マルクス経済学者に松尾某という人物がいることは前々から知っていた。
さる論文を締め切り数日前から執筆し始め、脱稿したことを自慢する様を見て、
普通なら雑な論文を執筆したことについて読者に申し訳なく思うはずなんだがなーと
「まぁ、コネがあれば経済学者ってこんな感じでもなれるのかな」程度に思っていた。
ところが、さるブログで松尾氏があの池上彰の資本論解説本を
推薦しているとのことを聞いて「なにぃ！？」と思い、調べてみたところ、
いやはや、なんとまぁ、かなりエキセントリックな方であるらしいことがわかってきた。
不満な点を全て取り上げ「これも駄目！あれも駄目！」とけなすのは趣味が悪いので、
下の記事に対するツッコミだけを入れ、同氏の素晴らしさについて語りたいと思う。
----------------------------------------------------------------------
■金融政策 私の視点
――松尾さんはマルクス経済学者を名乗っています。
左派の立場こそ本来、金融緩和を重視するべきだとの主張です。
「欧米では左派は金融緩和に賛成という色分けが普通だ。
金融緩和は雇用を拡大させる効果があり、それは左派が重視するものだからだ。
一方、物価が上がってインフレになれば資産が目減りするから、
お金持ちの階級が金融緩和に反対する。こういった人々の支援を
受けた右派の政治家は普通、金融緩和については否定的だ」
――日本では自民党が金融緩和を進める一方、
共産党が反対して、政治的立場と政策がねじれています。
「なぜ左派が金融緩和に反対するのか。言ってしまえば、
左派は雇用問題が一番深刻な若い世代の支持がだいぶ細っていて、
古参の支持者に依存する現実がある。退職して年金生活者になっている
支持者は金融緩和による物価上昇を恐れる気持ちが強い。それが一つの理由ではないか」
http://www.asahi.com/articles/ASH2971TXH29ULFA043.html
----------------------------------------------------------------------
まず、とても重要なツッコミだが、
欧米でも左翼は金融規制に消極的である。
例えば、フランス社会党のオランドは大統領戦時、次の主張をしていた。
� 〆眄�危機を消費税増ではなく富裕層や大企業への課税強化で突破する
�◆ー唆伴圓篌禺圓篆半禺圓覆匹亮匆馘�弱者を対し
就職や教育や職業訓練や住宅や社会保障などで優遇する
�� 大企業よりも中小零細企業の発展を優先する
法人税を税率を大企業３５％、中小企業３０％、零細企業１５％に分ける
�� 銀行やヘッジファンドの［投機行為］を規制し［実体経済］を［投機マネー］から守る
・銀行の［投機行為］を規制し［実体経済］に役立たせる
・投機取引に課税する
・銀行の利益に１５％課税する
・銀行のタックスヘイブンでの営業禁止
・消費者金融を規制する
・米英の３大民間格付け会社に代えて公正中立な公的格付け機関を新たに設ける
（http://blog.goo.ne.jp/yampr7/e/0466b0bf30d04b1d5d5e20062574ee39）
次に、イギリスでもキャメロンが率いる保守党は
金融規制緩和に積極的だが、労働党は逆に規制緩和に消極的だ。
（http://www.cmegroup.com/ja/education/featured-reports/
uk-elections-possible-outcomes-and-implications.html）
------------------------------------------------------------
【マンチェスター＝岡崎衆史】
英与党労働党の年次大会が二十日、中部マンチェスターで始まりました。
初日の会議で、ブラウン首相は、金融危機に対応するために、
国際的な金融規制機関が必要だとの考えを示しました。
ブラウン首相は、ダーリング財務相、ハットン民間企業・規制改革担当相らとともに、
代議員の質問に答えるセッションに参加。金融危機への対応を問われた首相は、
金融システムを安定化させ、改革を行うとともに、住宅、燃料、雇用で
国民生活を支援していくことが重要だとの考えを示しました。さらに、
「世界規模での（金融）不正に対応するために、
世界規模の金融監督機関が必要だ」
と述べ、その実現のため各国と協力していくとしました。
http://www.asyura2.com/08/hasan58/msg/412.html
------------------------------------------------------------
また、海外の論者を読んでも、いわゆる左翼は概ね、
経済や金融の際限なきグローバル化に反対の姿勢をとっており、
例えば、スーザン・ジョージは長年、金融機関の暴走に異議を唱えてきた人物である。
（代表作『なぜ世界の半分が飢えるのか』など）
日本でも有名な経済学者であるスティグリッツも規制緩和には異議を唱えている。
-----------------------------------------------------
規制緩和が世界金融危機を引き起こした
規制について、ここではっきりさせておきましょう。
規制緩和が世界金融危機を引き起こしたのです。規制緩和がバブルを生成させたのです。
もちろん、そんなバブルのような好景気は持続可能なものではありません。
アメリカが率先して金融部門で規制緩和をして、
その結果、世界全体が打撃を受け、この大不況に突入したのです。
振り返れば、第二次世界大戦後から一九七三年まで続いたブレトン・ウッズ体制の下では
固定相場制だったので、現在のグローバル経済よりも安定していたことは確かです。
最近のアメリカの経済学者のなかではブレトン・ウッズ体制を再評価する声も出ています。
しかしながら、ブレトン・ウッズ体制では、
各国の生産性にばらつきが出てきたときに、対応できなくなってしまったのです。
ブレトン・ウッズ体制が崩壊し、変動相場制に移行したわけですが、
（もともと不安定性のつきまとう）変動相場制のもとで、規制緩和が進められたことにより、
ありとあらゆる種類の投機の可能性をつくり出しました。それが不安定性をさらに増大させたのです。
資本の流れが貿易の流れの多くを占めるようになってしまい、
安定性を維持することが非常に難しくなったのです。
http://shinsho.shueisha.co.jp/kotoba/1306tachimi/04.html#1
-----------------------------------------------------
歴史的にも規制緩和、自由市場を強く訴えたのは
ミルトン・フリードマンを代表とする新自由主義者である。
レーガン、サッチャー、いずれも金融規制緩和の主導者だった。
松尾にとってはレーガンやサッチャーは左翼（左派）なのだろうか？
松尾のインタビューは2015年2月に取られたものであり、
当然、リーマン・ショック以降の金融ショックを契機に各国の知識人が
新自由主義（特にアメリカ主導の金融規制緩和）を総括する動きがあったことは
知っているはずである。知らなければ無知にすぎる。
つまり、松尾が意図的に大嘘をついたことが予想される。
次に、共産党の支持者に若年者が少ないかのような書かれ方をしているが、
これまた、大きな間違いである。むしろ、若者は規制緩和によって大ダメージを
受けてきた年齢層だ。特に雇用規制緩和は青年層の賃金低下、雇用の不安定を招いた。
若者だけに支持されているというわけではないが、少なくとも
経済政策に関して言えば、いわゆる若者も共産党には好意的な顔を見せている。
大体、物価高で最もダメージを受けるのは派遣・正社員ともに低収入で、
貯蓄も少なく、子育てもするであろう20〜30代に決まっているではないか？
少なくとも共産党は、この点はハッキリ指摘している。
ついでに言うと、共産党は規制緩和によって上が肥えると下も肥えてくるという
トリクルダウン理論に対して「それは虚構だ」と反対しているのである。
ここでトリクルダウン理論について説明すると、
企業が収益をあげれば、その恩恵がいつかは雇用、賃金、家計に回ってくる
というものだ。
ところが、実際には実質賃金は2013年1月以降、下降の一途を辿り、
全就業者における非正規社員の割合が増えている。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-11-29/2014112901_02_1.html
--------------------------------------------------------------
総務省が２９日発表した労働力調査（季節調整値）によると、
４月の完全失業率は３・３％でした。前月比０・１ポイント低下しました。
完全失業者数は２万人減の２１９万人。このうち、勤務先や事業の都合による
完全失業者数は４万人減の４０万人となりました。就業者数は２８万人減の６３３８万人。
働く意思がない人や病気で就業できない人などを合わせた
非労働力人口は、３５万人増の４５１９万人でした。
雇用形態別の雇用者数（原数値）では、
正社員が６万人増えた一方、非正規雇用の労働者は３０万人増の１９３９万人。
労働者に占める非正規の比率は３７・１％と高い水準です。
特に男性では
正社員が３０万人減り、
非正規は２９万人増。
正社員を非正規で置き換える動きが続いています。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-05-30/2015053005_02_1.html
----------------------------------------------------------------------
以上、述べたように金融緩和をすれば雇用が増えると言うのは、
現実にそぐわない理論であり、これに対して共産党は反対している。
（共産党に限らず、日本の左派はほとんど、この理屈で抵抗していると思うが……）
松尾が何を言っても自由だが、少なくともご自分がある程度評価した
アベノミクスによって、それなりの数の人間が被害を被ったことは認識してもいいだろう。
ちなみに、松尾は雇用状況に関しては
「全体で見れば雇用は拡大している。」と述べているが、
上の赤旗の記事からもわかるが、正社員自体は逆に減っている。
こういう点からも、松尾が左派かと言われると非常に微妙になってくる。
恐らく、彼はクルーグマンなどの学者を想定して左派と呼んでいるのではないだろうか？
最後に、とても基本的な情報だが、共産党には
民青という若年者によって構成される下部後援組織が存在する。
共産党議員のほとんどは、ここで活躍した人物であり、
民青で経験を積んでから、議員に立候補、仕事をするという流れになる。
つまり、松尾は民青の存在すら知らずに、あるいは意図的に隠蔽しながら
共産党の支持者は高齢者層といい加減なことを言っている可能性が浮上してくる。
さらに言えば、自民党や維新の党を最も支持しているのは
50代以上の男性という調査結果もある。
このアンケート調査では、共産党を最も支持しているのは30代になっている。
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-5683.html
以上、ちょっとした短い文を検討するだけでも、
ボロボロと間違いが発見される。
立命館の経済学教授、レベル高すぎ。
これは私の恩師の言葉だが、
「理論上正しくても、現実が違うなら、それは観察力不足にすぎない」ということで、
トリクルダウン理論が理論上は正しいかもしれないが、実際には成功していない。
その辺の厳しい批判が上の朝日新聞の記事からは微塵も感じられない。
（ほら！朝日新聞って左翼のふりした右翼新聞でしょう？こういうの載せてるんですよ？）
ちなみに、松尾の批判は2年前に某システムエンジニアによってされているが、
このブログに、よほど暇なのか松尾本人が来てコメントを残している。
http://www.anlyznews.com/2013/11/2.html
ハッキリした反論というより、かなり記事の主張を認めており、
さりとて自分の敗北を宣言しているわけでもなく、のらりくらりと……うん、なコメント。
確かに在野だからといって馬鹿にしていいものではないが、
一介のシステム・エンジニアと同レベルの経済学者ってどうなんだろうか？
また、上のコメントの応酬を読む限り、
どうも松尾は読者ウケしやすい極論をバーンと打ち出して、
反論されたら細かい経済学の知識をアレコレとこねくり回して煙に巻くタイプらしい。
記事の執筆者が経済学に明るかったため、互角という失態を犯しているが、
普通なら、ここで執筆者は自分の知識不足を痛感して記事の訂正なり削除をするだろう。
この辺、どうも池上彰と似たものを感じる次第である。
本当は池上彰の反日論について文句を言うはずが、
その前段階として思いっきり松尾を攻撃してしまった。
一応、言っておくと、池上の批判者（？）が
彼のマルクス解釈をかなり肯定的に受け止めているので、
それは違うぜ！という意味をこめて、
マルクス経済学者が褒めている⇒池上すげー！の論理は通じないよという記事を
書いたつもりである。まぁ、かなりどうでもいいのだが。
松尾は前々から何だか怪しいヤツだなー（まぁ、別にいいか）と思っていたので、
これをきっかけに、自分なりに彼の怪しい点を整理できたので、自分としては満足である。
（自己満足的記事でちょっと申し訳なく思う）
・追記
友寄英隆氏の『アベノミクスと日本資本主義』を松尾の言説を利用して
批判している人がいた。何と言うか、藤原彰氏の論文を渡辺昇一の本を使って
攻撃しているような凄いことをしているなと……まぁ、こういうのを見ると、
置塩経済学自体の権威というか信用が薄れるんじゃないかとちょっと不安になる。
さる論文を締め切り数日前から執筆し始め、脱稿したことを自慢する様を見て、
普通なら雑な論文を執筆したことについて読者に申し訳なく思うはずなんだがなーと
「まぁ、コネがあれば経済学者ってこんな感じでもなれるのかな」程度に思っていた。
ところが、さるブログで松尾氏があの池上彰の資本論解説本を
推薦しているとのことを聞いて「なにぃ！？」と思い、調べてみたところ、
いやはや、なんとまぁ、かなりエキセントリックな方であるらしいことがわかってきた。
不満な点を全て取り上げ「これも駄目！あれも駄目！」とけなすのは趣味が悪いので、
下の記事に対するツッコミだけを入れ、同氏の素晴らしさについて語りたいと思う。
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■金融政策 私の視点
――松尾さんはマルクス経済学者を名乗っています。
左派の立場こそ本来、金融緩和を重視するべきだとの主張です。
「欧米では左派は金融緩和に賛成という色分けが普通だ。
金融緩和は雇用を拡大させる効果があり、それは左派が重視するものだからだ。
一方、物価が上がってインフレになれば資産が目減りするから、
お金持ちの階級が金融緩和に反対する。こういった人々の支援を
受けた右派の政治家は普通、金融緩和については否定的だ」
――日本では自民党が金融緩和を進める一方、
共産党が反対して、政治的立場と政策がねじれています。
「なぜ左派が金融緩和に反対するのか。言ってしまえば、
左派は雇用問題が一番深刻な若い世代の支持がだいぶ細っていて、
古参の支持者に依存する現実がある。退職して年金生活者になっている
支持者は金融緩和による物価上昇を恐れる気持ちが強い。それが一つの理由ではないか」
http://www.asahi.com/articles/ASH2971TXH29ULFA043.html
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まず、とても重要なツッコミだが、
欧米でも左翼は金融規制に消極的である。
例えば、フランス社会党のオランドは大統領戦時、次の主張をしていた。
� 〆眄�危機を消費税増ではなく富裕層や大企業への課税強化で突破する
�◆ー唆伴圓篌禺圓篆半禺圓覆匹亮匆馘�弱者を対し
就職や教育や職業訓練や住宅や社会保障などで優遇する
�� 大企業よりも中小零細企業の発展を優先する
法人税を税率を大企業３５％、中小企業３０％、零細企業１５％に分ける
�� 銀行やヘッジファンドの［投機行為］を規制し［実体経済］を［投機マネー］から守る
・銀行の［投機行為］を規制し［実体経済］に役立たせる
・投機取引に課税する
・銀行の利益に１５％課税する
・銀行のタックスヘイブンでの営業禁止
・消費者金融を規制する
・米英の３大民間格付け会社に代えて公正中立な公的格付け機関を新たに設ける
（http://blog.goo.ne.jp/yampr7/e/0466b0bf30d04b1d5d5e20062574ee39）
次に、イギリスでもキャメロンが率いる保守党は
金融規制緩和に積極的だが、労働党は逆に規制緩和に消極的だ。
（http://www.cmegroup.com/ja/education/featured-reports/
uk-elections-possible-outcomes-and-implications.html）
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【マンチェスター＝岡崎衆史】
英与党労働党の年次大会が二十日、中部マンチェスターで始まりました。
初日の会議で、ブラウン首相は、金融危機に対応するために、
国際的な金融規制機関が必要だとの考えを示しました。
ブラウン首相は、ダーリング財務相、ハットン民間企業・規制改革担当相らとともに、
代議員の質問に答えるセッションに参加。金融危機への対応を問われた首相は、
金融システムを安定化させ、改革を行うとともに、住宅、燃料、雇用で
国民生活を支援していくことが重要だとの考えを示しました。さらに、
「世界規模での（金融）不正に対応するために、
世界規模の金融監督機関が必要だ」
と述べ、その実現のため各国と協力していくとしました。
http://www.asyura2.com/08/hasan58/msg/412.html
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また、海外の論者を読んでも、いわゆる左翼は概ね、
経済や金融の際限なきグローバル化に反対の姿勢をとっており、
例えば、スーザン・ジョージは長年、金融機関の暴走に異議を唱えてきた人物である。
（代表作『なぜ世界の半分が飢えるのか』など）
日本でも有名な経済学者であるスティグリッツも規制緩和には異議を唱えている。
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規制緩和が世界金融危機を引き起こした
規制について、ここではっきりさせておきましょう。
規制緩和が世界金融危機を引き起こしたのです。規制緩和がバブルを生成させたのです。
もちろん、そんなバブルのような好景気は持続可能なものではありません。
アメリカが率先して金融部門で規制緩和をして、
その結果、世界全体が打撃を受け、この大不況に突入したのです。
振り返れば、第二次世界大戦後から一九七三年まで続いたブレトン・ウッズ体制の下では
固定相場制だったので、現在のグローバル経済よりも安定していたことは確かです。
最近のアメリカの経済学者のなかではブレトン・ウッズ体制を再評価する声も出ています。
しかしながら、ブレトン・ウッズ体制では、
各国の生産性にばらつきが出てきたときに、対応できなくなってしまったのです。
ブレトン・ウッズ体制が崩壊し、変動相場制に移行したわけですが、
（もともと不安定性のつきまとう）変動相場制のもとで、規制緩和が進められたことにより、
ありとあらゆる種類の投機の可能性をつくり出しました。それが不安定性をさらに増大させたのです。
資本の流れが貿易の流れの多くを占めるようになってしまい、
安定性を維持することが非常に難しくなったのです。
http://shinsho.shueisha.co.jp/kotoba/1306tachimi/04.html#1
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歴史的にも規制緩和、自由市場を強く訴えたのは
ミルトン・フリードマンを代表とする新自由主義者である。
レーガン、サッチャー、いずれも金融規制緩和の主導者だった。
松尾にとってはレーガンやサッチャーは左翼（左派）なのだろうか？
松尾のインタビューは2015年2月に取られたものであり、
当然、リーマン・ショック以降の金融ショックを契機に各国の知識人が
新自由主義（特にアメリカ主導の金融規制緩和）を総括する動きがあったことは
知っているはずである。知らなければ無知にすぎる。
つまり、松尾が意図的に大嘘をついたことが予想される。
次に、共産党の支持者に若年者が少ないかのような書かれ方をしているが、
これまた、大きな間違いである。むしろ、若者は規制緩和によって大ダメージを
受けてきた年齢層だ。特に雇用規制緩和は青年層の賃金低下、雇用の不安定を招いた。
若者だけに支持されているというわけではないが、少なくとも
経済政策に関して言えば、いわゆる若者も共産党には好意的な顔を見せている。
大体、物価高で最もダメージを受けるのは派遣・正社員ともに低収入で、
貯蓄も少なく、子育てもするであろう20〜30代に決まっているではないか？
少なくとも共産党は、この点はハッキリ指摘している。
ついでに言うと、共産党は規制緩和によって上が肥えると下も肥えてくるという
トリクルダウン理論に対して「それは虚構だ」と反対しているのである。
ここでトリクルダウン理論について説明すると、
企業が収益をあげれば、その恩恵がいつかは雇用、賃金、家計に回ってくる
というものだ。
ところが、実際には実質賃金は2013年1月以降、下降の一途を辿り、
全就業者における非正規社員の割合が増えている。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-11-29/2014112901_02_1.html
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総務省が２９日発表した労働力調査（季節調整値）によると、
４月の完全失業率は３・３％でした。前月比０・１ポイント低下しました。
完全失業者数は２万人減の２１９万人。このうち、勤務先や事業の都合による
完全失業者数は４万人減の４０万人となりました。就業者数は２８万人減の６３３８万人。
働く意思がない人や病気で就業できない人などを合わせた
非労働力人口は、３５万人増の４５１９万人でした。
雇用形態別の雇用者数（原数値）では、
正社員が６万人増えた一方、非正規雇用の労働者は３０万人増の１９３９万人。
労働者に占める非正規の比率は３７・１％と高い水準です。
特に男性では
正社員が３０万人減り、
非正規は２９万人増。
正社員を非正規で置き換える動きが続いています。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-05-30/2015053005_02_1.html
----------------------------------------------------------------------
以上、述べたように金融緩和をすれば雇用が増えると言うのは、
現実にそぐわない理論であり、これに対して共産党は反対している。
（共産党に限らず、日本の左派はほとんど、この理屈で抵抗していると思うが……）
松尾が何を言っても自由だが、少なくともご自分がある程度評価した
アベノミクスによって、それなりの数の人間が被害を被ったことは認識してもいいだろう。
ちなみに、松尾は雇用状況に関しては
「全体で見れば雇用は拡大している。」と述べているが、
上の赤旗の記事からもわかるが、正社員自体は逆に減っている。
こういう点からも、松尾が左派かと言われると非常に微妙になってくる。
恐らく、彼はクルーグマンなどの学者を想定して左派と呼んでいるのではないだろうか？
最後に、とても基本的な情報だが、共産党には
民青という若年者によって構成される下部後援組織が存在する。
共産党議員のほとんどは、ここで活躍した人物であり、
民青で経験を積んでから、議員に立候補、仕事をするという流れになる。
つまり、松尾は民青の存在すら知らずに、あるいは意図的に隠蔽しながら
共産党の支持者は高齢者層といい加減なことを言っている可能性が浮上してくる。
さらに言えば、自民党や維新の党を最も支持しているのは
50代以上の男性という調査結果もある。
このアンケート調査では、共産党を最も支持しているのは30代になっている。
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-5683.html
以上、ちょっとした短い文を検討するだけでも、
ボロボロと間違いが発見される。
立命館の経済学教授、レベル高すぎ。
これは私の恩師の言葉だが、
「理論上正しくても、現実が違うなら、それは観察力不足にすぎない」ということで、
トリクルダウン理論が理論上は正しいかもしれないが、実際には成功していない。
その辺の厳しい批判が上の朝日新聞の記事からは微塵も感じられない。
（ほら！朝日新聞って左翼のふりした右翼新聞でしょう？こういうの載せてるんですよ？）
ちなみに、松尾の批判は2年前に某システムエンジニアによってされているが、
このブログに、よほど暇なのか松尾本人が来てコメントを残している。
http://www.anlyznews.com/2013/11/2.html
ハッキリした反論というより、かなり記事の主張を認めており、
さりとて自分の敗北を宣言しているわけでもなく、のらりくらりと……うん、なコメント。
確かに在野だからといって馬鹿にしていいものではないが、
一介のシステム・エンジニアと同レベルの経済学者ってどうなんだろうか？
また、上のコメントの応酬を読む限り、
どうも松尾は読者ウケしやすい極論をバーンと打ち出して、
反論されたら細かい経済学の知識をアレコレとこねくり回して煙に巻くタイプらしい。
記事の執筆者が経済学に明るかったため、互角という失態を犯しているが、
普通なら、ここで執筆者は自分の知識不足を痛感して記事の訂正なり削除をするだろう。
この辺、どうも池上彰と似たものを感じる次第である。
本当は池上彰の反日論について文句を言うはずが、
その前段階として思いっきり松尾を攻撃してしまった。
一応、言っておくと、池上の批判者（？）が
彼のマルクス解釈をかなり肯定的に受け止めているので、
それは違うぜ！という意味をこめて、
マルクス経済学者が褒めている⇒池上すげー！の論理は通じないよという記事を
書いたつもりである。まぁ、かなりどうでもいいのだが。
松尾は前々から何だか怪しいヤツだなー（まぁ、別にいいか）と思っていたので、
これをきっかけに、自分なりに彼の怪しい点を整理できたので、自分としては満足である。
（自己満足的記事でちょっと申し訳なく思う）
・追記
友寄英隆氏の『アベノミクスと日本資本主義』を松尾の言説を利用して
批判している人がいた。何と言うか、藤原彰氏の論文を渡辺昇一の本を使って
攻撃しているような凄いことをしているなと……まぁ、こういうのを見ると、
置塩経済学自体の権威というか信用が薄れるんじゃないかとちょっと不安になる。