目を開けるより先に全身の痛みに気がつく。
「やれやれ」
自分の体は驚異的な回復力からあと20分も寝ていれば動けるようになるはずだ。
「まったく・・・」
もう一度眠ろうと目を閉じかけて思いなおす。
まだ痛む体を持ち上げて、もぐりんを呼び出した。
もぐりんは派手な地響きを立てながらやってきた
「俺が信頼できるのはメカだけだ」
ドキンちゃんは食パン野郎を追いかけて1週間は帰ってきていない。
辺りにアンパンマンらがいないことを確認し、地上に出てある物を探しだした。
「確かこの辺りのはずだが・・・クソっ記憶が飛んでる。バタコめ。あいつのせいだ。」
しかしそれはあっさりと見つかった。
アンパンマンの交換された古い顔の方だ
幸いにも今回は獣害にもあっておらずかなりいい状態だ。
バイキン城に引き返し城の最深部へとおりる。
そこには高さ20m直径10mの円柱型の水槽があり、青白く光る液体で満たされている。
水槽の底のほうを見ると無数のアンパンマンの古い顔が今日もあの憎い笑顔をこちらに向けている。
「ケッ、利用されているとも知らずに」
特殊な手袋をつけて、先ほど回収した顔をそっと水槽の中に沈める。
しばらくすると今入れた古い顔もぼんやりとした光を放ち始めた。
すると水槽の最下部につけられた大げさなライトが赤から緑になり、何度か点滅した後、緑のままとなった。
アンパンマンの古い顔からエネルギーを取り出せることに気がついたのは偶然だった。
いつもどおりの結末を迎えた戦闘のあと、修理中の「だだんだん」のコックピットに古い顔があり、計器類が異常な反応を示しているのを見つけたのだ。
調べてみると微弱ながら「勇気」とやらが残っていることがわかった。
勇気なんてものは反吐が出るほど嫌いだったが、さらに調査すると比較的シンプルな方法で勇気から巨大なエネルギーを取り出せることが判明したのだ。
あのおじゃま虫を消し去るためにこれまでかなりの手段をとってきたが結局どれもうまくいかなかった。
あいつを消せないならとパン工場を狙ったがだめだった、バタコやジャムも狙ったがだめだった。
直接的な方法はうまくいかない因果律になっているのだ。何より自分自身にも甘さがでてきている。
なぜそんなことになっているのかはわからないが、わかる必要もない。別の方法を探すだけだ。
おそらくできるだけ離れた因果のところでやるしかないのだろう。
今日集めた顔で、計算上必要なエネルギーの1.2倍が取り出せるようになった。
アイデアはとても単純だった。
自分が菌のスペシャリストであること、そしてアンパンマンはパンが作れなくなれば勝手に自滅するということ。
「ばいばいき〜ん」