[TPP交渉] 国民は理解していない
( 6/26 付 )

 米議会上院は通商交渉の権限を大統領に一任する「貿易促進権限(TPA)法案」を賛成多数で可決した。大統領の署名を経て週内にも成立する見通しだ。

 米国は環太平洋連携協定(TPP)交渉参加12カ国の中心メンバーである。一方で議会が合意を覆す恐れがあり、交渉を停滞させてきた。

 TPA法の成立で最大のハードルは越えるということだろう。安倍晋三首相は「大きな前進だ。歓迎したい」と述べた。

 ちょっと待ってもらいたい。国民の理解という大切なことを忘れていないか。

 日本がTPP交渉に参加したのは2年前だ。直前の参院選で首相は「日本の農業、食を守ることを約束する」と断言した。

 だが、JAグループ鹿児島などの反対運動は一向に収まらない。コメなど重要5項目を「聖域」とした国会決議が守られるか不透明だし、国内議論も低調だ。

 理由ははっきりしている。交渉をめぐる情報が極端に制限され、是非を判断しようにも材料がないからである。

 TPA法案可決を受けて政府は早速、米国との事務レベル協議再開に動き出した。甘利明TPP担当相は「各国が最終カードを切って大きく前進する」と発言した。

 7月の「大筋合意」を視野に入れているようだ。しかし、最後のカードを切る前に、政府にはなすべきことがあるはずだ。

 国民に説明し、支持を得る努力である。白紙委任で済ませる手法は乱暴すぎる。

 TPP交渉に合流する際、日本は情報守秘の契約に署名した。横やりを入れさせないというルールは分かる。

 それでも米通商代表部(USTR)は、議員にTPP協定案の閲覧を認めている。TPA法案にはオバマ政権が署名する60日前に、協定案を一般公開するよう求める規定が盛り込まれた。

 日本では首相やTPP担当相ら一部の閣僚と官僚しか見ることができない。国会議員にも閲覧を認める方針が5月に示されたが、2日後に撤回されてしまった。

 戦後日本は自由貿易体制から多くの利益を得てきた。国の垣根を低くするTPPは重要だ。

 だが、自由化は副作用も伴う。食品添加物や遺伝子組み換え食品の表示、国の主権を損ねるとの批判がある紛争解決条項など、高いレベルの自由化を目指すTPPだけに国民の不安も強い。

 それなのに国会でさえ議論できない状態が続いている。秘密のまま決着でいいはずがなかろう。


 
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