財務省の地震保険に関する有識者会合は24日、保険料を全国平均で19%引き上げることを盛り込んだ制度の見直しについての提言をまとめた。首都直下などの巨大地震リスクを織り込み、都道府県ごとの値上げ幅の上限を現在の3割から引き上げることも求めた。5割を軸に調整が進む見通しで、都道府県ごとの個別の引き上げ幅と合わせて今後の焦点になる。
「地震被害のリスクを速やかに、かつ適切に反映させるべきだ」。記者会見に臨んだ佐藤主光座長(一橋大大学院教授)は値上げの意義を説明した。念頭にあるのは首都直下などの巨大地震の発生規模の想定を引き上げた昨年末の政府試算だ。地震保険は政府と損害保険各社が共同で運営するが、リスクに耐えられる支払い能力を試算に合わせる必要があった。
提言を受け、損保各社でつくる損害保険料率算出機構は今年夏、金融庁に値上げを届け出る見込みだ。
一方で、関係者が腐心したのが契約者の負担の軽減だ。保険料は14年7月に15.5%引き上げたばかりで「負担の重さから契約者が減り、制度が保てなくなる」(同省幹部)恐れがあった。値上げ幅は保険金の支払額を決める損害区分の設定の仕方で19~28%の3案があったが、最も低い19%を選んだ。値上げは2017年1月から2~3回に分け、数年かけて実施する見通しだ。
次の焦点は、提言に盛り込まれた値上げ幅の上限の見直しだ。保険料は震災リスクに応じて都道府県ごとに異なり、特定地域の値上げ幅が大きくなりすぎないように上限を設定している。
現在は上限の3割を超す分をリスクの低い他地域が負担する仕組みで、それが「保険料体系を分かりづらくしている」との指摘があった。上限を引き上げれば、上限を超す地域が減り、制度の複雑さが和らぐ。現状維持の3割のほか、4割、5割、7割に引き上げる案があるが、5割を軸に調整が進みそうだ。
上限を引き上げれば、地域ごとの震災リスクの差をより正確に反映できるが、太平洋側などリスクの大きい地域とリスクの小さい地域の保険料の差が大きくなる。地域によって大きな差が出ることに国民の理解を得られるかが課題になる。
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