自民党勉強会:報道に圧力、首相「遺憾」 批判噴出

毎日新聞 2015年06月26日 21時36分(最終更新 06月26日 22時00分)

 自民党の25日の若手勉強会で、安全保障関連法案に関して、出席者から報道機関に圧力をかけるような発言が出た問題で、安倍晋三首相は26日の衆院平和安全法制特別委員会で「報道が事実なら大変遺憾だ」と述べた。ただ「その方になりかわって勝手におわびすることはできない。発言する人物のみが責任を負うことができる」と強調し、謝罪を避けた。野党側は批判を強めており、法案審議に影響を与えそうだ。

 民主党の寺田学氏は同日午前の審議で、25日の自民党文化芸術懇話会についての報道を挙げ、(1)出席議員が「マスコミを懲らしめるには広告収入がなくなるのが一番。経団連に働きかけてほしい」と発言(2)作家の百田尚樹氏が「沖縄にある二つの新聞はつぶさないといけない」と発言−−と紹介。事実確認を求め、首相は「報道を承知していない」などと述べた。

 浜田靖一委員長(自民)は約1時間の特別委休憩後に再開された午後の審議冒頭、「そのような趣旨の発言があったことが分かった」と認め、「甚だ遺憾だ」と発言した。一方、首相は午後の審議でも休憩中の公務などを理由に「確認していない」とし、「報道の自由を尊重するのは一貫した私の立場で、党としてもその立場を貫いている」と説明した。

 寺田氏は「おわびすべきだ」と追及。首相は「自民党が企業に圧力をかけてスポンサーを降りろとかは考えられない」と釈明し「自民党にはさまざまな講師の方が来る。我が党の考え方とだいぶ離れた考え方を述べられる方もおられる」と理解を求めた。

 辻元清美氏(民主)は百田氏の沖縄に関する発言について「危機感はないのか」と指摘。首相は「議事録も残っていない。確認のしようがない」とかわした。一方で「米軍基地が集中している状況を変えるために全力投球してきた。(百田氏の考え方と)我々の考え方とは大きく違う」などと強調。「今後、自民党が誤解されることがないようにしっかりと襟を正し、報道の自由は守りながら主張すべきことは主張し、反論には耳を傾け、政策を推進していきたい」と語った。

 菅義偉官房長官は26日の記者会見で、勉強会での「マスコミを懲らしめる」といった発言について「報じられたことが事実だとすれば、どう考えても非常識だと思う。国民の審判を受けて国会に来た人は、自らの発言に責任を持つべきだ」と不快感を示した。【村尾哲、小田中大、高本耕太】

 砂川浩慶・立教大准教授(メディア論)の話 メディアは、権力に都合の悪いことや少数意見も含め、国民にさまざまな情報を伝えることで民主主義を機能させる役割を担っている。それを「懲らしめる」「つぶさないといけない」と言うのは、「権力が知らせること以外、国民は知らなくていい」と言うのと同じ。言論で対抗せず、メディアの経営を標的にするのは全体主義の発想で、民主主義社会ではあってはならないことだ。

 前泊(まえどまり)博盛・沖縄国際大教授(基地経済論)の話 百田氏の発言は、安倍晋三政権に批判的なメディアは許さないという言論封殺の意図を感じる。米軍基地問題で対立する沖縄2紙を狙い撃ちしたが、メディア全体の問題と捉えるべきだ。普天間飛行場は米軍占領中に住民が追い出されて造られたことは調べればすぐ分かることだ。百田氏の発言は事実に反し、感情的だ。正しいのはどちらか、国民は冷静に判断してほしい

◇自民党文化芸術懇話会での発言の骨子(25日)

 ※非公開のため出席議員への聞き取りなどによる

<作家の百田尚樹氏の発言>

・政治家は、安保法制や集団的自衛権で、国民に対するアピールが下手くそだ。難しい法解釈は一般国民には通じない。気持ちに訴えかけるのが大事だ

・沖縄の二つの新聞社はつぶさないといけない。あってはいけないことだが、沖縄のどっかの島が中国に取られてしまえば目を覚ますはずだ

・もともと米軍普天間飛行場は田んぼの中にあった。商売になると基地の周りに人が住みだした。騒音がうるさいのは分かるが、あそこを選んで住んだのは誰だ

<議員の発言>

・マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番だ。文化人や民間人が不買運動、日本を危うくするマスコミはとんでもないと経団連などに働き掛けてほしい

最新写真特集