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【社説】

米黒人差別 南軍の旗降ろす勇気

 九人が死亡した米黒人教会乱射事件後、奴隷制の象徴とされてきた南北戦争時の「南軍旗」を排除する動きが米国で広がっている。根強い人種差別の転換につながる動きとして注目したい。

 事件があったのは、黒人の公民権運動を主導していたキング牧師が演説したこともある米南部サウスカロライナ州チャールストンの教会。白人男性のディラン・ルーフ容疑者(21)は、聖書の勉強会のさなかだった黒人信者らに向け、銃を乱射した。

 「おまえたちはわれわれの国を乗っ取ろうとしている。出て行け」などと差別をあらわに話していたという。ウェブサイトには、ルーフ容疑者が南軍旗と銃を手にする姿が掲載されていた。

 南軍旗は南北戦争(一八六一〜六五年)で、奴隷制を支持した南部諸州が使用していた。「南部の誇り」のシンボルとして公共の場で今も使われているのに対し、黒人らは人種差別や白人支配など「痛み」の象徴だとして撤去を求めていた。

 サウスカロライナ州知事は州議会議事堂に掲揚されていた南軍旗の撤去を議会に要請、ミシシッピ州議会議長は州旗のデザインから南軍旗を削除するよう呼び掛けた。バージニア州は南軍旗をあしらった車のナンバープレートの発行中止を表明。小売り大手ウォルマートやネット通販アマゾン・ドット・コムは南軍旗関連商品の販売中止を発表した。警官の黒人射殺など人種絡みの事件が後を絶たない米社会で、差別の象徴を排除する動きが党派を超え広がっていることは異例だ。差別撤廃の動きにつなげたい。

 容疑者の銃は誕生日に父親からプレゼントされたものだという。事件は、やはり度重なる乱射事件後も銃規制が進まない米社会の宿痾(しゅくあ)も、あらためて浮き彫りにした。

 二〇一六年次期大統領選の民主党有力候補ヒラリー・クリントン前国務長官が「私たちが行動を起こすまでいったい何人が犠牲になるのか」と述べるなど銃規制が大統領選の争点の一つになる可能性も出てきた。

 銃規制に向けた機運が盛り上がることも期待したい。

 

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