節目に閉塞状況を変えたい
■現在の日本と韓国の関係をどう見るか。
危険水域に入っていると思う。韓国ではこれまで、日本人が嫌な目で見られることはなかったが、今は一般人にも反日感情が表れ始めている。政府間のぎくしゃくした関係が長期化し、人々の気持ちにまで影響が出ている。
■日本でもヘイトスピーチ(憎悪表現)などが問題になっている。
私たちが子どものころも差別はひどかったが、今は繁華街で「殺せ」と公然とやる。恥ずかしいとも思わず、周りの人も見ているだけ。私たちが受けてきた差別とは全く質が違う。在日5世や6世がこの社会で生きていけるのか、心配がある。
■なぜ、そんな関係になったと考えるか。
日韓固有の状況ではなく、成熟社会の中で進む方向が見いだせないという失速状況がベースにあると思う。ただ、解決できないわけではなく、国家間で大きな利益を共有する方法はある。問題はそこに落ち着く心理、周辺状況にできるかどうか。国交正常化50年を足がかりに、トップ会談を実現させ、良い方向に向かうように願う。
■中国、北朝鮮との関係を含め、今後の東アジアをどう見るか。
私は緩やかな共同体を、時間がかかってもつくっていく必要があると思う。北朝鮮、中国との問題も含め、アメリカや欧州連合(EU)とのバランスをとるためにも重要だ。今は2国間関係で振り回されてしまっているが、政治家は大きなところで腹をくくることが必要ではないか。
■これからの50年、民団が果たす役割は。
在日同胞から生活相談を受け、アイデンティティーを守る活動とともに、日本と韓国の橋渡しや市民としての地域活性化活動をしている。韓国の大統領や日本の政治家と膝をつき合わせることもでき、在日の立場を訴えるとともに、市民レベルの息の長い活動で、相互理解を深めることも必要だ。国交正常化50年を迎え、来年は民団も創立70年になる。大きな節目を良いようにとらえ、閉塞(へいそく)状態を変えるように活動したい。(聞き手・高田康夫)
▽イ・キュソプ 1947年、明石市生まれ。在日韓国人2世。2歳で神戸に移る。2006年から民団兵庫県本部副団長を務め、15年3月から現職。神戸市中央区在住。