは駄目なんですか?何をおっしゃいます。
他のお客様がさんざん触ったものをお渡しするわけにはいきません。
明日お越しください。
でもあした役所勤めが始まるので…。
ではあなたが取りに来られては?
(ベルの音)行こう。
でも…。
いいから。
(ベルの音)ハァ…。
ずっと…君のことを考えてた。
知り合ったばかりの人に心を奪われるなんて…。
ねえ。
あなたが何を考えようと私には関係ないことよ。
僕を信じられないんだね。
私はタイプライターを取りに来ただけ。
彼女には…何にする?ホットチョコを。
僕はエスプレッソ。
頼む。
この手荒れは何のせい?針仕事よ。
ああ。
仕立屋なんだ。
前はね。
でも最近は状況が悪くなって…。
だからタイプライターを習ってお役所に勤めようとしてる。
分かった?君のような女性がどうして役所勤めなんか…。
もし聞いてよければ…。
よりよい暮らしのためかな。
本当によりよい暮らしを始めたい?アッ…付いてる。

(学生1)おい!待てよ。
(学生2)アハハッ。
(学生1)こいつ。
どけ。
タイプライターの代金です。
品物はあとで彼が…。
ちょっと待って。
怒らないでくれ。
また会いに来て。
待ってるから。

8日の間毎晩目が覚めたら全てが変わっていればいいと願った。
でも翌朝目を覚ますとラミーロのことで頭がいっぱいになっていた

(タイプライターのキーを打つ音)小指はもっと強く。
ハァ…。
「P」や「Q」は他の指じゃ駄目なの?駄目。
指ごとにキーが決まってるからそのうちキーを見ずに打てるようになるんだ。
キーを見ずに?ウハハハッ!バカなこと言わないで。
それじゃ針を見ずに縫うのと同じよ。
裁縫とは違うよ。
キーはね機械的に打てるようにならなきゃいけない。
だから繰り返し練習するんだ。
さあ次の列をもう一度。
でももう200回打ったわ。
200でも2,000でもやらなきゃ駄目だ。
フーッ。
(キーを打つ音)イグナシオ!なに?アァ…。
このキーが引っ掛かってるの。
どれどれ。
これで試してみて。
(キーを打つ音)ええ。
でも文字が打てない。
「S」が印字されないなんて。
保証があってよかった。
店に持っていかなきゃ。
頼むよ。
ん?このままだっていいじゃない。
練習したいだけなんだから。
新品を買ったんだからちゃんと動いてくれなくちゃ困るよ。
持っていくのが面倒なの?いいえ。
(キスの音)きれいだよ。
(ベルの音)
(足音)やっぱり来てくれたね。
分かってた。
「S」が壊れてます。
ここへ来るのに口実は要らないよ。
「S」が打てません。
保証は付いてます。
ご自分で確かめたら?
(キーを打つ音)君の言うとおりだ。
「S」が打てない。
修理しないと君の名前がこうなふうになってしまう。
怒りを静めるには「S」が要るね。
ならここへ来て正解だ。
(キーを打つ音)これは?分からないわ。
待ってる。
うぬぼれないで。
(ベルの音)
(呼び鈴の音)
(ドアを開ける音)シーラ。
帰る。
なぜ?ごめんなさい。
行かないで。
君のことが頭から離れない。
私もよ。
一緒にいて。

(音楽堂に流れる調べ)姉夫婦がコート掛けと洋服掛けをお祝いにくれるって言ったっけ?うん。
サンタンデールの叔父たちも来てくれるって。
だからあしたソルの辺りへ寄ってよさそうな宿を探さない?母さんったらおかしいんだ。
式のためにわざわざショールを買って君がお嫁さんでうれしいって。
この間なんか自分が若い時の話を。
イグナシオ。
あなたとは結婚できないわ。
(音楽堂に流れる調べ)心変わりした?僕だってバカじゃないんだよシーラ。
近頃君は僕が触れようとすると避けるしちょっと用があるって出かけては夜まで帰ってこないだろ。
誰かと会ってるね。
(音楽堂に流れる調べ)本当にごめんなさい。
傷つけるつもりはなかったの。
自分でも何が起きてるのか…。
何も言わなくていい。
相手は誰なの?聞いて何になるの?シーラ。
僕より君を…愛せる人はいない。
(拍手)・
(鐘の音)
(足音)母さん。
イグナシオに聞いたわ。
じゃなぜドレスを?急がなきゃ式に間に合わないでしょう?もう結婚しないのよ。
バカ言うんじゃないの。
すぐよりが戻る。
初めてのケンカで人生を棒に振る気?私本当の愛を見つけたの。
申し訳ないけどイグナシオとは…こんな気持ちになれなかった。
ちょっと熱に浮かされてるだけよ。
あしたの朝彼に電話して謝りなさい。
まだお前を愛してる。
でも私は愛してないの。
ちゃんと私の話を聞いてよ!
(机をたたく音)一体どこまで自分勝手なの。
母さんだって好きにしてきたじゃない。
「好きにしてきた」?軽々しく言わないで。
私はプライドが許さないことをしなかっただけ。
好きで後ろ指をさされてきたと思う?「はみ出し者だ」「未婚の母だ」って。
だから愛してない人と結婚しろって言うの?私の人生よ!ハァ…。

(ラミーロ)シーラ。
どうしたの?何かあった?今夜はここに泊めてくれない?フム。
ずっといてくれ。

(蓄音機から流れる音楽)
(ラミーロ)おはよう。
ウーン。
おはよう。
はいお姫様。
うわ〜!すてき。
よく見て。
イチゴだけじゃないよ。
ホント?ほら。
アッハッ。
そして…。
ラミーロとの生活には昨日もあしたもなかった。
私たちはただ今日だけを楽しんだ
つかんで。
早く。
どこか遠い世界の片隅ですばらしいチャンスが2人を待っていると想像して何時間も過ごした
ここ。
毎晩夜明けまで踊り笑った
(蓄音機から流れる音楽)
ラミーロはいつも思いも寄らない贈り物で気まぐれな私の心を満たしてくれた

そうやって命綱にすがるように彼の体にしがみついて何か月もたった
仕事に行ってくるよ。
ウーン。
遅刻してしまう。
君は寝てて。
ウフフッ。
ウフフッ。

(キスの音)ウーン。
ウウン…。
(呼び鈴の音)ウン。
待って。
もう…。
慌てて行くから忘れ物するのよ。
ハァ…。
やあね。
どうも。
フーン。
入ったら?結構。
必要ない。
言づてを伝えに来た。
私の頼みじゃないけど聞き入れるべきね。
なに?父親に会うのよ。
あなたにも来てって。
着替えてくる。
顔も洗って。
娼婦みたいよ。
(扉を開ける音)こんにちはセルバンダ。
呼ばれて来たの。
案内は結構。
ありがとう。
(足音)
(ゴンサーロ)やあドローレス。
こんにちは。
来てくれてありがとう。
わざわざ呼んだのは重要な話があるからだ。
私は殺される。
何を言ってるの?もう時間の問題だ。
実はうちの200人の作業員が不満を募らせてる。
労働組合に入って経営者に銃弾を撃ち込むと言ってるんだ。
まあ彼らの言い分も分かる。
掛けてくれ。
ウーン。
だがそれが広がればいずれは内戦に発展する。
そして同じ国民同士で殺し合うことになってしまう。
20年前のお母さんにそっくりだ。
過ぎたことを話しに来たんじゃないわ。
いいだろ?私は後悔していないよ。
24の時知り合ったんだ。
彼女は22で母の服を仕立てに来ていた。
で3年後に君が生まれたんだ。
(ドローレス)この人には婚約者がいたし母親は家を継がせないと脅した。
だから私から関係を断ったの。
彼の約束された将来を台なしにすることはできなかった。
私はきちんと君たちの面倒を見るつもりだった。
愛人になるなんてごめんだわ。
フン…。
いつもこんな調子だ。
本当に殺されるの?命令するだけで逆らわれた事ないから怖いのよ。
急に従業員が声を上げ始めて慌ててるだけ。
大金をもらったわ。
宝石も。
これはどうしたらいいの?責任を持ちなさい。
責任と分別を。
お願いだから。
母さんを頼むって言われた。
それにスペインから急いで出るようにとも…。
私はどこにも行かない。
みんな何を血迷ってるの。
戦争になるなんて…。
どれもすごく高価なものだ。
まだあるのよ。
(口笛)これ全部どうする?ハッハ。
君の好きにしたらいいさ。
全部君のだ。
でも私はお金のことは…。
あなただったら?
(ラミーロ)ピットマン・アカデミーはアルゼンチンで大成功してるんだ。
20校以上あって何千人もの生徒に画期的手法でタイプを教えてる。
ええ。
面白そうだわ。
ウン?私も習うの?ウフフッ。
違うよ。
学校を開く権利を買いたいんだ。
こっちでピットマン・アカデミーを開校するんだよ。
シーラ。
君の成功は目の前だ。
あとは君次第。
うん。
ウフッ。
(シーラの鼻歌)・
(ラミーロ)シーラ居るか?ええ今日はやけに早いじゃない。
電話はあった?一体どうしたの?
(キスの音)ええ。
書類はけさ取りに行ってきたわ。
えっと…ほら会社の定款よ。
それじゃ僕たちはもう会社経営者だ。
(キスの音)ウウフッ。
仕事は辞めた。
あそことはもうおさらば。
なぜ?ピットマン・アカデミーから電報が届いたんだ。
僕らの申し出を真剣に検討してるってね。
いよいよ飛び立つ時が来た。
そろそろスペインを離れたほうがいいと思うし。
ピットマン・アカデミーはモロッコで開校しないかって言ってる。
大きな学校をモロッコのタンジールに。
でもモロッコ人がタイプライターなんて習う?ウフフフッ。
もう…何言ってるんだ?タンジールは国際都市で…ヨーロッパ中から人が集まる港町だ。
きっと気に入る。
保証するよ。
うん。
荷物取っといで。
出発する。
今!?うん。
じゃ母さんは?1人残して行けない。
ねえ。
シーラ…。
いいか?自分のために生きるんだ。
もう人の事は気にしなくていい。
チャンスなんだよ。
ねえチャンスなんだ。
でも急すぎるわ。
おいシーラ。
聞いて。
これは冒険だ。
信じて。
信じてる。
どうかしてる。
彼と国を出るなんて。
いきなり。
ハァ…。
ねえ一緒に来て母さん。
新しい生活を始めるの。
どこへも行く気はない。
お前も行くべきじゃない。
もう決めたのよ。
いつか分かってもらえるといいけど。
無理でしょうね。
行かなきゃ。
ラミーロが待ってる。

(すすり泣き)どうしたの?別に。
バカみたい。
マドリードを出たことないから。
今からもう寂しくて。
大丈夫。
マドリードはどこへも行かないよ。
すぐに戻れる。
約束する。

(雷鳴)
(汽笛)
(汽車の走る音)タンジール?
(ラミーロ)タンジール。
シーラを紹介するよ。
シーラ。
タンジールへようこそ。
シーラとラミーロです。
どうも。
(ポール)乾杯!
(カメラマン)はい皆さん。
(女)ちゃんと目を光らせてないと私たちが取っちゃうから。
いつも気前よくして自分を売り込まなきゃ。
ええ。
人のお金なら気前よくなれるわよね。
僕は君しか見てない。
やめてって言ったでしょ。
その手には乗らない。
(医師)おめでたです。
よかったですね。
ラミーロ!ラミ…。
(ラミーロの手紙)「すぐにでもタンジールを出たほうがいい。
多分僕を捜す借金取りが何人かいて僕が見つからなければ君を捜すかもしれない」。
2015/06/20(土) 01:45〜02:36
NHK総合1・神戸
情熱のシーラ(1)<全17回>「お針子の初恋」[二][字][デ][再]

魅惑のスペインドラマ、新たなロマンス・ミステリーの幕が開ける!お針子として働くシーラは、堅実な婚約者がいながら、情熱的で奔放な男性ラミーロにひかれ恋に落ちる!

詳細情報
番組内容
マドリードで生まれたシーラは、仕立屋の母に女手一つで育てられる。幼い頃から針仕事を覚え、お針子として腕を上げたシーラは、誠実な男性イグナシオと知り合い結婚の約束をする。しかし、時は1934年。スペイン内戦の兆しが見え始めるなか、工房が閉鎖され仕事を失ったシーラ。イグナシオの勧めでタイプライターを買い習うことに。店を訪れたシーラは、そこで出会った支配人のラミーロにひと目で心を奪われ恋に落ちる…。
出演者
【出演】アドリアーナ・ウガルテ…渋谷はるか,エルビラ・ミンゲス…藤生聖子,ルベン・コルターダ…小山力也,ラウール・アレーバロ…平川大輔,ペパ・ルス…根本圭子,カルロス・オラーヤ…土師孝也ほか
原作・脚本
【原作】マリーア・ドゥエニャス,【脚本】スサーナ・ロペス,カルロス・モンテーロ
監督・演出
【演出】イニャキ・メルセーロ
製作
〜スペイン A BOOMERANG TV PRODUCTION FOR ATRESMEDIA制作〜

ジャンル :
ドラマ – 海外ドラマ
趣味/教育 – 会話・語学

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
スペイン語
サンプリングレート : 48kHz

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カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: