▼タルコット・パーソンズとは
タルコット・パーソンズ
タルコット・パーソンズ(Talcott Parsons, 1902年12月13日 - 1979年5月8日)は、アメリカの社会学者。1927年から1973年まで、ハーバード大学で教鞭を執った。コロラド州・コロラドスプリングス出身。パターン変数、AGIL図式を提唱するなど、機能主義の代表的研究者と目された。ニクラス・ルーマン、ロバート・キング・マートンなどと並び、第二次世界大戦後、最もよく知られた社会学者の一人である。
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▼ホッブズ的秩序問題
<前提1 功利主義とは>
功利主義は「行為の目的と手段の関係を能率的規範に従って合理的に追求すること」です。
(能率的とは能率的:むだなく仕事がはかどるさまであり、合理的とは論理的なさま・因習や迷信にとらわれないさまを意味します。)
<前提2 ホッブズの万人の万人に対する闘争とは>
ホッブズとはイギリスの哲学者政治思想家です。まず人間の"自然状態"を本来的に平等であると仮定します。また、人間には「自己保存の欲求」、つまり死にたくないという欲求があると仮定します。たとえば生命を維持するための食料の確保のために他の人間を攻撃したり、攻撃される前に攻撃したりします。人間は本来的に平等という仮定なので、誰もが同じような考え方をします。そうすると、猜疑心(さいぎしん、相手の行為などをうたがったりねたんだりする気持ち)がつのり、戦争が起こるといいます。このような状態が「万人の万人に対する闘争」です。ホッブズはこうした自然状態は人びとが社会契約によって国家をつくることで終わるといいます。
<ホッブズ的秩序問題>
功利主義的に、誰もがそれぞれ勝手に定めた目的を能率的にのみ追求すると、目的の実現のための手段をめぐって「万人の万人に対する闘争」が生じて社会秩序が成り立たなくなります。こうした功利主義の問題をタルコット・パーソンズは「ホッブズ的秩序問題」と名づけました。行為と社会秩序や均衡はいかにして保たれるかを彼は問い続けたそうです。
参考文献:「クロニクル社会学」(有斐閣アルマ)
▼分析的リアリズムとは
<前提 経験主義とは>
経験主義とは、モノグラフィ(ある一つの問題に関する研究を記した論文)を重視し、観察と調査だけを科学的と考え、抽象的な理論的一般化を軽視する立場のことです。
<分析的リアリズム>
パーソンズは抽象的な理論一般化を重視します。科学は出来事をあるがままに記述するのではなく、それを要素に分解して理論的な内容を再構成すべきだと彼は考えました。こうした立場を分析的リアリズムと呼びます。
参考文献:「クロニクル社会学」(有斐閣アルマ)
経験論は哲学的唯物論や実証主義と緊密に結びついており、知識の源泉を理性に求めて依拠する理性主義(合理主義)や、認識は直観的に得られるとする直観主義、神秘主義、あるいは超経験的なものについて語ろうとする形而上学と対立する。
経験論における「経験」という語は、私的ないし個人的な経験や体験というよりもむしろ、客観的で公的な実験、観察といった風なニュアンスである。したがって、個人的な経験や体験に基づいて物事を判断するという態度が経験論的と言われることがあるが、それは誤解である。
▼主意主義的行為論とは
<前提1 行為の準拠枠とは>
行為を科学的に既述するために「行為者」・「目的」・「状況」・「機能的指向」という4つの分析的要素からなるものが行為の準拠枠である。この枠内の中で行為はいかにして秩序あるものとなるかという考察をした。
<前提2 実証主義とは>
世界の現象やその知識をもっぱら経験的事実に限定し,感覚的経験によって積極的に確認することのできない神イデアなどの形而上学的な存在についての思弁を排する立場(辞書)
科学的で合理的な知識を重視する立場
<前提3 快楽主義とは>
快楽を行為の究極目的とし,苦を避けるべきだとする考え(辞書)
<前提4 ダーウィニズムとは>
生物進化の要因を自然選択と適者生存に求めるダーウィンの学説(辞書)
<前提5 決定論とは>
自然や歴史の諸現象の生起は,外的な原因(神自然因果性社会関係など)によって究極的に規定されているとする考え。人間の意志責任や行為の意義については否定的になる傾向がみられる。必然論。 ↔非決定論・自由意志論・偶然論(辞書より)
<前提6 主意主義的理解の問題点>
功利主義が直面する「ホッブズ的秩序問題」はランダムな目的と能率的規範という内容から生じてきます。ランダムに、つまり任意に各自が勝手に目的を定めて、そうした目的を無駄なく、合理的な規範に従って追求していくということです。こうした状況は万人の万人に対する闘争であり、秩序がある状態とはいえなくなります。そこで、パーソンズは行為が秩序を取り戻すために、「ランダムな目的」と「能率的規範」を解消すればいいと考えました。
こうした秩序問題を実証主義的に解消しようとすると、解決は難しくなります。なぜならば、実証主義は「行為者は科学的な知識により目的を選択するので、目的のランダム性は回避される」と考えるからです。科学的な知識といっても実際には知識が状況次第であり、目的もまた状況したいなので、結局のところ行為は環境は本性といった人間の状況に還元して説明することになってしまいます。こうして状況に換言して説明すると、ダーウィニズムや快楽主義の決定論に陥ることになってしまいます。社会が人間を〜というふうに行為させた、環境が人間を〜というふうに行為させたという説明になってしまうこいうことですね(?)。そして決定論で説明すると生存競争がのこり、ホッブズ的秩序問題が出てきてしまいます。
また、実証主義は合理性を基準としているゆえに能率的規範以外の規範を見出すことができないそうです。ゆえに、規範に従わない非合理的行為は無知と誤謬、環境と遺伝といった状況や条件の反映だと理解されてしまうそうです。状況や環境が決定するということは、決定論的な問題となり、ホッブズ的秩序問題が出てきてしまいます。
<前提7 秩序形成の条件>
1 究極的目的の存在
究極的目的というものが存在し、かつ社会のすべての人が究極的目的を共有しているということ。たとえば平和、自由、平等など。
2 道徳的規範の存在
能率的規範だけではなく、人間の義務として順守される道徳的規範が存在していること。
ホッブズ的秩序問題、すなわち各自のランダムな目的の設定と対立を回避させる究極的目的が秩序を形成させるための本質的な要素であり、道徳的規範は行為をランダムではなく安定的に方向づけるという意味で社会秩序の土台をなしているとパーソンズは考えた。
<主意主義行為理論とは>
究極的目的と道徳的規範への同調に努力するという人間の意志を問題としたものが主意主義的行為理論です。努力するということは同調へ"意志"しているということですかね。
主意主義:理性感情よりも意志的なものを根本におく立場(辞書)
参考文献:「クロニクル社会学」(有斐閣アルマ)
▼秩序形成のための動機付けについて
主意主義的行為理論のように、人間の努力や意志といったものでは不安定であるという。恣意的な、つまり思いつきのような秩序形成ではなく、より安定した秩序のメカニズムを模索する必要がある。そこで、パーソンズは「動機付け」という概念を導入した。
<行為システムとは>
パーソンズは行為をシステムとして捉えます。パレートやキャノンのホメオタシス理論にもとづいて要素間の均衡維持的な関係から構成される一つの全体・システムとして捉えます。
行為システムは4つの下位システム、すなわち生物有機体、パーソナリティシステム、文化システム、社会システムから構成されます。文化システムは信念・言語・シンボルから構成されます。社会システムは相互行為から構成されます。
<構造ー機能分析とは>
行為システムは安定した要素からなる構造と構造に作用する可変的な要素からなっています。可変的要素が構造の均衡維持に貢献するか否かの関係や作用が「機能」と呼ばれます。
構造機能分析はシステムの構造分析と構造に対する可変的な要素の機能分析という2つの要素から成り立っています。
<役割期待とは>
パーソンズは社会システムの構造を「役割」のネットワークと考えているそうです。社会には人びとの地位に応じた役割が存在してお互いの役割遂行を期待しあう「役割期待」が形成されています。大人なら大人らしく、子供なら子供らしく、女性なら女性らしく、上司なら上司らしく、地位に応じた行動を期待しあってますよね。
<二重の条件依存性とは>
いわゆるダブルコンティンジェンシーです。人の人間のあいだで、一人がどのような振る舞いをするかは相手の出方次第であり、相手側から見ても事情は同様、という状況を指します。この状態では、理屈上、お互いに相手の出方を見ているだけでいつまでたっても相互行為がはじまりようもない、秩序が形成されません。
<期待の相補性>
役割期待が形成されている中で、お互いの期待が一致するためにはなにかしらの制裁が必要です。ダブルコンティンジェンシー状態を解決するためには期待が相補性をもっていなければなりません。役割期待が「制度化」されていることが社会システムが均衡するための条件となります。私の直感的なイメージでは、店員と客でお金を払えばおにぎりをもらえるという客の期待と、おにぎりを渡せばお金がもらえるという店員の期待が一致するためには、もしお金を払わないでおにぎりだけ持って行かれたら制裁、つまり刑罰をを受けるという制度が成り立っていないといけません。期待の一致には制度が必要だということですね。他の例ではもっと複雑になりそうですけど。
参考文献:「クロニクル社会学」(有斐閣アルマ)
▼フロイトの考えを取り入れた社会化・社会統制
<なぜフロイトの考えをパーソンズは取り入れたのか>
役割が構造化されていても行為者が制度に従わなければシステムが均衡しないからです。そして従うかどうかが行為者の意思や努力に任せるだけなら主意主義的行為理論になってしまいます。
そこで、「動機付け」を理論に導入したのです。動機付けとは、役割制度を強制的かつ自発的に順応させるメカニズムです。言い換えれば、状況にどう立ち向かうかという行為の指向を形成するメカニズムです。指向とは。ある方向に向かおうとする傾向を持つことです。
パーソナリティは日本語で言えば個性や人格です。心理学でいうと個人に特徴的な,まとまりと統一性をもった行動様式です。パーソナリティ・システムに社会の共通した基準に従って動機づけが組み込まれていれば、役割相互行為は努力や意志などの主意的で不確実な要素に依存することなく、自動的かつ確実に遂行されることになります。
<社会化とは>
指向の基本的な型をパーソナリティシステムに内面化すること
<社会統制とは>
逸脱した行為を再度適正な方向へと動機づけること
この2つの社会化と社会統制が社会秩序のための決定的な要素となります。そして行為の準拠枠は「行為者」・「目的」・「状況」・「機能的指向」という4つの分析的要素から、「行為者」・「指向」・「状況」という3つの分析的要素に変更されます。
動機付けの過程は構造に対する機能として位置づけられます。動機付けは動的過程として役割構造のあり方に関連し、役割への指向を十分にパーソナリティに動機づけることができるか否かが社会構造の秩序維持を左右することになるそうです。
参考文献:「クロニクル社会学」(有斐閣アルマ)
▼パターン変数について
役割構造の制度化とパーソナリティーシステムの指向の社会化の基準は「文化システム」に求められる。文化システムに含まれる共通の基本的価値が社会システムにおいて役割に関する制度として定着する。また、パーソナリティーシステムにおいては社会化を通じて内面化され指向の構成要素となる。
共通価値を媒介にしながらパーソナリティシステム・社会システム・文化システムを相互に関連づける。
パーソンズは共通価値をパターン変数として示している。
1 感情性ー感情中立性
2 自己中心的指向ー集合体中心的指向
3 個別主義ー普遍主義
4 所属本意ー業績本位
5 限定性ー無限定性
▼テンニースとパーソンズ
テンニースはゲゼルシャフトとゲマインシャフトで有名である。ゲゼルシャフトは機能体組織、利益社会であり、ゲマインシャフトは地縁、血縁、友情などにより自然発生した有機的な社会集団である。
産業社会の発展に伴い、社会は近代化し、ゲゼルシャフト化してきているとテンニースは主張する。そして産業は機能分化し、「プロフェッション」が生み出される。いわゆる専門職である。テンニースの分類によればプロフェッションは利益追求的なゲゼルシャフト関係を特徴とすると考えられていた。
それに対して、パーソンズはプロフェッションは自己利益を第一とするのではなく、公平無私を特徴としていると考える。具体例として医者が考えられ、医者の治療は自己指向的ではなく利他的であり、医者と患者の双方にとっての集合指向的な目標となっているという。つまり、プロフェッションとしての医者の役割がゲマインシャフト関係にあり、近代的なゲゼルシャフト関係の中でゲマインシャフト関係を維持しているという。
であるとすれば、単純にゲゼルシャフトとゲマインシャフトという一枚岩的な類型で捉えることはできず、類型の枠を超えた基本的な要素を取り出し、その組み合わせから説明しなければならないとパーソンズは考える。この分析的要素がパターン変数である。
参考文献:「クロニクル社会学」(有斐閣アルマ)
▼AGIL図式について
▶Aは「Adaptation(社会システムの外部環境への適応)」を意味する。Gは「Goal Gratification(目標充足)」を意味する。Iは「Integration(結合)」を意味する。Lは「Latent Paternal-Manitenance(潜在的パターンの維持)」を意味する。
▶これらのAGILは社会システムを構成する4つのサブシステムであり、社会システムを維持するための必須の機能である。
「Adaptation(適応)」の具体例として、経済が挙げられる。たとえば外部環境である自然環境から資源を得て最大限に利用することは、自然環境へ適応していることになる。
「Goal Gratification(目標充足)」の具体例として、政治が挙げられる。社会にとって必要なことを達成するために富や忠誠心を動員することが政治である。
「Integration(結合)」は個々人の逸脱的な行動を食い止める社会的な制御を意味する。
「Latent Paternal-Manitenance(潜在的パターンの維持)」はA・G・Iを可能にさせるような動機を与えてくれる文化や価値を意味する。
▶A・G・I・Lの各サブシステムは制御・被制御の関係にある。
Lは文化や価値を意味し、情報量が一番多い。L→I→G→Aの順に制御が動く。Aは経済で情報量が一番少ないという。そして逆に、A→G→I→Lの順に様々な制限(条件)づけが働いているという(サイバネティックコントロール)。
(要解釈・要調査)
▶パーソンズは経済や政治が社会のあり方に大きな影響を及ぼすことを認め、それと矛盾しないかたちで社会にとっては文化や価値が極めて重要だということを示そうとした。
参考文献:「本当にわかる社会学」(日本実業出版社)
▼AGIL図式が必要になった理由
なぜAGIL図式が必要になったのだろうか。それはパーソンズが役割構造に対する動機づけ過程の分析が構造機能分析としては不十分であると気づいていたからだ。どの点が不十分かというと、動機付けの問題はシステムの部分的な変動過程を説明することにとどまり、システム全体の変動過程に関する分析ではない点である。
ゆえに、全体の変動過程を分析するためには、ここのパーソナリティの動機づけを超え、システム全体の機能的結びつきや過程を記述できる概念が必要になった。パーソンズはベールズ
の相互過程分析とパターン変数を結びつけることで実現した。
4機能要件はA適応、G目標達成、I結合、L潜在性である。そして以下の3点を含意している
1 4機能要件はシステムが存続するために不可欠であり、それぞれがシステムの均衡維持に機能する
2 システムはそれぞれが4機能をはたす4つの下位システムに分化する
3 機能的に分化した下位システムもまたシステムであるかぎり、それぞれがさらに4機能を担う下位システムに分化する。
参考文献:「クロニクル社会学」(有斐閣アルマ)
▼境界相互交換の例
▶ AーI交換
Iは統合でAは経済です。
もうすこし詳しくいうと、Aはシステムを維持・存続させてゆくために必要な資源をほかのシステムを外界から調達しつつ、システムを外界に適応してゆくための下位システムで、具体的な例として経済があげられます。
Iはシステム内部の要素が不規則な動きをすることを制御して、システム全体を円滑に機能させるための下位システムです。統制あるいは社会的連帯の領域がこれに当たります。具体的な例としては家族があげられます。
Iは統合機能として経済の組織化や生産要素の結合をうながします。それを受けて経営者は新製品の開発などを実行します。そこでの新製品やブランド品は企業の社会的な評価と威信をシンボライズします。シンボライズとは象徴すること、つまり表すことですね。Aの経済は利潤と新製品をコミュニティIに供給します。そしてIでの消費はわれわれの生活様式をシンボライズし、社会やコミュニティの成層化を確立します。
(要解釈)
▼機能分化とはなにか
その名の通り機能が分化することなのだが、具体例で理解した方がいい。たとえば全体社会というシステムにAGIL図式を利用するとすれば、Aは企業、Gは政府、Iは司法機関、Lは家族や学校や宗教集団などが代表的なサブシステムになる。
そしてこのサブシステムはさらに分化する。たとえば大学は社会的にはLという機能に分化した集団であるが、財務・入試・就職・広報担当の部局はA、教授会や教務担当の部局はG、理事会や評議会はI,クラブや福利厚生担当の部局はLというふうに、それ自体が機能ごとに細かく分化している。このように、社会なり集団なりのシステムが機能ごとに分化してくる現象は機能分化と呼ばれる。
<システムの拡大とともに機能分化が進む>
先ほど大学という一つの機能がまた4つの機能に分化していることを説明した。では、家族はどうだろうか。家族は機能的にはLに属する。この機能にもA,G、I、Lが存在しているのだろうか。しかし家族にには誰がAで、誰がG、というような機能別の特化はあまり見られないという。父親がAもGもIもLも担っているという場合もある。つまり家族は機能分化があまり進んでいないのである。人数が少ないと一人で何役もこなさないといけない。機能分化が進むには集団の規模が大きくなければいけない。
人類の歴史時は社会そのものの規模が大きくなる歴史であり、その仮定で下位システムも規模を大きくしてきた。機能分化は社会進化の必然的産物であり、社会的分業や機能集団の発生は社会の規模の拡大に伴う機能分化であり、官僚制的組織は下位システムの肥大に伴う機能分化の所産である。
参考文献:「社会学が分かる辞典」森下伸也(日本実業出版社)
▼社会有機体説と社会システムの相違
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