捏造歴史「江戸しぐさ」を利用したマナー教育に批判・炎上…「やっちまった」「残念な歴史修正主義」「善意の暴走は怖い」

Yomerumoまとめ編集部 2015/4/2 21:55

今年も4月1日のエイプリルフールには多くのウソ・ネタがインターネットなどで拡散しましたが、そんなエイプリルフールとは無関係なところで、ウソの歴史・ウソの江戸マナーとして知られる「江戸しぐさ」を元にしたマナー冊子を茨城県守谷市の教育委員会などが作製したことが報じられ、波紋を呼んでいます。

これは、3月下旬に産経新聞や常陽新聞などのメディアが報じたもの。各報道によると、

守谷市は、現代に語り継がれる「江戸のしぐさ」を参考にして、５、６年前から市内の小中学校で独自に学校や家庭での行動などについての独自のマナー「しぐさ」を定め、普及させてきた。今回の道徳冊子は、市内の小中学校の教諭９人で構成する推進委員会を昨年５月に設置して、各校で定めたしぐさをまとめた。（中略）２７年度は１千部を作製し、市内１３小中学校に児童・生徒用として各４０冊を配布。常勤の全教諭にも配布して、学級活動や道徳の時間で活用する。
（※語り継がれる「江戸のしぐさ」参考、茨城・守谷市が道徳冊子を作製 - 産経ニュースより）

と、同市が「江戸しぐさ」を元にした教育を進めていたことや、

会田真一市長が7、8年前、江戸しぐさについて小中学校教員を前に講演したのがきっかけという。講演を聞いた教員らが各校で独自の「しぐさ」を考案、今回、各校の取り組みの中から「守谷しぐさ」を選定した。
（※子どもたちにマナー集「守谷しぐさ」教員ら考案 - 常陽新聞より）

と、その背景に市長の意向があったことなどが伝えられています。

▼そもそも「江戸しぐさ」とは

「江戸しぐさ」は

「特定非営利活動法人江戸しぐさ」が江戸町人の行動に由来すると主張し、普及を促進している行動哲学
（※江戸しぐさ - Wikipediaより）

ですが、

ただし、江戸時代における江戸しぐさの実在を示す史料の存在が確認されていない
（※江戸しぐさ - Wikipediaより）

というあやふやなもの。（江戸しぐさ信奉者によると、明治政府の「江戸っ子狩り」で江戸っ子が死滅したため残っていないとか……）

1980年代初頭にはじめてメディアに登場した「江戸しぐさ」は、2004年頃に公共広告機構によって大々的に取り上げられたことなどから日本中に知られるように。テレビや新聞などでも好意的に取り上げられ、企業の研修や学校の道徳教育でも使用されています。実際にその教えを受けたという方も少なくないのではないでしょうか。

ちなみに、具体的には「傘かしげ」「時泥棒」「うかつあやまり」「こぶし腰浮かせ」「喫煙しぐさ」といった「しぐさ」が知られていますが、それらは概ね江戸期にはありえない行動様式ばかりであり、後世の捏造・ウソ歴史であることが現在では広く認識されつつあります。

「江戸しぐさ」を検証し続けている歴史研究家の原田実氏による『江戸しぐさの正体教育をむしばむ偽りの伝統』(星海社新書、2014年)では、「江戸しぐさ」そのものや個別の「しぐさ」に関する矛盾を検証。その（歴史が捏造された）歴史的背景や教育現場で利用される問題点などを指摘し、各界で反響を呼びました。

※関連リンク

▼「やっちまった」「善意の暴走は怖い」…批判も

現時点ではウソ歴史・捏造であり、一種の「トンデモ」であることが広く知られつつある「江戸しぐさ」ですが、今回守谷市の事例が報じられたことからあらためて話題に。ネットユーザーの間では

「あーあ、やっちまった(笑)」
「残念な歴史修正主義や捏造道徳がここにも来ているんですね。」
「『江戸しぐさ』なんてデマやっちゅうのに…」
「守谷市も問題だけどメディアが無批判に江戸しぐさを取り上げるのは……」
「語り継がれる『江戸のしぐさ』ってありましたっけ…？」
「市長の講演を聞いた教員らが各校独自の「しぐさ」を考案したことがきっかけとのこと。善意の暴走は怖いな」
「首長が音頭を取っているのか。住みよさランキング５位なのに。。。」
「こりゃ恥ずかしい。」
「守谷市と産經新聞は自らの情報弱者ぶりを顧みたほうがよろしい」

といった批判が上がり続け、ちょっとした炎上状態となっています。

とはいえ、「江戸しぐさ」というウソ歴史の教育利用が行なわれているのは守谷市だけではありません。日本各地で同様に「江戸しぐさ」の影響を受けた「○○しぐさ」が作られ教育に利用されていることも知られているほか、文科省が配布する小学生向け「道徳」の教科書に「江戸しぐさ」が