「大人の塗り絵」というジャンルがある。
子ども向けのポップな塗り絵に対して、草花や田園風景といった、写実的で素朴な塗り絵だ。それはそれで美しく塗る喜びがあるかもしれないが、少し地味で面白みが足りない気がする。
子どもの塗り絵のような楽しさを残しつつ、もっと多くの大人が共感できる塗り絵をつくりたい。
小堺丸子(こざかいまるこ)東京葛飾生まれ。江戸っ子ぽいとよく言われますが、新潟と茨城のハーフです。好物は酸っぱいもの全般とイクラ。ペットは犬2匹と睡魔。土日で40時間寝てしまったりするので日々の目標は「あまり寝過ぎない」
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子ども向け塗り絵に大人の好みをミックス
子ども向けの塗り絵を改めて見てみると、人気のキャラクターが登場し、ポップで可愛らしい絵が並んでいる。
子どもたちはそこに好きな色を塗ることで、より可愛らしくなっていくキャラクターを見て喜ぶのだ。
しかし私たち大人は塗る気にはなれない。 キャラクターをよく知らないので感情移入できないし、塗り終えたとしても「ねえこれ見て見て!」と他人に自慢できるようなものでもない。大丈夫かな、と心配されてしまう。
もっと真剣に塗りたくなるような、かつ、それを見た相手(大人)も感心したり共感できる塗り絵がほしい。
食べ物を塗り絵にする
たとえば、綺麗に並ぶ握り寿司の塗り絵だ。よく知らないアニメのキャラクターなんかより、旨そうな寿司に色を塗っていたい、それが大人じゃないだろうか。
寿司のネタの新鮮さや、肉の霜降りの入り方の違いを想像しながら塗る楽しみ。これぞ大人の塗り絵だ。
楽しげな塗り絵の作り方
ちなみに、塗り絵は写真を描画ソフトでトレースすれば簡単に作ることができる。
しかし、それだけだと写実的すぎて塗り絵の楽しさが伝わらない。そこで、以下の4つのポイントに注意した。これを守ることで子どもの塗り絵同様に楽しそうに見せることができるのだ。
大人の一日を塗り絵にする
さらに子ども向けの塗り絵に注目してみる。すると、キャラクターの挨拶から始まり、そのあと彼らの日常を紹介するのが定番だと気づいた。これ、大人の塗り絵に当てはめてみても面白そうだ、やってみよう。
上の「妖怪ウォッチぬりえ」の1ページ目を参考にして、まずは挨拶から描いてみる。
大人の一日は頭に血を持っていくところから
妖怪たちの元気な挨拶を現実的な大人の日常に変えると、このような感じになった。
大人は前日の疲れが完全に取れず、なかなか起きることができないもの。 それでも仕事に行かねばと努力をしているシーンを切り取ってみたのだ。
現実では見るのがつらい一コマだが、塗り絵にしてみると楽しそうに見えるのがいい。大人向け塗り絵として作りはじめたが、このポップさなら子どもにも喜ばれそうだ。
引き続き、よくある大人の一日を塗り絵にしていこう。
通勤風景を塗り絵に
なんとか出かける準備をしたあと、たいがいの大人は会社にむかうだろう。そこで目にするのは満員電車だ。
実際は目立たない色の服が多いのだが、こうしてビビッドカラーで塗りたくればずいぶん楽しく見えてくることが分かる。
嫌なものを好きな色で塗ることで、もしかしたら心が軽くなるような効果が期待できるかもしれない。
仕事中を塗り絵に
次に作ったのは、いつまでたっても慣れることのない名刺交換のシーン。作法は細かくあるようだけれど、肝心なのはしっかりと相手の目を見ることだ。基本を忘れないためのにも、この塗り絵を机に貼っておきたい。
ATMを塗り絵に
お昼休みの時間をつかって、大人が月に一度はむかうだろう場所に向かった。銀行のATMだ。
ATMの塗り絵は並ぶ人の首の角度に注目したい。お金を振り込まねばならないのか憂鬱そうな人もいれば、給料が入ったのか逆にゴキゲンそうな人もいる。人間模様を想像しながら塗ると面白いだろう。
突然のラブ・シーンを塗り絵に
妙な動きに敏感な大人は、たまに駅の端っこなどで図らずもラブシーンを見かけてしまうことがある。
ATMに寄ったために時間がなくなり公園でオニギリを食べていると、ハト達が目の前でイチャイチャしていたのでその瞬間を塗り絵にすることにした。
たとえハトであっても、真っ昼間からけしからんという怒りや、羨望、嫉妬心といった複雑な思いが交差したのだ。こういう大人の機微はぜひ塗り絵に残しておくべきだろう。
優しさを塗り絵に
さて、午後も引き続き仕事に精を出すのが大人。時に上司に注意され、時に部下の相談に乗り、予想しなかったトラブルを対処する。
なんやかんやでエネルギーが切れかかった夕方ごろ、机の上に差し入れが置かれていることに気づく。鹿児島名物「かるかん」だった。
大人は、出張帰りの同僚や、旅行土産でもらう差し入れがとても嬉しい。さらにちょっとした一言が書かれた付箋に大変癒やされるのだ。こんなに温かみのある塗り絵はなかなか無いだろう。
大人の夜
ようやく今日の仕事は終わった。ここからは自由に使える大人のお楽しみ時間である。大人の夜、といえばやはりお酒。今日はどんなお店に入ろうか。
子ども向けの塗り絵は後半になるとクイズが出てくる。
子どもは飼い主とペットをつなぐのが楽しいようだが、大人はお酒とツマミの相性をつなぐ方がワクワクする。スルメやチーズなんかは、塗っているうちにニオイが立ちこみそうじゃないか。好きなものに色を塗って店員さんに見せてオーダーするのもいいかもしれない。
こんな感じで大人の一日の塗り絵は完成。写真だと大人の辛さや情けなさに目をそむけたくなるシーンもあるけれど、こうして塗り絵にしてみると不思議と可愛らしく見えてくる。
大人の「趣味」を塗り絵にする
さて、最後に着目したのは大人の「趣味」だ。
大人というのは子どもには全く理解できないような、マニアックな趣味をもつ生き物である。たとえばこういうものだ。
それぞれ、ジャンクションマニアの大山顕さん、ダムマニアの萩原雅紀さん、エスカレーターマニアの田村美葉さんのオススメ写真をいただいて作った。
どれも造形の美しさが際立つ最高のポイントから撮られた写真で、塗りごたえは半端ない。
こういった建造物・無機物を愛でるというのはけっこう特殊な趣味ではあるけれど、どれも大人だからこそ理解できるものだ。
お酒を片手に「ここってこうなってるのか」と感心しながら塗りたい。
大人の趣味は幅が広い
ほかにも玉置豊さんの趣味である家庭用製麺機、宮城マリオさんのエアギター、きだてたくさんの珍文具も塗り絵にしてみた。
こうして並べて見ると、大人の趣味の幅広さに改めて驚き、大人って楽しいなと思わされる。
シリーズ作りたい
こんな感じで、「大人の塗り絵」ジャンルの幅を広げてみた今回の試み。
いざ作り終わってみると、意外と子どもウケしそうなものもあったし大人向けというよりはどの年代でも楽しめるものにできたような気がする。「親子で楽しむ塗り絵」として人気が出るかもしれない。
ダウンロードできます
今回作ってみた大人の塗り絵をPDFにしました。ダウンロードして是非楽しんでください。(ダウンロードはこちら)