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 政府が掲げる「すべての女性が輝く社会づくり」。トイレが快適になれば、女性は輝くといい、キャラ弁をつくるお母さんを持ち上げる。なんでそうなるの?

 《人間は1日に大小便を合わせて5~7回、計10~20分間トイレを使用しているが、これは一生に換算すると、15万~20万回……》

 内閣官房に設けられた有識者会議「暮らしの質」向上検討会が5月にまとめた提言はこう強調し、「女性が暮らしやすくなる空間へと転換する『象徴』として、トイレを中心に取り上げる」と説明している。

 なぜ、トイレなのか。内閣官房の「すべての女性が輝く社会づくり推進室」によると、トイレを取り上げたのは、有村治子・女性活躍担当相の発案。「女性にとって、トイレは毎日お世話になっているもの。女性の暮らしの質を高めるには、トイレの空間を変えていくことが大切だ」という趣旨だったという。

 検討会は有村大臣のもとに設けられ、政府がかかげる「すべての女性が輝く政策パッケージ」の具体策を議論し、提言をまとめた。

 この提言が明るみに出ると、ツイッターでは、「輝く女性=トイレで化粧直しをしっかりする人なの?」「とことんバカにされたね、女たち」「そんなのより子どもを育てながら無理なく働ける仕事をもっと用意して」などと批判的な意見が相次いだ。タレントの遥洋子さんも、取材に対し、「『そこじゃないやろ』と、笑いが止まらなかった。『暮らしは女のもの』という決めつけも感じる」と話す。

 一連の反応に対し、内閣官房の担当者は、「待機児童や労働時間の問題にかかわる政策は、王道として進めている。空間にかかわる施策はこれまでなかったので」と理解を求める。

 「輝く女性応援会議」には公式ブログもあり、毎回様々な女性が、自身の活動をつづっている。消防士や自衛官など、女性が少ない分野で働く人や芸能人が登場して、仕事や子育てについて語る回もある。

 ブログの内容は内閣官房のツイッターで時折紹介しているが、この投稿が炎上する事件も起きている。

 おかずやご飯にキャラクターをかたどった弁当「キャラ弁」をつくる女性が書いた内容について、「朝起きるのが辛(つら)い日も作るのが億劫(おっくう)な日もある。それでも○○さんが毎日早起きしてキャラ弁を作れる理由とは?」とつぶやいたところ、「政府が手の込んだ弁当を作れといっているよう」「母親にはプレッシャー」などと、批判が渦巻いた。

 ブログの担当者によると、「キャラ弁を作れとか、それが一番という意図はなく、こんな考え方もあるんだな、と刺激にしてもらえれば」。

 作家の盛田隆二さん(60)も、「弁当作りは女性の役割と決めつけるブログのどこが『女性応援』なんだ?」と自分のアカウントでつぶやいた。取材に対し、「トイレの件と合わせて、女性の本来の任務は家を整え、子を産み、育てること、という『理想像』を感じた」と話した。「女性が輝くのに必要なのは、旧来の婦人像から女性を解き放つこと。男女差別を受けている人の切実な声を取り上げ、女性の役員や議員を増やすなどの政策を進めることが大切なのでは」と指摘する。(杉原里美、仲村和代)