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うろ覚えGO WEST台詞メモ前編。
※抜けているところや間違っているところ、とりあえず仮にそれっぽい台詞を突っ込んでいるところが多々あります。
ルコック「南北戦争が終結し、リンカーン大統領が銃で暗殺されたそんな時代。人々は新天地を求めて、西へ西へと歩き出した。そう、ここはアメリカ。西部開拓時代!」
「大っ嫌い! 何これ。まず服。ほとんど洗ってない。風呂! しばらく入ってない。つまり、臭い! ……あの男がくっちゃくっちゃやってるの、ガムじゃないからね。あれ、紙タバコ」
「西部にいるのはほとんどが男で、そんな男たちを慰めるのは、金で売られた娼婦たち」
ベッキー「あたしを抱こうなんて百年早いんだよ!」
アンジー「優しくしてもらいたきゃ金持ってきな!」
ルコック(擦れちゃってる的な娼婦dis)
「それ以外の楽しみといえば、ギャンブル」
「そして、紙タバコ」
「雨が降ったら泥だらけ。日照りが続けば砂埃まみれ。出される料理は大味で、飲み物といったらウイスキーストレート。……もう、大っ嫌い!」
モンキー(頭上に向けて銃を撃つ)
「もう一度、言ってみろ」
(男に銃を向ける)
「言え」
男 「い、イカサマだと言ったんだ」
モンキー(ルコックに銃を向け、撃つ)
ルコック「ええー!?」
(撃たれて倒れ、周囲から悲鳴が上がる)
モンキー「俺の手は間違いなくロイヤルストレートフラッシュだった。だがお前は、イカサマだと言う。この俺が、イカサマを?」
男 「じょ、冗談だ。その金は全部、あんたのもんだ」
モンキー(鼻で笑う)
「当然だ」
(金を掴もうとする隙を突いて銃を取ろうとする男に、振り返りざまに銃を向ける)
「やめときな。風穴の分だけ、損を重ねるぜ」
男 「あ、ああ」
保安官 (スイングドアから現れる)
「何事だ」
「見ない顔だな。どこから来た」
「……どこから来た!」
モンキー(ゆっくりと撃鉄を戻し、銃をしまう)
「俺は大陸横断鉄道の開通式に向かう、単なる観光客だ。たまたま立ち寄ったクソ退屈なこの町で、暇潰しにポーカーをしていた。バカ勝ちした俺に、こいつは難癖つけやがった。威嚇のつもりで撃った弾が、運悪くこの男に当たった。つまり、これは事故だ。何か問題が?」
保安官 「いくら西部だからといって、殺しが許されるわけではない」
モンキー「では保安官! あんたがこの俺を裁くのか?」
保安官 「裁くのは、法だ」
モンキー(最初は小さく、やがて声を出して嘲笑する)
「いいだろう。その法の前まで、俺を連れて行ければ……の話だがな」
(保安官と向かい合い、銃に手をかける)
ベイブ (突然モンキーに長銃を向ける)
「そこまでだ! イモータル・モンキー! チカマウガの戦いで北軍を破ったロングストリート少将の右腕、モンキー・バンチ! 通称イモータル。不死身のモンキー!」
(リュックから手配書を取り出す)
「あんたが敵う相手じゃねえ、引っ込んでな!」
保安官 「バウンティハンターか!」
男 「懸賞金、千七百ドル!? ビリー・ザ・キッドを抜いたぜ……」
モンキー(俯いて帽子を押さえ、不敵な笑みを浮かべる)
ベイブ 「駅馬車や銀行を襲っては金目のものを奪い、男を殺し、女を犯し、犯してから殺して、殺してからでも犯す。この男の非道さは――」
モンキー(話の途中でベイブを撃つ。周囲から悲鳴)
(吐き捨てるように笑って樽の上の金を掴む)
(保安官に銃を向けられ、金を掴んだまま振り返って銃を構える)
男 「やめときなよ保安官! こいつはあんたの手に負える相手じゃねえ」
男 「赴任してきたばかりでわからないかもしれないが、自分が敵わない相手には手を出さないことだ。それがこの西部で生き残るコツさ……!」
保安官 「銃を下ろせ」
モンキー「嫌だと、言ったら?」
保安官 「……撃つ」
モンキー(笑みを消し、舌なめずりをする)
(互いに三歩歩いて向かい合う。鳥の飛び立つ音と共に発砲。モンキーのほうが一瞬遅く、手に持っていた金を派手にばらまき、倒れる)
男 「すげえ……」
男 「やったぞ……この新米保安官がやりやがった!」
ベッキー「保安官、素敵!」
保安官 「ワーオ!」
男 「酒を飲もう! 俺たちの町に新しい保安官がやってきた祝いだ!」
保安官 (みんなと酒場に入ろうとするが、ふと振り返って辺りを見回す)
ベッキー「ねえ保安官、早く」
保安官 「あ、ああ」
(スイングドアの向こうに消える)
モンキー「ん? よいしょっと!」
ベイブ 「モンキー! おまえふざけんなよ!」
モンキー「え? なにが?」
ベイブ 「撃つのがはえーよ!」
モンキー「遅いよりよくない?」
ベイブ 「びっくりして変な死に方になっちまったじゃねえか!」
モンキー「だってベイブ、お前なんて言った!? 男を殺し、女を犯し!? 犯してから殺して? 殺してからでも犯す!? そんなキャラ設定にいつしたよ!?」
ベイブ 「残忍なら残忍なほうがいいんじゃねえのか?」
ルコック「はいはいはい、ねえ、僕言ったよね!? 地べたじゃ死にたくないって。僕、服汚れるの嫌いなの、知ってるでしょ!?」
モンキー「そんなのお前のさじ加減だろ!? ここで撃たれて、ここまでよろけてって、ここで死ねばいいじゃねえか」
ルコック「そんなによろけたら嘘くさくなるよね!?」
ベイブ 「まだこっちの話終わってねえんだけどな!?」
保安官 (酒場から戻ってくる)
「お、お前ら! まだ早い!」
三人 「あ?」
保安官 「まだ死んでなきゃ駄目!」
三人 「はあ?」
(四人でなんやかんや)
ルコック「なんでまた地べたに寝なきゃならないの!?」
ベイブ 「モンキー、お前飯抜きだからな!」
モンキー「はあ!?」
ベッキー(酒場から出てくる)
「保安官!」
三人 (慌てて死んだふり)
保安官 「な、なんだいベッキー」
ベッキー「早く一緒に飲みましょうよ」
保安官 「あ、ああ。先に行っててくれ」
ベッキー「ねえ、保安官。今夜、私の部屋に来て」
(スカートを大胆にたくし上げてアピールしたのち、酒場に戻る)
保安官 「ぐふふふふ」
三人 「へいへーい!」
モンキー「効果てきめんだなー!」
ルコック「ほんと、アメリカの女って馬鹿ばっかり! 強い男好きー! って発想がアニマル」
ベイブ 「お前もアメリカ人だろうが」
ルコック「フランス系! アメリカ人ですー」
モンキー「なあ保安官。早く連れてけよ。動くな喋るなってんなら、早く物陰に連れてけよ。このまま放っておかれたら、馬に蹴られてマジ死んじまうー。狼やら、コヨーテやらに食われちまうかもー」
ベイブ 「サソリもな」
ルコック「あと蛇も」
保安官 「うるさーい!」
ルコック「ここ西部では、保安官はバタバタと死ぬ。死んだら、新入りが入る。新入りは舐められる。特に、こいつみたいなヘタレ野郎は」
「そこで、俺たちの出番。ベイブはシナリオライター兼、小道具係。保安官が撃ってた弾は、ベイブが作った空砲だ」
「モンキーは、銃捌きと死に様は超一流。だけど本物の銃を持つと、脚はぶるぶる、手はがくがく。とんだ見かけ倒しのヘタレ野郎だ」
「で、俺。ルコックは、元二枚目俳優。ウエスタンショーに咲く、一輪の薔薇。華麗に撃たれ、華麗に死ぬ。それはまるで……おっと!」
(再び死んだふり)
男 (酒場から出てくる)
「保安官、一緒に飲もうぜ! ……なにしてんだ? 死体の真ん中で」
保安官 「え!? そ、それは」
ベイブ 「笑え」
保安官 「え?」
ベイブ 「わーらーえ」
保安官 「……うえっへっへっへ」
ベイブ 「そしてこう言うんだ。殺した奴を見るのが、好きなんだ」
保安官 「殺した奴を見るのが、好きなんだ。……うえっへっへ」
男 「あぁあ……!」
(怯えながら酒場に逃げる)
保安官 「はあ……」
ベイブ 「早く物陰へ!」
モンキー「これであんたはしばらくこの町のヒーローだ。保安官として、有難がられること請け合いだぜ」
保安官 「重い……!」
ベイブ 「重くねえ!」
ルコック(なんか地べたを嫌がる感じの台詞)
ベイブ 「馬の糞だらけの地面だからな」
ルコック「やめてよ! 気にしないようにしてたのにー!」
(あいだになにか台詞あったっけ?)
ルコック「……なんか臭い。気にしだしたらすごく臭い! ねえ次僕ね!」
ベイブ (ルコックのところに向かおうとする保安官を引き留める)
「ちょっと待て! 報酬をくれ」
保安官 「一人二十ドルで六十ドルだな」
ベイブ 「いいや、百だ。ポーカーで勝った金、全部持ってかれちまったからな」
保安官 「それはお前たちが勝手に……!」
ベイブ 「なぜあのとき金を回収しなかった?」
保安官 「あの状況では不可能だ!」
ベイブ 「俺たちのほうが不可能だ!」
保安官 (ふざけるな的な台詞)
ベイブ 「おいモンキー! 叫べ!」
モンキー「おーい! この保安官さまはなー!」
保安官 「やめろ! 死ね死ね、死ねー!」
(空砲を乱射)
追手 「馬車を止めろ!」
ドリュー 「止めちゃ駄目よリチャード! 止めたら私、あいつらに捕まって……犯されるー!」
リチャード「ありませんから。あいつら、金目当てですから!」
ドリュー 「いいえ絶対体目当て。このままじゃ追いつかれる。銃を貸して!」
リチャード「駄目です! 打ち返したらあいつら、本気で撃ってきます!」
ドリュー 「あいつら既に本気よ!」
リチャード「いいえ、あれは威嚇です。聖職者を狙うなんて……うわー!?」
ドリュー 「議論してる場合じゃないわ、銃を貸して! じゃないと私……犯されるー!」
追手 「犯さねえから止まれ!」
ドリュー 「いいえ絶対嘘!」
追手 「俺たちは、金目当てだ!」
追手 「金さえもらえればそれでいいから!」
ドリュー 「耳を貸しちゃ駄目、銃を貸して!」
リチャード「駄目です!」
(このへんも忘れた)
追手 「そのお嬢さんには興味がねえ」
追手 「ムラムラこねえ!」
ドリュー 「あ、あれでしょ? シスターだから、でしょ」
追手 「いやいやいやいや」
追手 「ちゃうちゃうちゃうちゃう」
二人 「俺たちは、ボインが好みだ!」
ドリュー 「かっちーん」
(長銃を撃ち、追手の一人の帽子が吹き飛ぶ)
追手 「てめえ……!」
(本格的に撃ってくる)
リチャード「ああ!? 台無しだ……!」
ドリュー 「……見て! 向こうの木の陰、バッファローの群れがいる」
リチャード「た、大変だ……!」
ドリュー 「大丈夫! そのまま、まっすぐ進んで!」
リチャード「ええ!?」
ドリュー 「突っ切るよー! 道をあけてー!」
追手 「うわー!?」
モンキー 「なにこれ?」
ベイブ 「衣装係、説明を」
ルコック 「タバスコを売りに来た、陽気なメキシカン。セニョール・ノミタリネーノ!」
モンキー 「オワカリーノ!」
三人 「クレ・リーノ!」
(PARODY)
保安官 「おい! 早くここから出て行ってくれ!」
モンキー 「あんたが騒がなきゃ、あの時の死体が俺たちだなんて誰も気づかない。ほら、早く行ってやれよ。大丈夫だって、絶対へましねーから」
ベイブ 「サワリーノ!」
三人 「サワラレーノ!」
(PARODY続き)
ドリュー (リチャードと共に酒場に入ってくる。男にフードをさわられて驚く)
「きゃっ」
店主 「なにかご用ですか、神父様」
リチャード「この町に、神父か牧師は」
店主 「死にました」
リチャード「教会は!?」
店主 「焼けちまいました、去年」
リチャード「なら、泊まるところは」
店主 「アンジー」
アンジー (腕で丸を作る)
店主 「ベッキー」
ベッキー 「ううん」
(保安官に抱きつく)
みんな 「フゥー!」
店主 「申し訳ありません、神父様。一部屋のみです」
リチャード「仕方ありません。一部屋に二人で泊まりましょう」
店主 「そ、それはちょっと。神父様だけでお願いします」
リチャード「え?」
アンジー 「どうぞ」
(スカートをたくし上げて脚を見せる)
「……どうぞ」
リチャード「買いません! 私、あなたを買いません! 神父ですよ!?」
男 「ぶははははは! 前にいた牧師様はしょっちゅう買ってたぜ!」
男 「のめり込みすぎて、相手の女殺して縛り首さ」
男 「神父様も、女買うんだね」
男 「ぶははははは!」
リチャード「我々は追われてるんです、どうかシスターだけでも!」
男 (二人組が突然入ってきたせいで扉にぶつかる)
「いって! なにすんだ!? ……ご、ごめんなさい」
(外に放り出される)
ベッキー 「隠れて!」
ドリュー 「どこに!?」
ベッキー 「ここに!」
(スカートの中にドリューを隠す)
追手 「神父様! シスターはどちらに? いや失礼、あれはシスターなんかじゃねえ。おい、あのじゃじゃ馬どこに隠した!?」
(銃をリチャードに向けるが、脚の痛みに呻く)
「くそっ、あいつのせいでこの有様だ!」
追手 「俺は前歯が全滅だ!」
追手 「おいあの女出せ!」
リチャード「あ! 保安官! 保安官助けてください!」
保安官 「お、俺は保安官じゃない!」
ベッキー 「保安官!?」
保安官 「まあ保安官ですけどね!」
追手 「保安官!」
保安官 「……はい!」
追手 「そこをどいてもらおうか」
保安官 「は、はい!」
(どこうとするが、それに合わせて後ろに隠れるリチャード)
「……つ、ついてくるな!」
追手 「早くどけ!」
保安官 「ちょ、ちょっと待って!」
(モンキーたちのところに来る)
三人 「うおおおい! こっち来んな!」
保安官 「助けてくれ!」
三人 「え!?」
保安官 「いいシナリオを書いて演じてくれ!」
モンキー 「無理だって! 俺たちが演じられるのは、相手の銃に実弾が入っていないときのみ、なの! 俺たちの銃にだって、実弾なんて入ってないんだから」
保安官 「実弾なら、ここにある」
三人 「やめてやめてやめて! 本物やめて!」
ベイブ 「お、俺たちの銃に入ってるのは、空砲なの! つまり、俺たちの銃は、小道具なの!」
モンキー 「本物なんて、俺たち旅芸人には存在感が強すぎて手に負えないんだって……! ルコック、頼んだ!」
ルコック 「銃の腕いいんだからお前がやれよ!」
モンキー 「無理だよ! 本物の銃を持つと手が震えるんだって!」
ルコック 「そのトラウマ、なんとかなんないの!?」
モンキー 「なんとかならないからトラウマなんだろうが!」
(机をはたく)
追手 「なにしてる!」
ベイブ 「チョットマチーノ!」
ルコック 「マタレリーノ!」
モンキー 「なあ頼むよ……俺たちを巻き込まないでくれよ……!」
保安官 「……じゃあ、ちょっとその銃、俺に向けて」
モンキー 「え!? なんで!?」
保安官 「いいから!」
モンキー (保安官に銃を向ける)
「……で?」
保安官 「撃って」
モンキー 「え!?」
保安官 「空砲、撃って!」
モンキー (保安官を撃つ)
保安官 「うわー!」
(笑顔で倒れる)
モンキー 「嘘でしょ!?」
男 「メキシカン野郎が保安官を撃ったぞ!?」
ルコック 「馬鹿なの!? ねえ馬鹿なの!?」
モンキー 「こいつきったねえ! マジきたねえ!」
(保安官を指差して喚く)
追手 「なんのつもりだ!」
モンキー 「違うんだよ、これは空砲で……痛って!」
(ベイブに足を踏まれる)
ベイブ 「ブエノスディアスアミーゴ!」
ルコック 「マンマイッチャダメーヨ!」
モンキー 「なにすんだよ!?」
ベイブ 「だからスペイン語で話せっての!」
(モンキーの足を踏む)
モンキー 「痛って!」
三人 (言い争いを始める)
追手 「いい加減にしろ!」
(撃った弾が缶を被って逃げようとしていた男に当たる)
みんな 「うわー!?」
ベイブ 「神父様! 危ないから逃げねえでくれよ!」
リチャード「逃げなきゃ殺されます!」
店主 (長銃で追手たちを狙っていたが、リチャードが避けた弾が当たってしまう)
「ぐあー!」
(下の棚の瓶を落とす)
「ああー!」
(カウンターの瓶を落とす)
「……ハッ! ああー!」
(上の棚の瓶を落とす)
「ああー!」
(最期の力を振り絞って銃を撃つが外れる)
保安官 「ぎゃー!? 流れ弾が、脚にー!」
ベッキー 「保安官!?」
追手 (リチャードを狙って銃を撃ち始める)
ベイブ 「ジーザース!」
(叫んで倒れる)
モンキー 「ベイブ!?」
ベイブ 「馬鹿、お前らも早く!」
二人 「ああ!」
追手 (発砲。テーブルの上の缶に当たる)
ルコック 「うわー!」
(激しくガッツポーズをして倒れる)
モンキー 「先越された!」
追手 (発砲)
ベッキー 「きゃー!」
(階上に逃げる)
ドリュー 「げっ」
追手 「見つけたぞ!」
(ドリューを狙って撃つが外れる)
モンキー 「うわー! やったー!」
(嬉しそうに倒れる)
ドリュー (カウンターに入り、店主が持っていた長銃で追手を撃つ)
追手 「ぐあっ!?」
ドリュー 「当たった!?」
追手 (撃ち返そうとするがあいだに男がいて狙えない)
男 「撃たないでくれ!」
追手 「そこをどけ!」
男 「撃たないでくれ! ……うん! 撃たないでくれ!」
(体が動かず撃たれて死ぬ)
(死に際に撃った弾が保安官の脚に当たる)
保安官 「ぎゃー!? 流れ弾が、脚にー!」
ドリュー (追手を追撃しようとするが弾切れに)
「弾切れ!?」
追手 「覚悟しろ! ……ぐっ!?」
リチャード(ドリューを狙う追手をテーブルの陰から撃つ)
追手 「てめえ……!」
(意図せず撃った弾が保安官に当たる)
保安官 「ぎゃー!? また……!」
リチャード(無言で近づきながら連続で発砲)
ドリュー 「リチャードもうやめて!」
保安官 (ドリューがリチャードの腕を押さえたせいで流れ弾が当たる)
「ぎゃー!?」
追手 「あ……兄貴! 兄貴ー!」
(仲間を殺され馬で逃げていく)
保安官 「いてえ……いってえ……」
アンジー 「死んだねえ……。なに? 生き残ったのは、これだけ?」
(階上から降りてきて足でモンキーを蹴る)
モンキー 「ん? 終わった?」
三人 (死んだふりをやめて起き上がる)
「あーいやいやいや」
「いやいやいや」
(グラスを持ってテーブルへ)
ルコック 「失礼しまーす」
(テーブル下の死体をどける)
三人 (グラスにウイスキーを注いで乾杯)
「かんぱーい」
「っあー」
ベイブ 「生き長らえましたなあ」
ルコック 「芸は身を助けますな」
ベッキー 「あ、あなたたち、なんなの!?」
モンキー 「俺たちはー、……あ。もう正体ばらしてもいい?」
保安官 「それより早く、医者を……!」
アンジー 「この町に医者はいないよ」
ルコック 「え!? 僕ここちょっと擦りむいたんだけど」
(左の手のひらを指す)
アンジー 「ウイスキーでも吹きかけときな」
ルコック 「西部嫌い」
(拗ねてぷいと顔を逸らすルコックとモンキー)
ドリュー 「ここから一番近い町は?」
アンジー 「……レキシントン」
保安官 「レキシントンは嫌だー!」
モンキー 「嫌だとかなんとか言ってる場合じゃないだろ」
保安官 「レキシントンに行ったら、確実に死んじまう……!」
ドリュー 「どういうこと?」
アンジー 「レキシントンは、木に人がなる死の町さ」
ドリュー 「木に……」
モンキー 「人が?」
アンジー (レキシントンの説明。かつては市が立ち栄えていたとかなんとか)
(痛みに呻く保安官がうるさくて集中できないみんな)
「ってうるさい!」
(耐えかねて保安官の足を踏む)
保安官 「ぎゃー!」
モンキー 「それは……確かに死の町だ」
アンジー 「そして」
ベッキー 「そして」
「レキシントンは、パンサーという無法者が治める、死の町になったの……」
アンジー (台詞を奪われたのでベッキーの後ろですごい顔をしている)
ドリュー 「ここから二番目に近い町は?」
アンジー 「遠いよ。馬車で二日はかかる」
ドリュー 「その町に医者は?」
アンジー 「獣医が一人」
モンキー 「獣医?」
ベッキー 「腕は確かよ。あたしの家のラバの便秘も治してくれた」
保安官 「全然信用できないんですけど!?」
モンキー 「人の! 人による! ……人の! 人による! 人の! ……人民の人民による人民の……人の! 人による! ……人の医者がいる町は?」
アンジー 「あそこしかないよ」
モンキー 「……レキシントン」
保安官 「レキシントンは嫌だあ……!」
ドリュー 「もう、どうすればいいの!?」
アンジー 「……ねえ、あんた」
ドリュー 「……リチャード? リチャード大丈夫!?」
リチャード(揺すられて我に返る)
「だ、大丈夫です。どうしました!?」
アンジー 「ねえこの人、もう助からないからいっそ殺してあげて」
保安官 「ちょっと待って!? なんでもう死ぬしかないみたいになってるの!? 死なないからね!? まだ脚だけだからね!?」
ベイブ 「死ぬよ」
保安官 「えっ!?」
ベイブ 「弾が抜けてなきゃ鉛中毒。抜けてても早く消毒しないと感染症で死んじゃう」
保安官 「ええっ!?」
ベイブ 「傷口から蛆わいて死ぬよ」
ドリュー 「殺してあげて……!」
リチャード「で、できません!」
モンキー 「でもさっき殺してましたよね?」
リチャード「あ、あれはお嬢! ……シスターを守るためです」
ベイブ 「お嬢って言った?」
ルコック 「お嬢って言ったね」
アンジー 「あんた、なんか隠してるでしょ。……この惨状、あんたたちのせいだからね? この町の人間、みーんな死んじゃったじゃない! あたしたち、飯の食い上げだからね!? ……どうしてくれるのさ!」
保安官 「……ねえ、なんかいい匂いしない!?」
ベイブ 「ドーナツ作ってるからね」
保安官 「なんでドーナツ作ってるの!?」
ベイブ 「いやなんか、腹減っちまってさあ」
保安官 「普通人が死にそうな時にドーナツ作らないでしょ!」
ベイブ 「いやいやいや、こんな時こそ食わねえと」
モンキー 「ん!? うまっ!」
ルコック 「おいちいわー!」
ドリュー (お腹が長々と鳴る)
ベイブ 「あんたも食べるかい?」
モンキー (ドーナツをドリューに差し出す)
「ん」
(自分の分を一口食べてみせる)
ドリュー (一口かじる)
『これは……ドーナツの甘味で……お口の中が……宝石箱だわ……!』
ベイブ 「リチャードさん、あんたも食べるかい?」
リチャード「名前……!?」
ベイブ 「さっきあのお嬢さんが呼んでたよ」
モンキー 「そうだっけ?」
ベイブ 「リチャードさん。あんた、神父なんかじゃないだろ」
リチャード「なっ!?」
ベイブ 「そしてそっちのお嬢さんも、シスターなんかじゃねえ」
リチャード(ドリューを背後に庇う)
「……シスターです」
ベイブ 「まだ言うか。まあいいさ。嘘ついてるのは俺たちも一緒だからな。よし、お前ら! もう脱いでいいぞ!」
モンキー 「おっ!」
三人 (メキシカンな衣装を脱ぐ。ぐだぐだでぼさぼさ)
ベッキー 「ええーっ!? さっき死んだ人たち!?」
アンジー 「あんたまだ気づいてなかったの?」
ベッキー 「なんで!? 生き返ったってこと!?」
アンジー 「ううん。死んでなかったってこと」
ベッキー 「不死身のモンキー?」
モンキー 「そう、不死身のモンキー!」
ベッキー 「そして?」
ルコック 「不死鳥ルコック!」
ベイブ 「アンデッドベイブ!」
ベッキー 「やられたわ……!」
アンジー 「なにその演技」
三人 (わちゃわちゃ決めポーズを取っていたが、背後からの音で振り返る)
ザッパ (酒を飲み干し、盛大なゲップ)
「不死身の……モンキー?」
モンキー 「誰?」
ルコック 「知らない」
ベイブ 「知るわけがねえ」
アンジー 「見ない顔だね」
ベッキー 「そういえば、昼間からそこで飲んでた気がする」
ザッパ 「お前が、不死身のモンキー?」
モンキー 「ああ。俺が、不死身のモンキーだけど」
ザッパ 「……はっはっはっは!」
みんな 「おえー!」
ルコック 「うわくっさ!」
ベイブ 「酒くっさ!」
みんな 「うわー!?」
(銃を向けられてパニックに)
ザッパ (不死身のモンキーの手配書の罪状を読み上げ始める)
「列車強盗、銀行強盗、一家殺し皆殺し。犯した罪は数知れず、かけられた懸賞金は天井知らず。どういうカラクリだが知らないが、その全ての場所で殺されては蘇る。イモータル……不死身のモンキー!」
ベイブ 「あれ全部俺が作ったやつだ!」
(ちょっとこのへん忘れた)
モンキー 「俺はあんたの金は奪わねえ! 殺しもしねえ! だからその銃下ろしてくれよ……!」
ザッパ 「あんたが俺の金に興味がなくても、俺はあんたの首にかかった金に興味があるんでね」
ベイブ 「あいつ、バウンティハンターか!」
ドリュー 「バウンティハンター?」
ルコック 「賞金稼ぎですよ、お嬢さん」
ドリュー 「距離感近いですね!」
ルコック 「よく言われます」
ザッパ (どうやって蘇ってるんだ的な台詞)
モンキー 「どうやってって……」
ベイブ 「いいよ、話してやれ!」
モンキー 「……わかったよ! 説明する! 説明するから! だからその銃下ろしてくれよ……! 銃口を向けられてたら俺、上手く説明できないと思うんだよ……!」
ルコック 「よっ、ヘタレ!」
ベイブ 「ヘタレ王!」
ルコック 「ヘタレキングダム!」
モンキー 「銃口を向けられて震えなかったら、それはただの馬鹿だ!」
ザッパ 「うるさい」
(両手で両方に銃を向ける)
モンキー (怯えて樽の陰に隠れる)
「わかったよ……。お、俺は、芸人だ。都会で……オマハで、ウエスタンショーをしていた、芸人だ! 都会の人間は、西部を、荒野を、カウボーイのことを、よく知らない。だから、適当にやってれば客は入ったんだよ。だけど、鉄道が、西へ、西へと伸びていくにしたがって、詳しい西部の情報が入ってくるようになっちゃったんだよおーあっはっは」
(謎の独特の動き)
ザッパ 「なんなんだその独特な動きは!?」
モンキー 「だから、銃口が向けられてると上手く話せないんだよおーあっはっは」
(銃が下ろされて息をつく)
「客は激減。仕事がなくなって、途方に暮れる俺たちに、ベイブは、こう、提案したんだ」
ベイブ 「そうだ」
三人 「西部へ行こう!」
(ウエストゴーウエスト)
ザッパ (歌が終わったところで発砲)
「なんで急に踊る!? 意味わかんねえ! これからは俺の許可なしに踊るな! わかったか!?」
モンキー (怯えながら必死に頷く)
「……西部へ行こう! そう提案したベイブに、俺たちは、なんで? だって、俺の銃捌きは一流でも、それはあくまで小道具の銃だから。本物の銃を持ったら、俺は体が震えてなんにもできなくなっちまう。でもそんな俺に、ベイブはこう言ったんだ」
ベイブ 「やることは今までと変わらねえ。だが、これからは勝つのはお客だ」
モンキー 「って!」
ベイブ 「俺たちはいつも撃たれて死ぬ。そういう芝居をするんだ」
モンキー 「って!」
ザッパ 「……いや意味わかんねえ!」
モンキー 「戦争が終わって、アメリカは益々馬鹿になった。男たちは、夢ばかり追いかける。女たちは、強いマッチョが好きだ。……あ、強いマッチョってのは、大抵、馬鹿だ。馬鹿が好きな女も、多分、馬鹿だ。馬鹿が馬鹿を好きになると、生まれてくる子供も、馬鹿になる。馬鹿が増えれば、選ばれる大統領も、馬鹿になる。そうなると、困るのは俺たちみたいなヘタレなのよ。痛いの嫌い、死にたくない。そんな奴も荒野にはたくさんいる。ここにいる保安官だってそうさ。……あれ!? 保安官!? 死んだ!?」
保安官 「生きてるけど」
モンキー 「ああよかった、静かだからてっきり……」
保安官 「ちょっと気が遠くなってきた……」
ベイブ 「やばくないか?」
ドリュー 「あの!」
(挙手)
ザッパ 「なんだ?」
ドリュー 「あの人、手当てしてあげてもいいですか?」
ザッパ 「ご自由に」
リチャード「あの……」
ザッパ 「なんだ!?」
リチャード「……手伝っても?」
ザッパ 「どうぞ、神父さま」
ルコック 「え?」
ベイブ 「あいつ寝てたから知らねえんだ」
ルコック 「ああ!」
ザッパ 「続けろ」
モンキー 「……俺たちは、各地の保安官に手紙を送る。もしくは、新聞に公告を出す。そこには、こう書いてある。あなたに箔をつけるため、当方、綺麗に死にます、と。そして俺たちは保安官ととっておきのウエスタンショーを演じる。そう、あくまでも、ショーだ。本当に死んじまったら意味がない。(この辺忘れた)誰にでもできることじゃない。完璧なシナリオと、高い演技力が必要だ。そのための小道具にも余念がない。あんたが持ってる手配書だってそうさ」
(この辺も忘れた)
「俺が蘇るのは、演技だから、なの! 嘘? 不死身? お尋ね者? ぜーんぶ嘘! 嘘なの! ……わかった?」
ザッパ 「つまりお前は、演技が上手いってことか」
モンキー 「あ、ああ、そうだ」
(得意げに鼻の下をこする)
ザッパ 「演技が上手いってことは、嘘をつくのも上手いってことだ」
モンキー 「まあ、そうなるかな」
ザッパ 「だとしたら、今の長ったらしい台詞も、全部嘘かもしれねえ」
モンキー 「え!?」
ザッパ 「なにが本当でなにが嘘なのか、俺にはわからない。だから、目の前にあるものを信じるぜ」
モンキー 「あーもうこの人やだー!」
ザッパ 「おい、そこのおじさんみたいな娼婦。こいつを縛る縄を持ってこい」
アンジー 「あ、あたし!? お、おじさんみたいな娼婦じゃ、ないですけど!? 従うのは、命が惜しいからだからね!? ……ここ、納戸だからね!?」
(縄を取りに納戸へ)
ベッキー (保安官の元に向かう)
「大丈夫?」
リチャード「早く消毒しないと……」
ドリュー 「消毒液は?」
ベッキー 「そんないいものここにはないよ!」
リチャード(テーブルの上のウイスキーを取ってくる)
「しょうがない、ウイスキーで消毒しましょう」
ザッパ 「ウイスキー!? いまウイスキーでっつたか!?」
リチャード「え、ええ。応急処置にしかなりませんが……」
ザッパ 「もったいねー……」
リチャード「沁みますよ」
保安官 「やってくれ」
ザッパ 「もったいねえなあ……!」
保安官 (ウイスキーが沁みて飛び上がる)
「ぎゃー!」
ザッパ 「ぎゃー!」
保安官 「ひぃー!」
ザッパ 「ひぃー! ってストップ!」
「……どれくらいだ? どれくらい使うんだ?」
リチャード「一本まるまるですが」
ザッパ 「い、一本、まるまる!?」
モンキー 「なんだ!?」
ザッパ 「も、もったいねえよ! なあなあなあ、神父様、これに注いでくれねえ? 一杯だけ、一杯だけでいいから」
(グラスを取ってきて差し出す)
リチャード「……一杯だけですよ」
ザッパ (ウイスキーを注いでもらったグラスを慎重に運ぶ)
「落ち着け……落ち着けば大丈夫だザッパ……」
(飲もうとするが、手が震えて酒を全部こぼす)
「もうー!? ザッパなにやってんだザッパ!?」
ルコック 「ザッパってなんだ? 名前かな?」
ベイブ 「あだ名じゃねえ?」
モンキー 「なあ、俺たちもう動いていいか?」
ザッパ 「動くんじゃねえ!」
(全身が震え始める)
「……いかーん! な、なあなあ神父様、もう一杯、もう一杯だけ、ここに、そ、そそそそそ」
リチャード「注げばいいの!?」
ザッパ 「そうそうそうそう!」
(コップを持つ手が震えて上手くいかず、瓶ごと奪って飲もうとするが既に空。瓶を放り投げる)
「あー!?」
ドリュー 「なんなの!?」
リチャード「彼はアルコール中毒者なんですよ。酒が切れたんだ」
ザッパ 「さ、酒を、よこせ!」
(錯乱してみんなに銃を向ける)
モンキー 「ベイブ、酒ある!?」
ベイブ 「さっきの銃撃戦で全滅だ!」
ザッパ 「なに!?」
ベッキー 「あそこに、一本あるけど……!」
(樽の上の瓶を指差す)
モンキー (瓶に向かって走り出す)
ザッパ 「や! ……めめめめろおおおお!」
(撃った弾は外れて保安官の脚に当たる)
保安官 「ぎゃー!?」
ベッキー 「また!?」
モンキー (酒のところに辿り着いて掴む)
「銃を捨てろ! ……この酒がどうなってもいいのか。こいつはこの町で、最後の酒かもしれないぞ」
ザッパ 「ゲッツ!」
モンキー 「俺が手を放せば、この酒は――土に還るぜ」
(落とすふりをしてみせる)
ベイブ 「ぜって言った?」
ルコック 「ぜって言ったね」
モンキー 「試してみるか!? お前がその銃で俺を撃つのが早いか、それとも! ……俺が、この酒を落とすのが、早いか」
ドリュー 「……なにこの無駄な緊迫感! たかがお酒でしょ!?」
ザッパ 「たかが酒じゃねえ! 酒が一番、俺は酒さえあればあとはなんにもいらねえ。そいつを……よこせ……!」
モンキー 「銃を! ……捨てろ」
ザッパ 「……わかった」
(銃を離そうとするが離せない。手を椅子に打ちつけたり、銃を足で押さえたりしてようやく手から離す)
アンジー 「……なにやってんの?」
二人 (アンジーが持ってきた縄でザッパを縛る)
ザッパ 「お酒……。お酒、ちょうらい?」
モンキー 「ほら」
(ザッパに酒を飲ませてやる)
ザッパ 「あー……! っておい! お前ら、覚えてやがれ!? ……もう一杯だけちょうだい?」
モンキー 「もうやめとけよ……」
ドリュー 「お酒って怖い」
ルコック 「禁酒法ができたのはそれから十年後のこと。(政府に対するレジスタンスがどうとかの台詞)英雄に、なったのです。はいここ注目ー。無法者が英雄って、まさに西部! アメリカ的。まったくもう……どんだけー?」
モンキー 「ジャックのスリーカード!」
ドリュー 「あー! また負けた!」
ベイブ 「ジャックのスリーカードで勝負するたあ、ふてえ野郎だ」
ドリュー 「もう一回!」
モンキー 「いいけど、そろそろ精算したい頃だな」
ドリュー 「精算?」
モンキー 「次の勝負はそれからだ」
ドリュー 「いいわ。リチャード! 財布!」
リチャード「……賭けてたんですか!? あんたたちは、素人相手に金を賭けたのか!?」
ベイブ 「賭けねえと上手くならねえから」
ドリュー 「リチャード、早く」
リチャード「駄目です!」
ドリュー 「私の財布よ!?」
リチャード「これは、旦那様からお嬢様のためにと預かった大切なお金です」
ドリュー 「なら、私の窮地に使うお金ってことよね? 今が窮地。早く! そうしないと私、あいつらに弄ばれて、売られちゃう……!」
モンキー 「人聞き悪いな! そんなことしないって」
(あいだに誰かの台詞があったような)
モンキー 「まさか、踏み倒すなんてことはしないよなーリチャードさん?」
リチャード「……わかりました。いくらですか」
ベイブ 「四百五十ドル」
リチャード「よ……四百五十ドル!?」
モンキー 「いやね、俺たちは最初、すごく低いレートでやってたんだよ。けどこのお嬢様が熱くなって、レイズ! しまくるもんだから」
リチャード「なんてことを……!」
ドリュー 「なにかの掛け声かと思ったのよ。レイズ! ウェーイ! みたいな」
リチャード「ああ……!」
ドリュー 「四百五十ドルって大金なの?」
リチャード「大金ですよ! 新品の馬車が買えます」
ドリュー 「……吹っかけたわね!?」
ベイブ 「いやいや、吹っかけたのはそっちだから」
「まあいいさ。俺たちも本当に払ってもらおうなんて思っちゃいねえ」
モンキー 「でも残念だよなー。いやね、期待してたわけじゃないけど、今までの勝負、全部なしでしたーなんて言われちゃうとさー……」
(後ろで手を組んで地面を蹴る)
ベイブ 「もう、熱くなれないよな……」
ルコック 「気にしないでね、おじさんの冗談だから」
モンキー 「そうだ、貸しね!」
ベイブ 「君に、貸し!」(ウインク)
モンキー 「いつまでも覚えてる、君に、貸し!」(ウインク)
ドリュー 「なんか腹立つ……!」
リチャード(あいつらに騙されたんだから払う必要なんてありません的な台詞)
ベイブ 「もう貸し! 絶対貸し!」
ルコック 「気にしないでね」
モンキー 「この貸し、事あるごとに思い出すからな!」
ベイブ 「大事な時に思い出すからな!」
モンキー 「欲しい馬がいる。でも、お金が足りない。そんな時に思い出す。あの貸しが返ってくればなあ……って」
ベイブ 「いつか俺に娘ができて、嫁に行く時に思い出す。あの貸しが返ってくれば、もっといい式を上げさせてやれたのに……」
(モンキーと二人、泣きまねをしながらドリューに迫る)
ドリュー 「リチャード!」
リチャード「駄目です! それに私たちにはもう、馬車もないんです」
ドリュー 「それは……ありがとうって! 代わりにロバもいただいたし」
リチャード「お言葉ですが、ロバではとても目的地にたどり着くことはできません。ですから、私たちには馬車を買うお金が必要なんです」
ドリュー 「だから」
二人 「だからー、貸しとくって!」(ウインク)
ドリュー 「いやー!」
ベッキー (荷物を持ってアンジーと一緒にスイングドアから出てくる)
「アンジー。あたしと一緒に行かない?」
アンジー 「あたしみたいなアバズレ、普通の町には馴染まないよ」
ベッキー 「アンジー……」
(ハンカチを噛み締める)
「じゃあね」
アンジー 「なにその演技」
ベッキー 「馬車、借りるわね」
リチャード「あのっ、そのことですが」
ドリュー 「リチャード! お願い」
リチャード「……わかりました」
ドリュー 「大丈夫かしら……」
アンジー 「隣町はベッキーの生まれ故郷だからね。道は知ってる。飛ばせば明後日の昼には着くでしょ」
ドリュー 「明後日の昼……」
アンジー 「まあ獣医だから、脚は最悪切断かもね」
ドリュー 「そんな!」
アンジー 「なに言ってんの。命があるだけマシだって。ここ西部では、五体満足超ラッキーなんだから」
(酒場の中へと戻る)
ベイブ 「そろそろ俺たちも出発するか」
モンキー 「え、もう行くの?」
ベイブ 「逃げた無法者が仲間を連れて戻ってくるかもしれねえ。それまでに町を出ねえとだ」
モンキー 「次はどこに行く?」
ベイブ 「コロラド……から依頼が来てるが、コロラド……に行くには、あの町を通らねえとだ」
ルコック 「レキシントン……」
ベイブ 「危ない橋は渡らねえ」
モンキー 「でもさでもさ! コロラドの先には、ユタがある! 半月もすれば、大陸横断鉄道の開通式だ! なあ、見物がてら行こうよ!」
ベイブ 「ユタに行ったところで仕事はねえ」
モンキー 「仕事じゃなくたってさ! 開通式には大統領も来るって話だ。きっとすごい祭りになる。ユタのプロモントリーで、東西から延びる鉄道が、一本の鉄道になるんだ。東から、赤いボディのロジャース製百十九号機蒸気機関車。はっはー! 西からはスケネクタディ製六十号機蒸気機関車、通称、ジュピターがやってきて、鎧のようなカウキャッチャーをこう、向かい合わせて止まるんだ。あー、あー! たまんねえ……!」
ベイブ 「鉄道、好きなんだな」
ルコック 「オタクだな」
モンキー 「なあ、行こうよ!」
ベイブ 「行こうったってなあ」
モンキー 「……あー! サクラメント! そうだよ、大陸横断鉄道の西の端、サクラメントまで行けば、あそこはゴールドラッシュに沸いた町だ! ああもう、オマハなんて比べ物にならないほどの都会だよ! そこへ行って、またウエスタンショーをやらないか? 俺はもう、命からがらのリアルウエスタンショーを演じることに疲れたんだ。観客はいない。拍手もない。おまけに、いつ死ぬかわからない」
ベイブ 「死なないために、俺がシナリオを書いてる」
モンキー 「シナリオ通りにいかないことだってある」
ルコック 「誰かさんのアドリブのせいでね」
ベイブ 「俺たちはなあ、おい、寄り道なんてしてる場合じゃねえんだよ、おい。仕事して、金稼がねえと、飢えて死ぬ!」
モンキー 「そんなに苦しいの?」
ベイブ 「普通ーに火の車だ」
モンキー 「あーあ……。こんなとき、あの貸しがなければなあ……」
ドリュー 「げっ」
ベイブ 「そうだ、あの貸しがなければ、俺たちは、サックラメントに行けたんだ」
(丸めた地図越しにドリューを見る)
ドリュー 「げげっ」
ルコック 「気にしないでね。このやり取り、気に入っちゃっただけだから」
(キメ顔)
ドリュー 「もう! だったらユタまで一緒に行きましょう」
三人 「え?」
リチャード「お嬢様!?」
ドリュー 「だってもう、この人たちしつこいんだから! ユタに行けばお父様がいる。そこで貸しを返してもらえばいいわ!」
リチャード「お嬢様! あまりぺらぺらとお話しになりませんよう」
ドリュー 「ぺらぺらですって!?」
モンキー (ドリューに胸を叩かれてちょっと嬉しそうな顔をするが、直後にベイブにも叩かれてむっとする)
(このへんだいぶ忘れた)
ベイブ 「じゃあなにか? あんたのお父様は金持ちなのか?」
ドリュー 「まあ……」
ベイブ 「で、その金持ちのお父様がユタにいるのか?」
ドリュー 「ユタに来るの。開通式典に出席するためにね」
リチャード「ちょっ……」
ベイブ 「てえことは、あんたのお父様は鉄道関係のお偉方か? それとも、土地の権力者か?」
リチャード「いい加減にしろ!」
ベイブ (丸めた地図を振り下ろす剣道のような動き)
「モンキー! 俺たち、運が向いてきたみたいだぜーっ!」
(跪いてドリューに手を差し伸べる)
「ユタまでご一緒します、お嬢様。よろしければ、あの幌馬車にお乗りなさい」
モンキー 「ちょっ、待ってよ、乗れったって五人なんてあの痩せ馬には無理だよ」
ベイブ 「モンキー、お前はロバに乗れ」
モンキー 「え!? なんで俺が!?」
ベイブ 「おいモンキーちょっとこっち来い! ルコックもだ!」
(二人を隅に連れて行き、丸めた地図で樽をばしばし叩きながら喋る)
「いいか! あのお嬢様の父親は恐らく、相当の金持ちだ! 開通式典に呼ばれるのは、鉄道関係のお偉方か、その土地の権力者。とにかく、要人だ!」
モンキー 「要人?」
ルコック 「重要人物ってこと」
モンキー 「ああー」
ベイブ 「恩を売っといて損はねえ。上手くいけば、鉄道関係の仕事に就かせてもらえるかもしれねえぞ」
モンキー 「鉄道関係の!? ああ……!」
三人 (ぶりっこポーズで段差に腰かける)
ドリュー 「いいじゃない。あの人たち、悪い人ではなさそうだし」
リチャード「西部では簡単に人を信じたりしてはいけません」
ドリュー 「……そうね。だったら、リチャード。あなたのことも疑わなきゃいけなくなるわね」
リチャード「えっ!?」
ドリュー 「出発してからずっと、大変な目にばかりあってるじゃない! 鉄道が襲われるっていうから馬車にしたのに、馬車でも襲われたし!」
リチャード「それは、不測の事態で……!」
ドリュー 「ならリチャード。あなたの考えも甘かったってことでよろしいかしら」
(眉間に指を突きつける)
リチャード「ええ……!?」
ドリュー 「そういうわけで、あなたたちの馬車に乗せてもらうことにするわ。ユタに着いたら、これまでのことを全て報告させてもらいます。お父様の、感謝の気持ちが弾むはずよ」
モンキー 「そう来なくっちゃ! そうと決まれば、早速出発だ!」
ベイブ 「待て待て、食料取ってくる! 手伝ってくれ」
三人 (ヒゲダンスの動きで退場)
ドリュー 「……お父様は大丈夫かしら」
リチャード「あちらには護衛がたくさんいます」
ドリュー 「お父様も馬車で来ればよかったのに……」
リチャード「そうはいきません」
(ドリューの父親は象徴となる人間なので鉄道で向かう必要がある的な台詞)
アンジー (後ろの窓から話を盗み聞きしている)
(モンキーたちが戻ってくる気配に気づいて隠れる)
モンキー 「西部へ行こうよゴゴーゴー。西部へ行こうよふんふーんふーん」
(ドーナツを食べながら荷物を馬車に運び込む)
ルコック 「ちょっといいかな。あんたたちは、あの無法者に格好を見られてる。着替えたほうがいい」
リチャード「しかし着替えなど……」
ルコック 「俺たちは旅芸人の一座だからね。衣装ならたくさんある」
モンキー 「いつかまた、ウエスタンショーをするときに必要になるからね」
ルコック (馬車を漁ってリチャードの靴と服を取り出す)
「これがちょうどいいかな。はいこれ。服は……これを着るといいよ」
リチャード「これは……先住民の衣装!」
ルコック 「お嬢様は……自分で選んでもらったほうがいいかな。適当にサイズが合うのを見繕ってよ」
(ドリューを幌馬車にエスコート)
ドリュー 「うん」
ルコック (馬車の入り口を閉めて酒場に戻っていく)
モンキー 「あんたも早く着替えなよ。すぐ出発するよ?」
リチャード「私には、お嬢様の護衛という役目がある。お嬢様の傍を離れるわけには」
モンキー 「大丈夫だって、俺が見てる。……なんだよ。信用できない?」
リチャード「信用は全くできない。君は男だ。お嬢様と二人きりにするわけにはいかない」
モンキー 「ならそこで着替えれば?」
リチャード「そうさせてもらおう」
モンキー 「……ご自由に!」
リチャード(着替え始めるが、モンキーに見られていることに気づく)
「こっちを見るな」
モンキー 「なんで」
リチャード「見られていると着替えづらい」
モンキー 「はいはい」
(リチャードに背を向けて樽に座る)
ドリュー 「ねえ、暗くてよく見えないんだけど、ここにあるランプつけてもいい?」
モンキー 「ああ、わかる? マッチ、その辺に転がってるはずだけど」
ドリュー 「うん」
モンキー (リチャードに見られていることに気づいて嫌そうな顔をし、再び背を向けて座る)
「……あんた、怖い目、してるな」
リチャード「私にはお嬢様を無事に送り届ける義務がある。仕方がない」
モンキー 「いや、そういう怖さじゃないんだよな。あんた、さっき人を殺したろ。あのときの目が、あんたの本当の目だと思うんだよな。……あ、いや、なにがあったかなんて聞かないよ。大抵のアメリカ人は、あの大きな戦争を機に、なにかしらの大きな悲しみを抱えたんだから」
リチャード「君も、悲しみを抱えているんだな」
(真面目な顔だが上半身裸で下半身は股引)
(ここからリチャードの身の上話。父はイギリス系アメリカ人で、母は先住民。二人とも亡くなっている)
モンキー (ランプをつけたことで着替え中のドリューのシルエットが幌馬車に浮かび上がる。それに気づいて夢中でガン見。リチャードの話は聞いていない)
リチャード「誰もが両親との別れを経験するが、それがどうにも解決できなくてな。……すまん、変な話をした」
モンキー 「うん。ううん。うん」
リチャード「君はお嬢様の父親に会ってなにを望む。金か? 職か?」
モンキー 「うん。ううん。うん」
リチャード「おい、聞いてるのか? ……あ」
(しばし固まったままドリューのシルエットを見つめる)
「……じゃない! おい、見るな!」
モンキー 「いや、見ようとしたわけじゃないって」
ドリュー (着替えて馬車から出てくる)
「ねえ。どうかな?」
リチャード「……いいと思います」
ドリュー 「そう? じゃあこれでいいか」
(装飾品をつけに馬車に戻る)
モンキー 「……いいな」
リチャード「ああ。いいな……」
モンキー 「あんた、あのお嬢様に惚れてんだろ?」
リチャード「なっ!? 私は、お嬢様の護衛として!」
モンキー 「はーん、護衛ねえ。あんたが襲うことにならなきゃいいけど」
リチャード(肩に乗せられたモンキーの腕を払いのける)
「失敬な!」
モンキー (リチャードのまねをしながら)
「失敬な! って言う人初めて見た」
リチャード「ちょっと来い!」
(モンキーを酒場の中に引っ張っていく)
ドリュー (幌馬車から出てくる)
「うん、いいんじゃないかな! ……あれ? いない」
(辺りには誰もいないが、馬がいることに気づいて話しかける)
「ねえ! これ、似合う?」
馬 「え、俺?」
ドリュー 「そう、あなた」
馬 「え、ちょっと待ってね」
ドリュー 「うん」
馬 「ちょっと待ってね」
「ヒヒーン! え、なに!? 俺の言葉がわかるの!?」
ドリュー 「うん」
馬 「すげーなあ!」
ドリュー 「そう? 私は子供の頃からわかったから、すごいとは思わないけど」
馬 「すげーなあ。万に一人の逸材ってやつだな!」
ドリュー 「さっきはバッファローの群れとも話した。訛りが強くて、ちょっと聞き取りにくかったけど。……で、どう? 似合う?」
馬 「まあ、人間にしてはいい線いってんじゃね? なんか、ムラムラする系?」
ドリュー 「……あんたなんかチャラいね」
馬 「マジで?」
ドリュー 「ムラムラさせちゃ駄目なんだけどなー。他のはなんかダサいのよね」
馬 「まったく、これだもんなー、女ってやつは。自分からムラムラさせておいて、こっちがその気になったら、見ないでー! だもんな。あんたたちが乗ってきた馬車の子もさ、いいケツしてたからじろじろ見てやったわけ! そしたら、この種馬が! って言い捨てやがって。じろじろ見ちゃうのは本能なんだからしょうがないっつー話じゃ!」
ドリュー 「よく喋るなー。そんなだから雌に嫌われるのよ」
馬 「ヒヒーン! そう言うなよー、人間の話し相手なんて滅多にいないんだから。あ、そうだ。さっきあんたたちも乗っていくって言ってたけど、あれやめてくれない? ただでさえ重たい馬車ひいてるんだよ? 衣装、小道具、それから食料。そのうえ3人、プラス2人って。これ無理っしょ」
ドリュー 「大丈夫よ、ロバもいるし」
馬 「ロバ。……無理無理無理、あいつらやる気ねえ」
ドリュー 「じゃあ、やっぱりあなたが頑張るってことで」
馬 「ヒヒーン! 勘弁してくれよ、劣悪な職場だよ? これだけ頑張っても報酬が草だよ? そこら辺に生えてる草だよ!? ありえないよね!? この馬が正直きついって言ってたって、あいつらに伝えてよ」
ドリュー 「い、嫌だよ!」
馬 「なんで!? 伝えるだけだよ、簡単でしょ!?」
ドリュー 「馬と喋れるなんて言ったら、頭おかしい人だと思われちゃう!」
馬 「そんなこと思わない……思うか。……じゃあせめて、人参くれよ。人参くれたら頑張るからさあ」
ドリュー 「……じゃあ、人参あげる」
馬 「マジか!? 俺頑張るわ!」
(激しく地面を蹴ってみせる)
ドリュー 「ふふ。ねえあなた、名前は?」
馬 「馬」
ドリュー 「馬は名前じゃないわ。種、よ」
馬 「しゅ?」
ドリュー 「とにかく、名前じゃないわ」
馬 「でもあいつらは俺のこと、馬って呼んでるぜ?」
ドリュー 「それなら私がいい名前をつけてあげる」
馬 「お! なんだかよくわからないが、貰えるものはもらっとくぜ! で、なんだ!?」
ドリュー 「そうねえ……ギャ!」
(背後から忍び寄ったアンジーに頭をフライパンで殴打されて気絶)
馬 「……ギャ! か! ……うん、いい名前だ! 馬よりは全然いい名前だ!」
アンジー (御者台に座り手綱で打つ)
馬 「……痛って。……痛って! なに? まだみんな乗せてないから行かないよ?」
アンジー 「馬鹿な馬だね。早く走りな!」
馬 「えっ誰!? ドリューじゃないの!? モンキーベイブルコック! この女なにか企んでるよ! 俺痛いの苦手だから従うよ、従っちゃうよ!? あーもうやめてやめて、行くから……!」
後編(http://privatter.net/p/863453)に続く。
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